KZ AS06

※「KZ AS06」は某有名アーティストのPVで使用されていたこともあり、最近フリマサイト等で高額転売されているケースもあるようです。新型コロナウイルスの影響で中国からの物流が停滞している関係でアマゾンなどでも一時的に購入しにくくなっていますが、状況が回復すれば本来の5千円以下の価格帯にもどるはずのですので、気長に待たれることを強くお勧めします。

こんにちは。今回は「KZ AS06」、3BAタイプの低価格イヤホンの紹介です。このレビューを掲載時点では多くのショップでは発売前のプレセール段階ですが、今回ひと足早く入手することができました。現時点でもTwitterなどでは非常に高い評価となっていますね。実際聴いてみた印象も音質面で最近のKZ製イヤホンのなかでも突出した完成度でした。間違いなくアンダー5千円クラスの中華イヤホンとしては2019年以降も話題となると思われる、「オススメ低価格中華イヤホン」です。

KZ AS06今回の「KZ AS06」はKZで初めてとなる「3BA」仕様 のイヤホンで、今年後半に入ってKZがリリースした「AS10」「BA10」(ともに5BAモデル)に続いて登場した「普及モデル」的な位置づけの製品と思われます。
KZも「AS10」「BA10」から本格的に「マルチBA」イヤホンをラインナップしましたが、この5BA仕様の2モデルはそれまでハイブリッドが中心でダイナミックドライバーを搭載しないモデルは存在しなかったKZが初めて挑戦したある意味「テストマーケティング」的な要素を感じる製品でした(実際「AS10」「BA10」のアマゾンでの販売価格は「低価格イヤホン」の枠を超えており、気軽に手を出すには少し高くなっていました)。
しかし、「KZ AS06」はアマゾン価格でアンダー5千円クラスと、KZを低価格中華イヤホンのスペックリーダー的存在となり同社が中華イヤホンのトップブランドとしてマニアの間で広く認知されるようになった「ZS6」(2BA+2DD)や「ZS10」(4BA+1DD)などの人気モデルと比べても違和感のないレンジに収まっています。

ちなみに、私のブログではすっかりおなじみとなった低価格中華イヤホンの代表的ブランド「KZ」(Knowledge Zenith)ですが、今年に入りさらに「低価格イヤホンの限界に挑戦」とばかりに以前とは異なるシリーズの製品を矢継ぎ早に投入してきました。もともと、KZは数年前、まだシングルまたはデュアルのダイナミックドライバー構成が普通だった時代に、高域ツイーター仕様のBA(バランスド・アーマチュア型)ドライバーを組み合わせた「ハイブリッド構成」を低価格イヤホンの市場に持ち込み、中華イヤホンのひとつの方向性を決定づけたメーカーのひとつだといえます。
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現在のKZは、ハイブリッド仕様のイヤホンでは以前より安定した品質の製品をコンスタントに提供するようになり、かつてのように「個体差」などはあまり気にしなくてもよくなりました。だからこそ、あえてリスクをとってでも「AS10」「BA10」といったこれまでとは毛色の異なる「マルチBA」モデルを投入し、そこで得た経験を反映させリリースしたのが今回の「KZ AS06」といった感じかもしれませんね。

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KZ AS06」はすべてKZブランドのBAドライバーを搭載しており、メーカー表記によると、高域に「KZ 31005」、中域に「KZ 29689」、低域に「KZ 22955」とナンバリングされたユニットが使用されています。ミッドの「29689」とローの「22955」はそれぞれKnowlesの「ED-29689」「CI-22955」を彷彿される型番でKZとしても同様の位置づけのドライバーと捉えているのだと思います。ちなみに、「KZ AS06」の使用ユニットは5BAモデルの「AS10」「BA10」のドライバー構成から高域用ツイーターとしてKZイヤホンではお馴染みの「KZ30095」(×2基)を省いた内容となります。本体ハウジングの中では、ハイの「31005」とミッドの「29689」はステムノズル奥に垂直に配置され、ローの「22955」が横に倒した状態で取り付けられています。音導管にあたる部分は一体形成の樹脂パーツとなっています。
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「AS10」では「ZS10」同様にフェイスプレートが各BAの出力を調整するネットワーク基板となっていましたが「KZ AS06」では小さな基板が本体内部に搭載されます。3BAの「KZ AS06」のインピーダンスは15Ωで5BAの「AS10」よりわずかに高く、この点からもAS10から高域BAを除くことにあわせて基板上の抵抗なども「KZ AS06」は異なった設定となっているのが想像できます。
KZ AS06」のカラーは「ブラック」と「グリーン」が選択できます。アマゾンでの販売価格は 4,800円~ (マイクなしモデル)となっています。またAliExpressでは 28ドル前後~34ドル程度の価格設定です。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): KZ AS06
Amazon.co.jp(L.Sオーディオ): KZ AS06
AliExpress(Easy Earphones): KZ AS06


