Yinyoo V2

こんにちは。今回は「Yinyoo V2」というシングルダイナミックドライバー(1DD)のイヤホンです。実はTFZなどの中華イヤホンというカテゴリーをすでに逸脱しつつあるようなメジャーメーカーを除くと、このグレードの中華イヤホンでシングルのダイナミックドライバー構成というはかなり珍しい存在です。
Yinyoo V2Yinyoo V2
一般的に5000円程度、50ドル程度くらいまでの中華イヤホンは「低価格中華イヤホン」と呼ばれるカテゴリーになるかと思います。しかし、現在はKZを中心に新旧有名無名さまざまなメーカーが大量のモデルを投入し続けていることもあり、
①「アンダー10ドル」、 ②「10ドル~20ドル以下」、③「20ドル~30ドル以下」、④「30~40ドル程度」、⑤「40ドル~50ドル以下」、といった感じで、さらにグレードが細分化されている印象があります。

例えばKZ製のイヤホンで置き換えるなら、①が「KZ ATE」「ZS3」など、②が「KZ ZST」や「ES4」など、③が「KZ ZS5」「ZSR」など、④が「KZ ZS6」など、そして⑤が「KZ ZS10」など、といった分類となり、確かに上と下ではグレードに結構な差があることが分かります。
このKZの例でも1DD構成のモデルは①の最低価格のグレードのみで、②以上のグレードではすべてBAとダイナミックを組み合わせたハイブリッドの仕様となっています。これを他のメーカーに置き換えても、やはり主力はハイブリッドが圧倒的多数を占め、それ以外でも2DDや最近登場してきた3DDなど複数のダイナミックドライバーを組み合わせた構成となります。

ダイナミックドライバーはエージングで音質の変化が大きいことが特に中華イヤホンでは多いですし、歩留まり、という点でもある程度の個体差が発生しやすく、高音質かつ安定した品質のドライバーを低コストで作るのはかなり困難とされます。そのための打開策のひとつが「ハイブリッド化」や「マルチ化」で、特にハイブリッドは「KZ ZST」や「SENFER UEs」(2DD構成の「UE」をハイブリッド化したモデル)以降、一気に中華イヤホンの主流になりました。
このような状況下でシングルダイナミック構成のイヤホンをより上位グレードでリリースできるのは、高音質ドライバーを自社開発している「TFZ」など一部メーカーに限られるようです。

Yinyoo V2いっぽう、今回の「Yinyoo V2」は、実質的に中国のイヤホンセラー「Easy Earphones」などを中心とした小規模なショップブランドの「Yinyoo」のオリジナル製品にもかかわらず、米国から輸入した「デュアルダイアフラム(二重振動板)ダイナミックドライバー」を搭載することで上記の分類でいうと⑤のZS10等のハイスペックのイヤホンがひしめくアラウンド50ドルのグレードで1DD構成に挑戦するという、同社としても「かなりの意欲作」といえるのではと思います。
ではなぜ、そこまでして「シングルダイナミック構成」なのか。それもよりによって「この時期」に「中国製イヤホンでまさかの『アメリカ』からドライバーを輸入」なんとことまでして(^^;)。

Yinyoo V2私のブログレビューでも上記④や⑤のグレードで「ベストバイ」と書いているのはTFZの「SERIES 2」であり、その後継ともいえる「T2 Galaxy」で、どちらも同社製の1DDを搭載したイヤホンです。
帯域ごとの「つながり」にクロスオーバーが発生するハイブリッドやマルチドライバーにはない自然なサウンドバランスを生み出せるのはやはりシングルダイナミックゆえの絶対的な強みでしょう。あくまで個人的な憶測ではありますが、「Yinyoo V2」では多少コスト的に無理をしてでも低価格中華イヤホンの枠内で同様のグレードのイヤホンを作りたかったのではないかと想像します。

さて、多少背景的な話が長くなりましたが、今回の「Yinyoo V2」は、前述の通り米国製の「デュアルダイアフラム(二重振動板)ダイナミックドライバー」をシングルで搭載します。ハウジングはアルミニウム合金(ジュラルミン)をCNC加工したもので、「Yinyoo」のロゴの一部がベント(空気孔)になっているなど、ハウジングデザイン的にもかなりこだわった作りとなっています。価格はAliExpressのEasy Earphonesで 49ドル、アマゾンのWTSUN Audioで 5,800円 となっています。AliExpressの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(Easy Earphones): Yinyoo V2
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): Yinyoo V2

※アマゾン(WTSUN Audio)では年内(12月31日)の期間限定で、購入時にクーポンコード「WH9UMVTX」を入力することで1,200円の割引が実施され、実質 4,600円 で購入が可能です。


