TRN V10 / TRN BT3

というわけで、前回に引き続き「TRN V10」のレビュー後編です。前編の内容はこちら。
→ 「TRN V10」 話題の最新2BA+2DD格安中華イヤホンの「音の変化」を確認してみた【レビューその①・購入編】

TRN V10前編でも紹介した通り、「TRN V10」は「2BA+2DD」の4ドライバー構成ながらアマゾン価格でもアンダー5,000円の価格設定と、2017年の大ヒット中華イヤホンで私のブログでもおなじみ「KZ ZS6」「ZS5」を彷彿とさせるイヤホンです。
カラーは「透明モデル」と「黒モデル」があり、「黒モデル」については中国のイヤホンセラー「Easy Earphones」のAmazonのマーケットプレイス「WTSUN Audio」にて購入しました。プライム扱いでアマゾン倉庫からの発送ですのでオーダーしてすぐに手元に届くのがうれしいですね。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): TRN V10

また多少到着までに時間はかかりますが、中国AliExpressのEasy Earphonesでの購入もできます。AliExpressの場合は購入時にフォロワー割引を受けられると思います(いつも通り「bisonicr」のキーワードでもOKです)。くわしくはこちらを参照ください。また購入のタイミングでも変わりますが、今後の購入ではAliExpressのほうがより新しい「ロット」の個体を入手できる可能性があります。
AliExpress(Easy Earphones): TRN V10

TRN V10TRN V10
どちらでも各色マイクあり・なしモデルの他、「銀メッキ銅線」の別売アップグレードケーブルなども一緒に購入が可能です。


■長時間エージングでも過剰な刺さりが治らない場合はメッシュパーツを取ってみると・・・( ゚Д゚)

前編でも記載した通り、私の手元に届いた個体は「最初期のロット」ということもあると思いますが、「TRN V10」の開封時のサウンドはお世辞にもバランスが良いとは言い難い、過剰なまでのドンシャリ傾向です。このサウンドは150時間~程度のエージングによりかなり改善されるようですが、個体によっては十分なエージングを行っても曲によってきつめのシャリシャリが消えない場合があります。私も2個購入したうちの1個がエージング後に「左右でシャリつきが違う」とさらに不自然な現象に遭遇し、正直かなり困ったものだと思っていたのですが、実はまったく別の「対策」で解消できてしまいました。

TRN V10TRN V10」ステム部分の金属製のメッシュパーツ(フタの部分)は前編のレビューで若干触れた通り接着があまり強くなく比較的簡単に取れてしまう傾向にあります。今回のレビューのためにいろいろ試している中で、粘着性のあるガーゼでステムを覆ってみようと試みたときフタが簡単にはがれることを確認しました。
そこで試しに両方のメッシュパーツを外して、かわりに前編でも紹介したOSTRYの刺さり抑制効果のあるイヤーピースを装着したところ過剰なシャリつきが大きく改善。念のためイヤーピースを通常のものに戻し、BAドライバーが露出した状態で聴いてみても同様に効果がありました。

また、前編で黒モデルのほうの片方(右側)がメッシュパーツが簡単に取れてしまった、ということを書きましたが、逆に左側はかなりしっかり接着されていました。そして150時間ほどのエージングを行ったところで、左側がある程度エージングでサウンドが落ち着いたのに対し、右側はシャリシャリが一向に治らず、逆にすこし悪化したような印象を受けました。これももしかしたらこのステムのメッシュパーツが原因かも、と思った理由のひとつです。

TRN V10このように、上記のエージングでも解消しなかった問題は「フタを取り除く」ことで解消できてしまいました(びっくり)。あくまで可能性のひとつですが、十分なエージング後も過剰なシャリ付きが収まらない「TRN V10」の個体については、ステム部メッシュパーツの接着不良による「共振」の可能性もあるのではないかと思います。そのためメッシュパーツの周囲を粘度の高い瞬間接着剤等でより強固に接着させたり、私のようにいっそパーツを外してしまってかわりにメッツ付きのイヤーピースを装着することにより「TRN V10の本来の音」になるのではないかと思っています。
もちろん本来はパーツはきちんと接着されている「はず」ですので、上記のようにテープなどで簡単に取れないような個体はエージングだけでじゅうぶんシャリつきは解消できるのではと、思います。ただ、私のように片方のみが接着不良だったりするとエージング後に左右で音が違うというケースもあるので手元の個体の状況にあわせてこの対策を実施するかどうかを検討いただければと思います。


■リケーブル必須、再生環境でも変化? 好き嫌いのわかれる「個性的すぎるサウンド」

TRN V10さて、「TRN V10」の「サウンドが変=不自然」な理由のひとつは上記のように偶然見つけてしまったような気がしますが、エージング後にシャリつきの問題のなくなった個体、または「フタを取り除いた」場合も、再生環境によってはかなり強い刺さりを感じることが多いと思われます。手元のDAPではAstell&Kern「AK300」がいちばん高域の刺さりが少なく、逆に「PRENUE R」がもっとも刺さりが大きくなりました。とはいえメッシュパーツの共振があったときは出力の強いDAPやポータブルアンプで曲によってシャリシャリを通り越して高域のノイズかと思うレベルの音になる場合もありましたが、改善後はむしろメリハリが強化される、という程度の変化になっています。

