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■据置きDACのレベルアップで、まさかの「Mojo」へたどり着く

東京の単身赴任先でのオーディオ環境も少しずつ変化をしていて、今年に入りMarantzの「M-CR610(現行機種はM-CR610)」をセンターに、セット販売もされていた相性の良いDALIの「ZENSOR1」をメインのスピーカーとして配置。他にもスピーカー数台を使い分ける環境になりました。
imageM-CR610はS/PDIF入力と、ネットワーク経由で最大24bit/192kHzのPCMが再生できるため、据置きDACでは「FOSTEX HP-A4」を「192kHz対応の光ケーブル」でS/PDIF接続。Mac miniでAudirvana PlusからHP-A4で再生する環境を中心に、サブDACでは「iFI nano iDSD」を使用し、こちらはRCAケーブルでM-CR610へ接続しています。
HP-A4をDDCとして使用する構成は、M-CR610自身のPCM再生の音質の良さもあり、なかなか満足のいくレベルの音質を実現できているのですが、今度はnano iDSDのRCA出力についてももう少しグレードアップし、アンプ、スピーカーをさらに活かせないものか、と思います。
特にHP-A4をSPDIF接続するとDSDのネイティブ再生ができないため、DSDを聴くときにはnano iDSDを使用するか、サブで使用しているWindows10ノートPCから「KORG DS-DAC-100m」を使い同社の「AudioGate 4」で再生する流れになります。

最近はそこそこDSDの音源なども所有し始めており、またPCMも32bit WAV形式などのデータも衝動買いしたりしてるので、よりハイエンドなDACの必要性を日に日に感じるようになってきたわけです。
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そこで、ターゲットとなる製品ですが、いちおう東京での据置きに加え、毎月頻繁に行う東京と福井の自宅への移動、そして自宅でのオーディオ環境での利用なども想定することにしました。どうせ東京でだけDACのグレードを上げても他のシーンでも同様の音を、と思うのが目に見えていたからです(そしてサイフにも限度がありますので)。

そうなると自ずと候補に挙がるのが現在使用している「nano iDSD」の上位モデルにあたる、iFI-Audioの「micro iDSD」です。実売7万くらいなので、5万円程度という予算だとちょっとオーバーなのですが、Amazonで結構安い中古が出ていたため衝動買い。以前別の中古で「当たり」を引いて気をよくしていたのですが今回は逆に「大ハズレ」でRCAから片方音が出ない不良品であったため即返品。据置きメインであることから改めて「micro iDAC2」などに機種を変更して新品での購入を再検討することにしました。

そして例によって試聴の旅から帰還し、実際に購入したのは当初まったく「想定外」だったCHORDMojo」でした。


■スピーカー出力でも価格を超えた「Mojo」サウンドは威力を発揮

もともと私のなかではCHORD社の「Mojo」は、同社の「HUGO」のモバイル用ヘッドホンアンプ版、という認識でした。ところが今回「Mojo」を据置きメイン、スピーカー出力メインで購入してしまいました。

image購入時点で、「Mojo」は実勢価格的には「micro iDAC2」と近いところにありました。また特に768kHz/32bit対応等の性能的に「そのスペック要るのか?」的ハイスペックは「micro iDSD」に通じるところがあります。
いっぽう据置きメインだといってるのに、800Ωのヘッドホンにも対応する出力を2系統とかの「リア充仕様」(笑)もなかなかどうかと思います。
でも、試聴してみて、音質にヤラれました。
「Mojo」の音質傾向はそのハードウェア特性からくるホワイトノイズの全くないどこまでもクリアなS/Nの高さと弱カマボコでクラッシックやジャズなどを奏でる「美音」と言われます。
購入してみて、「M-CR610」(アンプ)+ZENSOR1(スピーカー)にミニピンステレオ~RCAケーブルで接続。実際に鳴らしてみて、大正解でした。
相性は抜群、これぞ私が求めていた「劇的な変化」でした。

「Mojo」も、電源ON時に+-の両方のボリュームボタンを押しながら電源ボタンを入れるとLINE OUTのモード(最大音量で固定)になります。もちろん普通にONにしてボリュームを適度に上げても問題ありません。

ちなみに、私の場合、福井の自宅にあるDENONのプリメインアンプ「PMA-390RE」で出力する場合はこのLINE OUTモードで、東京のMarantz「M-CR610」の場合はボリュームをコントロールして他のラインアウト機器と同等の音量がとれるところで使っています(M-CR610だとLINE OUTモードでは出力が大きすぎるみたいです)。


