■密林「謎のDAC」巡りのコーナー?!
なんてものは別にやってませんが(汗)、またまた激安USB DACを購入しました。
今回購入したのは、
(Amazonでは「フェザー・ノートパソコン DAC」という名称にて販売)
という商品です。購入価格6,400円。この値段で「PCM 24bit/192kHz、DSD256対応」という性能です。
ちなみに、Amazonで「USB DAC」とかで検索して上位に出てくる見慣れないDACにはつい目が行ってしまう性分で、そこで「DSD対応」で6000円そこそことかの価格設定になっていると「大丈夫なのか?!」とつい気になって仕方がないわけです。で、ポチっと。ほんと、思うツボですね(自嘲
というわけで、Amazonで購入した謎なUSB DACでは以前こんなのも紹介しました。
→過去記事: 【前編】1万円DSD&32bit/384kHz対応「謎のUSB DAC」を買ってみる
→過去記事: 【後編】384kHz&DSD対応「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」のドライバ問題
スマホ用メインの小型USB DACとしては4個目です。古い順に、
- Astell&Kern AK10
- Logitec LHP-AHR192 →過去記事:『ロジテック LHP-AHR192 をいろいろ比較して使い倒す』
- ZEAL ZDC-205A-SG →過去記事:『Android対応超小型DAC「ZEAL ZDC-205A-SG」は使えるか?』
■搭載DACチップには「CS4398」を搭載
別に買っていきなり分解したわけではありませんが、今回は分解写真から先に行きます。
ちなみに、分解するとまず保証NGになると思いますので真似しないでね(笑
4カ所ツメを外すと分解でき、Amazon掲載の画像通り1枚の基盤が出てきます。
そこから基盤を外してみると、XMOSのUSB Audio Class 2.0チップとDACチップが確認できます。
Amazonには「シーラス・ロジック製」と書かれていたチップの型番は「CS4398」であることが確認できます。激安USB DACながらチップには「CS4398」を使っていたんです。
「CS4398」といえば同社でも昔からあるチップではありますが、その分搭載実績は多く、なんと言ってもメジャーなところでは「Astell&Kern AK240」を筆頭に、第2世代のAKシリーズのNAPで搭載されていることで知られています。AKシリーズの価格を考えると驚きもひとしおです。また最新機種の「Astell&Kern AK70」の搭載チップも同じ「CS4398」です。
私の所有NAPでもつい先日までメインで使用していた「FiiO X3 2nd Gen」で採用されており、どれも音質には極めて定評があります。
かつてはハイエンドのチップでしたが、年数が経ち、チップ単価が大きく下がってきたことで激安DACにも搭載できるようになった、というところでしょうか。
「DSD256および24bit/192kHz対応」とはまさにCS4398のスペックそのものであり、いわばこのチップこそがこの製品のすべて、といっても過言ではないかもしれませんね(専有面積ではXMOSのほうが目立ちますが)。
ちなみにヘッドホンアンプ部は「AIF BDM」というチップで、これは他の製品の基盤写真などの使用例から推測して、おそらく「MAX97220」と同一と思われます。
※余談ですが、CS4398とMAX97220の組み合わせで検索すると、vivoX5とかいう中華スマホがでてきて、そういえば昨日くらいのWBSで中国でoppoやvivoのスマホすげー的な特集してたなー、と。なんとなく物欲が(ぉぃ
■とりあえずいろいろ聴いてみた。DSDも含め確実に価格以上の性能。
「CYBERDRIVE」DACの接続ですが、形状的には明らかにスマホ用っぽいデザインですが、MFI認証を取得しているわけでもありませんし(おそらくバッテリ消耗を考えて)、Androidなど動作保証が難しい機器もありますので、いちおう「ノートパソコン」用扱いにしているようです。
