image

Amazon.co.jpで1万円くらいで売ってるやつです。USB-DACです。
→「Nobsound® Douk Audio Hi-Res 384K/32bit XMOS USB DSD1796 DAC

※追記:現在Amazon.co.jpでは販売されていませんが、「AliExpress」のショップにて現在も中国より直接購入することが可能です。
AliExpress / Douk Audio Store 商品ページ


「XMOS U8」チップと「DSD1796」DACチップを採用し、
PCM 32bit/384kHz、DSD128(5.6MHz)まで対応、S/N比112dB、歪み0.001%」と、
スペック上はなかなかの性能で、例えばAmazonで「DSD対応 USB DAC」などで検索すると群を抜いた安さで目を引く商品です。ただ、それ故に「本当かな」とパチもの感もハンパない、とっても危険なニオイの漂うアイテムでもあります。

Amazonのレビューを見ると、なんかWindows用のドライバに問題があるとか書かれており、念のため商品についてネットでいろいろ検索してみると、外観は同じだが基盤が全く違うものが何種類か海外で販売されていたり(Amazonでは見つからなかったが直輸入もののサイトでも何種類か発見)、なかなかの怪しさです。
AmazonではNobsoundの製品で「Douk Audio」ブランドの商品とのこと。「Douk Audio」で調べるとUS、UKなど各国のAmazonやEbayでも同一商品を販売しており、そちらでもそこそこの評価があるようです。だいたい海外でも88USDくらいですからレート的にAmazonプライム対象で1万円ほどというのは悪くありません。

ちなみにNobsoundというと中華な真空管アンプが多いようで、比較的評価の高い小型の真空管プリアンプがあるいっぽう、「真空管は飾りでただのデジタルアンプ」 というプリメインがあったりと、結構微妙です。ちなみに、 Amazon.co.jpで販売している業者も「Nobsound=真空管アンプ」と思っているらしく(笑)、別に真空管ではないUSB-DACにもかかわらず、「真空管アンプ」と商品名に書かれてたりするあたりも残念です。
まあこれくらい怪しさを全面に出している方が知らずに買っちゃうリスクを回避させるためにはちょうど良いかもしれません。こーゆーものは覚悟の上で間違う(笑)商品ですからね。 


■というわけで間違って買ってみた。
プライムの在庫あり商品ですので、都内ですと朝注文するとその日のうちに届きます。
こーゆーものはAmazonでも何週間か待たされて直接海外から送られてくるパターンに慣れていて、つい先日も別の商品で1ヶ月待たされて税関で行方不明とやらで一方的にキャンセルされたばかりなので、逆にちょっと微妙です(本当はむしろ安心で非常に良いことですけどね)。
imageimage

でもAmazonの箱を開けてひと安心。安定の怪しさです。
この雑な箱を開くと梱包材でぐるぐる巻きになった商品がでてきました。個人的にはセルフパワー用のACの端子と給電の切り替えスイッチが付いているのは評価高いです。この手の基盤で電源を別にとってノイズ的なことに効果があるかどうかわかりませんが、同じマシンで複数のUSB DACを使い分けるので、バスパワー接続でこのスイッチを装置のON/OFF代わりに使えるは有り難いところです。なお、怪しいといえば、こちらの製品にはいわゆる「型番」がないため、この記事では「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」と呼びます。


