Shanling M3s

今回紹介するのは「Shanling M3s」です。到着から2週間程度経過しておりますが、改めてこのタイミングでのレビューとなります。「Shanling M3s」は、中国「Shanling」社の最新DAP(デジタルオーディオプレーヤー)で、同社の「M3」の後継モデルとして発売されました。

Shanling M3s低価格・高性能な中華DAPとして人気モデルとなった「Shanling M2sの上位モデル、という位置づけで、バランス接続対応をはじめスペック面・音質面のグレードアップが行われたモデルになります。M2sに比べると注目度は「いまひとつ」のようなのですが、M2sからの音質の進化は素晴らしく、倍以上の価格帯のDAPも超えるような完成度をもった仕上がりとなっています。
もちろん「お値段以上」という価値基準を元にしてはいるものの、「思ったより良かった」ので「ちょっと褒めすぎかな」というレビュー内容になっている点はご容赦ください(^^;)。

ちなみに従来モデルのM2sは多くの方が国内正規版を実際に実際に店頭で試したり購入されているのではないかと思います。M2sについては私は海外版を予約注文で発売開始と同時に購入しており、本ブログでも前後編でレビューを行っています。
→ Shanling M2s 前編: 「Shanling M2s」コンパクト&高音質DAPがやってきた【導入・音質編】

Shanling M3sそして今回紹介する「Shanling M3s」は、M2sの機能・操作性を継承し、オーディオ性能を大幅に強化したモデルです。
スペック的にはM2sで要望の多かったバランス接続に対応。これにあわせてDACチップに「AK4490EN」をデュアルで搭載(M2sは「AK4490EQ」をシングル)、さらにオペアンプもLPFの「MUSE8920」およびヘッドフォンアンプの「AD8397」をどちらもデュアルで搭載しています。
タッチパネルは未対応で右側のダイヤルとボタンを中心とした操作や3インチ480×800ピクセルの解像度などはM2sと共通ですが、性能の向上に伴い、本体下部を引き伸ばしたような形状となっています。

この記事を書いている時点では海外版のみ販売中で、私も毎度おなじみAliExpressのHCKで購入しています。
Shanling M3s」の海外版の販売価格は279ドル。M2sの海外版価格(199ドル)より1万円程度アップとなりますね。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): Shanling M3s

おそらく近いタイミングで国内正規版も発売になるのではと思います。


■パッケージ及び本体のサイズ感を確認してみる

付属品はM2sとほぼ同様で、本体、保護フィルム(表・裏用が各2枚ずつ)、USBケーブル、カードリーダー、予備のハイレゾシールなど。純正のレザーケースは別売りとなります。予備のハイレゾシールは表面の保護フィルムを貼る際にハイレゾシールが邪魔になるため、一度はがしてからフィルムを貼り、フィルムの上に再度貼り直すためのものです。
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金属製ボディや表面に加えて裏面のガラス仕上げなど、相変わらずビルドクオリティは非常に高く、質感の良いしっかりした作りになっていて、安っぽさは全くありません。
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サイズ的には「Shanling M2s」を下方向にストレッチした感じになりますが、実際に比べてみると、右側のホイールおよびボタンの位置が少し変わっていることが分ります。
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いっぽう、左側のボタンは全く同じ位置に配置されています。また上部も全く同じです。
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下面のコネクタ位置は3.5mmステレオが中央付近に移動し、追加された2.5mmバランス端子が右側に配置されました。ステレオが表面側に寄ってるのがちょっと独特ですが、このサイズにデュアルDAC、デュアルオペアンプを搭載するための苦労の跡が伺えます。
Shanling M3simage
ちなみに「Shanling M3s」のサイズ感は、ソニーの「NW-ZX300」や「NW-ZX100」に近いイメージです。実際に店頭で比較してみると、もしかしたらこれらソニーの機種っぽくするためにこのデザインにしたのかも、という気もしてきます。
大きくなったとはいえ手の中にすっぽり収まるコンパクトさですし、ジーンズなどのきつめのポケットに入れて使っても問題ありません。実際に持ち歩いて使った印象としてはM2sより多少長くなったことでむしろ「取り出しやすくなった」と実感しています。

ところで、「Shanling M3s」にはオプションで純正のレザーケースがあり、デザインなどはM2sのケースより良くなっているのですが、実際に装着してみたところ、肝心のダイヤルが非常に回しづらいことが判明しました。
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このデザインだと上部から突くようにしかダイヤルが回せないため、タッチパネルのないM3sでは致命的に使いにくくなります。またコネクタ部分の露出が3.5mmも2.5mmも小さいためコネクタ部分が大きいケーブルが接続できなくなります(特に2.5mmバランスケーブルはピンを折れにくくするためコネクタのサイズが大きいものが多いためケースを使うとほぼ使用不可となります)。
そのため、やむなくケースの使用は断念し、たまたま手元にあったちょうど良いサイズの布製のイヤホンポーチに入れて持ち運ぶことにしました。


