TENNMAK TRIO

中国のイヤホンメーカー「TENNMAK」の新モデル「TENNMAK TRIO」です。

TENNMAK ProTENNMAK」は中国の比較的小さなイヤホンメーカーですが、音質面には定評があり、日本でも以前よりファンの多いブランドです。

私自身も同社の「Tennmak Pro」はお気に入りイヤホンのひとつでグレーとクリアーの2つを使っています。
また以前レビューでも紹介しています。
→ 【3千円で驚きの高性能】濃厚2DD「Tennmak Pro」、激安2BA+1DD「COULAX CX09」を買ってみた。

購入はAliExpressのTENNMAK Official Storeにて。購入時の価格は49.99ドルでした。
AliExpress(TENNMAK Official Store):TENNMAK TRIO

現在「TENNMAK」は日本のアマゾンでもマーケットプレイスを出していて代表的なモデルは購入が可能になっており、今回紹介する「TRIO」についてもいずれはアマゾン経由でも買えるようになるのではと思います。
Amazon.co.jp(Tennmak Official Store)マーケットプレイス

※「TENNMAK TRIO」はすべて大文字表記にしていますが、区別が付きやすいよう「Pro」については従来からの「Tennmak Pro」と表記しています。


■「TRIO」の名前が示す「3つのフィルター」と「3つのフェイスカバー」

TENNMAK TRIO」のパッケージは従来モデルよりカラフルで、日本語の説明も併記されています。

TENNMAK TRIOTENNMAK TRIO

パッケージ構成は本体に加え、TENNMAKのイヤホンではお馴染みの同社ロゴ入りのイヤホンケース、マイク付MMCXケーブル、イヤーピースはS/M/Lの3種類、そして装着済みのフェイスカバーとサウンドフィルター以外に2種類のフィルターとカバーが付属します。
imageTENNMAK TRIO
TENNMAK TRIO」のドライバー構成は9mmと6mmのデュアルのダイナミックドライバーによる2DDとなっており、「TRIO」という名前の由来となっている「3種類のサウンドフィルター」と「3色のフェイスカバー」が特徴となっています。

フェイスカバーは本体色と同じ「透明黒(Transparent Black)」と、「青(Pure Blue)」「琥珀色(Amber)」の3色でメタリックプレートで覆われた表面内側に被せるようにマウントします。
サウンドフィルターは金属製のステム部分ごと脱着するタイプで、シルバーメッシュの「標準(Balanced)」、赤メッシュの「高域強調(High)」、黒メッシュの「低域強調(Low)」の3種類が用意されています。
TENNMAK TRIOTENNMAK TRIO
また、MMCXコネクタに対応する付属ケーブルはマイク付のタイプのみとなっています(他のTENNMAKのMMCX対応イヤホンのマイク付ケーブルを選択した場合と同じものです)。

TENNMAK TRIO」のイヤホン本体部分は、サウンドフィルターおよびフェイスプレートが交換式になったためか、TENNMAKの代表的なモデルで同じ2DD構成の「Tennmak Pro」よりひとまわり大きなサイズになっています。
TENNMAK TRIOTENNMAK TRIO

実際に比較してみると、全体的な形状やベント位置などTennmak Proを継承しているものの「TENNMAK TRIO」のほうがかなりコストのかかったつくりになっていることが分ります。Proの人気で資金的にもよりコストのかかったイヤホンが作れるようになった、ということかなと思います。
TENNMAK TRIOTENNMAK TRIO

シェルサイズがひとまわり大きくなり、ステムもサウンドフィルターの交換式になったためProより太くなっていますが、装着性は良くシュア掛けでしっかりと装着できます。


■より高域に脚色をシフトしたサウンド。でも二兎、三兎・・・いろいろ狙いすぎかも。

TENNMAKのイヤホンは前述のTennmak Proもそうでしたが比較的長時間のエージングによりドライバーが馴染むことで本領を発揮できる傾向にあります。その中でも今回の「TENNMAK TRIO」はさらに変化が顕著で、音質が落ち着くまでには最低でも100時間以上のエージングが必要でした。

image過去の記事でも記載の通り、私の場合エージングはApple Musicをランダムでエンドレス再生することで行っていますが、50時間程度までは特に高域が安定せず、ある程度高域が出るようになったと思ったら高域強調(High)フィルターを使用時に、高域の歪みを感じるようになり全体のバランスが悪くなる状況に遭遇しました(この現象は100時間経過後に確認した際は解消していました)。

以降は約150時間のエージングを行い、ある程度音質的に安定したと思われる状態のものです。

エージングを十分に実施した「TENNMAK TRIO」の周波数特性は同社の従来モデル同様に低音が厚い明確なドンシャリ傾向ですが、Tennmak Proと比較すると5kHzより上の高域のカーブが大きく、多少の刺さりを感じやすい音になっています。

