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■低コスト高機能NAS「ASUSTOR」+USB-DACで高性能ミュージックサーバへ
ASUS系列のNASメーカー「ASUSTOR」のNASキットは、比較的低価格で非常に高機能な点が特徴です。当初はファームウェアの不安定さなども目立ったようですが、現在のバージョンでは安定して利用が可能です。
私も先日同社のIntel CPU搭載モデル「AS3102T」を購入し、特にメディア機能に関してレビューをしました。
高機能・低価格NAS「ASUSTOR AS3102T」のメディア機能を確認する

hrplayer1前回の記事の中でも紹介していた、オーディオ関係の機能(追加アプリ)が「Hi-Res Player」で、同社のウリのひとつにもなっています。しかも後述しますが、実はWindows、Mac、iOS、Androidと様々なプラットフォームの外部クライアントを利用可能な、最強のミュージックサーバでもあります。
「Hi-Res Player」はASUSTORに接続したUSB-DACなどを経由して、自身のライブラリの音楽データを再生するミュージックサーバ環境。ハイレゾPCM(FLAC、ALAC、WAV)やDSDデータにも対応し、接続するUSB-DACの性能により、DSD256(11.2MHz DSD形式)を含む高音質のネイティブ再生が可能、とあります。
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Linux系のカスタムOS(ADM)を搭載するASUTORは、Macと同様にドライバ無しでUSB Audio Class 2.0対応のUSB-DACを接続、認識させることが出来ます。KORGなど主にDSD性能を上げるため専用ドライバを必要とする製品以外は現在市販されている大抵のUSB-DACは接続できるイメージです。(Macでドライバなしで対応、ならばASUSTORでもそのまま使用できると思ってよい)



■「Hi-Res Player」の初期設定

「Hi-Res Player」を利用可能なのは、現在はIntel CPUを搭載したASUSTOR製NAS。初期セットアップ後、「AppCentral」から「Hi-Res Player」インストールします。インストール後、Hi-Res Playerのアイコンをクリックすると、別タブでインターフェースが表示されます。以降このURLをブックマークして利用します。
画面左上のライブラリボタンを押し、ライブラリ登録するフォルダを選択します。
このフォルダに、音楽データをコピーします。私はMacでAudirvana Plusで使用しているハイレゾFLACやDSDなどの音楽データを音楽フォルダごとそのままコピーしました。
音楽ライブラリはあらかじめタグ情報などを整理し、フォルダ分けで分類してコピーすることをお勧めします。

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次に、画面右上の設定アイコンをクリックします。「今すぐミュージックコレクションをアップデート」でライブラリを更新します。以降、起動ごとに更新をするようにチェックしておきます。
さらに、設定項目をスクロールすると、オーディオ出力が選択できるので、ここで接続したUSB-DACを選択し、それ以外の項目をオフにします。またDSD対応のUSB-DACの場合、「DoP (DSD over PCM)」項目も同様にUSB-DACのみを選択し、他の項目をオフにします。


■「Hi-Res Player」の実体は「MPD(Music Player Daemon)」
ところで、ASUSTORサイトのHi-Res Playerのサイトを確認すると、デベロッパーのWebサイトは「MPD(Music Player Daemon)」のサイトになっています。つまり「Hi-Res Player」の正体は「MPDそのもの」なのです。
これは、「Hi-Res Player」のインターフェースに留まらず、豊富に存在する「MPDクライアント」がそのまま利用できることを意味します。実際、各プラットフォームのクライアント環境ですべて問題なく利用できました。


■定番MPDクライアント「GMPC(Gnome Music Player Client)」

MPDクライアントといえば、というくらいの定番ソフトがGPMC(Gnome Music Player Client)です。トップページの「Download GMPC」をクリックし、最新バージョンのgmpc-バージョン-win32.exeファイルをダウンロード、インストールします。
「Hi-Res Player」のライブラリへ接続する設定は、「Music」メニューの「Preference」を開き、「Connection」でASUSTORの名称、IPアドレスを設定し「Connect」ボタンを押します。基本はこれだけ。あらかじめ「Hi-Res Player」でライブラリ登録やUSB-DACの設定が済んでいればそのまま使用できます。
また、Preferenceの他のメニューでメニュー表示などをカスタマイズが可能です。詳細の使用方法は「MPD GMPC」などで検索してみてください。

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■Mac環境にも最適。マルチプラットフォーム対応の「Cantata」
Catana」はWindows版に加えて、Mac版のパッケージもダウンロードできますので便利です。機能的にはGMPCと同様ですが、インターフェースはこちらのほうが直感的でしょうか。
「Hi-Res Player」ライブラリへの接続は、インストール後のウイザードではローカルのサーバを参照しようとしますが気にせず完了し、起動後に「Preference」でASUSTORの名称とIPアドレスを登録します。「Music folder」項目は空白にしてApplyすれば接続できます。またPreferenceの「Interface」項目の「Sidebar」の項目はすべてチェックを入れておいた方が使いやすいでしょう。その他各種設定はデフォルトのままでOKです。