■スペックについて。性能は「なんちゃってnano iDSD」?
ところで、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」のスペックについてですが、サイトによると「XMOS U8」と「DSD1796」を使っているとあります。XMOSのUSB Audio Class 2.0のリファレンスデザインチップは高性能なUSB-DACやより高級なオーディオ製品でも多く採用されており、「32bit/384kHz、DSD対応」の性能もこのXMOSチップによるところです。いっぽうTi(バーブラウン)の「DSD1796」は同社の「PCM1792A」や「PCM1795」などと同じ流れを組むDACチップですが、ネットで見る限りちょっと以前のヤマハのAVアンプやさらに以前のSACDプレーヤーあたりで採用されいたようです。昔ちょっと高級な商品にも使われた性能でチップ価格も安い、この辺に価格的なカラクリの一端が見えます。
image
ちなみに、XMOSで受けて内部でバーブラウン製DACに渡す仕組みでこのサイズ・性能、というと、ちょうどiFIの「nano iDSD」が非常によく似た構造です。nano iDSDはバーブラウン製DACとだけ表記されておりチップ名は公表されていませんが、分解写真を見ると同系列の「DSD1793」が使われていました(ビンゴです)。
なるほど、「なんちゃってnano iDSD」だな、と考えれば、この製品がちょっとわかってきました。ちょうどnano iDSDも所有していますので、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」と聴き比べしながら使ってみます。


■Macにつないで聴いてみて、驚いた
まずは、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」を、USB Audio Class 2.0対応なので、ドライバの要らないMacにUSBケーブルで接続してみます。
xmos「Audirvana Plus」で選択すると、スペック通り384kHz、DSD128までの対応が表示されます。
DACから先の再生環境は普段使いのアンプCR-D2+スピーカーZENSOR1。オーディオケーブルは愛用しているベルデン8412の加工済みケーブル(Amazon購入)。比較のため、同一環境で「nano iDSD」もつなぎ替えて聴き比べます。
まずハイレゾですが、オフコースのアルバム「OFF COURSE BEST "ever EMI Years"(24bit/192kHz FLAC)を試聴。サンプリングレートが高く、CD音源と比較しても「ハイレゾらしさ」の際立つマスタリングがされているアルバムですが、その特徴を良くつかんだ非常にダイナミックレンジの広い「ハイレゾらしい音」で鳴ります。
このアルバムは小田和正のボーカルにくわえ、ギターなどのアコースティックな音がとても印象的ですが、4曲目の「雨の降る日に」のように冒頭に雨音の効果音から始まる曲でも、あまりボリュームを上げなくても奥行きのある雨音の情景をきちんと描いています。正直1万円そこそこのUSB-DACとしてはかなりの実力です。
「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」、怪しさにつられてすっかりナメてましたが、一気に見直しました。

いっぽうDSDですが、まず「アニソンオーディオVol.3」特典のSuaraの「不安定な神様」(DSD64/2.8MHz)と、e-onkyoで購入した同じ曲の24bit/96kHzのFLACを聴き比べ。
DSDはフォーマット的にノイズシェーピングによる高周波ノイズを再生時にカットするため、特にDSD64はサンプリングレート的にはそれほどハイレゾではなく、解像度はより高い、という感じになります。同じ曲をハイレゾとDSDで聴き比べるとその傾向はきちんとあらわれていました。さすがDSD1796はもともと比較的高級なSACDプレーヤーで採用されていたチップですので、この辺はクリアできているようです。

しかし、DSDを再生する場合、プレイリストでのDSDファイルの連続再生時は問題ありませんが、曲の終了時、またはプレイリストでDSD64からFLAC、DSD64からDSD128というように再生データ形式がかわる瞬間に「ブチッ」という大きいスイッチングノイズ音が発生しました。これはDSDメイン(というケースは少ないかもしれませんが)の場合は結構なウイークポイントになりそうです。


■DSDを追い込んでみると、ちょっと価格の理由がわかってきた
さらに、上記のオフコースの24bit/192kHzハイレゾのアルバムをKORGのAudioGate 4.0でDSD64、DSD128に変換したデータで再生したところ、どちらもハイレゾ特有のエッジは丸くなりよりアナログに近い音に変化しつつもアコースティックのサウンドに深みが増す「DSD的な特性」がよく再現されています。
audirvanaただ、DSD64、DSD128の2つのフォーマットで音質に大きな変化はありませんでした。DSD1796チップ自体は4倍速(11.2MHz)=DSD256までの再生に対応していますがこのへんは「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」の音質面での限界という感じでしょうか。

