KZ ZSN

こんにちは。今回紹介するのは「KZ ZSN」という低価格ハイブリッドイヤホンです。

以前から私のブログをご覧いただいている皆様には説明するまでもない部分ですが、「中華イヤホン」と呼ばれるジャンルで、特に圧倒的な低価格さとコストパフォーマンスの高さから、すっかり代名詞的存在になった「KZ」(Knowledge Zenith)ブランドの最新モデル、それも同社を一躍有名にした代表的モデル「KZ ZST」の後継機種にあたるのが今回紹介する「KZ ZSN」です。

KZ ZSNグレード的には「KZ ZST」と同じ1BA+1DD(バランスド・アーマチュア型ドライバーとダイナミックドライバーのハイブリッド)構成で、2千円台(Amazon価格)を実現したモデルとなります。見た目的には価格で購入できるとはとても思えないほどビルドクオリティは高く、音質面の完成度も同価格帯としては高いレベルを実現しています。
中華イヤホンのマニアの諸氏から言わせると「普通でつまらん」「個性的じゃない」みたいなツッコミもあるわけですが、個人的には「これなら街中で使っても十分に格好いいし、そこそこ音も良い、安いから雑に扱って紛失したり壊れてもそれほど苦じゃない」と、まさに普段使いにうってつけじゃないかと思っています。またマニアではない知人や友人に紹介する際も価格的にも内容的にもこれなら申し分ないと思います(3,000円以下ってレンジはちょうど良いですね)。
このように、「KZ ZSN」は、「マニアなひとは、とりあえず押さえておこう」「これから中華イヤホンを楽しみたいひと、ちょっと良い音に興味があるけどコストを掛けたくないひとには最初のアイテムとしてオススメ」というイヤホンになります(結論)。
と、まあレビューする前からオチを書いてしまいましたが(^^;)、というわけで今回も私も「KZ ZSN」のカラバリ全色を無事購入したのでした(笑)


■低価格イヤホンを常識をさらに塗り替える「牽引役」KZの新たなスタンダード。

KZはすでに5BAモデル(「AS10」「BA10」)や4BA+1DD(「ZS10」)といったかなりハイスペックなモデルも驚くような低価格で販売していますが、今回の「KZ ZSN」では「ZST」と同じ2千円台でここまでのクオリティの製品を作っちゃう? という驚きがあります。KZは今や低価格中華イヤホンの市場における牽引役であるわけですが、同社があらたに投入した次のスタンダードとして、並々ならぬ意気込みを感じますね。

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カラフルな樹脂製の透明ハウジングにくわえアルミ合金製のフェイスプレート、ゴールドカラーまたはシルバーカラーの金属製ステムノズルなど2千円台のイヤホンとしてはかなりコストのかかったデザインも魅力的です。

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KZ ZSN」も基本的な構造は「KZ ZST」等の従来モデルと同様の1BA+1DD構成で高域を担う同社製ツイーターユニット「KZ 30095」と10mmの自社開発のダイナミックドライバーを搭載を搭載します。とはいえ、どちらも自社開発ユニットで「Second-generation hybrid technology」と記載されているなど従来より内部的にも改良が加えられている可能性があります。特にダイナミックドライバーについては「チタン製振動板を採用した自社開発ユニット」を採用してるなどの記述が見受けられます。

KZ ZSNまた従来KZ製イヤホンはCIEM 2pinとある程度互換性はあるものの、独自の0.75mm 2pinコネクタ形状(Aタイプ、Bタイプの2種類)を採用してきましたが、今回の「KZ ZSN」から中国の大手CIEMメーカー「qdc」製イヤホンのコネクタと形状的に互換性のある仕様である「KZ Cタイプ」に変更しました(ただし極性は通常の2pinと同じ「独自仕様」です)。すでに「KZ ZSN」の登場に合わせて、各セラーが販売していたリケーブル用のイヤホンケーブルについても、一時期主流を占めたCIEM 2pinタイプから、「qdc」タイプのイヤホンにも併用可能な「中華 2pinタイプ」に新製品より一斉に変更を始めており、同社の影響力の大きさを実感します。KZの今後の製品だけでなく、他社の製品も含め、中華イヤホンで一気に広がる可能性もありますね。

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KZ ZSN」のカラーバリエーションは「ブラック」「シルバー/パープル」「シアン」の3色が選択でき、「シルバー/パープル」のみフェイスプレートおよびステム部分の金属部品および付属ケーブルもカラーが異なります。今回も(個体差の確認も含め)各カラーバリエーションを異なるショップで購入しました。
価格はAmazonで2,590円~、中国AliExpressで16.71ドル~ で販売されています。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): KZ ZSN
AliExpress(Easy Earphones): KZ ZSN
AliExpress(KZ Global Store): KZ ZSN

またAmazonでも頻繁にセールが行われていますので表示価格より低価格で購入できる可能性がありますし、アマゾン経由での保証も得られますから安心ですね。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KZ ZSN
Amazon.co.jp(NICEHCK): KZ ZSN
Amazon.co.jp(L.Sオーディオ): KZ ZSN

