Zishan Z3

とってもコンパクトな中華デジタルオーディオプレーヤー(DAP)、「Zishan Z3」です。DACチップにAK4490を搭載したDSDにも対応するハイレゾプレーヤーで5千円程度の低価格を実現しています。
Zishan」というとこれぞ中華DAP感満載の「Zishan DSD」やコンパクトの既存モデルの「Zishan Z2」など、とにかく「玄人」な方々限定でやたら評判の良いプレーヤーを出しているメーカーです。

Zishan Z3今回の「Zishan Z3」もZ2同様に非常にコンパクトなボディに高性能なDACチップ等を搭載し、最大32bit/192kHzのハイレゾ音源やDSDを含む多くのフォーマットに対応しています。さらに「Z3」では英語I/Fおよび日本語ファイル・フォルダ名表示に対応した小さい液晶画面を搭載することで、親しみやすい操作性も「ある程度」実現したモデルとなりました。とはいえ、デザイン的には「Zishan DSD」の小型版という趣で、いかにも「中華DAP」という結構な「あやしさ」を感じますし、オペアンプの交換が可能などマニア向けの楽しさも持っています。いっぽうで音質面のクオリティも日本円換算で5千円程度の低価格な製品ながら相当に高く、「いろいろ納得できれば」本当にお買得な製品だと思います。

購入は毎度お世話になっているAliExpressのEasy Earphonesより。表示価格は53.99ドルとなっていますが、フォロワー値引きを適用すると 42ドル での購入が可能です。また購入時に「bisonicr」とメッセージを入れていただくだけでも値引き対象になります。AliExpressでの購入・割引方法を含め詳しくはこちらをご覧ください。

■5千円程度の価格とは思えない本格的なスペックと機能性


Zishan Z3」はDACチップに「AK4490」を搭載し、32bit/192kHzまでのPCM(WAV・FLAC・ALAC・AAC・MP3・WMAなど)に加え、DSD256までのDSD(DSF・DFF・DSD-ISOなど)のネイティブ再生にも対応したハイレゾ対応DAP(デジタルオーディオプレーヤー)です。
1万円以下のハイレゾ対応プレーヤーというのは日本にもありますが、DSDも含めてここまで「ちゃんとしたスペック」の製品が5千円そこそこで購入できるのはかなり驚異的ですね。

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ただし、実際に届いた製品は「いかにも玄人向け」で、特にパッケージなどもなくシュリンクに本体とUSBケーブル(充電・PC接続用)のみという超シンプルな内容。もちろん取扱説明書等もありません。

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そして「Zishan Z3」本体も画面上部の小さな液晶パネルと上下・左右・中央の5つのメカニカル式ボタンといういかにも中華感あふれるシンプルな外観です。本体上部にはイヤホン端子(PO/Phone Out)とラインアウト(LO/Line Out)の3.5mmステレオ端子があり、下部はmicroUSB端子およびmicroSDカードスロットと電源スイッチがついています。

Zishan Z3」のサイズは60mm×50mm×20mm、重量84g。手持ちのコンパクトなDAPである「Shanling M2s」(同85.6×53×14.5、100g)と比較してみると、長さは「Zishan Z3」のほうがひとまわり以上小さく軽く、いっぽうで厚さは「Zishan Z3」のほうが少し分厚いのがわかります。
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音楽データをコピーしたmicroSDカードを挿入し、電源をONにすると数秒で起動し、自動的に再生がスタートします。確認した限りでは256GBのmicroSDXCカード(Samsung製)でも問題なく認識しました。また、曲データは日本語のファイル名およびフォルダ名でも問題なく表示されます。タグ情報には対応していないため、microSDにコピーする際にフォルダ名やファイル名を分りやすくするなどの工夫をすれば大量の音楽データをいれたカードの利用でも操作に支障は少ないと思います。


