TENHZ P4 Pro

こんんちは。気がつけば9月に突入してしまいましたが、8月下旬にオーダーしていたイヤホンが一斉に届いてしまいちょっとレビューが大変忙しくなってしまいました。また今後到着予定のなかにも話題のイヤホンなどが目白押しで、なかなかのんびりまったりは無理そうです。中華イヤホンの世界は低価格モデルから中価格帯、そしてハイエンドに届きそうなレベルまで、かつてないほどの活況ぶりで、さらに各セラーが精力的であることも加えて今後ますます勢いを増してくるのでは、と思っています。

TENHZ P4 Proそんななか、今回紹介するのは「TENHZ P4 Pro」、最近注目され始めている新ブランド「TENHZ」の最新モデルの4BA構成のイヤホンとなります。
TENHZ」は以前は「audbos」のブランド名で製品を販売しており、さらにそのルーツは中華イヤホンの有名ブランドのひとつ「MaGaosi」につながります。今回の「TENHZ P4 Pro」は、同じ4BA構成の「audbos P4」の後継、改良型モデルで、美しいクリアシェルのデザインを採用し外観と装着性を大幅に進化させると同時に、音質面でもグレードアップが行われたモデルのようです。

全体的には「TENHZ P4 Pro」はフラット寄りでマルチBAらしい解像度の高いサウンドと「audbos P4」より中低域の緩さがある程度改善されることでよりスッキリとした印象のイヤホンに仕上がっています。また特にリケーブルにより本来の実力を発揮するようですね。今回「TENHZ P4 Pro」の販売価格が「audbos P4」よりかなり低めに設定されたことで、リケーブルの価格を含めてもかなりお買得になっています。
audbos P4TENHZ K5
なお私のブログでは「TENHZ」(audbos)ブランドのイヤホンとしては「TENHZ K5(audbos K5)」を過去に紹介しており、同ブランドについても簡単に触れています。よろしければ併せてご覧頂ければと思います。
→ 「TENHZ K5」(audbos K5) 名称変更&リパッケージした高音質 2BA+2DD 中華イヤホン【レビュー】
→ 「audbos K5」 抜群の音場感とサウンドバランスが心地良い、死角なしの高音質2BA+2DDハイブリッドイヤホン【レビュー】

TENHZ P4 Pro」の購入はいつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「Kinboofi」にて。アマゾンのプライム扱いのため国内倉庫出荷で在庫があれば直ぐに届きますし、万が一の場合はアマゾン経由での保証が受けられるため安心感もあります。ただ、前回までの入荷分は人気のためすぐに売切れてしまったようで、購入を検討されている方は次回入荷したらすぐにオーダーしたほうが良いかもしれません。購入価格は12,000円と中国AliExpressでの表示価格より低く設定されている点も嬉しいところです。
Amazon.co.jp(Kinboofi): TENHZ P4 Pro

TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro
なお、フェイスプレートは「ブラック」と「カーボン」が選択できます。今回私は「カーボン」柄のタイプを選択しました。またKinboofiのTwitterアカウント(@Kinboofi)では商品の入荷情報や特価情報等が頻繁にツイートされるためこまめにチェックされることをお勧めします。


■高音質4BAのドライバー構成。レジン製のシェルデザインで「audbos P4」よりグレードアップ

さて、前述の通り「TENHZ P4 Pro」は4基のバランスド・アーマチュア型ドライバーを搭載した4BA仕様のイヤホンです。低域にKnowles製の「CI-22955」ウーファーユニットを搭載し、さらに中音域用×1、高域用ツィーター×2を組み合わせた構成となっているようです。
TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro

また以前の「audbos P4」がプラスチック製のシェルだったのに対し、レジン製のクリアシェルとなっており、フィット感を高めた形状とクリアブラックまたはカーボン製のフェイスパネルとあわせて格段にデザイン性が向上しているのがわかります。
TENHZ P4 ProYinyoo H4
ただ、前述の「audbos P4」にはさらに同系列の別のモデルが存在します。それが「Yinyoo H4」というYinyooブランドのイヤホンで、「audbos p4」と同様なドライバー構成の4BA仕様で、外観も「TENHZ P4 Pro」と酷似したデザインとなっています(両者は「同じ製造元の製品」と考えてまず間違いないでしょう)。「Yinyoo H4」はすでに販売を終了しているため新規で入手することはできませんが、この2つのイヤホンの違いについても気になるところです。
なお、「Yinyoo H4」については過去にレビューをしていますのでよろしければ参照ください。
→ 「Yinyoo H4」 ピアノブラックのフェイスが美しい、中身はもしや?の美音系・高音質4BAイヤホン【レビュー】


