MaGaosi K3 HD

年末年始をはさんで到着から少しレビューが遅くなりましたが、今回は「MaGaosi K3 HD」です。
いつもお世話になっているアマゾンのでマーケットプレイスを展開する「Kinboofi」さんからの依頼となります。

中国「MaGaosi」(または「HLSX」)は中華イヤホンのマニアの間では比較的お馴染みのブランドのひとつで、代表モデル「MaGaosi K3 Pro」に加え、先日購入レビューした「MaGaosi K5」の紹介記事は現在も私のブログでアクセス数上位をキープしています。またKシリーズ以外にもHLSXシリーズのハイブリッドイヤホンなどを数種類販売しており、いくつかは私のブログでも紹介をしています。
MaGaosi K3 HDとはいえ、同社のイヤホンをよく知る方々にとってはやはり同社最大の人気モデルである「MaGaosi K3 Pro」の印象が強いのではないかと思います。「MaGaosi K3 Pro」(以降「K3 Pro」)も以前のレビューで簡単に紹介をしていますが、個人的にもアラウンド1万円の価格帯ではかなりお気に入りのイヤホンのひとつです。
そして、今回の「MaGaosi K3 HD」は、位置付けとしては「K3 Pro」の別バージョンで、「K3」シリーズとしては「最新モデル」となります。
ただ、「K3 Pro」が「2BA+1DD」のドライバー構成だったのに対し、「MaGaosi K3 HD」では「1BA+1DD」のハイブリッドに変更となっており、一見するとダウングレード版のようにも感じます。しかしKinboofiでも「K3 HD」のほうが上の価格設定となっており、AliExpressでの他のセラーの価格を確認しても同様にMaGaosi K3 HD」のほうが上位版の位置付けになっています。
そんなこともあり、個人的にも「MaGaosi K3 HD」は登場以降とても気になっていたイヤホンのひとつでしたので、今回のレビューは願ったり叶ったりという感じであります(^^)。

購入サイトはアマゾンのKinboofiさんのマーケットプレイスにて。
Amazon.co.jp(Kinboofi): MaGaosi K3 HD

なお、「MaGaosi K3 HD」のカラーについては、Kinboofiでは「メタリックブルー」以外にも「シルバー」「メタリックオレンジ」の3色から選択でき、各色プライム扱いでオーダー後Amazon倉庫から発送されます。


■世代とともにグレードアップしたパッケージ。ウレタンイヤピとシルバーフィルターには理由がある?

届いたパッケージを確認すると、さすがに最新バージョンの「MaGaosi K3 HD」ではしっかりしたパッケージに進化したなあ、という実感を持ちます。同じ「K3」シリーズでも、「K3 (フィルター交換不可版)」→「K3 Pro (グレー/シルバー)」→「K3 Pro (ブルー)」→「K3 HD」と発売時期によって着実にパッケージも豪華になっているのがわかります。
MaGaosi K3 HDMaGaosi K3 HD
また、パッケージ裏面を見ると、「MaGaosi K3 HD」のインピーダンスは32Ω、感度は99dB/mWとなっています。ちなみに「K3 Pro」はインピーダンス16Ω、感度101db/mWですので「MaGaosi K3 HD」のほうがスペックを見る限りでは多少音量が取りにくい仕様となっているようですね。
MaGaosi K3 HDMaGaosi K3 HD

パッケージ構成はイヤホン本体に加えて、別タイプのフィルター、しっかりしたイヤホンホーチ、イヤーピースはシリコンが大・小の2種類(大サイズは装着済み)、ウレタンイヤーピースが大・中・小の3種類、MMCX仕様のケーブルが2種類、説明書など。
MaGaosi K3 HDMaGaosi K3 HD
ウレタンイヤーピースのほうが種類が多い、というのは珍しいですね。オススメはウレタンのほう、という意味でしょうか。
いっぽう、ベント部のフィルターについては「MaGaosi K3 HD」も「K3 Pro」と同じ「ブラウン」と「シルバー」の2タイプが付属しています。「ブラウン」はメッシュのみでダイレクトにイヤホンのサウンドが伝わるタイプ。いっぽうの「シルバー」は裏面に不織布が貼られており、高域の刺さりを抑制するタイプになります。
MaGaosi K3 HD」では標準ではシルバーのタイプが装着されていました。シリコンタイプが少なくてウレタンイヤピが充実していたり、高域抑制タイプの「シルバー」フィルターが標準装着だったりと、一見するとちょっと不思議なパッケージ構成です。この理由は後述する通り「MaGaosi K3 HD」の音質面の特徴と関係があるような気がします。