■AS10と同じシェル形状ながらメタリックなフェイスプレートで格段にクールになった

KZ AS06」のパッケージは従来の白箱タイプではなく、豪華版タイプで、「AS10」「BA10」よりひとまわり小さいボックスに収納されています。
※後期型のパッケージでは従来通りの「白箱」タイプになったようです。
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パッケージ構成は、イヤホン本体、ケーブル(ブラウン)、イヤーピース(S/M/L)、説明書・保証書と、いつもの通り最小限の内容です。
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KZ AS06」のシェル形状は「AS10」と全く同じでハウジングから筒状のステムノズルが伸びる特徴的なデザインも同様に「AS10」を継承しています。
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「AS10」はネットワーク基盤がそのままフェイスデザインになっていたのに対し、「KZ AS06」は「6」がデザインされた金属プレートを配置したデザインになっていて、良い方向に見た目の印象も変化しています。また「KZ AS06」では2pinコネクタ部分の部品がこれまでのKZ製イヤホンの赤色から黒色に代わっており、全体的に落ち着いた見た目に合わせる配色となりました。
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KZ AS06」の装着性についても「AS10」同様で、ハウジングは縦に長くすこし大振りで装着性については問題なく取り付けられる方も多いと思いますが、いっぽうで本体が大きすぎたりステムが長すぎたりと耳に合わず、イヤーピースで調整する必要がある場合もあります。私はAcoustuneの「AET06」のようなダブルフランジタイプのイヤーピースを組み合わせています。


■完全にアンダー5千円のクラスを超えた、KZらしさをもった明瞭なマルチBAサウンド

KZ AS06KZ AS06」のサウンドは中低域寄りのドンシャリ傾向で、最近のKZ製ハイブリッドイヤホンの傾向に寄せている部分も感じますが、どうしても派手めの音の特徴になりがちなハイブリッドとは異なり、「低コスト」イヤホンの限界に挑戦するような、解像度や分離感を高めつつ全体的につながりも自然でかつ明瞭感もある「素性の良いBAイヤホン」にまとめられている印象です。
KZが初めて作った5BAイヤホンである「AS10」や「BA10」で感じた詰めの甘さは「KZ AS06」には全くありません。「BA10」はマルチBAとしての低域のアプローチがかなり個性的すぎてかなり好みが分かれるイヤホンでしたし、「AS10」は1万円以下の5BAイヤホンとしてかなり善戦していたものの、「KZらしいドンシャリ傾向の派手めの音」と「マルチBAらしい音」のバランスが今ひとつ「どっちつかず」という印象が拭えませんでした(また「AS10ガチャ」といわれた当たり外れのある個体差も問題でした)。
ところが今回の「KZ AS06」は間違いなく「ハイブリッドでは作れない」マルチBAらしい1音1音の明瞭感を感じるサウンドながら、BA特有の籠りもなく、同様に低価格なBAでありがちな中高域の歪みもほとんど感じない非常にスッキリした音にまとめられています。もちろん全体的な解像度はKnowles製ドライバーなどを使用した数万円クラスの製品には及びませんが、5千円以下の製品でよくこのバランスにまとめたな、という出来の良さを感じます。

KZ AS06KZ AS06」の高域は明瞭感を感じるスッキリした音で、これまでのKZのサウンドのなかでも特に「上品」さを感じる伸びの良さです。「ZS6」のような同社製ハイブリッドの「派手に鳴らす」傾向から多少「下品」と言われる場合もあり、また5BAモデルの「AS10」もKZの製品の中ではかなり良かったものの、やはり従来通りの印象も残っていました。しかし「KZ AS06」の明るい音でスッと伸びていく感じは、明らかに従来のアンダー5千円クラスの中華ハイブリッドとは異質ですね。
もちろん数万円クラスの高級イヤホンには及びませんが、低価格イヤホンの枠を超えた質の高さがあります。

