bisonicr keep walking.

ガジェット好きのおっさんによる、趣味的レビュー。ちょっとイイけどお買い得、そんなアイテムに目がありません。

「FiiO X5 3rd gen」レッドモデルで色々つないで聴いてみた。【購入レビュー】

このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote
image


■「FiiO X5 3rd gen」の「レッド」モデル狙いで購入しました。 

というわけで、「FiiO X5 3rd genX5III」レッドモデルを購入しました。
中国FiiO社のX5シリーズの3代目で、Android 5.1.1ベースのOSに、DACに「AK4490EN」をデュアルで搭載し、オペアンプにはOPA1642が2つ(LPF)、カスタマイズされたOPA426が2つ(OP)で搭載するなど、Astell&Kernのフラッグシップ「AK380」に匹敵するスペック、と話題になったDAP(デジタルオーディオプレーヤー)です。

普段使いのAstell&Kern「AK300」とは別に、いろいろ遊べる高機能DAPも1台欲しいなと思っての購入です。本当は発売してすぐに入手したかったのですが、先行するブラックおよびチタニウムモデルから遅れること数ヶ月、ようやくの確保です。まだまだレッドモデルについては数が少ないですが、今後並行輸入品も徐々に出回ると思いますし、いずれは国内版の販売もあるとは思います。

imageimageimage

レッドモデルの赤は最近発売されたiPhone7のレッドモデルよりは若干明るめの赤色。以前購入した「Hidizs AP60(海外版)」のレッドとほぼ同じ色なのですが、深圳方面では塗装しやすい色なのかも。個人的にはiPhone7のレッドがフロントが白色で萎えたのですが、こちらはフロントはブラックで締まりのあるカラーリングはなかなか格好いいと思っています。

imageimage

ネットの情報などを見る限りブラックおよびチタニウムモデルと比較して、レッドモデルも付属品などは特に違いはなく、本体にシリコンカバーが装着済み、液晶に保護フィルムはあらかじめ貼ってあり、付属品はUSBケーブルとCOAX用ケーブル。そしてレザーカバー。ただ、本体カラーにあわせてレッドモデルはカバーも真っ赤で、装着するとちょっと違うメーカーのDAPのようにみえます。こちらはデザイン的にいえば・・・なしですね(笑)。

imageimageimage



■さっそく使ってみる。快適なパフォーマンス。ボタン配置は、もうちょっと。

FiiO X5 3rd gen」の電源を投入し、Wi-Fiを設定し、アラートに従いファームウェアをバージョンアップします。レッドモデル発売までに何度かファームウェアの更新がありましたので現時点ではすでにそこそこ安定して使えるようですが、4月現在(バージョン1.1.4)でまだまだ未完成でいろいろバグはあるようです。
内蔵フラッシュは32GBですが、搭載メモリは1GBとAndroid機としては少なめですので初期導入アプリも最小限。できるだけ無駄なアプリはインストールしないでおきたいものです。とはいえ、いろいろ音楽系は試してしまうわけですが(笑)。
メモリが1GBということでちょっと不安でしたが、動作は非常に機敏で快適に操作できます。
ただ頻繁に画面切替を行っていると、現時点ではたまにアプリが強制終了する場合があるのはご愛敬です。
メモリカードスロットはmicro SDを2枚搭載できる仕様はX5 2ndから同様。本当は256GBを、と思ったのですが256GBを1枚の価格でSanDiskの200GB MicroSDXCが2枚買えたので迷わずそちらにしました(^^)。
imageimage

あと操作性に関してですが、私の手の癖というのもあると思いますが、画面がタイマーで消えた後、電源ボタンで復帰する際に、反対側の再生・停止ボタンや曲送りのボタンを誤って触ってしまう、ということがちょくちょくありました。ここはAK300のように上部にボタンを配置してくれた方が有り難いですね(あとカバーをしているとそもそも押しにくい)。



■慣れれば結構使いやすい「FiiO Music」アプリ


「FiiO X5 3rd gen」は一般的なAndroid画面のモードに加え、音楽プレーヤー(FiiO Music)専用のモードに切り替えることができます。純粋にX5 3rdを音楽プレーヤーとしてのみ使用する場合はプレーヤーのモードのほうが余計な操作がない分使いやすいですね(どちらのモードも動作速度に変化はありません)。
imageimage

