KZ ZSR

というわけで、日本でも低価格中華イヤホンメーカーを代表する存在になった「KZ (Knowledge Zenith) 」ブランドの最新モデル「KZ ZSR」がいよいよ日本でもアマゾンを中心に購入ができるようになりました。

KZ ZSRKZ ZSR」は2DD+1BAハイブリッドドライバーをクリアな樹脂製ハウジングに搭載したモデルになります。全体の印象としては、従来のKZ製イヤホンのなかでも特にボーカルを中心とした中高域にフォーカスしたと思われるモデルで、最近のKZらしい派手めのサウンドながら聴きやすいバランスにまとめられた良い仕上がりのイヤホンだと思います。
ちなみに、よく似た形状で2DD+2BA構成の「TRN V10」が販売時期で多少先行した点と、中国の通販サイト「GearBest」にて「KZ ZSR」の先行販売が行われたこともあり、話題性という点では昨年の「ZS6」や「ZS5」の発売当初に比べると静かなスタートという感じですね。

中国AliExpressでの「HCK」など主要ショップでの表示価格は 27ドル(マイク無しモデル)ですが、「HCK」(@hckexin)および「Easy Earphones」(@hulang9078)では大幅なフォロワー値引き等を受けることが可能です。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): KZ ZSR
AliExpress(Wooeasy Earphones Store): KZ ZSR

そして1月25日以降の「KZ ZSR」の本格販売開始後からは、「HCK」(NICEHCK)をはじめとする主要なショップが相次いでプライム扱いでのアマゾンでの販売も開始しています。
Amazon.co.jp(NICEHCK): KZ ZSR
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KZ ZSR
Amazon.co.jp(Kinboofi): KZ ZSR

毎回書いていることで恐縮ですが、KZのイヤホンは優れたサウンドを驚異的なコストパフォーマンスで実現している反面、「個体差」や「当たり外れ」が存在するメーカーでもあります。そのような点を考慮すると上記のショップは販売実績数も非常に多く、初期不良などにも返品交換などの対応をしっかりしてくれるため、初心者の方でも安心して購入できると思います。また上記のショップについてはTwitterにて特価情報が頻繁にツイートされますので、それぞれのアカウントをこまめにチェックすることでよりお得に購入できる可能性もあります。


■装着性のよい樹脂製デザイン。2BA+1DDのレイアウトは順当なバリエーション進化?

KZ ZSR」のパッケージは最近のKZイヤホンの定番の白箱。ZS6と同様にシルエットイラストのタイプののパッケージになります。
KZ ZSRKZ ZSR
パッケージの側面を見ると今回発売されたグリーンとブラック以外にも写真公開時に出ていたレッドおよびホワイトも選択肢に入っており、近いうちにこれらのカラーが登場することも予感させます。
KZ ZSRKZ ZSR
パッケージ内容はマイク付き、マイク無しモデルともケーブル違い以外はS/M/Lのイヤーピース、説明書、保証書といった毎度おなじみのシンプルな内容。
KZ ZSRKZ ZSR
グリーンは非常に発色の良いクリアカラーで人気を博しそうです。また光沢のあるブラックも普段使いには便利なカラーですね。

KZ ZSR」で搭載されるドライバーはステム部分に最近のKZイヤホンで定番の同社製の高域用BA「KZ 30095」の刻印が確認できました。 ただ未確認ですがネット上では高音域用の「KZ 30095」と中音域用の「KZ 50060」を並列で装着しているという記述もあり、確かにサウンド的にはこのほうがしっくりくる気もします。ちなみによく似たデザインの「TRN V10」は過去記事の通り(高域用=ツィーターの仕様の)Bellsing製デュアルBAを搭載していましたので、両社のイヤホンは音質面でも明確な違いがありそうです。ダイナミック部分は10mmのドライバー(低域用)を装備しています。
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単純にドライバー構成だけで考えると、「KZ ZSR」は「KZ ZS6」「ZS5(新)」の2BA+2DDから中高域用の6mmドライバーを除いて2BA+1DDにした内容、というイメージでしょうか。逆に1BA+1DDの「KZ ES3」にBAを1個追加し中高域を厚くした構成、という見方もありますが(^^;)。内部構造的にはKZ製の最近のイヤホンと比較しても順当なバリエーション展開、という感じがします。これが音質面でどのように反映されているか興味深いところです。