いっぽうケーブルについては前編でも紹介した通り、より情報量の多いケーブルを使用することで音質面の改善効果が期待できます。前編でも紹介した通りTRN純正の銀メッキ銅線のアップグレードケーブルが販売されており、WTSUN Audioでも購入することができます。またKZ ZS6用のKZ純正8芯ケーブルも思いのほかぴったりで音質的にも相性の良いことを確認しました。
TRN V10TRN V10 / KZ Cable
どちらも2,000円以下とコストパフォーマンスに優れておりお手軽にアップデートするのにはお勧めです。

TRN V10TRN V10
また、Easy Earphoneが主にKZ ZS6/ZS5向けを中心に販売している各種2pinケーブル(詳しくは過去記事を参照ください)を試したところ、「7N 無酸素銅線(OFC)ケーブル」の相性が最も良く感じました。

ちなみにメッシュパーツを取り、リケーブルなどを行った後もそこそこのシャリつきはあるドンシャリ系の音ですが、印象としては「ZS6」より高域の刺さりが多少多くメリハリがあるという印象になりました。相変わらず「派手な音」のイヤホンではありますが、十分なエージングと、情報量の多いケーブルへのリケーブルの組み合わせにより結構楽しいイヤホンになったような気がします。
TRN V10TRN V10 vs KZ ZS5
「フタ」を取ったうえでの「TRN V10」のサウンドであれば、好みはあると思いますが、「ZS6」「ZS5」の対抗馬としてようやく比較できるようになったかな、と感じます。
とはいえ個人的な印象としては、「ZS6」のサウンドのほうが好きですけどね(^^;)。


■apt-X非対応でしたが、なかなかの高音質。TRN純正Bluetoothケーブル「TRN BT3」。

さて、「TRN V10」の発売と同時に純正のオプションとしてBluetoothケーブル「TRN BT3」も発売されています。私はAliExpressより入手しましたが、アマゾンのWTSUN Audioでの購入も可能です。
TRN BT3TRN BT3
パッケージはTRN V10と同じ箱に2pin仕様のBluetoothケーブルと充電用USBケーブルが同梱されています。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): TRN BT3(Bluetoothケーブル)

Amazonでは3,800円、AliExpressでは29.99ドルの表示価格です。AliExpressでは中国からの発送となるため納期がかかりますがV10同様にフォロワー割引が適用できます。
AliExpress(Easy Earphones): TRN BT3 Wireless Bluetooth 4.1 Cable

作りとしてはまんまプラスチックという感じでお世辞にも高級感のあるものではないですが使いまわし自体は悪くはありません。なお、販売当初は「apt-X対応」という記載がサイトに載っていたのですが、実際はBluetooth 4.1ベースで「非対応」でした。そのため対応のDAPでペアリングしてもSBCコーデックでの接続となります。操作時は「Power on」や「Pairing」などの英語の音声ガイダンスが聞こえます。
TRN BT3 / TRN V10TRN BT3 / TRN V10
2pin対応のBluetoothケーブルとしては、昨年AUGLAMOURの「AG-BT1」を購入していますが、年末に投稿した記事でも記載した通りこちらは標準の音量が大きすぎて非常に取り扱いが面倒なケーブルでした。いっぽう「TRN BT3」はそのようなことはなく、音質的にもフラットで2pinタイプのイヤホンを気軽にBluetooth化するうえでは悪くないアイテムだと思います。

また「KZ ZS6」および「ZS5」を接続してみましたが、これらのイヤホンの特徴を損ねることなくBluetooth化することができなかなか便利なアイテムだという印象です。正直「TRN V10」を普段使いするのにはすこしクセが強すぎることもあり、むしろKZやTFZなどの2pinコネクタのイヤホンで使う機会のほうが増えそうな予感です。
TRN BT3TRN BT3
ただし非常に反応の良い「qdc Neptune」あたりのイヤホンとなるととりあえず利用には問題ありませんが、ペアリング後に盛大にホワイトノイズを拾いました。さすがにCIEMなどの利用はちょっと厳しいかもしれません。この辺は製品価格からもある程度割り切っている部分だと思いますので、接続するイヤホンのグレードを合わせればそこそこ良いアイテムだと思いました。


■今後のロットで変更・改善はあるのか。これからも楽しみに見ていきたいですね。

TRN V10というわけで、前回から2回にわたって「TRN V10」(たぶん最初期ロット)のレビューをさせていただきました。
ステムのメッシュパーツを取り除く件は本レビューを書いている途中に偶然気がついたことですが、よく考えたらKZのZSTなどはロットにより初期とはまったく別のイヤホン、と思えるくらいサウンドの変化がありました。「TRN V10」もブランドとしてもまだ新しいイヤホンであり、今後大幅に内容やサウンドが変化する可能性もあります。もし本当にメッシュパーツの接着不良が原因だとしたらTRNのメーカーとしても「本意ではない」と思いますので、今後のロットで何らかの改良が加えられる可能性もありますね。

なんか毎回同じようなことを書いている気もしますが、このような点も「中華イヤホンの醍醐味」だと思いますので今後の動きを楽しみに見ていきたいと思っています。