「FiiO Music」アプリはなかなか良くできていて慣れれば使い勝手は良好です。
プレイリスト作成画面、各種分類ごと(アーティストやアルバム、種類など)、そしてWi-Fi利用時にはDLNAでのサーバからのストリーミング再生にも対応します。

imageimageimage

再生画面ではカバーアートをクリックすることでモードの変更が可能。歌詞に関してはWi-Fiがつながっていれば(どこかの)サーバから検索し、みつかれば割り当てることが可能です。

imageimageimage

その他、細かい設定等についても特に操作に困ることはありませんでした。
しいていえばリスト表示が日本語英語混在でソートするので(たぶんUTF-8の文字コードでソートしてる)、この辺は日本版が発売される頃までには改善して欲しい部分ですね。

imageimageimage

なお、プレイリストについては#EXTM3Uヘッダ無しの.m3u形式のプレイリストファイルを使用することができます(フォルダ参照からアクセス)。ただし、X5 2nd/X3 2ndと異なり、英語以外のプレイリストファイルは文字コードが「UTF-8」のみを認識します。普段プレイリストをfoobar2000などで作成している場合、生成される.m3uファイルの文字コードがShift-JISになるため、秀丸エディタなど文字コードを変更できるソフトで保存し直す必要があります。
playlist-m3uplaylist-m3u-utf8image
ちなみに、この仕様はAstell&Kernのプレイリストと同じなので、普段AK300で使用していたMicroSDカードをX5 3rdに差し替えて、プレイリストも含め、そのまま使用できました。



■イヤホンよりヘッドホンのほうが相性良好? ハイゲイン傾向のセッティング。

「FiiO X5 3rd gen」へ数種類のイヤホンおよびヘッドホンをつなぎ、実際に聴いてみてみました。
まず全般的に解像度の高さを感じます。これは私が普段使ってるAK300をはじめ、同じAK4490をDACに持つ第3世代AKとも共通する音質です。しかし、いくつかのイヤホンでは音場感が少なくボーカルもちょっとだけ遠くに聞こえます。またゼンハイザーの「Momentum On-ear」など比較的小さいボリューム設定で鳴らせるヘッドホンの場合も、ちょっと低音過多で中高域がきちんと出ていない気がします。

imageただ、この傾向は以前使ってた「X3 2nd gen(X3II)」などでも感じたことがあるのですが、Astell&Kernなどのメーカーと比べて、FiiOは明らかに「高出力」側にセッティングを合わせていると思います。そのため、多くのイヤホンや鳴りやすいヘッドホンの場合、その出力を絞って再生しているため、ちょっとモコモコした感じになるのではないかと思います。
ちょっと変な例えですが、以前エレコムのイヤホンを試した際、付いているマイクのボリュームがアナログ式でDAPに関係なく音量を絞れる(抵抗を上げる)タイプだったのですが、これでイヤホンの音量を最低にしてDAP側の音量を上げたときの感じに近いイメージがあります。

いっぽう、鳴らすために高出力を必要とするAKGの代表的モニターヘッドホン「K712 Pro」「K701」の場合、ゲインを「ハイ」にして接続すると(ボリュームも80~と高め)、完全に鳴らしきっているだけではなく、ヘッドホンの特徴を捉えたサウンドを聴かせてくれるのを感じます。もともとAKGのK700系の開放型ヘッドホンは音場が非常に広く、モニターらしいフラットな音質傾向なので、X5 3rdの音との相性が良いというのはあると思います。特にK712 Proとの相性は抜群で、据置型のDAC・ヘッドホンアンプでもなかなか出せないレベルに感じました。またソニーの「MDR-CD900ST」の場合もヘッドホンの特徴そのままに音がぐっと前に出てしっかり分析的に音を聞くことができます。
imageimage



■Shure SE535LTDでバランス接続。音は濃いがやはりホワイトノイズあり。

次に、ゲイン設定はローで、Shureの「SE535LTD」(普段はAK300にバランス接続なのですが、あえて標準ケーブルに戻して)をX5 3rdに接続すると、他のイヤホンと異なり、どちらかというと上記のAKGのヘッドホンをつないだときのようにサウンドの濃度が一気に増して聞こえます。
imageimage
さらに、普段使っているバランスケーブル(onsoのもの)に変更し、バランス接続すると、もともとキレの良かったサウンドからさらに分離感が向上し、音の際立ち方がかなり明確に引き立ちます。バランスとアンバランスでのここまで明確な変化はAK300でもない部分で、改めて2つのAK4490チップをデュアルモノで鳴らしているのだと実感します。

imageただ、SE535LTDは感度が高すぎてとにかく普通のDACやDAPではホワイトノイズを盛大に拾うのですが、X5 3rdも例外ではなく、特にバランス接続の場合、電流が流れた瞬間にサーと大きめのホワイトノイズが聞こえます。
AK300をはじめ、Astell&Kernの第2世代・第3世代のAKは敏感なCIEMにも適応できるようにセッティングされているため、SE535LTDのような敏感なイヤホンを接続した場合もこのようなホワイトノイズが聞こえることはまずありません。裏を返せば、この辺りがDACチップなどでは推し量れない両社の「最大の違い」だろうと思います(後述)。