DSDは上記のとおりフォーマットの特性で高周波ノイズが発生しますが、レートが2倍速(5.6MHz)、4倍速(11.2MHz)と上がるにつれ、より高域にノイズシェーピングできるため、PCMでいうところのより高いサンプリングレートを再現できるようになります。
つまり、192kHzといった高いレートでマスタリングされたハイレゾPCMをDSD化する場合、本来は、DSD64(2.8MHz)とDSD128(5.6MHz)では同じDSD的な音に変化しつつもDSD128の方が変換前のハイレゾPCMの特徴も多く再現された音になるはずなわけです。

ちなみに、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」のスペックをみると、USBで接続される「XMOS U8」は仕様の各フォーマットにもちろんすべて対応しますが、DACチップの「DSD1796」は比較的昔からあるICですので仕様的には「24bit/192kHz PCM、DSD入力対応(最大11.2MHz)」という性能になります。しかしDSDの場合、上記のノイズシェーピングのためのカットオフ周波数の設定などで音質の差がでてきます。

これらのことから、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」は、「実質24bit/192kHz PCM・DSD64対応(入力で32bit/384kHzおよびDSD128も可能)」というのがリアルなところの性能と考えられるのではないでしょうか。だんだん価格のカラクリが見えてきた感じですね。


■いっぽう「nano iDSD」は? これが「本物」との違いか

今度は同一条件でiFIの「nano iDSD」で聴いてみます。ファームウェアは最新の5.1(DoPでDSD256に対応する専用の5.1Aにはしていない状態)です。
imageまずハイレゾFLACを聴いてみて、最初「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」よりかなりフラット(というより平坦)な印象を受けました。しかしボリュームを少し上げてみると印象は激変。大幅にS/Nに差がありスピード感もあるようで、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」ではうるさく感じるレベルのボリュームでもむしろ心地よく響いてくれます。この辺はDACというよりオペアンプ(と設定)の違いとも感じますが、当然nano iDSDのほうがちゃんとしたオーディオ環境で鳴らすことを前提にチューニングされているのでしょう。「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」のいっけん音が良く聞こえるがツメが甘い感じがいきなり見えてきました。

また、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」ではDSD64化データと比較してまったく意味のなかった24bit/192kHzハイレゾのDSD128(5.6MHz)化データですが、「nano iDSD」でははっきり違いを確認。
DSD256以上のフォーマットへの対応もしているわけですから、DSD128くらいは余裕、というところでしょうか。
nano iDSDでもXMOSから渡されるDAC(おそらくDSD1793)も24bit/192kHzのDACチップですが、おそらくXMOSからDACに渡す時点では192kHz PCM変換され、さらに音質についても当然追い込んでチューニングされているものと思われます。このような手法はAstel&KernのAK320 AK300やオンキヨーのDP-X1などの高級ポータブルプレーヤーでも採用されています。コストと音質、さらに使える電圧やバッテリ性能などの諸条件の折り合いの意味では効果的なのだと思います(nano iDSDはバッテリ搭載のポータブルDACでもあるので)。
いっぽう、ぱっと見似た構成の「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」では、音質に関してはチップ性能まかせで、このような設計上の追い込みはそれほどされていないということなのでしょう。改めて「本物」との違いを見せつけられた感じです。


でも、これらの違いを理解しつつ、私が東京で使っているオーディオ環境程度(ZENSOR1レベル)であれば「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」は充分にわかりやすい「いい音」を出してくれます。普段はそれほどボリュームも上げませんしね。
さらに本格的なオーディオ環境、より高音質なスピーカーではたぶん使わない方がよいと思いますが、そこは、おそらくこの商品のターゲットではないと思いますので。とりあえずは、1万円が無駄にならなくてよかったな、と。


次は問題の「Windows環境での利用」につづきます。
→ 【後編】384kHz&DSD対応「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」のドライバ問題