■「Zishan Z3」の操作方法を簡単にまとめてみた

上記の通り「Zishan Z3」には取扱説明書はついていませんので操作方法を簡単にまとめてみます。といっても書くほどの内容はあまりないのですが。

まず、購入時の表示言語は中国語ですが英語にも対応しており変更が可能です。
表示言語の変更などの設定変更は、「microSDを入れずに電源をON」にすることで各種設定メニューの画面になります。またカードが入っている場合は「再生画面で左ボタンを長押し」でも同じ画面になります。
中国語メニューの場合、左右ボタンで「系统设置」を選び中央のボタンを押します。
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ここで言語を「English」に変更してから、中央のボタンを押せばメニューが英語に変わります(以降は英語メニューにて設定を確認します)。
各種設定の画面にはファイル内容を参照する「Explorer」、イコライザ値設定の「EQ」、DACモードおよびデジタルフィルタを設定する「DAC」といったメニュー項目があります。
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非常にシンプルな設定内容ですの表面のボタン操作のみで直感的に設定が可能だと思います。
最後に「Play Now」でいちど再生画面に移動する操作を行うことで言語設定の変更が保存され次に電源を入れ直したときも設定内容が反映されます。特に表示言語はこの操作をしないと電源を入れ直した後に変更前の表示に戻ってしまう場合があるようですね。

microSDカードを挿入した上で電源をONにすると、カードの読み込みが行われ再生が開始されます。最初にカードを入れたときは冒頭からですが、次に電源を入れ直すと前回再生していたファイルからになります。曲名表示は1行目がフォルダ名2行目が再生中のファイル名です。また上下には曲データの種類や曲の進捗、ヒストグラムなどコンパクトな画面ながら十分な情報が表示されます。

Zishan Z3再生画面でのボタン操作は

中央ボタン 再生/一時停止
右 ボタン 1回押し:次の曲へ 長押し:早送り
左 ボタン 1回押し:前の曲へ 長押し:設定メニューへ
上 ボタン 音量・再生設定画面へ
下 ボタン ファイル参照(Explorer)
となっています。


上ボタン」を押して音量・再生設定画面の画面にはいると、上下で音量調整右が再生モード変更(単曲、フォルダ単位、全曲およびシャッフルする/しない)、左がイコライザのON/OFFの設定となります。
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また、「下ボタン」でファイル参照(Explorer)画面にはいると、上下でファイル移動左がフォルダ移動右が再生画面に戻るボタンとなり、ファイルを選び中央のボタンを押すと再生(Play)または削除(Del)が選べます。
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ちなみに表示言語が中国語(簡体)モードと英語モードの対比は以下のようになります。

Zishan Z3全部 All 単曲 Only One
文件夹 Folder
循环 Order 随机 Shuffle

播放 Play 删除 Del

EQ已开启」 : EQ ONedd
EQ已关闭」 : EQ OFFed

以上が「Zishan Z3」の操作方法です。一度分ってしまえばシンプルな画面ながら普通のDAPとしてひと通りの操作はできると思います。


■反応のよいイヤホンでもホワイトノイズなし。AK4490らしいクリアなサウンドを実現

Zishan Z3」の内部構造は、DACチップに「AK4490」を搭載しているほか、LPF(ローパスフィルタ)に「OP275」、ヘッドホンアンプに「LM4562」のオペアンプをそれぞれ搭載しています。また「LM4562」は交換が可能になっています。
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実際に聴いてみた「Zishan Z3」のサウンドですが、気がつくとAK4490系DACを搭載したプレーヤーばかり持っている気がしますが、それらと比較しても味付けの少ない非常に素直なサウンド、という印象です。AK4490を搭載したDAPは総じて解像度が高い印象がありますが、「Zishan Z3」も想像以上にS/Nが高く描写がしっかりしていることに驚きました。5千円くらいでこんな「ちゃんとした音」がでるんだ~と思わず感心しきりです。
さらに「Shure SE535LTD」や「qdc Neptune」といった非常に感度の高いイヤホンでもホワイトノイズが全く発生しないのも驚きです。「Zishan Z3」のボリュームは最大31までの調整となりますが、これらのイヤホンでは15~17くらいの音量で使用することができました。
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いっぽう高い出力が求められる「AKG K712 Pro」や「RHA CL750」でも25程度のボリュームで十分な音量を取ることができました。非常にコンパクトなサイズですが、なかなかの実用性の高さです。