もっともLightningカメラアダプタとぴったり合うサイズ・色・デザインですので組み合わせると「純正オプションかしらん?」という雰囲気です。
AndroidでもUSB-OTGケーブルによる接続でiOS同様「HF Playerなどで問題なく利用できました。
MacやLinuxであればXMOS USB Audio Class 2.0仕様ですからそのまま接続すれば使用できます。Windows用もASIOドライバがメーカーサイトからダウンロードできます。今回はMacへ接続し、プレーヤーはAudirvana Plusを使用。
XMOS系DACのお約束で、接続すると実際のDAC性能より高いサンプリングレートをOutputで表示する場合があります。この製品でも353kHzを表示しましたが、動くかどうかはともかく、ここではMax sample rateの設定を「No Limit」から「192kHz」、あと念のため「Limit max bitdepth to 24bit instead of 32bit」のチェックを入れておきます。これでAudio Filtersでアップサンプリングを最大にかけても音が出ない、というトラブルは回避できるはずです。
比較には上記の通り、所有するもうひとつのCS4398搭載の機器である「FiiO X3 2nd Gen」をUSB DACモードで接続。違いを比較してみたいと思います。
使用するヘッドホンは、手持ちのAKG Y40、K240 Studio(リケーブル済み)、ゼンハイザー HD598、イヤホンはエレコムのEHP-CH2000とEHP-BS100BK、Shure SE215SPE、AKG
N20。あと参考用で同SE535LTDです。
まずは、DACの価格帯を考え、AKG Y40(ヘッドホン)、Shure SE215SPE(イヤホン)を使用。
で手持ちの音源で24bit/192kHzで購入したオフコースの「OFF COURSE BEST "ever" EMI Years」の各曲を聴いてみると、低音から高音への抜けは悪くありません。普通に「いい音」と感じるつくりです。
またジャズではThe Oscar Peterson Trioの「We Get Request」の96kHz FLACを聴いてみると、低音から高音まで定位感も悪くはありません。同様にクラプトンの「Clapton Chronicles」を聴いていてもとても気持ちよく聴くことができました。
全体を通して、この小さいCYBERDRIVEでもハイレゾをしっかりドライブしているのが確認できます。全体的にフラットで、解像度、奥行きとも間違いなく価格以上の性能といって良いでしょう。本体のサイズ的にいわゆるオペアンプなどによるアナログ的な加工の余地がない分いわばDACチップのそのままの音がでている、と言えるのかもしれません。
いっぽう、アニソンなどではfhánaの「What's a Wonderful World Line」を聴いてみると超高域のボーカルで「ああ、ちょっとここ苦しい」という場面に遭遇。またワルキューレのアルバムなどでも音の分解能力が追いつかない場面がちらほら。
ヘッドホンを色々換えて聴いてみると、悪くないと感じたクラプトンなどの曲も含め、同じDACチップを使用しているFiiO X3 2nd Genと比べてS/Nやスピード感の面では結構大きな差があることがわかります。CYBERDRIVEは音の混ざりというか濁りがあり、X3 2ndで聴いていたのの同じボリュームにすると全体的に若干うるさく感じる部分があります。
この辺の違いは本来オペアンプやヘッドホンアンプで処理される部分でX3 2ndでは3系統のチップを経由させチューニングを施しているため、サイズ的にもCYBERDRIVEが処理が甘くなるのはある意味当然で仕様通りの音と考えることができます。
2.8MHz DSD(DSD64)についてもDoPで拍子抜けするほどあっさり再生。女性ボーカルなどの中高域はDSDのほうが雑味がなくすっきり聞こえます。また定位感も悪くないようです。
ただ、DSDの特徴である「生っぽさ」はそれほどは感じません。DSDの場合、(Mojoのような例外はあるものの)DAC性能より以降のアナログ性能部分によるところが音質に大きく影響するため、スティックタイプのCYBERDRIVEでは物理的に限界があると思われます。
