image


■携帯用プレーヤーに求めるもの


これまで、携行用の音楽プレーヤーには、iPod Touch (5th) + Astell&Kern AK10の組み合わせを使用しておりました。これはこれでなかなかコンパクトでよいのですが、ハイレゾ音源が少しずつ増えて、CDのFLACでの再エンコードも進んでくると、いまひとつ使い勝手の良くないHF Player(iOS用のオンキヨーのハイレゾFLACやUSB-DAC対応の音楽プレーヤー)では不満を感じるようになってきます。またバッテリも持ちも不安です。
そうなるといよいよハイレゾプレーヤーへ、となるわけで、できれば「Astell&Kern AK120II」や「SONY Walkman NW-ZX2」へ行きたくなるのですが、フトコロがなかなか許してくれません。
「これはNW-ZX1の中古狙いかなー」などと思いながら、いつものように店頭でいろいろ試聴していると、コンパクトなハイレゾ対応Walkman、NW-Aシリーズの音が思ったより悪くない、ということに気づきました。


SONY NW-A16/NW-A17ってすごいコスパじゃない?

SONY Walkman NW-Aシリーズ(NW-A16NW-A17)は、NW-ZXシリーズ(ZX1/ZX2)にあったオーディオ的な「こだわり」は普及機並みなものの、スペック的にはこのクラスとも遜色ありません。特に同じソニーのハイレゾ対応でもXperia Zシリーズのスマホやタブレットと異なり、NW-Aシリーズは上位機種同様に高性能デジタルアンプ「S-Master HX」を搭載しています。S-Master HXは従来機種のF880シリーズでも搭載されていましたが、当時はコンデンサまわりの違いでZX1とは音質的に相当な差があったようです(参照:ASCII.jpのZX1の紹介記事)。
imageいっぽう、NW-A10シリーズはさらに新たな薄型コンデンサの採用でZX1のレベルに近づいているとか。むしろOSがAndroidではない分、安定性的な部分やバッテリ性能的にもかなり有利な気がします。CD音源やMP3やAACなどの圧縮音源をハイレゾ相当にアップサンプリングする「DSEE HX」機能も、これらAndroid OSのWalkmanやXperiaでは「オンにするとバッテリの持ちが半分になる」と言われます。しかしNW-A10シリーズでは「DSEE HX」常時オンでもまったくバッテリが減らない! ちょっと感動です。
そしてこのコンパクトさ。
 とりあえずDSDはAudioGateでハイレゾFLACに変換して取り込めば問題なし。イヤホンは遮音性に優れたShure SEシリーズを使用。コスパ抜群のSE215SPEなら相性バッチリです。
また再生環境なりに鳴らすShure SE535LTDを直刺しでも元気なサウンドでハイレゾを楽しめます。(ただし、SE535LTD直刺しだと、静かな部屋でホワイトノイズが聞こえる)

というわけで、この抜群のコスパに圧倒され、結局ほぼ勢いでNW-A17(内蔵64GB)を購入。さらに64GBのmicroSDを挿入し使用。現在に至っております。
ケースは挿入型のエコレザーケースをチョイス。そこそこ高級感もあり、ケースに入れたままでも再生・停止や送りができる優れものです。


■コンパクトでもちゃんとしてる。さまざまなリスニング環境に対応できる万能プレーヤー

NW-A17の使用感ですが、同価格帯のオーディオプレーヤーにはない多機能っぷりはさすがWalkman。
それでもキワモノ感はすくなく、小さいわりにけっこうちゃんとしてるな、というのが印象です。
NW-Aシリーズはフラットな音質ながら、購入者層を意識してかZXシリーズに比べじっくり聞かせるというより元気で楽しく、というイメージがぴったりのサウンドを奏でます。どんどん屋外に出て、アクティブに使うことに特化したプレーヤーといえます。

image私の場合、普段はShureのSE535LTDを直挿しで屋外で利用。SE535以上のモデルになるとIEM並に反応が敏感なのでどうしてもホワイトノイズを拾ってしまうものの、SE535LTDの高い解像度と原音忠実性にもちゃんと応えてくれます。
個人的にはSE535LTDの音に慣れてしまっているのでこの組み合わせを使っていますが、直挿しの場合、相性的には手持ちのイヤホンでは「SE215SPE(Special Edition)」のダイナミックドライバーのほうが相性は良いと思います。
 