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■iOS用のMPD再生環境「MPoD」(iPhone用)と「MPaD」(iPad用)
iOS用の再生環境はiPhone用の「MPoD」(無償)とiPad用の「MPaD」(360円)があります。
機能的にはほぼ同様ですが、画面が大きいMPaDはやはり使いやすいですね。MPadは有償アプリだけのことはあり、アーティスト別、アルバム別、フォルダアクセスからの絞り込みなどの操作性もよく、反応速度も含め、使い勝手のとても良いアプリケーションです。

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■選択肢の豊富なAndroid用クライアント
Android用はGoogle Playで「MPD」で検索するとフリー、有償併せて数種類が選択できます。なかにはAndroid版のMPDサーバもあるので注意ください。
いくつかのクライアントのなかで、使いやすかったのは「MPDroid」。タブレット向けの横向きでの利用でも使いやすく便利です。また「MPD Control」もタブレット向けデザインで、かつフォルダからのアクセスに特化してメニューがシンプルになっており使いやすさは秀逸です。
どちらもフリーで使用できるのもうれしいですね。
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■ライブラリ管理でカバーアートを個別に設定
ちなみに、MPDではカバーアートは曲データのカバーアートとは別に管理しており、通常は自動で取得して表示してくれます。しかし例えばe-onkyoのハイレゾ音源のように「アルバム名(24bit/96kHz)」といったようにアルバム名に別の文字が加わっている場合、検索がうまくいかず自動ではカバーアートを張ってくれません。
00カバーアートを手動で張る方法はいくつかありますが、「Hi-Res player」の場合は、左上のカバーアートのアイコンをクリックすることで編集画面にアクセスできます。
ここでカバーアートの再取得を行うことができます。さらに「カバーなしのみ表示アルバム」を押してカバーアートを取得できていないアルバムを絞り込み、アルバムを選択するとGoogleなどからカバーアートを検索し候補として表示します。またファイルからのアップロードも可能です。
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■そもそもMPDってなに? 本格的なHDDオーディオプレーヤー環境をお手軽に。
話が前後しますが、MPD(Music Player Daemon)は、Linux環境で構築するミュージックサーバ環境で、その歴史は古く、Linuxの自作サーバユーザーの間ではお馴染み。そのため非常に安定した環境である上、DSD対応など高性能化が進んでおり、またクライアントソフトウェアも豊富に存在します。

QNAP等と比較し後発のNASメーカーであるASUSTORがIntel CPU搭載モデルでMPDをそのまま採用する、というのは極めて現実的な選択であったといえるでしょう。そして、「Hi-Res Player」のインターフェースは、Firefox拡張機能として提供されているMPDクライアント環境「Music Player Minion」をサーバアプリとしてカスタム実装したものと思われます。

qnapちなみに、MPDサーバといえば基本はLinux環境ありきで、自分で導入・構築を行っていくツールといえます。NASでもLinux的な使い方が可能なQNAP製品の場合は「Optware IPKG」(CentOSなどでいうapt-getのようなパッケージインストーラ)でmpdをセットアップすることが可能です。インストールまではGUIでも可能ですがconfigの記述などはSSHでコンソールにログインしての作業が必要でやはりLinuxベースの作業が必要です(ちなみにQNAPの場合はUSB-DACの接続ポートや音楽データを保存する共有フォルダのフルパスをあらかじめ確認のうえ、/opt/etc/mpd.confを設定する)。
※QNAPでのMPD設定


しかしASUSTORでは、ただNASをセットアップして「AppCentral」から「Hi-Res Player」をインストールするだけ。しかももともとNASですから、音楽データの格納場所は自身の共有フォルダを使えばOK。
Linuxの知識も設定もゼロで、クライアントも豊富で安定したMPDのサーバ環境がカンタンに構築できるというのは、これまで「ありそうでなかった」ことです。
ASUSTORサイト内でMPDサーバとして公表しているわけではないものの、「Hi-Res Player」のデベロッパーとしてMPDのコミュニティがレジストされており、実際「MPDそのもの」がインストールされているわけで、ASUSTORユーザなら誰でも手軽にMPDを導入・利用できる、という点で結構画期的だと思います。

さらに、より高性能のUSB-DACやオーディオを接続し、より本格的な「HDDオーディオプレーヤー」としてさらなる高音質化を目指すのも楽しそうです。ASUSTORでお手軽にハイレゾ・DSD対応の高音質ミュージックサーバを導入してみてはいかがでしょうか。