Tennmak Proは非常に濃いドンシャリ(脚色が多いとも言う)で奥行きのあるサウンドですが、同時に特徴的なのは低域の厚さではないかと思います。いっぽう「TENNMAK TRIO」では3つのサウンドフィルターのうち、「標準(Balanced)フィルター」を装着した状態では、十分に量感のある低音ながらProのような反響音はかなり抑えられ締まった印象で、むしろ高域のほうが強く感じられるサウンドバランスになっています。とはいえ、解像度は一般的で高域もある程度の伸びはありますが、明瞭感より「脚色するポイントが変わった」というイメージのほうが適切かもしれません。

TENNMAK TRIOTENNMAK TRIO」の音場は一般的でやや広め。
とはいえTennmak Proが広がりより奥行きを感じる音の濃厚さが特徴だったのに対し、「TENNMAK TRIO」ではは多少あっさりしたという印象があります。低域が締まりが向上し、相対的に中域の明瞭度が上がったことで定位性は良くなったものの、結果的に奥行きは浅くなり濃厚さは薄れた、という感じです。
そういった意味で「Pro」の上位版、と思って聴くとわりと期待外れな印象になってしまうのですが、女性ボーカルのポップスやアニソンなどの場合は「TENNMAK TRIO」のサウンドのほうが聴きやすく感じるかもしれません。

ただ、TENNMAK Proは再生するDAPなどのプレーヤー側の特性によっては低音過多の印象になる可能性もあるため、「TENNMAK TRIO」では特にスマートフォンなどの再生環境も意識したセッティングにした可能性もあります。実際のところカラーを変えられるフェイスプレートはマニアよりコンシューマー受けを意識していると思いますし、付属ケーブルがマイクコントロール付のみ、というのもその現れでしょう。
とはいえ、既存のファンやマニア向けにはサウンドフィルターで対応し、どうせリケーブルするだろうから、と「二兎を追ってる」感も垣間見えます。

TENNMAK TRIO次に、赤色の「高域強調(High)フィルター」を装着すると、中低域には特に変化はないものの、高域の刺さりが多少アップした印象を受けます。周波数特性を取ってみると、特に10kHz以上の高高域が強調されているのが確認できました。ある程度の年齢になってくると可聴域の上限は下がってくるため高域強調フィルターの恩恵は限定的ですが、一定時間聴いていると聴き疲れが大きい印象です。
こちらはハードロックやメタルなどのサウンドを楽しむことをイメージしてるのかな、とは思いますが、なんとなく人によっては「そういうわざとらしい脚色はむしろ要らない」という声もありそうです。

TENNMAK TRIO最後に黒色の「低域強調(Low)フィルター」で、これは分りやすく言うと5kHz以上の高域を若干抑えてTennmak Proに近い周波数特性にするものです。
聴いてみると確かに印象としてTENNMAK Proに近い音になってはいますが、単に高域を絞っているだけで低域の特徴が変わるわけではないので結果、よりあっさりして、高域もさほど刺さらない、という音になります。上記のようにTENNMAK Proの脚色の多さ、特に低域過多を感じる人(または再生環境)の場合は多少薄味になった「TENNMAK TRIO+Lowフィルター」はちょうど良い印象になるかもしれませんが、「これだったら普通にProのほうが良い」と思う方も多数いるかもと思います。

ここまでくると、いよいよ「色々狙いすぎてどっちつかずになった典型」みたいな話になってきてしまいました( ̄。 ̄;)。


■とりあず、リケーブルして、イヤピも替えて楽しもう

image正直なところ、「TENNMAK TRIO」を購入して、結果Tennmak Proの完成度の高さを改めて再認識する感じになりました。
とはいえ、Tennmak Proもアンダー5000円クラスとしては非常に完成度の高いイヤホンですので、一般的にみれば「TRIO」も十分にレベルの高い仕上がりのイヤホンだと言えます。
実際、Tennmak Proが脚色が強すぎる、という意見も伺いますので、その場合は「TRIO」も良い選択肢になりうるのでは、と思います。

とりあえず私はサウンドフィルターは「標準(Balanced)」を使用し、イヤーピースを「final Eタイプ」にすることで低域のメリハリを強くして使用することにしました。またMMCXケーブルも手持ちの8芯のケーブルに交換して使用しています。
TENNMAKは「Pro」をブラックとクリアの2種類、さらにシングルダイナミックの「Piano」を使っており、個人的にも結構好きなブランドです。また新たなバリエーションが加わったことで楽しみも増えたなと思っています。