中音域については切れの良い弱ドンシャリ気味の傾向で、「AS10」と比べ少しだけ離れて定位します。また曲によっては少し凹みを感じると思います。しかし「AS10」がフラットながら多少ウォームに感じる部分もあったのに対し、「KZ AS06」は非常に透明感のある「ボーカル映え」する音で、自然に広がる音場感とあわせてとても心地よく聴けるのではと思います。

低域はBAイヤホンらしい低価格ハイブリッドにはない解像度の高さを感じます。曲によってはBA特有の低音の籠りを多少感じた「AS10」や、ハウジングによる独特の響きによる癖の強い低域の「BA10」とは一線を画し、「KZ AS06」ではとても自然で締まりのある鳴り方をします。
KZ AS06ドライバーの構造上マルチBAイヤホンではもともと不得手とされる低域のクオリティは製品のグレードがとても出やすい部分ではありますが、「KZ AS06」は普通に聴いて良さを感じられるレベルには仕上がっていると思います。特に重低音の沈み込みはかなり良く、ある程度低域もしっかりしたBAイヤホンを希望される場合は、1万円オーバーの製品と比較してもよい選択肢となりそうです。
「AS10」が比較的アコースティックなサウンドと相性がよくジャズやクラシックなどを楽しく聴けたのに対し、「KZ AS06」はロック、ポップス、アニソンなどキレやスピード感のある曲との相性がよく感じます。またこれらの曲ではリケーブルによりさらに明瞭感がアップし楽しむことができそうです。

KZ AS06」は付属ケーブルでも十分に高音質を楽しめますが、ポテンシャルは非常に高く、リケーブルの効果も十分に期待できます。KZからも純正のリケーブル製品がリリースされている「KZタイプB」仕様(KZ ZST/ES4/ZS10/AS10/BA10用)のケーブルが使用できます。ネット上で「きしめんケーブル」とも呼ばれる「KZ 銀メッキ8芯ケーブル(KZタイプB)」は見た目にも格好良く音質面も解像感の向上が期待できるためおすすめです。また「KZ 高純度銅線&銀メッキ線ミックスケーブル(KZタイプB)」では中音域の音場感がアップし、より深みのあるサウンドが楽しめます。
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他にもHCK(「NICEHCK」ブランド)やEasy Earphones(「Yinyoo」ブランド)から販売されている8芯銀メッキ線や高純度銅線ケーブルとの組み合わせも良好で、銀メッキ線では中高域の明瞭感が、銅線では低域の厚みが向上し、たしょうドンシャリ方向のサウンドを楽しめます。好みにあったケーブルを探してみるのも楽しいですね。

というわけで今回の「KZ AS06」では、従来のKZに見られた「いかにも中華イヤホン」といった「キワモノ感」や「マニアック感」が一気に払拭され、普通に「コストパフォーマンス抜群の優秀なイヤホン」に仕上がっていました。これは先日レビューした「KZ ZSN」もそうでしたが、いよいよKZも本格的に多くのターゲット層を想定した「普及モデル」に焦点をあわせた製品化をしているのでは、と感じます。
KZ AS06KZ AS06」の完成度の高さを見ると、「AS10」や「BA10」は「KZ AS06」のためのトライアルという見方もあるかもしれませんね。つまりKZにとって最初のマルチBAモデルの「AS10」やアプローチを変えた「変態モデル」(笑)の「BA10」を先行でリリースし、これまでとはターゲットや価格帯の異なる製品でマニア層の反応を見ながら、今回の「KZ AS06」のようなより購入しやすい価格帯のモデルでサウンドを仕上げる戦略かもしれません。そういえばTFZあたりのメーカーも最近は似たアプローチをしていますね(^^;)。私自身もKZの思うツボ状態(笑)で、「KZ AS06」のカラーバリエーションもさっそくオーダーしてしまいました。おそらく来年以降もこの価格帯の定番イヤホンのひとつになることは間違いないと思いますね。