■M3sの最大の改良点は「出力アップ」による余裕を持った駆動力

Shanling M3s」では「M2s」と比べて上記のとおり主要部品のデュアル化による音質アップが行われています。他にも細かな仕様変更は数多く行われており、単にバランス接続対応だけではない、さまざまな性能アップが確認できます。

spec

まずDACの「AK4490EN」およびローパスフィルタ(LPF)の「MUSE8920」のデュアル化もさることながら、私が特に注目したのはヘッドフォンアンプ部がM2sの「TPA6120」から「AD8397」のデュアルに変更になった点。「AD8397」はオペアンプのなかでも特に高出力が得られるチップでバランス接続に限らずアンバランスでも効果が期待できます。

Shanling M3sもともとM2sのほうも非常にコンパクトなボディながら十分に高出力で解像度の高いサウンドが楽しめるDAPです。サイズ的には普段着でも仕事中のスーツでもポケットに忍ばせておいて気軽に使える点がとても気に入っていました。
またShanlingのDAPは「Mojo」などのUSB-DACに対してトランスポーターとしても利用できますが、M2sはサイズ的にもMojoとぴったりで、さらにDSDを含む対応フォーマットの多さやプレイリストの対応などでも非常に良い組み合わせでした(M2sがタッチパネルではないこともバンドで固定したときに使用感に影響しない点でメリットでした)。
そのため、Mojo用とは別にもう1台単独利用目的に追加でM2sを購入しようかとも考えたのですが、「RE2000」など出力環境の差がよりはっきり聴きとれるイヤホンを入手したことで、同様なサイズ感でより高音質なDAPにしたい、という考えになりました。そうなるとM2sのアップグレード版にあたる「Shanling M3s」は私にとってはまさにうってつけだったわけです。


■解像度の高いクリアでメリハリのあるサウンドはよりパワフルに。

Shanling M3s」のサウンドは「M2s」の明瞭かつ解像度の高いサウンドは継承しつつ、出力に余裕があるため高いゲインを必要とするイヤホン、ヘッドホンでも奥行きのあるしっかりとした描写を実感します。
「Shanling M2s」も濃い音かつ解像度の高いサウンドで非常にクオリティは高かったのですが、結構メリハリ重視な部分もあり、イヤホンによっては多少「力押し」な粗さを感じるなど「やはりこのサイズではこれくらいが限度だよね」という印象もありました。
いっぽう「Shanling M3s」では、例えばHIFIMAN「RE2000」を「M2s」で使用した際に感じた高域付近の粗さははなく、より分離感の向上したサウンドと、S/Nの高さ、そして十分な出力により、「RE2000」のどこまでも明瞭かつ自然なサウンドをしっかり再現できているのを感じました。
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また同じHIFIMANの「RE800J」(現在レビュー用にお借りしています)だと、より元気でメリハリのある感じがよく実感できるようになりました。どちらもとても高級なイヤホンですのでどのDAPで聴いても非常にクオリティの高いサウンドは体感できますが、「Shanling M3s」では10万円オーバーのプレーヤーの一部にも匹敵するレベルをクリアしているように思えます。出力に余裕を持つことで音の濃さは維持したまま、強引さよりナチュラルなサウンドに進化したような印象です。

Shanling M3s」の高出力はもちろん「鳴らしにくい」環境でも高い実力を発揮します。これは通常のアンバランスでの接続でも同様で、お馴染みAKG「K712 Pro」や、RHA「CL750」といったハイゲインを必要とするヘッドホンやイヤホンの直挿しでも変な歪みは発生せず、ちゃんと再生できているのが分ります。
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バランス接続においてはさらにその実力はアップし、とにかく鳴らしにくいイヤホンとしても知られる「Pinnacle P1」を「Shanling M3s」に直挿しで聴いてみたところ、抜群の駆動力でポータブルアンプなしでも十分にいい音で鳴らすことができました。

逆に非常に敏感なイヤホンでも、ローボリュームでホワイトノイズのない非常に明瞭なサウンドを確認できました。最近一部で話題の1BAイヤホン「qdc Neptune」の場合、「RE2000」で~70程度のボリュームを30以下に落とす必要がありますが、それでもNeptuneの美しいサウンドは損なわれることなく優れた空間表現を楽しむことができます。
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また、マルチBAのイヤホンでバランス接続を行うとデュアルDAC・デュアルアンプにより分離感の向上をしっかり実感することができます。AKなどパワーが高くないDAPの場合はバランス接続により駆動力を稼ぐというアプローチもありますが、「Shanling M3s」はアンバランスでも十分なパワーを得られるため必ずしもバランス接続がベストとはならないと思います。いっぽう、バランス接続が威力を発揮する「多ドラ」やアンプの個性が出やすいイヤホンでは「コンパクトなのにここまでやれるんだ」という印象を持てるのではないかと思います。