ちなみに、「KZ ZSR」が届くまではネット上で「TRN V10と同じシェル形状ではないか」とか「ZS3と同じでは」といった憶測が流れましたが、実際にこれらのイヤホンと比較してみると結構異なるデザインであることが確認できます。
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「TRN V10」については先日のレビューでステム部分のメッシュパーツを除去してしまったのですが、「KZ ZSR」はより目の細かいメッシュ部品がしっかり固定されています。
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また、TRN V10と比較した場合、接着面で上下のパーツのうちステム側については「KZ ZSR」とよく似ていますが、TRN V10のステムは筒状でイヤーピースをフックする部分が無いのに対し、「KZ ZSR」は先端部分に小さな「ひっかかり」が成型されており、イヤーピースが取れにくい工夫がされています。ひとつのイヤホンブランドでも個々の構成部品は複数の部品メーカーから調達していると思いますが、実際に比較してみるとこのような細かい部分でコストをかけずにポイントを押さえている点にKZのこだわりのようなものを感じますね。


■ボーカルが映える中高域メインの聴きやすいサウンド。「ES3」「ZS6」とは好みで使い分けたい。


KZ ZSRKZ ZSR」の周波数特性は最近のKZ製イヤホンのパターンを踏襲した弱ドンシャリ傾向。「KZ ZS6」とも共通する「派手さ」も感じるいっぽうで、ボーカルなど中高域の質の良さと聴きやすさに重点を置いたようなバランスが印象的です。高域の伸びは良く適度な刺さりがありますが、長時間のリスニングにも聴き疲れしにくい程度にコントロールされています。
なお、今回も100時間程度のエージングを実施し、リケーブルを行ったうえでのレビューとなります。ただ、「KZ ZSR」は箱出し直後でも本来のサウンドに近いレベルになっており、長時間エージングでの変化は限定的でした。以前のKZ製のイヤホンは箱出し直後と長時間エージング後ではかなり印象が異なっており、100時間~200時間くらいのエージングは必須、と私自身書いていたのですが、最近の「KZ ES3」辺りから箱出し直後でも本来のサウンドに近いレベルの音が出るようになっています。私のレビューの中でも現在も上位のアクセス数がある「KZ ZS6」についても、グレーモデルが出た時期以降のロットでは同様にエージングなしでも問題の無いサウンドになっているようです。

KZ ZSRただし「KZ ZSR」では、解像度および出力がある程度以上のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)の場合、付属イヤーピースと付属ケーブルを使用すると全体的にもやのかかったような雑味を感じる事が多くなりました。私のブログでもKZのイヤホンについてはこれまでもリケーブル等については「必須」としてきましたが「KZ ZSR」は特にその変化が顕著に表れますので、最初から交換を前提とされることをオススメします。イヤーピースは、定番の「final E」シリーズの他、最近人気のあるAcoustuneのATE07などが良いと思います(わたしはfinal Eシリーズが今回は気に入りました)。リケーブルについては後述しますが低価格でオススメなのはKZ純正の銀メッキ線アップグレードケーブルでしょう。

ところで、2BA+1DD構成の「KZ ZSR」は、昨年後半に発売された「ES3」(1BA+1DD)、「ZS6」(2BA+2DD)に対して、ちょうど中間にあたるモデルです。しかしこれら3つのモデルはグレードの違いと言うよりはそれぞれのドライバー構成に合わせて「狙っている音の作り方が違う」という印象を受けます。もちろん内部的な調整はあるはずですが、よくもまあドライバーの増減だけでこうも異なった音作りができるものだと感心してしまいます。