■やっぱりFiiOはラインアウトの音がいい。イヤホンならやはりポタアンは必須かも。

imageまた「FiiO X5 3rd gen」は、AK300などのAstell&Kernにはない、LINE OUT(COAXデジタル出力兼用)端子を持っています。上記のような理由からか、FiiOのDAPはLINE OUTのほうが確実に音が良いような気がしますし、実際ポータブルアンプ接続やプリメインアンプでのスピーカー出力はかなり良い印象を受けます。

X5 3rdのLINE OUTをマランツの「M-CR610」のアナログ端子に接続してスピーカー(ZENSOR1)から鳴らしてみると、「Mojo」などのような味付けの濃いDACとは異なりフラットな音質傾向でとても見通しの良いクリアなサウンドが楽しめます(いっぽう、AK300で同じ事をすると稼働力不足のためスカスカでとても残念な音になります)。

またポータブルアンプについては、Mojoを使っている関係上、それほど高級な機器は所有していませんが、X3 2ndの頃に使っていた同じくFiiOの「E12A」とiBasso「D55」をLINE OUTにつないで聴いてみると、多くのイヤホンで感じていた平坦さが消え、イメージとしてはメリハリの少ない写真が一気にカラフルになった感じです。
imageimage
特にFiiO E12AはオペアンプにMUSES02を採用するものの、SE535LTDなどの敏感なイヤホンも含むIEMのノイズ対策やS/Nの向上がメインで味付けは「ほぼ無し」のポタアンですが、それ故にX5 3rdの持ち味を活かしつつ、音のメリハリ・音場感を付加している印象を受けました。同じメーカーでサイズ的にぴったりなこともあり、当面はこの組み合わせで使うことが増えそうです。

ちなみに、通常ポタアンを組み合わせるときはシリコンバンドで留めることが多いですが、私の場合は、極薄のマジックテープ(3Mの「メカニカルファスナー」を使っています)を使って貼り付けています。X5 3rdには透明シリコンカバーが付いているのでマジックテープを本体に貼る必要がなくちょっと有り難いですね。
imageimage



■SPDIF経由でUSB-DAC「CHOUD Mojo」をつないでみた。

「FiiO X5 3rd gen」も従来のX5やX3 2ndなどのモデルと同様にSPDIF接続でDACへのデジタル接続も可能になっています。「FiiO Music」アプリでLINE OUT/COAXポートの設定をデジタル出力にして、専用ケーブルで接続します。
imageR35S-MM
ただ専用ケーブルは対向がCOAXのメス(RCAのメスと同じ)なので、変換アダプタを使用して接続します。こちらはX3 2ndを使っていた時に秋葉原で購入したものをそのまま使っています。
詳しくは過去記事を参照ください。
CHORD「Mojo」を据置きDACとしてスピーカー環境で使ってみる

こちらについてはケーブルを挿した時点で本体側で自動でCOAX出力に変わり、Mojoでの出力ができるようになります。ただし、SPDIFの仕様で最大24bit/192kHzになります。DSDについては確認した限り、DSD64(2.8MHz)は、88.2kHzのPCMに変換されDACに送られます(従来のFiiOと同じ仕様です)。
imageimage
ただし、ときおり動作が怪しいときがあり、不安定でまともに使えない場合もあります。この辺が安定して動作するためのバージョンアップまでにはもう少しかかりそうです。



■さらに、Google Playで再生アプリをインストール。USB-DACもつないでみた。
「FiiO X5 3rd gen」もいちおうAndroidデバイスでGoogle Playが使用できますので、契約している「Apple Music」と「Amazon Music」、あと「Spotify」の各アプリをインストールしておきます。
また動作テスト用にすでにAndroid版を購入しているOnkyo「HF Player」、ラディウス「NePLAYER」さらに「USB Audio Player Pro」もインストールしてみます。
imageimageimage
まず、Apple Music、Amazon Music(Prime Music契約)、Spotifyの各アプリは動作上特に問題なく使用できます。X5 3rdでは画面OFFからONにするとき、FiiO Musicで再生中の曲のカバーアートが背景に表示されるのですが、これがApple Musicなどの別のアプリで再生中でも再生中の曲のカバーアートになります。

