Yinyoo HQ12

こんにちは。今回は「Yinyoo HQ12」、とうとうこのシリーズもここまで来てしまったのか、という「片側12BA搭載」モデルとなります。今回のモデルは従来の「Yinyoo HQ」シリーズとはシェル形状だけでなく採用ドライバーの傾向にも若干変化があり、とにかく「再生環境」および「ケーブル」といったアイテムをしっかり整えることが「前提条件」ですが、環境さえ揃えば「非常にコストパフォーマンスの高い12BAの高音質イヤホン」となります。

Yinyoo HQ」シリーズは、中国のイヤホンセラー「Easy Earphones」などが中心に展開するプライベートブランド「Yinyoo」(音佑)オリジナルの低価格「多ドラ」イヤホンで、これまでに「HQ6」(6BA)、「HQ5」(5BA)、「HQ8」(8BA)、「HQ10」(10BA)といったモデルをリリースしています。また別の向上で製造される「Yinyoo H」シリーズでは「H3」(3BA)、「H5」(5BA)、および「H4」(4BA)といったモデルが存在しました。
過去記事(一覧): Yinyoo HQシリーズ/Yinyoo Hシリーズのレビュー

Yinyoo HQ12Yinyoo HQ12
これまでの「HQ5」「HQ8」「HQ10」といったモデルが同サイズのシェルを採用していたのに対し、今回の「Yinyoo HQ12」では一気に大型化しており、見た目にも迫力のあるモデルになっています。また12BAモデルながらアマゾンでの表示価格もアンダー5万円と低価格になっており、セールなどをうまく活用すると4万円を切る購入できる場合もあるなど、相変わらずの価格破壊な「多ドラ」イヤホンです。
Yinyoo HQ10Yinyoo HQ8
「12BA」という結構普通じゃないドライバーの多さを実感できる音の厚みを持ちつつ、サウンドバランスとしてはドンシャリ傾向にまとめられています。ただし、「Yinyoo HQ」シリーズに共通していえることですが、もともと非常に反応が良くDAP(デジタルオーディオプレーヤー)などの再生環境によってはホワイトノイズを発生しやすい傾向にありますが、ドライバー数が増加するごとにその傾向がさらに顕著になります。
さらに「Yinyoo HQ12」はインピーダンスがとても低いうえに一般的なマルチBAやハイブリッドイヤホンと比較しても消費電力量が非常に多く、「HQ10」以上にプレーヤー側に安定した大出力を求めるイヤホンでもあります。つまり「Yinyoo HQ12」自体は12BAとしては驚異的に低価格ですが、十分にS/Nが高く駆動力を安定して確保出来るプレーヤーがないと本来の実力を発揮できない、相応にマニア度が高いというか「敷居の高さ」もあるイヤホンだと言えますね。

Yinyoo HQ12Yinyoo HQ12
Yinyoo HQ12」グリーンとレッドの2種類のフェイスパターンが選択できます。シェルはグリーンのほうが透明でレッドはグレーの着色がされた透明色となっています。

購入は中国AliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」にて。価格はAliExpressが 364.78ドル、アマゾンが 47,890円 の表示価格になっています。AliExpressでの購入方法はこちらをご覧ください。Easy EarphonesのTwitterアカウント(@hulang9078)をフォローのうえ、購入時に自身のアカウントを伝えることでフォロワー割引きを受けることができます(あらかじめDMなどで値引き後の価格を確認、またはケーブル等と一緒に購入する場合はさらに価格について相談することもできます)。
Amazon.co.jp(Easy Earphones): Yinyoo HQ12

またアマゾンで購入の場合も発送は中国からとなりますが、万が一の場合にアマゾン経由での対応を受けることが出来ますので多少割高とはなりますがサポート面を考慮するのであればアマゾン経由での購入をお勧めします。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): Yinyoo HQ12

※WTSUN Audioで「Yinyoo HQ12」を購入の場合、現在、購入時に「10%の割引きクーポン」を利用することが出来ます。またWTSUN Audioで販売される16芯ケーブルも一緒に購入するとケーブルの価格も10%割引きになるようです。詳しくは購入サイトの説明を参照ください。