■美しいシェルデザインで装着性も良好。ただしビルドクオリティは若干のバラツキあり(許容範囲)

というわけで、Kinboofiより届いた「TENHZ P4 Pro」は、先日レビューした「TENHZ K5」と同様の引き出し式のパッケージデザインとなっています。
TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro
パッケージ構成はイヤホン本体、銀メッキ線ケーブル、イヤーピースはシリコン(S/M/L)とウレタン(S/M/L)、説明書・保証書、革製のイヤホンケース。
TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro
TENHZ(audbos)のイヤホンに付属する大きめサイズのレザーケースは太めのケーブルにリケーブルした際にも収納できるのでなにかと便利です。また説明書は今回も中華イヤホンながら中国語ではなく、英語および日本語での表記となっています。中国国内で販売されているタイプも中国語表記がないのか毎回ちょっと不思議に思います(^^;)。
TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro

TENHZ P4 Pro」のシェルは耳にフィットしやすい形状のクリアシェルとなっています。フェイスプレートで「カーボン」を選択すると、実際のカーボンプレートがサンドイッチされているらしく接合面に雑さを感じるのは少し残念ですが、全体的には美しく仕上がっていると思います。おそらく「ブラック」のほうが自然な仕上がりになっていそうですね。「TENHZ」および「audbos」はビルドクオリティについては多少のバラツキがある傾向にあり、「TENHZ P4 Pro」も許容範囲内ではあるものの、若干の粗さがあることは認識しておいた方がよさそうです。
TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro
なお、フィット性高い形状のため装着性は非常に高く、付属のイヤーピースでもしっかり耳に装着させることが出来ます。ただ、後述の通り音質面ではリケーブルとあわせてより耳に馴染むイヤーピースに交換した方が良い印象となります。

TENHZ P4 Proまた「TENHZ P4 Pro」を前述の「Yinyoo H4」と比較すると、シェルの形状は全く同じで、搭載しているBAユニットおよび基板も同様に見えます(ネットワーク回路の設定は異なる可能性あり)。相違点はフェイスプレート以外にはシェルカラーのわずかな違いとステム部分のメッシュパーツの種類、あとはシェルから透けて見えるドライバーの装着角度が僅かに異なる程度です。このことからも系譜としては「audbos P4」→「Yinyoo H4」→「TENHZ P4 Pro」という順番でバージョンアップしていったのではないかと想像できます。

伺った話ですが「TENHZ P4 Pro」は「Yinyoo H4」の改良型、という情報もあり、あらためて両者の違いを確認してみたいところです。


■フラット傾向の明瞭でスッキリ系サウンド。イヤーピース交換&リケーブルで本領を発揮

TENHZ P4 Pro」の音質傾向はフラット寄りで中高域が特徴的なサウンドバランスとなっています。高域は鮮やかさのある明瞭な音で解像度の高さとキレの良さを感じます。中音域も解像度の高いスッキリした音で、ボーカルは近くに定位し、音場は一般的ですが、フラットらしい味付けのない聴きやすい音で1音1音をしっかり実感できます。いっぽう低域は十分な量感と締まりのある音ですが主張は控えめで、中高域を邪魔することなく気持ちよく鳴ってくれる印象です。
TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro
ただ、「TENHZ P4 Pro」に付属のイヤーピースでは特に音数の多い曲などで中低域に多少の緩さを感じるため、よりフィット感のあるイヤーピースに交換することを推奨します。お勧めはAZLA「SednaEarfit」、JVC「スパイラルドット」、およびRHAのシリコンイヤーピース等です。この3種類ではスパイラルドットが最もナチュラルに解像度と締まりが向上し、RHAは高域の伸びが向上します(相対的に刺さりも増えます)。いっぽう「SednaEarfit」は高域は少し穏やかに感じるいっぽう中低域の印象が向上します。好みやフィット感を確認しながら使い比べてみるのも良いと思います。