※WTSUN AudioおよびNICEHCKではそれぞれ購入時に表示価格より割引されるキャンペーンを実施中のようです。実際の価格は各ページでご確認ください。またHCK(@hckexin)およびEasy Earphones(@hulang9078)、WTSUN Audio(@Zhuo520X)のTwitterアカウントでは頻繁に割引情報がツイートされますのでこまめにチェックされることをお勧めします。


■2千円台イヤホンの枠を超えたビルドクオリティ。(元ネタはあるが)とても格好いいデザイン。

というわけで、今回も「カラバリ全色買い」をしました。なぜかKZについては揃えないと気が済まないのは不思議です(たぶん一種の病気)。
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パッケージ構成は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(装着済みMサイズ+従来タイプのS/M/Lサイズ)、説明書などの例によって最小限の構成。上記の通り、フェイスプレートおよびステムがシルバーカラーの「シルバー/パープル」カラーのみ付属ケーブルも明るい色の線材が使用されています。
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KZ ZSN」の本体はひと目見て「格好いい」と思えるデザインで金属製のフェイスプレートと少し太いですが同じく金属製でしっかりしたつくりのステム部品が非常によいアクセントになっていて、プラスチック製のハウジングもまったく安っぽさを感じません。ちなみに、このデザインも例によって「オリジナル」があります(かつての「ZST」も最初の「TFZ MY LOVE」のパ○リデザインでしたね)。この辺はKZでは毎度のこと突っ込むのも面倒なので今回もさっくりスルーします(笑)。
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全体的に本体デザインの秀逸さももちろんですが、2千円台の価格とはとうてい思えないような部品コストのかけ方がさすがKZという感じはあります。もともと中華イヤホンはコストパフォーマンスの高さが「売り」のひとつですが、このレベルになってくるとそのコスト意識すら怪しくなってくるくらいの存在感があります。
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コネクタは上記の通り、「KZ Cタイプ」で、コネクタ部品もそのままqdc製品に転用しても支障ない作りになっています。同時に正確には極性は逆ですがqdc用のケーブルを流用することも可能です。線材は「ブラック」と「シアン」は濃いブラウンと黒いコネクタ、「シルバー/パープル」には明るい色の線材と白い半透明のコネクタが使用されています。

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そして、「KZ ZSN」を既存モデルの「KZ ZST」と比較すると、デザイン的には「KZ ZSN」のほうがすこしハウジングの厚みが薄くなっており、より精悍なフォルムになっているのがわかります。それ以上に「これが同じくらいの価格で売ってる同じ会社の新旧モデルの差か?」と感じてしまう圧倒的な作りの違いに改めて驚かされます。実際に手に取ってみると差は歴然で本来は価格相応かそれ以上ののビルドクオリティの「ZST」もまるでオモチャっぽく感じてしまいます。
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また、これまでKZ製ハイブリッドイヤホンで長らく使用されてきた10mmのダイナミックドライバーも「KZ ZSN」では全く新しいタイプに変わっているのが確認できます。開発コストも含めて、KZはこの「KZ ZSN」を何個売れば利益が出るのだろう、と思わず心配せずにはいられないレベルの進化です。おそらく今後「ZST」並かそれ以上の長期間にわたって販売を続ける製品になると思いますし、新たなダイナミックドライバーなどは次以降の製品でも使用されていくのだろうと想像します。


■KZらしい中低域寄りのサウンドを万人受けしやすくまとめた手堅いチューニング。

KZ ZSNKZ ZSN」の音質傾向は、中低域寄りのドンシャリ傾向で、KZらしい金属質ですこし派手めの印象も残しつつ、癖の少ない万人受けしやすいサウンドバランスに仕上がっています。
最近のKZ製イヤホンのさまざまなバイブリッド機では、例えば刺激強めの派手さ推しだったりするなど、それぞれのキャラクターを前面に出すような製品が増えていますが、「KZ ZSN」は中音域に特徴のある「ES4」に近く、より多くの人が聴きやすく良い音と感じる「中庸なバランス」をあえて狙っているようにも感じます。ただし、個々の特徴についてはこれまでのKZ製イヤホンと比較しても着実に精度が向上しており、同価格帯の製品のなかではかなりレベルの高いサウンドクオリティだと思います。

KZの1BA+1DDハイブリッドで搭載される「KZ 30095」BAドライバーは高域を担当するツイーターなので、中低域の印象はほぼ10mmのダイナミックドライバー(およびハウジングとのバランスを含む)の音質いかん、という部分はあるのですが、特に低域は「ZST」から比べると格段の進化を遂げています。これまでKZの1BA+1DDハイブリッドは「派手さはあるが解像度は価格相応」という傾向も強かったのですが、「KZ ZSN」では新タイプのダイナミックドライバーの影響もあって全体的に明瞭感が大幅に向上し、明るく解像度の高い音になっています。