■従来のモデルとは全く異なる専用シェル。ドライバー構成にも変化が。

Yinyooのパッケージは以前の黒い箱から、最近ブルーのロゴ入りの化粧箱に代わりました。同時にイヤホンケースも以前の大振りのものから使いやすいサイズのものに代わっています。
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ケース自体は少しコンパクトになりましたが、付属品の数は減っておらず、相変わらずびっしりとケースの中に詰まっています。
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パッケージ構成は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースがシリコンタイプが3種類(それぞれS/M/Lサイズ、ウレタンが色違いで4セット、交換用メッシュパーツ、イヤホンケースなど。
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片側12BAということもあり、かなり丸々とした大振りのシェルで、内部にBAドライバーがしっかり詰まっているのが確認できます。私の手元に届いた「Yinyoo HQ12」のビルドクオリティは非常に高く美しい仕上がりでした。ただし、ひとつひとつハンドメイドで生産していますので、届いた個体でビルドクオリティに万が一何らかの問題があったら遠慮なくDMなどで問い合わせたほうが良いでしょう(12BAとしてはかなり安価ですがそれでも中華イヤホンとしてはかなり高価格な製品ですので)。
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サイズを片側10BAの「Yinyoo HQ10」と比較すると、サイズ感も2まわり以上異なり、しかも「Yinyoo HQ12」のほうがサイズの大きいBAユニットが追加された関係もありよりびっしり詰まってるように見えますね。
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形状的に装着性は「HQ5」「HQ8」「HQ10」ほどは良くありません。非常に分厚いハウジングのため、イヤーピースで耳にフィットししっかり固定できるようなものを選ぶことが望ましいでしょう。私はJVCの「スパイラルドット」を使用しました。またできればリケーブルする場合も耳掛け部分の加工のあるタイプを選び、ケーブルも含めて耳に固定するほうが良いと思います。
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Yinyoo HQ12」で採用されているバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーユニットは、「Bellsing 30017」×4、「Knowles DTEC-30265」(2BA)×2、「Knowles HODTEC-31323」(2BA)×2 と思われ、12BAを高4中4低4の3 Wayで配置した構成のようです。そういった意味では「HQ6」(高2・中2・低2の構成)同様、HQシリーズのなかではバランスの良い組み合わせと言えるかもしれませんね。
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また、これまでの「Yinyoo HQ」シリーズ同様、内蔵するBAドライバー間のクロスオーバーを処理するために抵抗などの電気的なアプローチは行わず、出力部分の音導管にフィルターを装着することでチューニングを行っています。そのため、前述のとおりインピーダンスはとても低く、さらにこれだけのBAドライバーを稼働させるだけの駆動力が求められますので、再生環境は相応に高性能なプレーヤーを使用することが必要になります。


■「この価格でこの完成度」と納得の高音質。ただし、とにかく再生環境にもスペックを求めるイヤホン。

Yinyoo HQ12」の音質傾向は、「Yinyoo HQ」シリーズで共通の中低域メインの弱ドンシャリ傾向で、再生環境およびケーブルなどをしっかり揃えることで、「多ドラ」らしい立体的な音場感と解像度の高い濃い音を実感できます。

Yinyoo HQ12開封直後は中高域にBA特有の籠りのような印象を感じましたが、ある程度のエージングによる慣らしでかなり落ち着きます(個人的には50時間ほどで安定した印象です)。ただし、それ以上に以前レビューした10BA構成の「HQ10」でもそうでしたが、再生環境での依存度はやはりかなり大きく、しっかり駆動力を確保しないとかなり籠もった印象になります。比較的駆動力の高いiBasso DX150などのDAPでもハイゲインのモードで聴いた方が格段に良い印象でした。
さらに、「Yinyoo HQ12」に付属の8芯ケーブルでは、やはり「HQ10」同様に、やはり十分に実力を発揮できていない印象が否めず、リケーブルは必須であると感じました。
ちょうどアマゾンの「WTSUN Audio」では同じくYinyooブランドの16芯 銀メッキ線「YYX4745」(シルバー)、「YYX4778」(ブラック)および16芯 銀メッキ銅ミックス線の「YYX4807」(シルバー/ブラウン)のいずれかのケーブルが「Yinyoo HQ12」同時購入時に10%割引きになるキャンペーンを実施しています(3.5mmステレオまたは2.5mm/4極バランス)。