どちらのイヤホンでも、Shure SEシリーズの高い遮音性も相まってどんな場所でもどっぷり音楽に浸ることができます。 

 ちなみに、付属のイヤホンはハイレゾ未対応だがノイズキャンセリング機能には対応というもの。ただどのみちハイレゾを考えるならノイズキャンセルなどの「加工」は意味がないのであっさり無視。また私の場合、月に数回のペースで東京~福井間を新幹線・特急を乗り継いで往復していますが、電車内での長時間利用でもSE535LTDやSE215SPEのような遮音性に優れたイヤホンを使用するほうがソニーのイヤホンでノイズキャンセリングをONにするよりよほど効果があることも確認済みです。

BluetoothについてもaptXに加え、ハイレゾ対応の転送方式(LDAC)に対応するなどさすがソニー。私が持っている「JBL Synchros E40」というBluetoothヘッドフォンは既存方式にしか対応していませんが、それでも普通にいい音で使えました。またカーオーディオ用のBluetoothアダプタ(私はaptX対応のロジテック「LBT-MPCR01BK」を使用)でのワイヤレス再生ももちろんOK。再生・停止のBluetooth側制御も問題ありません。

このように、コンパクト性については申し分ないですし、イヤホンを替えてもちゃんと鳴ってくれる。ヘッドホンや据え置きで楽しみたい場合はポタアンやUSB-DACを経由させることもできる。もちろんBluetoothでも高音質で対応。なかなかコスパ抜群のプレーヤーだと思います。 


■ポタアン併用で上位機種並のポテンシャルを発揮 

(追記)なお、IEM並に反応の良いSE535LTDクラスのイヤホンの実力をがっつり活用したい場合は、FiioのWalkman用ケーブルで「Fiio E12A」をポタアンとして組み合わせる構成が断然オススメ。
この組み合わせの場合、S-Master HXのデジタルアンプがしっかり効いてとても気持ちよいサウンドが堪能できます。
image
実際、NW-A17が直挿しとはまた違ったキャラクターを見せ、SE535LTDクラスのイヤホンでも十分渡り合える、 上位機種並みの実力を感じさせてくれます。
「Walkmanはノイズが・・・」という記事もよく見かけますが、上記の通りDAC部分の性能はNW-Aシリーズでも決して悪くはありません。結果、IEMに最適化したFiiO E12Aとの組み合わせならホワイトノイズもなくなり、別次元の音質になります。

価格帯やサイズを考えればヘッドホンアンプ部をある程度割り切るのは仕方ないことかもしれません。しかし、Walkman用ケーブルによるLINE出力+E12Aの構成の場合、NW-Aシリーズの本来の実力を改めて確認できるのではないかと思います。



NW-A17-2いっぽう、自分の部屋でヘッドホンで聴く場合は、FiiOのポタアンでもヘッドホン用の「Fiio E12」を据え置きのヘッドホンアンプとして利用。IEMに特化したE12Aと比較し、より高いインピーダンスに対応し、反応の低いヘッドホンでもクラス以上の実力を発揮します。
手持ちのヘッドホンだとゼンハイザー HD595AKG K550は比較的反応がいいためNW-A17直刺しでも結構鳴ってくれますが、E12を経由させたときの音の広がりは絶大。またモニター用のAKG K240 Studio、さらにAKG K240 Monitorという特に単独では非常に鳴りづらい(600Ω/88dB)古いヘッドホンでも、NW-A17とE12の組み合わせの相性がいちばん良く、ハイレゾの機微を堪能したいときに使っています。