KZ ZSN低音域はKZのハイブリッドらしいかなり厚みのある音ですが、「ZST」はもちろん、「ES4」や「ZSA」等の最近の中低域寄りの製品と比較しても解像度は向上しています。
とはいえ、実際には音場感を感じる響きの良さもあるため、TFZなどグラフェンドライバーを搭載したイヤホンのようなキレを求めることは無理がありますので、あくまで「普通に良い」といったレベルです。それでもマニアではない多くの方にはかなり好印象を持ってもらえそうですし、これまで低価格のKZ製イヤホンを複数持たれている方が新たに購入しても納得できる良さはあると思います。
高域は最近のKZの中低域寄りの製品に近く、多少のキラキラ感のある硬質な印象ですが、ある程度コントロールされ刺さりはほぼ感じないレベルになっています。高高域の伸びや解像度は価格相応ですが低域同様に普段使いで不満を感じることは少ないでしょう。
KZ ZSN中音域は、クオリティの向上した低域の影響もあり、より明るくスッキリした印象のサウンドになっています。典型的なドンシャリ傾向のため、曲によって若干の凹みはありますが、比較的近くに定位し、ボーカルもより明瞭感のある印象になっています。
特に苦手なジャンルは無く、突出して良い、という部分はありませんが、どのような曲も普通に楽しめる、という感じだと思います。冒頭に書いたとおり、マニアでない「普通の方」が「ちょっと音の良いイヤホン」として最初に購入されるのには最適ですし、今後ステップアップする上での基準にするのも良いでしょう。また普段から多くのイヤホンを持っている方も日常使いのアイテムとして活躍できそうです。


■新タイプのコネクタ採用でもリケーブルは中華 2pinタイプで対応可能。

このように、「エントリー向け」にうってつけな低価格イヤホンの万能選手「KZ ZSN」ですが、アクセラリーによるグレードアップもこれまで同様に楽しめます。
まず、「ZST」同様に比較的ハウジングの大きいシェルで、しかも今回は金属製のより太いステムを採用しましたので、装着感についてはひと工夫が必要な方がいらっしゃるかもしれません。まずイヤーピースは最初から装着してある新しいタイプのMサイズが耳に合わない場合は、できれば付属品以外のものに交換したほうが良いでしょう。低価格な「KZ ZSN」で使用するのには少し躊躇もありますが、私のブログで毎度紹介しているJVC「スパイラルドット」やAZLA「SednaEarfit」、Acoustune「AET07」といった開口部が広くフィット感の高いイヤーピースは音質面でもより締まりが向上するなど改善効果がありますので利用をお勧めします。
KZ ZSNそして、リケーブルについてですが、新たに「KZ Cタイプ」のコネクタを採用したことで、これまでの販売しているリケーブルが使えないのでは、という話もありますが、実際はそれほど心配はいりません。
これまでもKZはAタイプ(ZS3/ZS4/ZS6/ZSAなど)、Bタイプ(ZST/ES4/ZS10/AS10など)といった独自のコネクタを採用してきましたが、リケーブルでは「中華 2pin」または「CIEM 2pin」タイプのケーブルをそのまま流用することができました。
KZ ZSN」ではもちろんqdc用コネクタを使用したケーブルはそのままぴったり流用することができます(極性に関しての詳細は過去記事のケーブルレビューで記載しています)。さらに「中華 2pin」と私のブログでは呼んでいる「ピン側に『でっぱり』のほとんどないタイプ」のコネクタだとコネクタを覆うカバーはありませんが使用には全く支障はありません。

前述の通り、「KZ ZSN」の登場にあわせてか、最近まで「CIEM 2pin」タイプでリリースしていた各メーカーも一斉に最新の製品では「中華 2pin」仕様にコネクタ形状を変更しています。例えばYinyooブランドなどでは最新モデルの「YYX4783 8芯 高純度銅線ケーブル」「YYX4784 8芯銀メッキOFCケーブル」をはじめ、Yinyoo/Kinboofi/HiFiHearの新しいモデルの16芯ケーブルはすべて「中華 2pin」仕様を採用しています。
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また、HCKでも「NICEHCK 8芯 OFCケーブル」「8芯 OFC 銀メッキケーブル」「NICEHCK DJT1 8芯 6N OCCケーブル」などが「中華 2pin」仕様となっています。
※これらのケーブルについてはすべて過去記事にて紹介していますのでケーブルの特徴などは個別のケーブルレビューを参照ください。 
過去記事(一覧): 中華イヤホンケーブルのレビュー

また「KZ Cタイプ」コネクタ仕様についてもKZの今後の製品展開次第では各メーカーよりリリースされる可能性はかなり高いですし、KZ自身も純正のアップグレードケーブルをはじめ、BluetoothケーブルやiOS用Lightningケーブル、USB Type-Cケーブル等もリリースする予定もあるようですね
※AliExpressではKZ純正のapt-X対応BluetoothケーブルのZSN仕様(KZ Cタイプ)が新たに追加されていますね。

というわけで、「KZ ZSN」はまあ「評価の8割は見た目」というか「フェイスプレートがもっと安っぽかったら全然違う印象(評価)かも」という可能性は全く否定できないのですが(笑)、低価格中華イヤホンのひとつのスタンダードとして活躍していきそうですし、KZが牽引役となり、このモデルに刺激された他社もよりアグレッシブな低価格製品を登場させるかもしれません。今後も引き続き中華イヤホンに目が離せないですね(^^)。