TENHZ P4 Proまた「TENHZ P4 Pro」の仕様はインピーダンス26Ω(±10%)、感度110dB/mWとマルチBAイヤホンらしく鳴りやすく敏感なイヤホンですので、再生環境によっては多少のホワイトノイズが発生したり高域が強くなりする場合があります。特に付属のケーブルを使用している状態では駆動力のあるDAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポータブルアンプでは音量を上げると中高域に歪みを発生しやすくなります。
ホワイトノイズについてはIEM等に対応したS/Nの高いプレーヤーを使用するなどの対応が必要ですが、駆動力の高いアンプでの高域の変化や歪みなどは、より情報量の多いケーブルにリケーブルすることにより、低いボリュームで十分な音量を得られるようになることで改善できる可能性があります。付属の銀メッキ線ケーブルは「TENHZ P4 Pro」の実力を十分に活かせているとはいえないため、リケーブルは必須と考えた方が良いかもしれませんね。

まず、Kinboofiで販売している「KBF4773 8芯 銀メッキ線&純銅線ミックスケーブル」(2,999円)ですが、「TENHZ P4 Pro」とほぼ同じタイミングで取り扱いを開始した新しい8芯ミックスケーブルです。ブロンズカラーの銀メッキ線とダークブラウンの銅線の組み合わせはとても渋く、見た目的にも「TENHZ P4 Pro」との組み合わせはとても格好良く見えますね(^^)。
音質的には標準ケーブルと比較し情報量や分離性をぐっと引上げると同時に、全体的にさらにメリハリが向上します。「TENHZ P4 Pro」との音質傾向的な相性もとても良いと思います。3千円程度と非常に低価格で2.5mm/4極または4.4mm/5極バランス仕様を選択できるなどとりあえず迷ったらコレ、というお勧めの組み合わせですね。
TENHZ P4 ProTENHZ P4 Pro
またさらにグレードアップを検討される場合、「KBF4746 16芯 銀メッキ線&高純度銅線ミックス ケーブル」(6,800円)はやはり魅力的な組み合わせです。Kinboofiでもすっかり定番化しているベストセラーのケーブルですが、16芯による情報量の多さにより解像度が格段に向上するのを実感できます。フラット傾向の「TENHZ P4 Pro」のキャラクターを維持したまま音場感をより明確に実感でき、ライブ感やボーカルの息づかいなどをより明瞭に聴くことが出来るようになるのではと思います。なお、Kinboofiでは同様の16芯ケーブルで新たに「KBF4759 8芯 高純度銅線 ケーブル」が発売されており、 こちらの組み合わせも面白いのではないかと思います。

TENHZ P4 Pro」はフラット傾向のイヤホンのためジャンルを選ばず楽しめるイヤホンですが、ポップス、ロック、アニソンなどのボーカル曲との相性が良好です。ただ音場感を楽しむような曲の場合は少し物足りなさを感じる可能性があり、音数の多い曲ではリケーブルやイヤピ交換は必須ながら、それでもいわゆる効果価格帯のモニター系のイヤホンと比べると価格なりの要素はあると思います。


■「TENHZ P4 Pro」は「audnos P4」のアップグレード、「Yinyoo H4」のブラッシュアップ版

TENHZ P4 Proところで、「TENHZ P4 Pro」と前述の「Yinyoo H4」との聴いた印象の比較ですが、正直なところ明確な違いを感じるほどの変化はありませんでした。周波数特性についても僅かな差はあったものの、私のアバウトな測定環境では個体差、またはロット違い程度のレベルで「チューニングを変えている」とまでは言い切れない結果でした。ただ所有していないため断言はできないものの、以前聴かせていただいた「audbos P4」からは全体的に改良がされている、という印象を受けました。「Yinyoo H4」は現在は販売を終了しており、「audbos P4」もAliExpress等中国サイトでの在庫限りの状態ですので、これらのモデルより多少なりとも改良された「TENHZ P4 Pro」がより低価格で購入できるのは良いことだと思います。

今回の「TENHZ P4 Pro」を聴いてみて、改めて「TENHZ」は2BA+2DDハイブリッドの「TENHZ K5」と合わせて音質的にはハズレのないブランドだと実感しました。ただ同社の製品はデザイン性の良さに対してビルドクオリティにバラツキがある点をネット上ではたびたび指摘されます。この傾向は「TENHZ P4 Pro」にも多少当てはまるようです。それも「中華イヤホンらしい」といえばそれまでですが、このまま好調な販売を継続していく上では品質の向上は不可欠だと思いますので、今後とも期待して見守っていきたいと思います。