いっぽう、NW-A10シリーズ用のUSB-DAC接続ケーブル(WMC-NWH10)でソニー純正のPHA2PHA3をはじめ、多くのメーカーのUSB-DACも接続可能ですが、せっかくのS-Master HXをバイパスしてUSB-DACに渡してしまうのはちょっと勿体ないと思うわけです。
imageと、いいつつ時々は手持ちのUSB DACをいろいろつないだりしますが。ちなみにUSB-DAC接続の場合はAndroid用の接続に対応しているケーブル(いわゆるOTG)を使用するとソニー製以外でも認識してくれるようでです。

※追記:
CHORD 「Mojo」をDACとして使用しWalkmanと連携させる構成を新しい記事で紹介しました。

→  「FiiO L19」ほか、“Mojoと愉快な仲間たち(接続デバイス)”まとめ


■Media Go転送よりMUSICフォルダコピーが基本。

無題音楽データの管理および転送ですが、
本体メモリにFLACのデータをコピーし、64GBのmicroSDにはiTunesで管理しているAACなど圧縮音源を入れています(iTunesのミュージックライブラリはiTunes/iTunes Media以下にある)。
方法としては本体、microSDとも、どちらも同様にMUSICフォルダがあるので、音楽データを適当にコピーしています。
接続はNW-A17本体はUSBケーブル、PCのmicroSDはカードリーダーを使用します。


ちなみに、利用当初はソニーのマニュアルどおりFLACはMedia Goで管理・転送をおこない、iTunesからの音源はプレイリストも書き出していました。しかし現在は、上記のようにまず音楽データをPCやMacからWalkman本体およびmicroSDへコピーし、そのあとfoorbar2000でプレイリストを作成、という順番で作成を行っています。

ソニー純正の「MediaGo」は、Windows環境でのプレーヤーとしてはフリーウェアの「foobar2000」より相当に落ちますが、Walkmanへの転送アプリ、と割り切って使えばそれほど悪くありません。またCDをFLAC化する際にもMedia Goはわかりやすいソフトです。FLACなどの音楽データの格納先をMedia Goとfoobar2000で同じフォルダを参照させることで、用途に応じて同じデータで使い分ける方法も簡単にできます。

 ただ、私の場合、FLACはWindows側ではfoobar2000を使用していますが、もともとメインのFLAC再生環境はMacのAudirvana Plusのため、いったんMac側で曲データを管理し、タグ編集したライブラリをオリジナルにしてWindows側(foorbar2000の参照フォルダ)へもコピーして共用しています。

つまりCDを取り込む場合は、
① Media GoでCD音源をFLAC化 →
② ネットワーク経由でMacに移動。Audirvana Plus 2.0のライブラリ登録、タグ編集 →
③ Winodws(foobar2000用)にも再コピー、ライブラリ登録 → 
④ Walkman(USB接続で本体、カードリーダーでmicroSDをそれぞれ)のMUSICフォルダへ
    音楽データをコピー →
⑤ WindowsにWalkmanを接続し、foobar2000でプレイリスト作成しWalkmanへ保存。

という感じでしょうか。ちょっと面倒くさいですね。ふつうはMediaGo、foobar2000、Audirvana Plus(Macの場合)のどれかひとつとiTunesあたりだと思うので、②③は要らないですよね(笑)。
ただWindows/Macの音楽データにはDSDも含まれるのですが、この環境では唯一、Audirvana 2.0がDSDのタグ編集に対応していることもあり、メインの再生環境であるMacで作成したライブラリを親にしています。ただNW-A17/NW-A16はDSDの再生には対応していないため、KORGのAudioGateを使ってDSDをFLACに変換した曲データもWalkman転送用にこれらのライブラリで管理をしています。


■タグの細かい編集で使いやすく。

タグ編集についてですが、多くの曲データを入れる場合、ここで「手を抜かない」のはミュージックプレーヤーを使いやすくするコツだと思います。
私の環境では、まずiTunesのミュージックライブラリが先に存在し、曲数も多くありますから、とりあえずはiTunesでもともと使っているタグを基準とし、foorbar2000やAudirvana Plusで管理しているFLAC/ALACのタグを区別できるように編集しています。
 