次に、ハイレゾプレーヤーアプリでの利用ですが、なかでも「HF Player」についてはX5 3rdに最初から入っている「FiiO Market」でもインストールできるなど、どうやらFiiO自身のお墨付きらしく、今回インストールした中ではもっとも安定して動作しました(最大24bit/192kHzまでハイレゾの再生を確認)。
ちなみに、HF Playerでハイレゾ用のアンロックを行っても、本体のみ再生する場合は、アップサンプリング機能は働きません。またDSDは自動的にPCMに変換され再生されます。
imageimage
X5 3rd自体はUSB-DACへの出力(トランスポート)機能は持っていませんが、OTGに対応したAndroidデバイスとしてHF PlayerではAndroid OTG対応のUSB-DACを接続できます(HF Playerのドライバを使用します)。試しにMojoを接続したところ、上限24bit/192kHzまでのアップサンプリングに対応し再生することができました(一般的なOTG対応のAndroidスマホと同程度)。
imageimage
ただ、ここでDSDの音源をDoPでMojoに送ったところ再生が途中で止まってしまい正常に再生ができませんでした。この辺は1GBもメモリが影響しており、明らかな処理能力不足のようです。HF Player側の設定でDoP設定をあきらめ、PCM変換に設定を戻すと、DSD64(2.8MHz)では176.4kHzのPCM変換で無事再生ができました。
余談ですが、Mojoとの接続をFiiO Music同様にSPDIF接続にすると、48kHzにダウンサンプリングされてしまいます(残念)。

次に、ラディウスの「NePLAYER」を使ってみたところ、こちらも単体での動作に問題なく、24bit/192kHzまでのハイレゾの再生ができました(アップサンプリングは機能せず)。ただし、USB-DACについては専用ドライバでは認識せず、48kHzにダウンサンプリングされての再生になりました。
imageimage

最後にUSB-DAC専用のハイレゾプレーヤーである「USB Audio Player Pro」ですが、こちらもアプリ自身のドライバでUSB-DACを認識することはできたものの、まともに再生することができず残念ながら使用できませんでした。こちらはメモリ不足とX5 3rdのUSBポートのOTGモードでの動作不安定が原因と思われます。
※海外の記事を見ると、動作している例もあるようなので、インストールしているアプリとの競合の可能性もありますね。



■「FiiO X5 3rd」がDACが同じでも似非AK380にはなり得ない理由

image上記の通り、「FiiO X5 3rd gen」はチップ構成などが「AK380」に酷似していることもあり、音質面も比較してどうか、という話にどうしてもなりがちです。
しかし、FiiOのDAPは「いかに高い稼働力と音質を実現させるか」という「高出力指向」のアプローチなのに対し、Astell&Kernはあえてモデルが変わっても稼働力は上げずに、音質面に注力するアプローチを取っています。ただその結果としてAKシリーズのDAPは敏感なイヤホンをはじめ多くのイヤホンで、それぞれの機種が狙った音を確実に聴かせてくれます。いっぽうで、ヘッドホンでは明らかに稼働力不足の音になりますし、ラインアウトモード(単純にボリュームを最大音量で固定するだけ)でプリメインアンプに接続しスピーカー出力すると、なんとも残念な音になります。Astell&Kernはその点は最初から割り切っているので、AK380等は専用アンプモジュールをオプションで設定しているわけですね。

いっぽう「FiiO X5 3rd gen」のサウンドは、Astell&Kernの真逆を行く、明確なハイゲイン偏重のセッティングです。また、AKシリーズには無いLINE OUTを持っていて、ここにポータブルアンプはもちろん、プリメインアンプを接続してもしっかりとした稼働力で実力を発揮します。image
もっとも、結果として、ポタアンを積んで音を作ることが「前提」のポータブルDAPてどうなの、という気もしないではないですが、その辺が上位機種で最初から脱着・交換式のアンプモジュールを持つ「FiiO X7」の差別要素なのかもしれませんね。

少なくとも価格帯はもとより、アプローチ的にも全く違う製品を同列に見ることがナンセンスなのは間違いなさそうです。もっともFiiO自身がマーケティング的にAK380並とか言って煽ってるとしたら、そりゃ知ったことじゃない、という話ですけどね(笑)。


まだまだ「FiiO X5 3rd gen」にはファームウェア的に未完成な部分も多く、一緒に育てていく感は拭えませんが、製品として落ち着いて、日本市場にも正式に投入される頃には定番DAPのひとつに挙がっているかもしれません。もっともこの価格帯はAK70やDP-X1Aなどが盤石な地位を築いていますし、中華系でもライバルiBassoの動向に加え、これまで低価格機を出してきた新興勢力も実力を付けこのクラスの製品を投入しようとしています。またAstell&Kernも従来のAKとは一線を画し、稼働力の高いアンプと多彩なインターフェースを持った製品を投入するウワサもあります。
とりあえずはそんな戦国時代な様相を斜めに見ながら、手元のX5 3rdでいろいろ遊んで行けたらなと思っています。