KZ ZSR3つのイヤホンを比較すると(3つとも同様にKZのアップグレードケーブルでリケーブル済み)、ほかの2モデルと比較して「KZ ZSR」は「聴きやすさ」に重点を置いたモデルという印象を受けました。
最も特徴的なのは中高域で「ボーカル映え」という点ではこの3つのイヤホンの中でも随一だと思います。3つのイヤホンに共通する「KZ 30095」というBAドライバーは、型番の元になっているKnowles 30095が高域用のツイーターユニットで、同様に「KZ 30095」も「ZST」や「ES3」等のモデルではフルレンジで稼動する10mmダイナミックの高域を補完する役割を担っています。この「KZ 30095」BAが1個の「ES3」と比べて「KZ ZSR」で追加されたBAが中音域用のBA(50060)だとすると、より中高域が分厚くなりボーカルなどの歪みが少なくなっている点は納得がいくところです。いっぽうで「ES3」は「KZ ZSR」よりスッキリしたドンシャリでボーカルは少し遠くで定位するものの、この3つの中ではもっとも「抜けの良い」クリアな印象を受けます。「ES3」のクリアサウンドを中心に比較すると、派手すぎる「ZS6」は論外で「ZSR」も中途半端な印象を受けるかもしれません。
KZ ZSRKZ ZSR
また「ZS6」は「KZ ZSR」と比較するとハウジングの設計やネットワークがはるかに複雑なイヤホンで、高域用の「KZ 30095」をデュアルで搭載する上に、6mmダイナミックドライバーが追加されることで中高域の「派手さ」が前面に出たサウンドに変化しているのが分ります。そのため「ZS6」のサウンドを中心に考えると「KZ ZSR」はメリハリが足りない、とかもっとアグレッシブな高域が欲しい、と思えるかもという気がします。
しかし適度な広さの音場感をもちつつ、長時間のリスニングでも聴き疲れしにくいバランスを維持しつつロックやポップス、アニソンなど多くのジャンルのボーカル曲をメリハリのあるサウンドで楽しみたい、という用途には3つの中で間違いなく「KZ ZSR」が最適だと思います。この3種類はKZ自身がおそらく意図しているように良し悪しではなく「好み」で選ぶものなのかなと思いました。


■とにかく「ZSR」はリケーブルが必須!! まずはこのケーブルを利用しよう。

KZのイヤホン製品は本体部分のコストのかけ方に対してケーブルは最低限度の品質のものを付属させるのみ、というパターンを貫いています。いっぽうでKZ自身がさまざまな種類のアップグレードケーブルを発売していることから「付属ケーブルにはコストをかけていない」ということをほぼ認めている状況です(日本を中心にアップグレードケーブルの需要が多いから、という側面もあると思いますが)。
そして今回の「KZ ZSR」についてはリケーブルによる影響がかなり顕著で「リケーブルしないと本来の音にならない」と言っても過言ではない、という印象です。

KZ ZSRKZ ZSR」のリケーブルをKZ純正のアップグレードケーブルで行う場合、「KZ ZST」「ES3」用のコネクタ形状のケーブルが使用できます。細い撚り線タイプのものもシルバー、ゴールド、ブラウンなどのケーブルが販売されていますが、現在もっともオススメなのは、上記でも使用している少し太い8芯の銀メッキ線タイプのアップグレードケーブルです(ネットでは「きしめんケーブル」等とも呼ばれているみたいですね)。アマゾンでも2,000円程度で購入できコストパフォーマンスが非常に高いのが魅力です。このケーブルを「KZ ZSR」で使用すると標準ケーブルで感じた「雑味」のようなものがかなり軽減され明瞭感がはっきりと向上します。

