BGVP DM5

中国「BGVP」ブランドの2BA+2DDハイブリッド仕様の「オープン型」イヤホン「BGVP DM5」です。

今回は中華イヤホンやDAPなど多くの製品の国内販売元になっている伊藤屋国際さんが限定で国内販売しているものを購入しました。本記事の掲載時点では再入荷分が同様に限定販売されています。
Amazon.co.jp:(国内正規品)BGVP DM5

実は同じモデルのイヤホンを7月下旬頃にAliExpressで一度オーダーしたことがあったのですが、そのときは製品が出荷されず購入することができませんでした。そういった意味では個人的には「ようやく購入できた」イヤホンでもあります。

※追記:後述の通り、その後ブロンズのカラーバリエーションが2種類AliExpressのPenon Audioなどで販売されており、「Red Bronze」カラーを追加購入しました。

本体の形状そのものは数多くあるShure SEシリーズ系デザインのイヤホンに類似したものですが、イヤホンで「オープン型」というタイプは比較的珍しく、しかも典型的なシェア掛けタイプのカナル型ではかなりレアな存在です。イヤホン本体はブロンズ色の金属製ボディでシェルの表側にオープン型らしい大きな開放部があるデザインが特徴的です。
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付属品は、シルバーメッキの標準ケーブルと、ブラックのマイク付ケーブル、イヤーピースはS/M/Lの各サイズでブラックとクリアの2種類およびイヤホン標準装着のMサイズ、さらにウレタン製が1種類、さらにケーブルクリップなど。
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装着性はShure SEシリーズ系の形状をした他のイヤホン同様に良好です。
オープン型ですのでシェル表面の開放部より音漏れがあります。さすがに静かな図書館での使用は無理ですし、混雑した電車内では側にいる人に聞こえる程度の音漏れの大きさですが、カフェなどでの利用(特にボックス席であれば)は使用しても全く影響のないレベルです。


■Shure SEシリーズ系の外観、よく似たMaGaosi K3 Proとの形状比較

BGVP DM5」のドライバー構成は2BA+2DDのハイブリッドで、海外サイトの情報だとBA部分は「Knowles 30042」をデュアルで使用しているそうです。また、「BGVP DM5」のシェルの形状自体は2BA+1DD構成の「MaGaosi K3 Pro」と非常によく似ています(MaGaosi K3 Pro自体も形状の元になったと思われるイヤホンがありますが割愛します)。
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実際に比較してみると、シェル表面の外観はほぼ同じ大きさですが、ドライバー構成の違いから、「BGVP DM5」のほうが厚みがあり、かわりにステムは交換可能なフィルタを持つMaGaosi K3 Proのほうが長くなっています。
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ステム部分には2つのBAドライバー装着されているのがメッシュ越しに確認できますが、デュアルドライバータイプのを装着しているMaGaosi K3 Proに対し、「BGVP DM5」は2つのBAドライバーが並べて装着されているのが分ります。ここから、デュアルのBAドライバーが中域を表現し、ハウジングに本体に構成された2つのダイナミックドライバー(同様に海外サイト情報だとグラフェンコート振動板のようです)が高域と低域を描写するデザインであることが想像できます。

なお、付属の2本のMMCXケーブルは最近の中華イヤホンで付属しているものでアマゾンなどで単品でも販売されています。シルバーの標準ケーブルは銀メッキ処理のOFC線材を使用しておりブラックより多少ノイズに強いものになっています(また、先日レビューした同じBGVPの「SGZ-DN1」に同梱のケーブルと同じものです)。


■エージングで大きく変化する、中域メインでボーカル曲と相性の良い「暖色系サウンド」。

伊藤屋国際さんのツイートでも「エージングによる音質変化が楽しめる」との記載がありましたが、中華系のハイブリッドイヤホンの多くは長時間エージングにより特にダイナミックドライバー部分が変化し(本来の音になる)、BA部分との「つながり」が向上する傾向にあります。