ハイレゾ音源とCD音源を「ダイナミックレンジ」でいろいろ比較してみた(中辛)

このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote
title


■ハイレゾの良し悪しはよくわからない。だから「ダイナミックレンジ」で比べてみよう。
442133e1-s家電量販店に行くといつの間にかオーディオコーナーはどんどんスペースが拡大し、「ハイレゾ」対応商品が所狭しと並ぶようになってきました。同時に日本では「e-onkyo music」や「mora」などの配信サイトを中心にハイレゾ音源が数多く販売されており、私自身もいつの間にか相当数の楽曲を購入していることに気づきました。
ハイレゾというと特に人間の可聴域を大きく超えるサンプリング周波数が意味があるのか(倍音効果的な話など)などを中心に技術的・感覚的などさまざまな視点での解説がネット上に多く見つけることができます。

ただそういう「難しい話」はさておき、だれでも簡単に確認できる方法で、かつ私自身のような「おっさん」も始まっている、老化により高周波の音がどんどん聴こえなくなる耳でも確実に聴き分けられるもの、という点で「ダイナミックレンジ」に着目しました。

36一般的にダイナミックレンジとは最大値と最小値の比率ですが、「音源におけるダイナミックレンジ」とは最大音圧と平均音圧(rms値)の差をみれば良いようです。
よりS/Nが高いプレーヤーやアンプでよりワイドレンジのイヤホン・ヘッドホンやスピーカーを使うことで聴き分けられる、という点で極めてオーディオ的な指標といえるのではないかと思います。また「音量」のデータなので、ハイレゾかどうかに関係なく、同じ楽曲で簡単に比較が可能です。今回私は音楽データの波形編集の定番フリーソフト「Audacity」を使用。同じ曲のCDなどの通常音源とハイレゾの両方を持っていれば誰でも簡単に比較ができます。
(コントラスト解析で簡単にrms値との差を確認できます)

同じ楽曲で「ダイナミックレンジ」が高い音源は前提としてS/Nが高く、音場感(広がり)や奥行き、さらに定位感といったレコーディング時の情報をより正確に表現します。また微弱な音も表現できるわけですから、解像度や分離感の高い再生環境(DAP・アンプおよびイヤホン・ヘッドホン)であればより分析的に聴くことが可能になると思います。つまり良いマスタリングであれば高周波の音が聞こえるかどうかに関係なく(笑)、「ダイナミックレンジ」が高い音源は「再生環境がよければ確実にいい音に聞こえる」のではないかと思うわけです。


■ハイレゾ音源はより高音質なマスタリングがされているのでは、という「仮説」。
ここで、ひとつの「仮説」を考えました。ハイレゾ音源は基本的に「ハイレゾ対応機器」で再生することを前提にしています。つまり、ハイレゾ音源はより高性能な環境で再生するわけですから、CDより音作りの制約は少なく、よりレコーディング音源に近いマスタリングがされているのではないか、しいてはCDより音圧を下げ、高いダイナミックレンジで制作されているのではないか、という「仮説」です。特に古いCDなどにみられたコンプレッサー処理(ダイナミックレンジを圧縮して低音質なプレーヤーでも聴きやすくする処理)などを行わない分、「良い音」になっているのではないかと考えたわけです。このことは私が2014年に書いた「SE535LTD」のレビューでも触れており、改めて確認しようと考えました。

image私の場合、上記のShure「SE535LTD」やAKGのモニターヘッドホンなどで基本的にフラットでモニターライクの音を「Astell&Kern AK300」のような味付けの少ないDAPを使い好んで聴いています。もっともスピーカー環境ではもうすこし低音が厚いリスニング寄りの音にしていますし、いっぽうで味付けの濃いイヤホンやポータブルアンプの多段構成も実は結構好きではあります。
ただ料理にたとえると、「味付けの濃い料理も時折はさみながら普段は素材の味を楽しみたい」みたいな感じでしょうか。普段から和食で素材の味を楽しんでいれば、たまのフレンチは新鮮ですし、ファーストフードもおいしいと思いつつそればかり食べることはないだろう、そんな感覚です(例えが大げさですねw)。
ですから、「ハイレゾ音源」がCD音源よりDAPやポタアンで追加の味付けをしなくても楽しめる「素材」なのかどうかは結構意識したいと感じるわけです。