もちろんウィークポイントがないわけではなく、M2s同様に連続再生で曲データのフォーマットが変わる特に小さいプチ、というノイズが入ったり、曲ソートがFiiOなどと同様にUnicode順(?)になっているようで日本語で見るとよくわからない並び順になっていたりします。さらに、そもそもタッチパネル操作ではない部分は携帯用のサブDAPとしては個人的には問題ないですがメインDAPとして考えるのには結構厳しい要素かもしれません。
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というわけで、例えばすでに10万円オーバーの高音質(または高級)なDAPをメインでお使いの方で、「Shanling M3s」はサブ機として検討する場合、気軽にポケットにいれて使用するアイテムとして遜色ない実力を発揮してくれると思います。あくまで想像ですが、より高音質なDAPをお使いの方ほど、たった300ドル以下の価格で購入できる「Shanling M3s」のポテンシャルの高さに驚くのでは、と思います(^^)。


■M2s譲りの拡張性は健在。「HiBy Link」もとっても便利!

そして、「Shanling M3s」も機能性および拡張性については「M2s」の機能をそのまま踏襲しています。拡張性についてはM2sのレビュー後編にてまとめていますので併せてご覧ください。
→ Shanling M2s 後編: 「Shanling M2s」にイロイロつないで遊んでみた。【接続&活用編】

Shanling M3sM2sのレビュー以降のアップデートとしては「HiBy Link」への正式対応が挙げられるでしょう。
「HiBy Link」は、現在スマートフォン向けにリリースされている音楽プレーヤー「HiBy Music」のリモート操作版で、「HiBy Link」アプリがインストールされたスマートフォン(現在はAndroid)と「Shaning M3s/M2s」をBluetoothでペアリングし、リモート操作を行う、というもの。あくまで「HiBy Link」はリモート操作のみで、音楽データは「Shaning M3s/M2s」側のファイルを使うため音質面の劣化の心配がなく、スマホ側のタッチパネルで操作ができる点がポイント。
現在はAndroid版のアプリ(.apkファイルからのインストールが必要)がメインですが、このレビューを書いている時点で開発版ながらiOSへの対応も開始しており、今後のアップデートで正式に対応される予定です。

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またトランスポート機能もM2s同様に使用できます。DSDについては「DoP」に加えて「Native」モードも追加されましたが、「Mojo」「nano iDSD BL」で試した限りでは引き続き「DoP」での利用が必要でした(Nativeモードでは音が出ませんでした)。
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私の場合は引き続きM2sをトランスポーターとして使用するつもりですが、M3sもボディが長くなったことでバンドでの固定がしやすくなった側面もあり、この使い方も十分アリかなと思います。


■「高性能スーパーサブ」に最適なコンパクトDAP、という比類なきキャラクター

Shanling M3s冒頭に記載したの通り、「Shanling M3s」は「M2s」に比べていまひとつの注目度ですが、話題になりにくい最大の理由はおそらく「タッチパネルが非搭載」だろうと思います。「M2s」は「低価格DAP」のカテゴリーに入る製品ですので、操作性に問題が無ければタッチパネル非搭載でも機能面や音質優先、ということで理解されやすい「コストと性能のバランスの良い製品」だったと思います。いっぽう「Shanling M3s」の価格帯になってくるとそろそろミドルクラスのDAPが視野に入ってくるため、途端にタッチパネルではないことがウィークポイントに映るのかもしれません。そのため「Shanling M3s」をメインのプレーヤーと考える方は非常に少ないのではないかと思います。

Shanling M3s私自身もすでに数台のDAPを使用しており、「Shanling M3s」はサブ用としての購入です。ただ、サブ用のプレーヤーとしても「Shanling M3s」は、非常に高音質で鳴らしにくいイヤホン・ヘッドホンにも余裕で対応するなど、M2sで感じていた課題をきっちり解決し、さらに音質面にシビアな環境でも本体のみで満足のいくサウンドを実感することができました。またバランス接続での音質も安定しており、バランスケーブルにリケーブル済みのイヤホンをそのまま使える点も有り難いところです。

このように使いやすい性能がポケットに入れていつでも持ち歩けるコンパクトさで実現できている点はなかなかレアな存在といえるでしょう。私自身、じっくり音楽を聴く際には数種類のDAPを使い分けていますが、比類無きスーパーサブのDAPとして、今後も利用シーンは増えていきそうですね。