いっぽうでKZ純正ケーブル以外にも、CIEM仕様の2pinケーブルを利用することが可能です。こちらについてはKZシリーズに最適なケーブルを含め、過去記事(「前編」「後編」)にて2回に分けて紹介していますのでよろしければ参照ください。
さらに今回は「KZ ZSR」のリリースと同時に「HCK」から販売開始された「6N 銀メッキ高純度銅線」のバランスケーブルを購入しました。
Amazon.co.jp(NICEHCK): NICEHCK 6N 銀メッキ高純度銅線イヤホンケーブル

実際に届いたケーブルを確認すると、非常に柔らかいクリアーの被膜に覆われた撚り線ケーブルで、思っていたより太さもありました。アマゾンで3000円~程度で販売しているケーブルとしてはクオリティも上々だと思います。当然のことながら使い回しの良さではKZのアップグレードケーブルを上回っており、音質面では上記のKZ製ケーブルより明瞭度の向上にさらに効果があると思います。また2.5mm/4極または4.4mm/5極のバランスケーブルが選べるのも嬉しいところですね。バランス接続にすことこで高域の伸びがさらに向上しキレが良くなる印象があります。
NICEHCK 6N銀メッキ銅線ケーブルNICEHCK 6N銀メッキ銅線ケーブル
ただし、このケーブルの2pinコネクタは一般的なCIEM用(切り込み付きの出っ張りがあるタイプ)ではなくKZやTFZ等の製品向けだったのですが、私のところに届いた2pinタイプのこのケーブルは極性を示すマーキングがなく、正しい極性でイヤホンに装着できるかがいまいち不安なものでした。
KZ ZSRNICEHCK 6N銀メッキ銅線ケーブル
念のためテスターで極性を調べたところ、ケーブルの左右の分岐点からねじらずにまっすぐ伸ばした状態で左右が揃う向きに置いた状態で以下の写真のような極性であることが確認できました(写真のコネクタは私自身で左右にマーキングをしています)。極性と一緒に書いてある「上」というのは「KZ ZSR」などで装着したときに上方になるように+の極性を接続する、という意味です。もちろんいったん正しく装着できれば使用上で不具合があるわけではないので、購入された際は確認の上ご利用いただければと思います。※現在は片方にブルーのマークが付いているため判別できるようになっています。なお、このコネクタ形状の2pinはqdc仕様の極性のため、マークが付いている方のピンが「-」となります。


■今年のKZはインパクトより手堅いスタート。今後の展開はどうなるか楽しみ

というわけで、今回の「KZ ZSR」はZS6/ZS5のときにように「パ○リ」的な要素のない、KZオリジナルのモデルということもあり、個人的にはより多くの人にオススメできる良いイヤホンに仕上がっていると思います。ただ、ネット上で「この価格ならまあアリかな」的な雰囲気のツイートなどを見ていると、それだけ昨年のZS6等の登場インパクトがとんでもなかったのだな、とも感じます。
KZ ZSR確かにこれらのモデルの「前例」があるだけに、「KZ ZSR」はインパクト勝負な要素は少なく「割と手堅くまとめてきたな」という印象になってしまうのは仕方がない気はします。
冷静に考えれば「2BA+1DD」でしかもかなり「ちゃんとした音」にまとめられたイヤホンがこの価格で購入できることは十分に凄いことです。しかしKZ自身が低価格中華イヤホンの代表的なメーカーとなって、多くのユーザーやファンを抱えるようになった現在、それだけ期待値はどんどん高まっているということだと思います。今後KZが高まるファンのニーズにどんなスタンスで望んでいくのかが楽しみではあります。

ちなみに「KZ ZSR」自身もまだ白と赤のカラーは出荷されていませんが、KZ恒例のロットによるブラッシュアップにより標準ケーブルで特に感じた雑味の部分も解消されていく可能性もあります(個人的には樹脂製のシェルへのドライバーの装着方法とか、BAの配置とか、その辺に改良余地がありそうな気がします)。とりあえず私のブログでももうしばらくはユーザーのひとりとしてKZのイヤホンの今後を追い続けていきたいと思います。