■ハイレゾの量子化ビット数およびDSD形式の「音の密度」は今回は考えない

ハイレゾ音源はCDより高いサンプリング周波数とあわせて、通常「24ビット」などCD(16ビット)より高い量子化ビット数で提供されています。ビット数が高いほどより細かくデジタル化されていることを示し、より原音に近い精度になります。また、実際のレコーディング現場で最もよく使われるマスタ音源は「24bit/48kHz」と言われており、そういった意味でも24ビットの音源のほうがマスタに近いといえるでしょう。ただし実際には広いビット数で記録できる微弱な音や大音量を余すことなく再生するためには相応の再生環境(徹底的にノイズや騒音を排除し、かつかなりの大音量を音割れなしに出せる環境)が必要で、スピーカーはもちろんヘッドホン・イヤホンでも相当にハイエンドな装備が必要になります。
3730bd56またハイレゾPCMと全く異なる方式のフォーマットであるDSD形式も、SACDの内部フォーマットやDSDの配信音源で多く使われるDSD64(2.8MHz)は高周波ノイズをローパスフィルタでカットするため実際には可聴域外の音はカットされサンプリング周波数的にはCD音源に近い(ハイレゾではない)ものの、アナログ音源に匹敵するレベルの極めて高密度な録音がされています。例えばわたしはSuaraなどのアーティストの作品を手掛けるF.I.X.RECORDSのSACDやDSD音源をいくつか購入していますが、そのこだわりの音はいつも魅了されています。
ただし、この「音の密度」の違いをどの程度プレーヤー・アンプやイヤホン・ヘッドホンで再生できるか、そしてリスニングで感じることができるか、は全く別の概念であるため、ここでは触れないことにします。


■ハイレゾ化にあわせて旧音源の「実質リマスター版」になっている音源
これまでに結構な数のハイレゾ音源を購入しているのですが、実際にCD音源と比較してみると想定通りにわかりやすく高音質化している楽曲が驚くほど少ないことがわかりました。

ただ、私の場合80年代~90年代の古い楽曲のハイレゾ版を多く購入していることもあり、これらの曲の多くは「実質的にリマスター版になっている」ケースにあたるため、単純にダイナミックレンジでは比較できないことが多かった、というのもあります。
1980年代~90年代の「最後のアナログマスター」音源からのハイレゾ版の多く(一例をあげると、宇多田ヒカルの「シングルコレクション」やTM NETWORKの「CAROL」、レベッカの「REBECCA-revive-」など)は、ハイレゾ化にあたって徹底したリマスタリングを行っており、「ハイレゾ版」というより実質的な「リマスター版」といえる仕上がりになっています。
例えば、上記TM NETWORKの1988年のアルバム「CAROL」から「Gia Corm Fillippo Dia」という曲を1988年当時のCD版と2014年に作られたハイレゾ版(24bit/96kHz)で比較してみると、元が80年代のアルバムということもあり、ハイレゾのほうが音圧はむしろ高めで、さらに波形の違いから、単純にアナログマスターからハイレゾ化を行っただけでなく、曲全体でも相当に手を加えているだろうことが確認できます。
36 
このような音源の場合、ハイレゾかどうかというより、最新のリマスター版として好きなアーティストの作品であれば購入する価値はあると思います。ただ、裏を返せばリマスター化されたCD音源がすでに存在する場合、さらにそのハイレゾは・・・というのはちょっと疑問かもしれません。


■古い楽曲は2000年以降のベスト盤CDで音質傾向が激変している
特に、このように80年代以前の古い楽曲の場合、2000年以降に発売されたベスト盤などで既にマスタリングしなおしている可能性があり、わざわざハイレゾを買わなくてもレンタルCD店や中古CD店などで安価によりよい音源が入手できる可能性がある、というケースも存在します。
2000年頃以降のCDはより「音圧」を高めにマスタリングされるようになり、波形をとると音圧が非常に高い「真っ青」な波形がでてくることが増えてきます。この頃「ラウドネス戦争」と呼ばれた、当時の新譜でどんどん音圧を上げていきそれが競争のようになった時期がありました(それを批判的に捉え「戦争」と呼んだそうです)。音圧が高く録音されていること自体は現在では当たり前になってしまっているので仕方ないのですが、この時代に作られたベスト版などのアルバムでは真面目にダイナミックレンジの向上にも取り組んだ作品も少なくはありません。

例えば、e-onkyo、mora双方でハイレゾが販売されているマイケル・ジャクソンの1980年代の代表曲を数多く集めたベスト盤「The Essential Michael Jackson」は、2005年のCD発売時点で80年代のCDより確実に高音質化しており、同じアルバム同士ではハイレゾ音源との差異は非常に少なくなっています。