■もちろんヘッドホン・イヤホンでも。IEMでも600Ωのヘッドホンでも体感できるMojoサウンド

「Mojo」は後述しますが徹底的にデジタル処理にこだわったDAC製品ですので、たとえばiPhoneとの組み合わせで定番化している「OPPO HA-2」にあるようなアナログ入力はなく、USBとCOAXとToslink(光)のSPDIFのみです。
imageMacやPCのUSB接続のほか(USB Audio Class対応)、カメラアダプタ経由でのiPhone接続やウォークマンの場合は専用アダプタ(WMC-NWH10)経由による接続が可能です。個人的には、メイン環境であるMac接続での「Audirvana Plus」での再生と、iPhone経由の「HF Player」再生がやはり良いですね。どちらもプレーヤーによるアップサンプリングによる再生に対応しており、さらにリアルタイムでのDSD変換によるDoPでのMojoへの転送もできます。
同様のことはオンキヨーの「DP-X1」や「Astell&Kern AK70」などのDAPとUSB-OTGケーブルでの接続でも可能です。
※追記:ファームウェアのアップデートで「AK300」など第3世代AKはすべてUSB Audio出力に対応しました。

imageこれまでポータブルでは「FiiO X3 2nd Gen」と「E12A」の組み合わせにより「SE535LTD」でのリスニングが中心だったのですが、MojoでもE12Aと同様にSE535LTDから全くホワイトノイズの聞こえない非常に明瞭なサウンドでMojo独特の低音が厚くも、圧倒的な解像度の高さ、左右の分離感を実感できます。ああ1ランクグレードが上がったな、と実感できるサウンドです。いっぽう、たとえばK240 StudioAKG C200純正リケーブル済み)などの場合はE12Aでは出力が足りないのでヘッドホン用の同社「E12」のほうで聴く必要がありましたがMojoの場合はそのままでも全く問題なし。

また福井の自宅には「K240 Monitor」というK240 Studioの前のモデルに当たる10年以上前に販売終了になったモデルのヘッドホンがあります。こちらは見た目の形状こそ後継のK240 Studioと酷似していますが、ドライバーの仕様も大きく異なり、なにより600Ωの高インピーダンス、88dB/mWの低感度と、「鳴りにくさ」「使い回しの悪さ」においてはダントツの難物です。しかし、このK240 MonitorもMojoなら難なく再生。「K240 Monitor」の特徴である、K240 Studioに通じる解像度の高さと後のK712 Proにも通じるようなモニターヘッドホンとは思えない広がりをMojoでしっかり再現していました。


■スピーカー出力でも「Mojo」は素敵だった。特に圧巻はDSD音源。

imageそして、今回の購入目的である、据置きDACとしての利用ですが、Macとの接続では、Audirvana Plusのアップサンプリングにより、32bit/768kHzによる再生が可能。
この可聴域を遙かに超えた高周波数がCHORD社がいうように本当に感じ方に影響を与えるのか。少なくとも私自身は、音の際立ち方、広がり、そういったものは既に持っているどの製品と比較しても全く異次元の音質と感じました。

これまで、M-CR610のRCAケーブルでの接続では、従来のHP-A4やnano iDSDではより高級なオーディオケーブルに換えてみても、光ケーブル経由デジタル転送でのM-CR610自身のDACによる24bit/192kHz再生と比べて音の奥行きが浅く1枚膜をかぶったようなこもった感じが払拭できませんでした。これがMojoを経由した途端、M-CR610自身のDAC性能を遙かに超える解像度と分離性による空間表現とより重厚な低音が実現。32bit WAVも音源のクオリティを余裕で描写する実力はさすがです。

「やはりMojoはスピーカーでも凄い!」と改めて実感しました。

特に、DSD音源の再生でのクオリティの高さは圧巻。

これまでDSDについては、DSD64(2.8MHz)のいろいろな音源を購入しているのですが、従来の環境では十分にメリットを感じることができず、「ふつうに96kHzのFLACで買えば良かったかな?」とちょっと後悔し始めていたところでした。

imageところが、Mojo経由で再生してみてまさに驚愕。これまで手持ちの機器で「DSDの良い音」のベースに置いていたKORGの「DS-DAC-100m」での「AudioGate」経由での音質を軽く凌駕し、192kHzのハイレゾ音源を超える音域の広さと瑞々しさ、さらに楽器の「生っぽさ」がZENSOR1から奏でてくれました。
「Mojo凄い」に加えて、「DSD音源凄い」、「M-CR610とZENSOR1のポテンシャル凄い」とついでの驚きが加わり、「スピーカーでもMojoを積極的に使うべき」と改めて実感するのでした。
ちなみに、Mojoのアンプへの接続はちょっと良いレベルのステレオケーブル(以前からずっと使っているオーディオテクニカのDVD LINKオーディオケーブル)、Macへの接続はエレコムのオーディオ用micro USB - USBケーブル(たぶん見た目だけで音質的変化無し)、充電用は普通のmicro USB - USBケーブルをノイズフィルタタップへ接続しています。


