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9月も初旬は仕事が少し立て込んでいて、ようやく落ち着いたかな、というあたり、ちょうど先日レビューした「PLENUE R」と同じ日に、発売から少し遅れてオーダーした「OSTRY KC09」が届きました。

OSTRY」というと、かつて「コストパフォーマンス最強」と言われた高音質イヤホンの「KC06」および「KC06A」を中心に、日本のオーディオファンの間で広く認知された中国のイヤホンブランドです。
KC09」は、そのOSTRY製品でもまさにKC06/KC06Aの流れを汲む最新の高音質イヤホンです。
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私自身も以前KC06Aを使用していて、そのクリアなサウンドはとても気に入っていたイヤホンのひとつでしたが、7月にポタフェスで「KC09」を試聴し改めて「クリアで素敵な音だなぁ」と実感しました。「KC09」では超極薄の振動膜を採用した10mmダイナミック型ドライバーを搭載し、KC06のサウンド傾向を踏襲しつつより磨きをかけたとのこと。さらに同社としてははじめてMMCXコネクタを採用し、リケーブル対応となりました。
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付属のMMCXケーブルは銀メッキ銅線を使用し、触り心地の良いメッシュ生地の皮膜に覆われた使い回しの良いものです。個人的にはKC06/KC06Aの細くゴムゴムしたケーブルは苦手だったので、今回のケーブルの仕上がり自体はかなり良い印象です。
イヤーピースは通常タイプS/M/Lおよび装着済みのMサイズに加え、開口部の大きいツヤのあるタイプ(以下テカテカイヤピ^^)が2種類の構成です。

imageKC09」のしっかりとした質感と使用に支障を来さない範囲での重量感を感じる金属製ハウジングはとても美しく、フェイスプレートのレザー加工は、KC06の「あやしい模様(笑)」が苦手だった方にも広く受け入れられそうな高級感を感じるものです。
また「KC09」の装着感も良好でKC06同様に通常の装着方法でもシェア掛けでも違和感なく使えるのは嬉しいところです。ただ、上記の通りケーブルに覆われたメッシュ生地の皮膜の弾力のため、シェア掛けで街中を歩いていると結構耳から落ちやすくなるのが少し難点ですね(私の場合は別途イヤーフックを用意して装着しています)。

また、装着性そのものは悪くないのですが、個人的には耳穴の奥の方にしっかり固定できるイヤーピースを使用した方が高域の明瞭さが格段に違う印象でした。もし中高域に曇りを感じるようでしたらイヤーピースをひとまわり小さくしてより奥の方へ装着してみることをお勧めします。耳の形状などによっては「SpinFit」などリーチのとれるイヤーピースを使用した方がよいかもしれませんね。


■抜群の量感と解像度の高さ。低域と高域をしっかり聴かせる濃厚なサウンド


KC09」の周波数特性は緩やかなドンシャリ寄りなフラットで、ものすごくざっくり言うと「比較的高級なマルチBAやハイブリッドに多い特性パターン」です。
imageこれはKC06からそうですが、より高価格帯のイヤホンにも負けない音質、という同社のコンセプトを考えるとこの辺はちゃんと狙ってるなあ、と改めて思います。フラット、といっても低域および高域の量感はかなり多く、モニター的な音とも全く異なります。とはいえ以前のKC06のような過激(?)なデザインではないものの、メタリックな外観から例えば「TFZ EXCLUSIVE 5」のようなシャープでソリッドな音をイメージされる方もいらっしゃるかと感じますが、実際に聴き比べると「KC09」はずいぶん「オトナ」な印象を受けるのではないかと思います(元々TFZ EXCLUSIVEラインはハッキリとしたドンシャリ系なので音質傾向もだいぶ違いますね)。