■これまでの「Yinyoo」ブランドとはちょっと違う、気合のはいったパッケージング

さて、今回届いた「Yinyoo V2」のパッケージはデザイン的にはともかく、従来の「Yinyoo」オリジナルイヤホンのような共通のパッケージではなく、このイヤホンのためにデザインされた化粧箱に入っているころにまず驚かされます。
Yinyoo V2Yinyoo V2
パッケージデザイン的には正直なところ「いかにも中華」色全開の印象で、個人的には以前購入したちょっとだけ高級な中華万年筆のパッケージを思い出しました。
また箱の中にはいつもの「Easy Earphones」の保証書ではなく、Yinyooブランドの説明書・保証書が同梱されており、同ロゴがデザインされたイヤホンケースの中に製品が入っています。パッケージ内容は、本体、ケーブル、イヤーピース(白とグレーの2種類、それぞれS/M/L)、イヤホンケース、保証書・説明書。
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ジュラルミン製のハウジングのビルドクオリティは比較的高く、フェイス部分にYinyooのロゴマークがデザインされ、ロゴの中央部分がベント(空気孔)になるデザイン的意匠が加えられています。従来Yinyooブランドでこのような量産タイプのイヤホンをリリースする場合、EMS(受託生産工場)またはOEMメーカーの製品にカラーリングなどのデザイン的ワンポイントかシルクスクリーンでのロゴプリントくらい、というが通例だったのですが、今回は明らかに「Yinyoo」として製品作りに深く関与しているのがわかります。上記の専用にデザインされた化粧箱のパッケージも含めて、「あ、今回は結構まとまったロット数を作っちゃったのかも」とつい思ってしまいました(^^;)。
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Yinyoo V2」は通常の装着方法でも、耳掛け式(シュア掛け)でも使える形状となっていますが、フェイス部分の「Yinyoo」ロゴはシュア掛けをすると本来の向きになるようにデザインされています。

ちなみに、「Yinyoo V2」の本体デザインは、2DD構成でマニアの間で根強い人気を誇る同価格帯のイヤホン「TIN Audio T2」を彷彿とさせます。実際に比較してみると「Yinyoo V2」は若干コンパクトなサイズ感で作られているのと同時に、ケーブルコネクタが逆方向に出ており、「TIN Audio T2」の「左右逆だったら装着性がもっと良かったのに」という感想を実際に反映させたかのようです。
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付属のケーブルは中華2pinコネクタタイプの銀メッキ撚り線ケーブルでとても柔らかく使い勝手の良さを感じる仕上がりとなっています。イヤーピースは標準のものでも問題ないですが、できるだけ耳穴にフィットするタイプを選んだほうが良いかもしれません。ただし「TIN Audio T2」が標準で採用しているウレタンタイプ(「コンプライ」なども含む)は、ちょっと籠りを強く感じる傾向があるのであまりお勧めしません。
私はいくつか試したうえで最終的にAcoustuneのダブルフランジ「AET06」を使用しました。


■低域の厚みが個性的なサウンド。エージング&イヤピース変更でサウンドバランスが向上

Yinyoo V2Yinyoo V2」を聴いた最初の印象はかなり低域を強めに感じる「低音イヤホン」で、開封直後は付属のイヤーピースではちょっと中高域に籠りを感じやすい傾向がありましたが、数十時間程度のエージングにより中高域の抜けが多少向上した印象に変化しました。
全体的な傾向として低域寄りの「Yinyoo V2」は、中高域の印象が強い「TIN Audio T2」のサウンドとは外観は似ていますがサウンドは真逆の印象ですね。また、最近はTFZなどのグラフェンドライバーのような硬質で寒色系のサウンドが増えていますが、「Yinyoo V2」は採用している米国製ドライバーの二重振動板の特性か、全体的にキレを求めるタイプではなく、暖色系で柔らかい印象のサウンドです。中音域は左右に広がるタイプの音で、解像度は一般的です。
ただ低音域については二重の振動板の効果もあってか解像度は比較的高い印象を受けますが、曲によって響きが強くなる傾向があり、標準のイヤーピースでは籠った印象を感じる場合もありそうです。また高域も明るさを感じる音ですが、低域のバランスにくらべてちょっと弱く、天井が低めの印象を受けます。
Yinyoo V2このような場合はイヤーピースの変更によりかなり印象は改善されます。大きめのサイズのイヤーピースにより少し浅めにフィットさせることでより低域の響きが向上し、音場感のあるサウンドを実感しますし、逆にダブルフランジの「AET06」を使用すると低域は少し抑え気味になり中高域の印象が向上します。同時に高域の明瞭感も多少向上し、高域成分の多い曲や女性ボーカルの高音などでのキラキラ感も感じるようになりました。
音数が少なめのボーカル曲やポップス曲、ジャズやライブ音源などと相性がよさそうです。万人受けという感じではないかもしれませんが、アコースティックな音源では独特の存在感がありそうです。

というわけで、「Yinyoo V2」は、柔らかで低域に独特の響きがある音質傾向は最近の解像度が高くキレを重視した硬質なサウンドとは一線を画する単純に比較はできないですが、シングルドライバー構成にこだわった個性的なサウンドとしてとても興味深く感じました。全体的には、結構しっかりエージングが必要な点と、イヤーピースをいろいろ試してみる必要がありますが、ビルドクオリティは高く、通常の方法でもシュア掛けにも使える装着性をもつなど完成度は高いイヤホンだと思います。

Yinyoo V2確かに、ずっと自社ドライバーの進化を続け練度を上げてきたTFZや圧倒的な実績をもつfinalなどの製品とは経験値の違いは明らかですし(逆にそんな簡単に彼らのレベルに追いつけるとしたら、そっちのほうが異常でしょう)、同価格帯でたったひとつのイヤホンを選ぼうとしたときに最初に挙げられる存在ではないと思います。
しかし、あえて低価格中華イヤホンの「定石」を外して「王道」に挑んだ、その姿勢は良いと思いますし、マニア向けのアイテムとしては十分な完成度と結構楽しめるサウンドは実現できていると思います。
個人的には、すでにさまざまな中華イヤホンを持っていらっしゃるマニアの皆様なら、Yinyooブランドの挑戦の軌跡として、コレクションのひとつに加えるのも面白いアイテムだと感じました。