また、上記のように2000年以降に「新しいCD音源」で単純に音圧をあげることでメリハリをつけるような修正が行われたケースもあります。実はこの頃の音がほぼそのままハイレゾ版になっているケースもあります。1984年に上映された劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」のサントラ盤のCD音源が満足のいく音質ではなかったため、飯島真理の主題歌「愛・おぼえていますか」と挿入歌「天使の絵の具」のハイレゾ音源を購入したのですが、実はこれが2002年のベスト盤「マクロス ソング・コレクション 2002」に収録のCD音源と中身的にほぼ同じ内容だった、ということがありました。
 
オリジナルのサントラもベスト盤もすでに廃盤になっているため、ハイレゾがこのような内容でも新規で購入可能な最高の音源、という意味で嘘はないかもしれません。しかし個人的には無理してハイレゾを買う必要はない、というわかりやすい事例として大変教訓になりました。


■ハイレゾ化時の「脚色」が良いとは限らない
また別のケースでは、ハイレゾ化する際に、購入者が「CD音源とは違う音」と感じるように意図的に味付けを変えているのでは、というパターンもあると思っています。例えば、絢香の休養前のワーナー時代の曲を集めた「ayaka's History 2006-2009」に収録された「三日月」を比較した場合、手持ちのCD音源と同アルバムのハイレゾ音源(24bit/96kHz)では、ハイレゾ音源のほうが全体的に中域を持ち上げ音圧を上げており、そのためコントラスト差はCDが-13.04dbなのに対し、ハイレゾ音源は-11.77dbとむしろハイレゾ音源のほうがダイナミックレンジは圧縮されています。つまり典型的な音圧アップのパターンです(正直あまり好きな音ではありませんでした)。
39 
絢香は復帰・独立後、自主レーベルで各種配信サービスでのリリースにも力を入れていますが、こちらのハイレゾ音源はすべて24bit/48kHzになっており、よりレコーディング時のマスタに近い音源であろうと思われます。個人的に絢香の独立後の楽曲の配信音源は非常にクオリティが高いと感じており、いくつかの曲はイヤホンのリスニングテスト用のプレイリストにも入れて活用しています。これら独立後の楽曲にワーナー時代の曲も含めて収録された新しいベストアルバム「THIS IS ME~絢香 10th anniversary BEST~」のほうに収録された「三日月」(24bit/48kHz)を見ると、CD音源に非常に近い波形で、コントラスト差も-13.4dbとわずかですがCD音源よりダイナミックレンジが高い内容になっています。おそらくこの音源が最もオリジナルマスターに近い音なのではないか、と感じます。
56 


■わずかだが、ハイレゾがCDより純粋に「高音質かつマスターに近い」と思われる音源
そんななか、手持ちの音源で「レコーディング音源がハイレゾ」でCDに比べすべての項目でハイレゾのほうが(マスタに近い)高音質ではないかと思われたアーティストのひとつが「fripSide」でした。
   
アルバム「infinite synthesis 3」に収録された「Luminze」について同じアルバムのCD版とハイレゾ版で比較してみると、他のアニソン同様に非常に高い音圧の「真っ青」な波形なのはどちらも同じですが、中央の色の薄い部分(波形の下の部分)がハイレゾのほうが少し細いのがわかります。さらに曲全体から時間を絞って拡大していくと、波形の違いはよりはっきりと認識できました。
49スクリーンショット-2017-04-
※波形データは曲全体のものを貼っています。真っ青でこの大きさではわかりにくいのでクリックして拡大してください。

実際ゲインのコントラストを比較するとハイレゾのほうがきちんと大きくなっており(CDが-10.47dbに対しハイレゾは-11.12db)、わずかですがダイナミックレンジが高いことがわかります。この違いを聞き分けるためには、レンジの広いマルチBAドライバのイヤホンが真価を発揮しそうです。

また「Luminze」という曲はシングルカットでもハイレゾ版が配信されていますが、他のアルバム曲とのゲイン調整が不要なシングル版のほうが音圧は低めで、音量のコントラストも-11.21dbとさらに高いダイナミックレンジで収録されていました。
なお、fripSideについては過去のアルバム「infinite synthesis 2」も同様の傾向で、すべてのハイレゾでダイナミックレンジだけでなく、サンプリング周波数などあらゆる部分でマスターにより近い音源となっていると思われます。


■ところで、ランティスのハイレゾは「アリ」なのか

いっぽうアニソンといえば、数多くのアニソンアーティストを抱えるレーベルであるランティスが代表的で、同時にハイレゾの配信にも極めて積極的なレコード会社であることも知られています。ただ、同社のハイレゾのアルバムは6,000円台など他のレーベルのハイレゾより高額が作品が多いのもまた特徴(?)。さらに音質面についての(主にネガティブな)指摘も掲示板やSNSで良く見受けられます。