Yinyoo HQ12これらの16芯ケーブルは非常に情報量が多く、またマルチBAイヤホンの音質傾向を変化させずにポテンシャルを発揮させるため、「Yinyoo HQ12」との組み合わせにも最適です。そこで今回は最新16芯ケーブルの「YYX4807 16芯 銀メッキ線&高純度OFC線ミックスケーブル」の組み合わせをメインに聴いてみました。この組み合わせで付属ケーブルより中高域がよりスッキリとした印象となります。
付属ケーブルを使用した場合やDAP側の出力が不十分な場合、低域は緩く広がる印象で中高域も籠もりがち遠く感じてしまうのですが、再生環境やケーブルをしっかり揃えると、印象は180度変化します。
低域は濃密で力強く、少し前に出てくる印象の音を鳴らします。いかにもマルチBAイヤホンらしい少し人工的な印象はありますが、解像度が高く、適度に締まりがあります。重低音も過度に広がることはなく、同様に解像度の高い印象を受けます。付属ケーブルでは少し籠もった印象のあった中高域は、リケーブルと再生環境を整えることでしっかり分離し、寒色系のサウンドになります。
Yinyoo HQ12高域は煌めきを感じる少し派手めの音を鳴らします。とはいえ「HQ8」や「HQ10」のような人工的で少しわざとらしい感じはなく、シャリ付きはなく刺激もあまり感じないレベルに調整されています。明瞭感のある明るめの音でYinyoo HQシリーズのなかでは最も自然で綺麗に鳴らしてくれる印象があります。
中音域は曲によっては少し下がって定位しますが、明瞭感のある解像度の高い音で、全般的には自然な距離感で特にボーカル曲では存在感のバランスになります。こちらも従来の「Yinyoo HQ」シリーズと比較し、過度な味付けはなくフラットな印象で、とても抜けの良い綺麗な音を鳴らしてくれる印象です。「Yinyoo HQ12」ではこれまでの「Yinyoo HQ」シリーズでは採用していなかったKnowles製のDTECを中音域に使用していますが他のモデルとの印象の違いとなっているのかもしれませんね。


■リケーブルおよび再生環境のチューニングによるグレードアップ

また、紹介した16芯ケーブル以外にも、さらに高品質なケーブルを選択することで「Yinyoo HQ12」のサウンドをよりアップグレードすることができます。Yinyooブランドのケーブルでは、まず「YYX4810 単結晶銅 4芯 ケーブル」では中高域がよりスッキリし、高域のキラキラ感をより実感できるサウンドに変化します。
Yinyoo HQ12Yinyoo HQ12
また、よりハイグレードな「GXX4808」「GXX4809」8芯 7N 単結晶銅ケーブルでは、全体的な明瞭感が大幅に向上し、空気の膜を一枚取ったような見通しの良さを実感します。中高域の伸びに加え、低域の締まりも向上し、「Yinyoo HQ12」のサウンドがレベルアップするのを実感できると思います。

このように「環境さえ整えれば」非常に完成度の高い印象の「Yinyoo HQ12」ですが、例えば駆動力のあるポータブルアンプを使う場合、こんどは盛大なホワイトノイズに悩まされる可能性もあります。
Yinyoo HQ12上記の通り「Yinyoo HQ12」はインピーダンスが相当低いため、iFI-Audioの「iEMatch」「iEMatch2.5」や「EarBuddy」といったいわゆるアッテネータ(抵抗器)を高出力のアンプに経由させることで十分な駆動力を確保しつつホワイトノイズを解消することが出来ます。
iEMatchは組み合わせるイヤホンによっては抵抗が増えることで音の印象が変化してしまうため敬遠される方もいらっしゃると思いますが、「iEMatch2.5」を「Yinyoo HQ12」と組み合わせた場合はホワイトノイズを解消すると同時により低域が締り中高域がスッキリした印象となりました。「Yinyoo HQ12」とは相性が良さそうです。


というわけで、「Yinyoo HQ12」は片側12BAというハイスペック構成を他にはない低価格で実現したイヤホンですが、それでも中華イヤホンとしてはかなり高額な製品であり、また大振りのハウジングなども日常使いにはあまり向かないものです。さらに、納得のいくサウンドに導くためのケーブルやプレーヤーなどの環境整備のハードルも結構高めのイヤホンだと思います。しかし、さまざまな中華イヤホンを楽しまれている方が挑戦する製品としては相当に魅力的なアイテムであると感じました。
Yinyoo HQシリーズの「多ドラ」進化(笑)もさすがにこの辺までかな、という気がしますが、BAドライバ数は増やさなくても、今後は内部のチューニングやネットワークなどをグレードアップしたより高級バージョンなどのアプローチはあるかな、という気がします(実際にKinboofiブランドなどはそちらの路線ですね)。今後も魅力ある製品が登場してくれることを期待します。