K's Earphone Ling Brass Cavirt

1月も中旬に近づいていますが、またまた遅ればせながら年末年始に届いたイヤホンのレビューです。今回は「K's earphone Ling Brass Cavirt」というインナーイヤー型イヤホンとなります。こちらは毎度お世話になっている中国のイヤホンセラー「Easy Earphones」からのレビュー依頼となります。

K's earphone Ling Brass CavirtK's earphone」はインナーイヤー型を専門に商品化している中国のイヤホンブランドですが、今回の「Ling Brass Cavirt」とさらに高価格の「Black Ling Brass Cavirt」は同社製品でも明らかに「高級」なグレードを狙ったモデルと言えるでしょう。
AliExpressのEasy Earphonesにて表示価格149ドル(3.5mmコネクタ)で販売されていますが、フォロワー値引きにて120ドルで購入することが可能です(2.5mmバランスコネクタの場合は多少高くなりますが同様の割引があります)。また購入時に「bisonicr」とメッセージを入れていただくだけでも値引き対象になります。AliExpressでの購入・割引方法を含め詳しくはこちらをご覧ください。
AliExpress(Easy Earphones):K's Earphone Ling Brass Cavirt

今回、私が提供を受けたのは表示価格で上記より50ドル高い価格設定になっている「2.5mmバランスケーブル」モデルになります。こちらの仕様での感想は「多少クセはあるもののトータルでは結構まとまっていているサウンド」という印象でした。


■真鍮製ハウジングは(質感も含めて)そのまんま「鈴」でした。

届いた製品は価格相応に高級感のあるしっかりしたボックスケースのパッケージでした。
K's earphone Ling Brass CavirtK's earphone Ling Brass Cavirt

構成はイヤホン本体とイヤーパッドが穴あきタイプが赤・白・黒の3セットと、通常タイプ(黒)が2セット。
K's earphone Ling Brass CavirtK's earphone Ling Brass Cavirt

イヤホン本体は大変美しいクロームメッキ仕上げで見た目は大変高級感があります。
ただ実際に手にしてみるとアルミ製品などの印象とは全く別の種類の「軽さ」を感じてすこしだけ拍子抜けします。本体の材質は真鍮(Brass)素材による金属製とのことですが、かなり薄く成型されているらしく、とても軽量です。試しに左右のハウジングを軽く接触させてみるとカチカチとした軽い音がして、印象としては、お守りとかに付いてた真鍮製の鈴の外側みたいな感じ?でしょうか。たぶんケーブルの方が本体より重量がありそうな印象です。と、思ったら製品名称も「Ling = 鈴」でしたね。「そんまんまかい!」と思わずツッコミをいれてしまいましたが、メーカー自身もそう思って作ってるなら、まあ仕方ないですね(^^;)。
K's earphone Ling Brass CavirtK's earphone Ling Brass Cavirt
ケーブルは、3.5mmコネクタのモデルは樹脂被膜の単線ケーブルのようですが、手元にある2.5mmバランスコネクタの場合手編みの撚り線ケーブルを採用しています。表示価格で3.5mmモデルと2.5mmモデルは50ドルほど差があるのですが、どうやらコネクタと言うよりこのケーブルの価格差のようです。

また、「Ling Brass Cavirt」の上位モデルにあたる「Black Ling Brass Cavirt」(黒真鍮モデル)はゴールドまたはシルバーの撚り線の仕様となっており、2.5mmモデルのケーブル品質としてはこの黒真鍮モデルに準ずるものになっているのではと思います。


■ドーナツイヤーパッドは必須かも。高級機らしい高音質ながら多少クセのあるサウンド

K's earphone Ling Brass CavirtK's earphone Ling Brass Cavirt」はクロームメッキ仕上げのメタルボディで、本体にLRなどの記載はありませんが、ケーブルの接続部分に1本ライン上の彫り込みがあるほうが右側になります(どこにも記載がないので念のため実際に鳴らして確認しました)。そして非常に美しいデザインなのは良いのですが、私の耳の形状ではイヤーパッド無しでは滑ってうまく固定することができませんでした。
以前試聴させて頂いた「MoonDrop Liebesleid」も似たようなメタルハウジングのイヤホンですが(というか今回の「Ling」もこのイヤホンの後追い商品のように思います)、そちらはイヤーパッドなしで装着できたので似て非なるという印象を改めて持ちました。
Ling Brass Cavirt」は「MoonDrop Liebesleid」より装着感としてはひとまわり小さい印象ですね。