具体的には、Walkmanで聴くとき、「アーティスト」で絞り込んだときは本体側のFLAC、microSD側のAACなどが混在しても良いのですが、やはり現在どのフォーマットのデータを聴いているかをわかりやすくしておきたいもの。
実際、同じタイトルのアルバムでもハイレゾ音源はより広い音域、微細な音を再生させるため、CD音源より音圧が低めでマスタリングされています。そのためCD音源とハイレゾを続けて聴くとハイレゾの方がボリュームが小さく聞こえます。ですからなおさら音源ごとにまとめて聴きたいと思うわけです。

tagそこで、私の場合、foorbar2000やAudirvana Plus側のデータ(FLAC/ALAC)についてはWalkmanやiTunesでは「ジャンル」に相当する「Genre」タグを活用し整理をしています。

たとえば「J-Pop」のジャンルの場合、
iTunes(AAC)の曲データで「J-Pop」タグをつけていたとすると、foorbar2000/Audirvana Plus側の
FLACの場合は「FL/J-Pop」、
ALAC(アップル・ロスレス形式)は「AL/J-Pop」、
さらにハイレゾのFLACは「HR/J-Pop」のように
頭にフォーマットの識別を入れて整理します。

これにより、Walkman側で「ジャンル」の抽出であらかじめフォーマットを理解できるので(特にハイレゾを集中的に聴きたいときなどに)便利です。もちろん「ジャンル」(Genreタグ)はすべての曲データに対し、自分が使いやすいようにルールを決めてあらあじめ細かく編集することが効果的です。 

あと、Walkman用にということでは、2枚組のアルバムなどの場合、同じアルバム名でディスク番号で整理していると、Walkmanはディスク番号タグをちゃんと読んでくれないためきちんとした順番で再生してくれません。そのためあらかじめ「アルバム名 [Disc-1]」などのようにディスクごとにアルバム名を分けておく工夫が必要です。


■foobar2000でかんたんプレイリスト作成。

プレイリストは、本体メモリ用、microSD用にそれぞれ作成しなければならないルールがありますが、どちらもWindowsのfoobar2000を使って作成しています。
image
曲データをコピーしたWalkman(またはmicroSD)をUSB接続し、
foorbar2000側で新規プレイリストを作成、MUSICフォルダ内のフォルダを空白のプレイリストに適当にトラッグ&ドロップすると、フォルダ構造をfoorbar2000が勝手に解釈して曲データの一覧を作ってくれます。

あとは適当に順番を変えたり、曲をプレイリストから追加・削除すればできあがり。これを同じWalkmanのMUSICフォルダ(本体の曲の場合は本体のMUSICフォルダ、microSDの場合はmicroSDのMUSICフォルダ)に保存すればちゃんと相対パスでプレイリストを保存してくれます。

また、あらかじめMUSICフォルダに保存したプレイリストを読み込み、修正や追加削除ももちろん問題ありません。
もしMac環境しか持っていない場合でWalkmanを利用する場合、このプレイリスト編集のためだけにVMやBootCampでWindows環境にfoorbar2000を入れる価値があると思います。


■なによりコンパクトで「気軽」にハイレゾを楽しめるプレーヤー。

というわけで、iPod touch時代からはだいぶ運用方法が変わってきましたし、プレイリストなどは最終的にほかのメーカーのポータブルオーディオプレーヤー同様にfoobar2000頼みになりました。しかし、なによりハイレゾを単体でも「そこそこ」鳴らしてくれる性能(褒め言葉)と、脅威のバッテリ性能、そしてiPod nano並のコンパクトさは他には代えがたいものです。
どこへでも持って行き、いつでもすぐに聴ける。この「気軽」さ。電源オフからの起動や、曲データ変更後のライブラリ再構築の遅さはちょっと気になりますが、利便性の上では特に問題はありません。

ポータブル特化としてのリスニング環境を考えた際、NW-A17はしばらくは私にとっての回答になってくれそうです。