BGVP DM5実際に聴いてみた「BGVP DM5」は、中域の印象が強い暖色系のサウンドで、オープン型らしく低域は「響く」というより「抜け」ていく感じでした。ただし、購入直後の状態では低域がいまひとつ「抜けきっていない」印象で、また高域ももうひとつ伸びが欲しい印象を受けました。
そこで毎回やっている100時間を超えるエージングを今回も行い、実際の変化を確認してみることにしました(このブログでも都度記載していますが、私の場合エージングはSIMなしiPhoneでApple Musicの数日分の長時間プレイリストをランダム&リピートでエンドレス再生を行う方式で行っています)。

DAP(デジタルオーディオプレーヤー)にCOWONの「PLENUE R」を使用し、購入直後とエージング後を比較してみると、高域の伸びは格段に良くなり、低域の印象も向上しました。
全体的にはそこそこメリハリのある音で、標準のケーブルを使用した状態でも低域は量感も十分で響きのある印象ですが分離性も良く存在感をキープしており、いっぽうで高域は比較的鮮明で、不快にならない程度の刺さりのある硬質なサウンドです。

BGVP DM5BGVP DM5」の周波数特性は典型的なドンシャリですが、実際には近い位置で定位する中域をメインに聴かせるタイプのイヤホンです。
これは上記の通り、ハウジングのドライバー配置からも想像できたサウンドですが、本来はかなり硬質だったり刺激的だったりするはずのグラフェンコート振動板ダイナミックドライバーの特徴的な部分を、オープン型にすることであえて「丸めて」しまって、トータルでは暖色系の音を作っている手法はかなり特殊で、このイヤホンの音を特徴付ける最大の要素ではないかと思います。

なお、音場もそれほど広い方ではありませんが、音抜けが良く分離感が高いため定位感も良好です。とはいえ解像度は平均的で、演奏や個々の楽器の音を聴き込むというよりはボーカルが映えるタイプのイヤホンです。ロックやメタル系より女性ボーカルのポップスやアニソンなどのほうが相性が良く、これらの曲を聴き疲れなくじっくり聴ける印象です。


■エージング不十分? 当り外れ? 出力不足で超ドンシャリの場合は「鳴らし込み」で解消


ところで、「BGVP DM5」のインピーダンスは16Ωで感度は120dB/mWというスペックですが、どうも搭載する2つのダイナミック側ドライバーはオープン型の音抜けの関係で通常のイヤホンより高出力で鳴るらしく、充分な音量を得るために一般的なイヤホンより多少大きな出力が必要です。

ただエージングが不十分な状態やDAP側の駆動力不足などの理由でオープン型としての「抜け」ができていない状態だと、この通常のハイブリッドより大きな出力で稼働するダイナミックドライバー部分がこもったような鳴り方をする場合がありました。
BGVP DM5私の場合、DAPをAstell&Kern「AK300」に変更して聴いてみた際に、十分に音量が取れず、通常のイヤホンであればボリュームを80程度で鳴らせるところを反応が低いヘッドホン並の110まであげる必要がありました。このときのサウンドはバランスが完全に崩れていて異常にボコボコした低音とキンキンの高音の極端なドンシャリになってしまいました。
しかし、後述するように、その後さまざまなリケーブルを試したり、出力の強い据置型のヘッドホンアンプから再生するなどを行っているうちに、このような現象はなくなり、AK300でも少し高めのボリューム90程度で安定して鳴るようになりました。
私が遭遇した現象が個体の問題か、このモデル共通の特徴なのかは不明ですが、もしこのイヤホンを購入し、極端なバランスの音で鳴った場合は、多少強力なアンプやプレーヤーで鳴らし込みを行うなどで様子をみてください(それでも駄目な場合は国内正規品であれば伊藤屋国際さんに相談されたほうが良いかもしれませんね)。

※追記:追加で購入したブロンズ色のほうはこのようなエージングでの不安定さはなく、開封直後でも濃度の濃いドンシャリでエージングにより中域の抜けが良くなる印象で大きな変化はありませんでした。やはり個体差だったみたいですね。