K's earphone Ling Brass Cavirtまたイヤーパッドなしで装着しようとしたときにポジションによっては「ハコ鳴り」がひどく感じる場合がありました。またイヤーパッド無しではスイートスポットが見つけにくく、私の場合は、ドーナツ型(穴あきタイプ)のイヤーパッドを使用し、きちんとベストポジションに合わせる必要がありました。たぶんこのイヤホンはイヤーパッドは必須ではないかと思います。
なお「Ling Brass Cavirt」のインピーダンスは195Ω、感度は112dB/mWで抵抗の高さに対し、一方で感度も高くなっているため、iPhone等直結(私の場合2.5mm→3.5mm変換を使用)で真ん中くらいでちょうど良い音量が取れるように調整されているようです。

このように高い抵抗(インピーダンス)のわりに感度が良いイヤホンの場合、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポータブルアンプ等の出力バランスによって音の印象が大きく変わる場合があります。今回の「Ling Brass Cavirt」もバランス接続だったこともあり、DAPの種類や曲によっては多少印象が変わる場合がありました。

K's earphone Ling Brass Cavirt穴あきイヤーパッドを使用し、実際に聴いた印象はグラフェン振動板を採用したイヤホンらしい、解像度が高くスピード感のあるサウンドで、インナーイヤーとしてはかなりメリハリの強い印象を受けます。いっぽうでドライバーと性質とメタルハウジングの効果か、全体的に金属質なサウンドですが、中高域の響きはちょっと軽い音にも感じました。「鈴の音」と言えば聞こえは良いですが、どちらかというと前述した左右を接触させたときの「カチカチ・カラカラ」という軽い音がそのまま反響音になった印象でしょうか。高音の伸びは非常にシャープに出ているのですが、高域成分の特定の音域に反響音と思われる雑味を感じるところが若干あります。
また使用するDAPによっては音量を上げるとわずかに歪みが発生する場合もありました。このようなケースでもシャリつきは少なく刺さりも一般的なレベルで収まってはいるのですが、この雑味の影響か、高域成分の多い曲ではちょっと聴き疲れをする印象を受けました。いっぽう低域は適度な音場感の広がりを感じつる締まりのあるサウンドですが、こちらもDAPによってはドラムなどの低域は重く沈み、音場も少し狭くなる印象があります。

K's earphone Ling Brass Cavirtただ、多少雑味はあるものの全体的なサウンドバランス自体はまとまっており高級モデルらしいイヤホンに仕上がっているとは思います。ただ、今回使用している2.5mmバランスモデルは表示価格で200ドル近くと決して安くはない価格ですので、その視点で辛めに評価するとまだまだツメの甘さを感じたり好みが分かれそうなのも事実です。もっとも、これで3.5mmモデルの120ドルという価格を前提に考えると好みによっては「結構アリ」という感じになります。両モデルのケーブルの違いでどの程度の音質差があるのか、あるいは個体差なども存在するのか、この辺は機会があれば追加で確認してみたいところですね。


ところで、インナーイヤー型のイヤホンは従来からの10ドル~20ドル程度のラインに有名無名の主要なモデルがひしめくいっぽうで最近は今回の「K's earphone Ling Brass Cavirt」のような高価格帯の製品も次々と登場しており、中間付近の価格帯の製品が非常に少ない、ちょっといびつな状況になっている気もします。
とはいえ今後このような製品に注目が集まることで、インナーイヤー型でも高価格帯の製品同士での切磋琢磨や淘汰が進むか、カナル型のように50ドル〜100ドル付近の製品が厚くなることで連動して高価格帯の底上げにつながる、といった製品の進化につながってくれるといいなと思います。