前述の通り、耳穴奥にしっかり装着した状態の「KC09」は、シングルダイナミックのドライバーとは思えないほど音域の幅は大きく、低域・中域・高域と全体的に量感のあるサウンドです。しかし非常に高い解像度と、アタックの早さ、分離感の良さから厚みのある低域をしっかり感じつつも中域を邪魔することは一切なく、伸びの良い高域も濃厚に描写されます。音場は比較的広く、全体的に演奏をしっかり聴かせてくれるイヤホンだと思います。

imageどのようなジャンルの曲でも合いますが、特にアコースティックなライブ音源などでは深い低音と伸びやかな高音の両方を感じつつ個々の音をしっかり聴き込むことができるため、「KC09」の良さをさらに実感のではと思います。また最近だと「SIMGOT」のイヤホンとの比較ですが、特に中域を中心に全体の音を描写するイメージの「EN700BASS」「EN700 Pro」に対し、低域と高域の量感と奥行きを感じる「KC09」といった違いでしょうか。どちらも非常にレベルの高いイヤホンですので、できれば試聴などで聴き比べて違いを感じていただけると良いと思います。


■ケーブルによる音質の違い、改めて確認してみました


KC09」はリケーブルによって音質が大幅に変化します。付属ケーブルは見た目は良いのですがコスト的に抑えた内容のものになっていますので「KC09」の本領を発揮するためにはリケーブルは必須と考えた方がよいと思います。
発売前、7月のポタフェスで試聴した際、IC-CONNECTさんのブースには標準のケーブル以外に2種類のアップグレードケーブルが参考出品されていて聴き比べができました。それで私は当日会場にて、
みたいなことをつぶやいておりました。そのときもKC09はリケーブルによる変化は結構大きい印象でした。

というわけで、とりあえず手持ちのケーブルでリケーブルを行ってみると(すべて中華ケーブルですが)、8芯の純銀線を使用したケーブルでは中域の情報量が多少増加した印象で、同じく8芯の単結晶銅線(OCC)のゴールドメッキケーブルでは全般的な解像度が向上し、音場がより広く感じるようになりました。
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いっぽう、上記のケーブルより少し安価な8芯7N銀メッキ線のケーブル(本当に7Nかどうかはともかく)を使用してみると、今度はボーカルが少し前で定位し、低域がアグレッシブな印象になりました。
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また、MMCXに対応していると言うことで、先日レビューしたShureのLightning対応ケーブル(DAC内蔵)の「RMCE-LTG」に接続し、外出先の移動中にApple Musicで利用してみました。この組み合わせもなかなか良く、特にApple Musicが得意な洋楽ポップスやロックとも相性の良い「KC09」はさまざまな用途で活躍できそうです。

ところで「KC09」標準のケーブルはこのイヤホンのサウンドを表現する上で一定のレベルをクリアしているとは感じますがクオリティに関してはコスト的にも限界があるようで、いっぽうでリケーブルによる性能向上で得られる音質の変化も確かにあると思います。ちなみに、リケーブルについて個人的には、ポタフェスで聴いた銅線のアップグレードケーブルが高域の表現が格段に向上し、非常に透明度の高いクリアなサウンドで、同時にちょっと刺激的となり「適度な刺さり」がでる印象だったため、機会があれば改めて聴いてみたいと思っています(それ以前に発売されたらすぐ買いそうですが・・・^^;)。というわけで、「KC09」は個人的には今後もリケーブルの可能性もさらに探りつつ愛用していきたいと思っています。

※追記:9月16日にe☆イヤホン秋葉原店であったIC-CONNECTさんの試聴会でさっそく色々聴かせてもらいました。やはりポタフェスで聴いた銅線のケーブルでは透明感を感じるクリアなサウンドに変化し、前回同様良い印象です。今後、表面の皮膜など取り回しを良くするための加工を行った上で製品化したいとのことでした。
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また16芯の銀線を用いたバランスケーブルもかなりの解像度アップで「KC09」のポテンシャルの高さを改めて実感しました。こちらは完成形のようですので先に製品化されそうですね(KC09用以外にも使えるように何本か買ってしまいそう・・・^^;)。またこの試聴会では、チューニングを(より過激というかキレをアップした方向に)変更したKC09や凄く過激にしたKC06なども参考出品されていて、こちらも「スペシャル版」として是非とも製品化して欲しいと思いました。今後も目が離せない感じですね。