■リケーブルによる変化やDAPの影響を受けやすいイヤホン

BGVP DM5」のようにインピーダンスや感度は「鳴りやすい」ものの一定の音量を得るためにはある程度の出力や稼働力の必要なイヤホンの場合、特にリケーブルによる効果が期待できます。
同じDAPでもより高い出力が得られるバランス接続は確実に変化が得られると思いますが、通常のステレオ出力(アンバランス)でもケーブルのグレードを上げることにより、DAPからイヤホンまでよりノイズが少なく情報量の高い伝達が可能になります。実際AliExpressの一部のセラーではアップグレードケーブルをセットしたバージョンが販売されているようですので、メーカー側も「BGVP DM5」のリケーブル効果は認知している部分ではないかと思われます。

BGVP DM5実際にリケーブルして聴いてみると、まず、8芯の7N銀メッキコートのケーブルでは、中域の解像度が向上し、高域の伸びも大きく向上しているのがわかります。特に高域については標準のケーブルでは表現し切れていなかった音がより明瞭に聞き取れるようになりました。また、8芯銀メッキコートのバランスケーブルでも同様の解像度アップと高域のクリアさに加え、さらに低域の量感もアップしより広い音場感を得られるように変化しました。ただ逆にケーブルの種類によっては低域は強くなりますが多少こもった音に変化するケースもあり、一概にプラスの効果ばかりとも言えないようです。

また高出力のポータブルアンプや据置型のヘッドホンアンプなどを使って聴くことでより刺さりの強いサウンドに変化する「ハイ上がり」の傾向も多少見受けられました。このように、DAPなどプレーヤー側の特性など利用環境の違いもありますし、「BGVP DM5」を好みの音にするための最適なケーブルの組み合わせはそれぞれ試行錯誤が必要になるかもしれませんね。

(追記)
本記事掲載後、AliExpressのいくつかのセラーで「BGVP DM5」のブロンズカラーのバリエーションが発売されましたカラーは明るいブラウンのブロンズカラーと、よりカッパーに近いレッドブロンズの2種類。さっそく「レッドブロンズ」のほうを、Penon Audio Storeで販売しているアップグレードケーブルとのセットで購入しました。

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本体カラーはかなりピンク色っぽいカラーでとても雰囲気のある仕上がりになっています。
一緒にセット購入したBGVP純正のアップグレードケーブルは12芯5N OCC線材を使用したなかなか高品質のもの。思ったよりケーブル自体は細い印象ですが柔らかく使いまわしも良好です。
音質面は解像度の向上に加え、高域のキラキラ感がアップし、イヤホンのポテンシャルを活かしている印象です。このアップグレードケーブルのセットも75ドル程度購入できるため、ブロンズカラーとあわせて結構お勧めですよ

AliExpress(Penon Audio Store):BGVP DM5



■最適化できれば濃いドンシャリだが、やはり多少「玄人向け」のマニアックなイヤホンかも

imageというわけで、「BGVP DM5」は濃いドンシャリ系のサウンドで落ち着き、個人的には自宅などでボーカル曲を楽しむためのイヤホンのひとつとして使用するようになりました。
しかしエージングによる音の安定、リケーブルやDAPやポタアンなどの組み合わせなどの「最適化」が必要なイヤホンだな、とも同時に感じます。もちろん「オープン型」なので音漏れもあり利用シーンもある程度制限されますし、いっぽうではオープン型ヘッドホンに多いモニター系とも対極的な音質傾向であるなど、やはりどう考えても「相当にマニアック」なイヤホンであることは間違いありません。

とはいえ、音質的な過激さはありませんし、もしかしたらちょっと「難物」の「BGVP DM5」ですが、ある程度中華イヤホンを楽しまれている「玄人向け」のアイテムとしては価格的にも音質的にも結構楽しいアイテムだとは思いますよ。