■Fiio X3 2nd Genへも変換アダプタで簡単COAX接続

ちなみに「Mojo」にはUSB接続以外にコアキシャル(COAX)用のミニピン端子とToslinkの光ケーブル端子があり、どちらもSPDIF規格上限の24bit/192kHzまでのPCM入力が可能です。Mojoは入力の周波数やフォーマットで電源部分のLEDの色が変わるので、手持ちのオーディオのSPDIF出力がどの周波数で出ているのかを確認するのにも便利、というちょっと変わった使い方もできます。
image光ケーブルは量販店などで販売されている一般的なものは48kHzまでの対応で96kHzや192kHzなどのハイレゾはうまく転送できない場合があります。
わたしはAmulechの192kHz対応光ケーブルを使用しています。たとえばMac miniやAirMac Express、Astell&Kern AKシリーズのように先端形状がピン状の場合はこのケーブルに変換コネクタを使用し、ちゃんと24bit/192kHzまででのハイレゾ転送ができました。また、COAXについては3.5mmミニピン形状のCOAXケーブルは少ないですが、RCAのモノラル~モノラルミニのケーブルで代用ができます。またステレオミニピンでも左右モノラル結線されていれば使用できます。

手持ちの「FiiO X3 2nd Gen」というDAPの場合、本体側は専用のピン結線になっており、この専用ピンと一般的なCOAX(RCAと同じ形状)のメスへの変換ケーブルが本体に付属しています。Mojoに接続する場合、このピン結線に対応するケーブルを自作するか、オヤイデなどの専用ケーブルを購入する必要があります。
このFiiO - Mojo接続COAXケーブルがなかなか選択肢も少なく結構高額なのでちょっと悩みどころでした。

そこで、秋葉原でRCAモノラルオスとステレオミニの変換アダプタを購入(購入価格250円)。これを本体付属の変換ケーブルにつないで簡易的なMojo用ケーブルを作成。ちゃんと利用することができました。
私の場合、頻繁に使う方法ではないため、お手軽に対応できたのは嬉しいところです。

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実際にこの組み合わせで新幹線での移動の御供で使用し、快適なMojoサウンドが楽しめました。

なお、FiiO X3 2nd Editionの場合、DSD64(2.8MHz DSD)形式もFiiO側で88.2kHzのPCMに変換してCOAX経由でMojoに送られるため、対応フォーマットはほぼすべて(DSD128以外)楽しむことができます。

追記: MojoとさまざまなDAPとの連携についてのレビューを追加しました。
→ 
「FiiO L19」ほか、“Mojoと愉快な仲間たち(接続デバイス)”まとめ


■スペック的に似てるようで全く異なる「micro iDSD/micro iDAC2」と「Mojo」の技術的アプローチ

余談ですが、CHORD社の製品といえば最大の特徴は一般的なDACチップを使用せず、専用に開発したDACをFPGAで実装していることだと思います。FPGA(field-programmable gate array)を使ったアプローチはオーディオの世界では極めてまれですが、私自身の仕事のITネットワーク関係だとCisco製品を初め多くの製品で一般的に用いられていて馴染みも深い部分です。

そして汎用チップ間を内部でI2S接続し、最終的にオペアンプやコンデンサなどのアナログ部分で音質を追い込んでいく一般的なUSB-DAC製品と異なり、Mojoの場合だと「Atrix7 FPGA」カスタムICにより処理を一括して行い、最終のミニピンステレオ出力までアナログ的な処理を徹底的に排除しているのが特徴。
オペアンプICもヘッドホンアンプICも使用せず、すべてFPGAで処理を行っているので、SE535LTDなどの反応の敏感なIEMから、600Ω級のヘッドホン、さらにスピーカー出力までを同じ出力端子からカバーできる、というわけです。


いっぽう当初購入しようと考えていたCHORDと同じ英国メーカーであるiFI-Audio社の「micro iDSD」や「micro iDAC2」は、DACチップの数がmicro iDSDは2個と異なるものの、基本的に使用しているチップ自体は私も持っている「nano iDSD」と同じものです。
特に「micro iDAC2」についてはデジタル処理部分について「nano iDSD」とチップレベルでの違いはほぼ無いといっても良いでしょう。

ですが、人気機種となった「nano iDSD」では不十分だったアナログ部分の追い込みをさらに「micro iDSD」「micro iDAC2」では徹底的に行い、よりHi-Fi的な意味での音質向上を目指した製品と言えるのでは、と思います。

「micro iDAC2」に関して言えば、その音質向上はRCA出力に特化しており、より高級なオーディオ製品での使用にも耐えうるレベルになったのでは、と思われます。もしかすると、私の使用するオーディオ環境くらいでは「アナログ面での強化」が実感しきれないかもしれません。また「micrio iDSD」の場合では同様の作り込みがヘッドホン出力について特に強化されていると感じました。

専用FPGAを作ってまでデジタルの音質を極めるCHORDと、汎用チップの組み合わせでのアナログ性能を極めるiFI。
同じ英国のメーカーでこうも真逆のアプローチを取っているのは大変興味深いですね。