ちなみにボリュームゲインですが、CYBERDRIVEのUSBにプラグ直後のデフォルト音量は、AKG Y40で普通かちょっと大きめ、くらいの配置でしたので、市販の普及価格帯のイヤホン・ヘッドホンでそのまま使える音量に設定されていると考えて良いでしょう。
この製品、現在どの辺のボリュームに設定されているのかが全くわからないため、どの音量で音が出てくるのかとちょっとドキドキします。特にDSDについてはプレーヤー側(Macなど)からのボリュームコントロールはできず、最大音量で送られるため、CYBERDRIVE本体での音量調節が必須になります。
あと、念のためSE535LTDでも聴いてみました。
SE535LTDなどのIEMクラスの製品だと反応が敏感すぎてボリュームコントロールがさらに困難になり、さらにノイズも盛大に拾うため、IEM用の「FiiO E12A」というヘッドホンアンプを中継します。ただ、実際に聴いてみるとE12Aを通しても、特にDSDなどの場合はホワイトノイズを大量に拾ってしまうので普段の利用ではまず無理な環境です(まあもともとDSD64とかはフォーマット自体でノイズが多いんですけどね)。
SE535LTDの場合、やはりS/Nの弱みがより全面に現れ、全体的にザラついた音に感じます。結果、音場の再現性などは著しく低く感じます。
また、反応の良いヘッドホンでも、HD598で聴いてみるとちょっと過剰な「鳴り」を感じてしまい不快に感じる場合があります。
過去に購入したロジテックやZEALの製品もそうでしたが、ヘッドホンもDACの価格相応に合わせた方が良い、というのは、このクラスのDAC製品の共通のオチみたいです。どれもDACチップはそこそこ良いものを使ってるんですけどね・・・。
やはり最終的に音質を決めるのはアナログ部品、ということになりそうです。
(そうなるとデジタル部分であそこまで音質を高めているMojoってやっぱ普通じゃないすね)
■スピーカー出力はアクティブスピーカーがおすすめ。ラインアンプ併用もアリ。
これだけ低価格でDSDにも対応、となってくると、ヘッドホン・イヤホン専用だけでなく、スピーカーでも使ってみたい、という方も結構いるんじゃないかと思います。
ただ、もともとヘッドホン・イヤホン用の製品なので、本体のボリュームを最大にしてもアンプに接続するために充分な出力を確保するのは難しいようです。試しに福井の自宅で使用しているDENONのエントリーモデルでは定番のプリメインアンプ「PMA-390RE」に接続してみたところ、CYBERDRIVE本体のボリュームを最大にし、アンプ側のボリュームも上げてみましたが、昔のラジカセを鳴らしているような、なんとも力不足感の否めない残念な音になりました。
このように通常のオーディオ機器のアンプなど、CYBERDRIVEの出力が足りない場合は、例えばNFJの「FX-AUDIO- TUBE-01J」のようなラインアンプを中継することでボリュームコントロールも兼ねつつ充分な出力が確保できます。
私の場合は、CYBERDRIVEをいったん「CarotOne ERNESTOLO」上部のプリアンプ(ヘッドホンアンプ)部に接続し、そこからLINE OUTでPMA-390RESPに接続することで同様の効果を確認できました。(CYBERDRIVEはこれらの小型真空管プリアンプとの相性はなかなか良いようです)
いっぽう、Fostex「PM0.3」や、オンキヨー「GX-70HD2」などアクティブスピーカーの場合、スマホのイヤホン端子からの出力なども想定したアンプ部分の設計になっているため、CYBERDRIVEをミニピンステレオケーブルで接続すれば問題なくいい音で鳴らしてくれます。スピーカー出力の場合はこちらの組み合わせの方がオススメですね。
このように、「CYBERDRIVE Hi-RES NOTEBOOK DAC」は、数万円級のUSB DACの代替とはさすがにならない部分はありますが、まずは手軽にハイレゾを楽しみたい、DSD対応のDACを購入したい、という方の入門用には最適かもしれません。「中身はちょっと本格派」で、なにより安価にいろいろ遊べますので。