ランティスの中でもオーディオ的に特にこだわっていそうなアーティストのひとつ「fhána」のアルバム「What a Wonderful World Line」から「虹を編めたら」を同じアルバムのCD音源とハイレゾで見てみると、ほかのランティス作品同様に限界まで音圧を上げた、ピーク近くを埋め尽くす波形が確認できます。
51 
ただ、同様に「真っ青」だったfripSideと異なり、波形の形状もダイナミックレンジもCDとハイレゾではそれほど大きな違いはありません。実際サンプリング周波数も含め中身的にはCDとさほど変化はありません。この程度の違いでハイレゾのアルバム価格が6000円台、と思うとちょっと首をかしげずにはいられません。


■「Mastered for iTunes」という優れたマスタリング配信音源(ただしAAC)
54ところで、fhánaの曲はAppleのiTunes Music Store(iTMS)では「Mastered for iTunes」の曲としてAACで配信されています。「Mastered for iTunes」とは、より高音質(要するにハイレゾ)のマスター音源からiTunesに最適な音質になるようにAppleがマスタリングをして配信している音源のこと。iTMSの中でも「Mastered for iTunes」対象楽曲は限られていますが、他の曲同様にiTMSで購入するほか、「iTunes Match」を契約していれば、iTunesにCDなどからインポートした音源を自動的にAppleがマッチングしiCloudミュージックライブラリへ登録することで正規に利用できるようになります。

私は「iTunes Match」経由で「Mastered for iTunes」版の楽曲を入手。こちらとさきほどのハイレゾ音源を比べると、「Mastered for iTunes」版AACのほうがピークの音圧は低く、その分ダイナミックレンジはハイレゾ音源より高い、という結果になりました。つまり量子化ビット数やサンプリングレートなどのハイレゾ要素を度外視すれば、「Mastered for iTunes」版AACがハイレゾを超え、最も良い音に聞こえる可能性が高い、ということを意味します。
53

ちなみに、この「虹を編めたら」という曲はシングルとアルバムとで音圧の差が大きくダイナミックレンジも含めて同じハイレゾ版ならシングルの音源のほうが圧倒的に高音質です。しかし、こちらも同様にシングルの「Mastered for iTunes」版AACのほうがさらにシングル版ハイレゾを上回る音質になりました。
58 
以前から「Mastered for iTunes」の音質の良さは認識していて、「iTunes Match」でマッチングして入手した曲データを普段使っているDAP「Astell&Kern AK300」に転送して聴いていたりしていたのですが、その実力を改めて確認した結果となりました。


■感想。正直なところ、もうちょっとだけがんばって欲しい。
今回の記事を書いたきっかけは、私が普段使っているイヤホン(Shure SE535LTDなど)やスピーカー(DALI ZENSOR1など)の多くは周波数の上が20kHz程度と可聴域内の製品がメインの中で、確実に聴き分けられる「ダイナミックレンジ」でハイレゾ音源の優位性を確認しようというものでした。
また趣味とはいえオーディオにあれこれお金を使っている以上、そこで聴く音源という「素材」は上記の料理の例えで言えば「良い食材、おいしい食材なら多少高くても買いたい」と思います。
ただ、実際に購入した音源を聴いていると、レコーディングマスター自体がDSDやハイレゾ化しているなかで、ちゃんとしたクオリティの音源を販売しているアーティストもいるいっぽうで、実はCDとほぼ変わらない音源も少なくはないと感じます。多くの場面ではCDレベルでマスタリングの品質は格段に向上しており、「ダイナミックレンジ」のようなわかりやすい指標ではハイレゾとCDとの差はほとんどないことは仕方ないのかもしれません。としてもハイレゾをCD音源より高額で販売する以上、相応のエビデンスは欲しいものだと思いますし、アーティストによってはダイナミックレンジだけをとらえれば「Mastered for iTunes」版AACでの圧縮音源での配信が最も優れているケースがあったりすると、いよいよもってハイレゾの意義を問いたくなってきます。より購入者が満足できる商品をレコード会社も販売してくれたら嬉しいなと思う次第です。

 
プロフィール(Twitterアカウント)
Apple好きのおっさん。普段はIT系のお仕事。自宅は福井県ですが都内で単身赴任中。ポタオデは趣味で出張のお供。AK300/Mojo/X5III/SE535LTD/AKG好き/中華イヤホンも。美音系/モニター系の音が好み。食べるのも好き。カフェで息抜きにブログ書いてます。自宅ホームシアターも改良したいな。
※連絡などは bisonicr.keep.walking@gmail.com またはTwitterのDMまで。
 
livedoor プロフィール

楽天市場