付属のMMCXケーブルはブラックの撚り線ケーブルと銀メッキ線ケーブルの2種類を同梱。ブラックのケーブルは「K3 Pro」のブルーモデルや「K5」など最近のMaGaosiのイヤホンに付属しているものです。いっぽう銀メッキ線は高域の伸びを向上させたタイプとなりますが、ビニール素材の皮膜の巻きつきが強く、屋外での利用は結構使いにくいかもしれませんね。
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そしてイヤホン本体は「K3」「K3 Pro」と同様に、SHURE SEシリーズを彷彿とさせるデザインのメタルボディ。装着感は非常に良好でしっかりフィットするイヤーピースを選択すれば十分な遮音性も確保できます。


■「MaGaosi K3 HD」の外観を「K3 Pro」と比較してみる

MaGaosi K3 HD」の本体を手元にある「K3 Pro」と比べてみると、フェイス部分のデザインを除き形状自体は全く同じであることがわかります。
MaGaosi K3 HDMaGaosi K3 HD

内部的に異なるのは「K3 Pro」がBA部分がデュアル(2BA)で、「MaGaosi K3 HD」がシングル(1BA)である点ですが、フィルターを外して確認してみるとBAドライバーの装着位置が「K3 HD」のほうがかなり奥に配置されており、セッティングの違いも特徴的です。
MaGaosi K3 HDMaGaosi K3 HD
バラしたわけではないので自分では未確認ですが、「K3 Pro」のBAは「Knowles TWFK-30017」といわれています(形状的にはたしかに30017ぽいです)。同様に「MaGaosi K3 HD」もKnowles製だとすると形状的にはFK(FK-26260など)あたりのBAを搭載している可能性がありますね。


■ケーブルとフィルターを変えて「本性」を現す、MaGaosiブランド随一の愉しいサウンド

MaGaosi K3 HD」は解像度の高さ、分離感の良さとキレ、高域の伸び、という点において同ブランドのイヤホン随一の「愉しさ」をもつ「かなりの逸材」でした。

MaGaosi K3 HD」の周波数特性は他のK3シリーズ同様のドンシャリで、開封直後から100時間〜200時間以上のエージングで低域の厚みが増してくる点も「K3 Pro」と同様の傾向です。しかし「MaGaosi K3 HD」の場合、エージング後の低域は十分な量感はあるものの「K3 Pro」と比べると控えめで、多少フラット寄りの印象になっています。
MaGaosi K3 HDただ、前述の通り、「MaGaosi K3 HD」は標準では高域を抑制するシルバーのフィルターを装着しており、イヤーピースもウレタンタイプのほうが充実しています。この「シルバーのフィルター」「ウレタンイヤーピース」の組み合わせで、さらに「ブラックのケーブル」を組み合わせると、高域の刺さりはある程度抑えられ、さらに低域のボリュームが向上することで多少ウォーム気味の傾向になります。ただし「MaGaosi K3 HD」の場合はこの組み合わせでも高域は一定の伸びと明瞭さは確保していて、「K3 Pro」の場合の刺さりは抑えられる一方で中域に少し曇りのあるサウンドよりクリアな印象を受けます。
この「高域抑制&低域強化」の状態でも、リスニングイヤホンとして多くの人にとって聴きやすいバランスに落ち着くようで、「MaGaosi K3 HD」があえて上記のような「不思議な」パッケージ構成にしている理由がわかるような気がします。

