dodocool DA134 / NEXUM AQUA

というわけで、前回に引き続きスマートフォン用高音質オーディオアダプタのネタです。前回の「SMSL i2」はLightning接続のiOSデバイス用でしたが、今回はAndroidデバイス用、というよりUSB-Cコネクタ対応デバイス用ですね。iPhoneはイヤホン端子を廃止してからわりと経ちますが、最近は「ハイレゾ対応スマホ」の先陣を切っていたはずのソニーも最新のXPERIA XZ2でイヤホン端子を廃止するなど(上位モデルのPremiumでは搭載するらしいですが)、Android系でも「付いてないのが普通」に向かっているようにも見受けられます。
というわけで、利便性をを維持しつつ、Androidでもより高音質で音楽が聴きたい、というニーズにはコンパクトなオーディオアダプタがポイントになってきそうです。特にハイレゾ音源への対応へのニーズはむしろiPhone用(Lightningコネクタ)より高くなってくるかもしれませんね。

私自身はすでにAndroid用(OTG=On The Go対応)のmicroUSBコネクタのハイレゾ対応オーディオアダプタ製品はいくつか持っていますが、最近は使用するスマートデバイスもUSB-Cコネクタが中心になっていますので変換コネクタなしで使えるものを、ということで購入してみました。
今回は「dodocool DA134」と「NEXUM AQUA」の2種類をどちらもアマゾンで購入しました。実際に使用しての感想は両者で想像以上に明暗が分かれる結果となりました。


■「dodocool DA134」/駆動力もあり音質は良好。採用チップはAK4430ET & SA9123。

まずは、「dodocool DA134」。こちらは最近のAndroidスマートフォンで多く採用され始めている「USB-C」コネクタ対応のオーディオアダプタです。もちろんスマートフォンに限らず、USB-Cコネクタを搭載したMacBook/MacBook Pro等でも利用することができます。本体にハイレゾ対応マークが貼られているとおり、24bit/192kHzまでのハイレゾに対応します。
こちらはアマゾンで5000円ほどで購入しました。
Amazon.co.jp: dodocool DA134

dodocool」は中国のブランドですが、オーディオというよりガジェット全般を取り扱うメーカーという印象ですね。同社サイトをみるとオーディオアダプタは数種類販売されており、Lightning対応の「DA133」というモデルもあります。こちらも本体デザインはよく似ていますがUSB-C用の「DA134」とは表面のボタンレイアウトだけでなく基板のレイアウト(さらに搭載チップも)異なるようです。また「DA133」には給電用ポートがありますが「DA134」はイヤホン端子のみのレイアウトとなっています。
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本体サイズは長さ68mm/幅19mm/厚さ9mm、ケーブル部分の長さは12cmとなっています。
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前回紹介した「SMSL i2」同様に3.5mmステレオ端子はマイクリモコンの4極対応となっています。スマートフォンに接続してみると少し大きさを感じますが装着したまま持ち歩いてもなんとか支障の無い範囲だろうと思います。

ところで、Android側はGoogle Pay Music等の音楽アプリをはじめSpotifyやAmazon Music、Apple Musicなどのストリーミング系アプリは接続すれば特に設定等は不要でそのまま「dodocool DA134」から出力されます。ただし、オンキヨー「HF Player」(ロック解除済み)やラディウス「NePlayer」、「USB Audio Player PRO」などUSB-DAC接続によるハイレゾ再生に対応したプレーヤーの場合はAndroid標準のドライバーを使用せずにアプリ用のドライバーでの接続を促されます。同種のアプリを複数使い分けている場合は、アプリを使用するごとに接続し直してドライバーの読み込みを行います。
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ちなみにスマートフォン用のハイレゾプレーヤーといえばiOSでもAndroidでも「HF Player」や「NePlayer」が定番ですが、Androidの場合はUSB-DAC利用に特化した「USB Audio Player PRO」がかなりマニアックなチューニングができるので個人的にはとても気に入っています(価格も少し安いですね)。BitPerfectモードや各種チューニングなど、普段MacやPCで「Audirvana Plus」「JRiver Media Center」「foobar2000」などをゴリゴリ設定して使っている方にはかなりお勧めです。またNASでUPnP(DLNAのことです)でミュージックサーバを構築していればWi-Fi経由でネットワーク再生も可能です(iOS版のNePlayerも同様の事ができますがAndroidのハイレゾプレーヤーではUSB Audio Player PROくらいですね)。

dodocool DA134というわけで、「dodocool DA134」で「USB Audio Player PRO」と「HF Player」によるハイレゾ再生、さらに「Apple Music」アプリによるストリーミングを試してみました。
dodocool DA134」の音質傾向は多少メリハリの効いたサウンドではあるもの全体的にバランス良く、全体的に聴きやすい印象です。「SE535LTD」やマルチBAの「MaGaosi K5」などを使用すると多少ホワイトノイズが発生しますが通常のイヤホンであればそれほど気になるレベルではありません。またヘッドホンの利用でもAKG K712 Proを使用した場合も特に歪みなどは無く十分な駆動力を確保することができました。