また、「Zishan Z3」のヘッドホンアンプ部に搭載されるオペアンプ「LM4562」は交換が可能です。精密ドライバーで上下のフタを外すと簡単に基板が露出し、ソケット挿しになっている「LM4562」の交換が可能です。自分に合った音のオペアンプへ交換することで「Zishan Z3」の標準のサウンドより厚みや濃度を増したり、さらにメリハリを高めたりなどより好みの音に変化させることが可能です(私は手持ちの「OPA2604AP」へ交換しました)。「OPA2604AP」の場合、交換により解像度の高さやクリアさは維持しつつLM4562より音場に厚みがでて音が少し濃くなった印象を受けます。
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いっぽう、ラインアウト(LO)端子へポータブルアンプを接続するのも手っ取り早い方法です。上記の内部構成図をみると、ラインアウト端子はヘッドホンアンプ部を経由せずLPF(ローパスフィルタ)から直接つながっており、内蔵アンプの代わりにポータブルアンプを使用できる構造になっています。ラインアウト出力もボリュームによって音量が変わるため、ポータブルアンプを接続する場合は音量を最大値(=31)にします。手持ちのコンパクトなポータブルアンプ「ALO Rx」と組み合わせて使用してみると改めて「Zishan Z3」の小ささを実感しますね。

なお、ポータブルプレーヤーとしてだけでなくPC/MacにUSBケーブルで接続することで小型USB-DACとしても使用することが可能です。ただし利用できる周波数は16bit/48kHzのみとなるため利用は限定的だとは思いますが、iTunesなどのプレーヤーからの再生で使用では良いかもしれませんね。利用方法は上記の設定画面に入り「DAC」メニューでUSB-DACをONにします。あとはPCやMacに接続すればドライバーなしで認識し使用できるようになります。
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(追記)ところで、「Zishan Z3」は購入時のファームウェアのバージョンは「0.1」だったのですが、「0.2」という少しだけ新しくなったものが出ているということでしたので早速アップデートしてみました。
ファームウェアは こちら にありました。
ただファームウェアの置いてある「百度网盘」は通常の方法ではダウンロードできないようなので、ネットで見つけた以下の記事を参考にダウンロードしてみました。

百度网盘[百度雲/百度云]を登録&ログインなしでダウンロードする方法
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ダウンロードした「ZiShan_Z3_0.2.rar」を解凍し、「z3app.bin」ファイルをmicroSDのルート直下にコピーします。また同じところにイコライザーの設定テンプレートも置いてあったので、こちらも解凍したフォルダをコピーしました。あとはmicroSDを本体に挿入して起動すれば自動でファームウェアの更新が行われ、バージョン「0.2」へ更新されました。
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またイコライザも「Explorer」で参照し読み込むと設定が反映されEQ設定が自動でONになるようです。ダウンロードしたテンプレートにはさまざまなイヤホン・ヘッドホンなどに最適化した180種類のテンプレートが入っていました。なかなか楽しそうなので後日じっくり遊んでみたいと思います(またテンプレートもテキストファイルでしたので自作も可能そうです)。



というわけで、「Zishan Z3」はとてもリーズナブルながら十分に実用的な機能性および音質で、さらにいろいろ「遊んでみる」こともできるDAPでした。さすがにメインプレーヤーになる存在ではないですが、バッテリーの持ちもそこそこ良いようですので外出先のお供にひとつ購入してみるのも面白いですね。