しかし、裏を返せば、これでフィルターをブラウンの標準タイプに換えて「本来の音」にするといったいどのような音になるのだろう? という気持ちになります。
MaGaosi K3 HDというわけで、改めて「ブラウンのフィルター」に変更し、さらに「シリコン製イヤーピース」、「銀メッキ線のシルバータイプのケーブル」に交換します。パッケージに付属するシリコン製のイヤーピースは高域が出やすい開口部の大きいタイプですが、大小2種類のみですので、必要に応じてフィットするサイズのものを用意した方がいいでしょう。同様の傾向のものですとRHAのイヤーピースなどが良い相性だと思います。
実際にこの構成で聴いてみると、全体のバランスとしてはより高域を強調したセッティングとなった「本性」を表します。

標準状態になった「MaGaosi K3 HD」は、「K3 Pro」同様の広い音場を確保しつつ、いっぽう解像度および分離感は「K3 Pro」を軽く凌駕しており、同クラスのイヤホンのなかでもかなり高いレベルを実現しています。
MaGaosiがこのイヤホンに「HD」という名称を付けたのがとても納得のいくサウンドです。

MaGaosi K3 HD高域の伸びも非常に良く「K3 Pro」より近くで定位する印象とあわせてMaGaosiブランドのイヤホンでもっともアグレッシブなサウンドのイヤホンに仕上がっていることがわかります。いっぽうで高域の刺さりはある程度あるものの、シャリつきは「K3 Pro」よりわずかに多い程度に収まっており、ポータブルアンプやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)の相性によってはさほど気にならないレベルにまでコントロールすることができます。
この「標準状態」の組み合わせで「K3 Pro」と双方を聴き比べると「MaGaosi K3 HD」は非常に鮮やか、というかむしろかなり「派手」な印象に感じます。本来は結構派手なサウンドのイヤホンと評される「K3 Pro」が多少おとなしく感じるほどです。もっとも、ある程度出力が強い再生環境だと「MaGaosi K3 HD」のサウンドは少し刺さりが強く感じてしまう場合もあるかもしれませんね。

MaGaosi K3 HDところで、1万円オーバーで中高域が派手なドンシャリ系のイヤホンというと最近では「TFZ EXCLUSIVE KING」を思い浮かべますが、「MaGaosi K3 HD」は全く印象の異なるサウンドで、KINGより相当フラット寄りでモニターライクにさまざまなジャンルの曲で楽しめる印象です。ただ「完成度」のレベルとしてはどちらもかなり近い線ではないかと思います。またシルバーのケーブルはブラックのケーブルより情報量は高めですが、「MaGaosi K3 HD」の本来の能力を発揮しているとは言い難いため、よろしければ過去記事のケーブルのレビューなどを参考にMMCXコネクタ対応のケーブルへのリケーブルもオススメです。
ちなみにKinboofiで販売しているケーブルの中では7N OFC銅線のケーブルゴールドカラーのケーブルが相性が良いのではと思います。


■あえて1BA+1DDにして実現した、「間違いなく」Proからアップグレードしたサウンド


MaGaosi K3 HDというわけで「MaGaosi K3 HD」は間違いなく「K3」シリーズの最新「アップグレード」モデルであることを、実際に比較することで再確認することができました。とはいえ、やはりマーケティング的にはBAドライバー数を減らすことによるダウングレード感は払拭できないのか、「K3 Pro」も引き続き併売されています。アマゾンでも現在「MaGaosi K3 HD」をプライム扱いで販売しているのはKinboofiさんだけですが、おそらく現時点では思ったほどは売れていないでは、という気がします。
しかし、あくまで私の個人的な印象ではありますが、すにで「K3 Pro」を愛用されていて、「MaGaosi K3 HD」のサウンドも気になっていた方には文句なくオススメできるイヤホンだと思います。また新たに関心を持って頂いた方にも、「MaGaosi K3 Pro」と併せて、BAドライバー数にこだわらず若干の割高感を納得いただける方は最初に「MaGaosi K3 HD」から挑戦いただくのも良い選択肢になると思います。とりあえず私自身は「MaGaosi K3 HD」は遮音性も良く使い勝手も良好なので結構屋外での利用頻度が増えそうな予感がしています(^^)。