ところで、「dodocool DA134」はDACチップ等のスペックは公開されていませんが、精密ドライバーを使えば簡単に分解できそうなので、とりあえずバラして確認してみました(保証外となるのでよい子はマネしないでね!)。
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基板みると、DACチップにはAKM「AK4430ET」、USBインターフェース部にはBRAVO「SA9123」が採用されていることが確認できます。おっと、AK4430ETとSA9123の組み合わせと言えば、エレコムの「EHP-AHR192」と同じ構成です。ということで両者の音の違いを確認してみました。

dodocool DA134dodocool DA134」と「EHP-AHR192」の比較では、接続時のゲインは「EHP-AHR192」の方が若干高めに設定されています。そのためか両者の音質傾向は当然のことながらよく似ていますが「EHP-AHR192」のほうがよりメリハリが強く、解像度的には「粗さ」を感じる一方で「dodocool DA134」のほうは適度なバランスにコントロールされている印象がありました。同様なチップを使っていてもチューニングで結構違いが出るものですね。この音質で5千円程度という価格設定はなかなか魅力的です。ただし、「EHP-AHR192」もちょっと古い製品で定価ベースではかなり割高ですが、在庫処分価格というかアマゾン等では現在非常に安価に購入できるので、その価格なら逆にお買得かも、という気もしますね。


■「NEXUM AQUA」/ ファームウェア制限ほか課題あり。期待値が高かった分、残念さも倍増?

そして次に紹介するのは「NEXUM AQUA」です。「NEXUM」はメーカーサイトを見たところ台湾メーカーのブランドらしく、日本では販売されていないモデルも含めいろいろなオーディオガジェットを販売しているメーカーのようです。同社からは「AQUA+」という製品もありますが、こちらは「AK XB10」のような高音質Bluetoothワイヤレスレシーバー/ヘッドホンアンプで全く用途的には異なるようですね。
NEXUM AQUAいっぽう、今回購入した「NEXUM AQUA」はメーカーサイトによるとUSB-C以外にもmicroUSBとLightningコネクタ仕様が販売されているようですが、アマゾンではUSB-CとmicroUSBタイプのみを取り扱っていました。またUSB-Cタイプはカラーはローズゴールドのみが選択でき、6,000円で購入しました。
Amazon.co.jp: NEXUM AQUA

NEXUM AQUA」はDACチップはCirrus Logic(Wolfson)の「WM8533」を、ヘッドホンアンプ部に「MAX97220」を採用しており、最大24bit/192kHzのハイレゾ再生に対応とのこと。
「WM8533」はCirrus Logic社が買収した英国Wolfson社の省電力DACチップで、いっぽうの「MAX97220」は「Shanling M1」などのコンパクトDAPや、昨年何機種か販売された中華系の「ハイレゾ対応スマホ」などで多く採用されているヘッドホンアンプと、非常に実績のあるチップを採用している点も特徴です。

パッケージ構成は本体、レザーポーチ、PC接続用の変換コネクタなど。
NEXUM AQUANEXUM AQUA
本体部分は金属製で長さ7.4cm/幅1.8cm/厚さ0.7cmでシルバーの布巻ケーブル長は12cm。コンパクトなスティック型ですので接続したままポケットにいれて持ち歩いても支障なく使えると思います。

ただし、スペックについては注意が必要で、届いた「NEXUM AQUA」のファームウエアでは最大周波数は24bit/96kHzまでに制限されています。これは特にmicroUSBモデルのAndroid用のオーディオアダプタでは良くあるのですが、サポートするOTGの仕様の関係であえて「USB Audio Class 1.0」準拠(最大24bit/96kHz)のファームウェアが入っていて、「USB Audio Class 2.0」の192kHzに対応するためにはファームウェアの更新が必要な製品があります。私が過去に購入したものではCovia「ZEAL ZDC-205A-SG」などもそのようなタイプだったのですが、「NEXUM AQUA」も初期設定では24bit/96kHzの対応のファームウェアとなっていました。
NEXUM AQUANEXUM AQUA
しかし、ファームウェアはNEXUMのサイトで入手が可能でしたが、現時点ではアップデートソフトなどが同サイトおよびGoogle Playなどで入手できないため、192kHz対応にアップデートを行うことはできませんでした。
※調べたところ、付属のPC用(USB-A)変換コネクタを使用し、本体の再生ボタンを押しながら挿入することで本体フラッシュにアクセスできるので、そこにダウンロードしたファームウェアをコピーすることで更新されるようです。ただし更新に失敗したり動作が不安定になる可能性もあるためアップデートはやらないほうが良さそうです。

NEXUM AQUA音質面については高域の伸びの良いサウンドで「MAX97220」を搭載した他の製品同様にヘッドホンなどでも実用的な出力が確保できます。いっぽうで反応の良いイヤホンではホワイトノイズが発生し、さらにデジタルボリュームの関係で音量の微調整ができず音量を下げても音が小さすぎるか大きすぎるかのどちらかになってしまい、とても実用的なレベルでは無いようです。またイヤホン端子もマイクリモコン付き4極コネクタに対応していならしく、マイクリモコン側で音量調整や再生・停止などの操作ができない点もちょっと見劣りします。正直なところ、購入前は「dodocool DA134」より期待していただけにかなり残念ですね。あらためてアマゾンの評価はアテにならないなあ、と実感しました。


というわけで、今回購入したUSB-C仕様のハイレゾ対応オーディオアダプタ2機種は、同様のスペックでも実際はここまで違うものか、と改めて驚く結果となりました。「dodocool DA134」についてはサイズが少し大きいのとケーブルが硬い点を除けばこれといった欠点は無く、音質的にも内容的にも比較的安心して購入できるオススメの製品だと思います。私自身もAndroidではこちらを中心に使うことになりそうです。
いっぽうのAQUAのほうはもう少し調べてみる必要がありそうですね。