Cable

というわけで、前回に引き続き昨年2018年に購入した「中華イヤホンケーブル」のオススメ紹介の第2回、「中編」です。前回は最も普及価格帯の「アラウンド3千円クラス」の低価格ケーブルを紹介しましたが、今回は「よりグレードアップした」価格帯のケーブルになります。実は私がケーブルレビューを始めたころ2017年頃はAmazonで5千円程度、AliExpressで30ドル程度というケーブルはKZ用の低価格ケーブルの位置づけで50ドル~70ドル、アマゾンで8千円前後というのが中華ケーブルの普及価格帯のレンジでした。ところが前回紹介した「アラウンド3千円クラス」のお勧めケーブルは当時のこの価格帯の製品を軽く凌駕している品質のものも数多くあり、全体的な低価格化とクオリティアップがこの1年程度で一気に加速したことを実感します。

前回の「アラウンド3千円クラス」のお勧めはこちらをご覧ください。
→ [前編] 「中華イヤホンケーブル」の価格帯別/線材別のお勧めケーブルを選んでみました(2019年新年版) 【アラウンド3,000円クラス編】

そして、今回紹介する「ひとつ上」のケーブルは、単純に中華イヤホン用のリケーブルの枠にとらわれず、いわゆる「高級イヤホン」も含めたさまざまなイヤホンの「リケーブル製品」のひとつとして、国内の専門店で販売されている製品と比較してもとても個性的かつ魅力的なケーブルとなっています。

なお、前回同様、今回もケーブル線材の材質別の紹介をしています。それぞれの材質の特徴につきましては前回も記載しましたが、過去記事の「解説編」を参考にいただければ幸いです。
→ 過去記事: 【解説編】 中華イヤホンケーブルのまとめレビュー


【5千円台で購入可能な「高音質16芯ケーブル」】

現在、この価格帯の中華イヤホンケーブルを牽引する大きなカテゴリーは「16芯ケーブル」だと思います。3千円台で高品質な「8芯ケーブル」が登場したことにより、わかりやすくスペックアップした16芯ケーブルがこの価格帯に落ち着いているわけですが、この非常に柔らかく取り回しの良いケーブルは中華イヤホンケーブル特有で、他ではまず見かけない製品です。音質面のクオリティを含め抜群のコストパフォーマンスと汎用性の高さを持つケーブルといえるでしょう。

■ おすすめ 16芯 銀メッキ線&高純度銅線ミックスケーブル
・① 「Kinboofi KBF4746 16芯 ミックスケーブル6,000円実質5,000円) (レビュー
・② 「Yinyoo YYX48076,320円実質4,820円) (レビュー

Kinboofiの「KBF4746」は、次に紹介する「Yinyoo YYX4745」とあわせて16芯ケーブルを手軽に購入できる価格帯に持ち込んだ中華イヤホンケーブル「らしい」製品です。従来あった1万円程度の16芯中華ケーブル(国内でも「Sounds Good WhiteSnake」などの製品で採用されている線材ですね)と比べて「非常に柔らかく取り回しがよい上にタッチノイズがほとんどない」うえに、「情報量が格段に高く高級イヤホンのポテンシャルを大幅に引き出す」サウンドクオリティの高さが非常に評判となりました。
KBF4746KBF4746
特に銀メッキ線と銅線のミックス構成の「KBF4746」は従来のイヤホンの特性を活かしつつよりアグレッシブにサウンドを引き立てる傾向があることから、同セラーでもトップクラスの人気商品になりました。また私のブログで紹介するイヤホンのリケーブル用途でも相性が良いことが多く繰り返し紹介してきました。「KBF4746」は味付けとして後述する「キンバー風ケーブル」のような派手さではないものの、ハッキリした明瞭感のある音に変化する傾向があるため、フラット寄りのイヤホンと合わせるとリスニング寄りに明るくメリハリをつけてくれる効果もあります。また情報量が劇的に向上することも多く、イヤホンによっては音量が大きく変化する場合もあります。なおYinyooブランドの「YYX4807」は「KBF4746」より若干ナチュラルな印象があるものの非常に近いサウンドで、ケーブルスライダーを使いたい場合はこちらを選択するのも良いと思います。
KBF4746YYX4807
「KBF4746」は、「TFZ KING PRO」や「KING II」などフラット寄りでインピーダンスが高めのリスニングイヤホンとは抜群に相性が良く、「TENHZ P4 Pro」など少し暗めの印象のマルチBAや「HCK HK6」や「Yinyoo HQ」シリーズなど中低域寄りの中華「多ドラ」イヤホンとも「いっそこれを標準ケーブルにすればよいのに」と思うほど相性の良さを感じます。同様に中華イヤホンに限らず数万円クラスのイヤホン用のリケーブル用としても間違いなく価格以上のクオリティを実感できると思います。
いっぽうで相性の良くないイヤホンもいくつかあります。まずは前回紹介した派手めの音質傾向の8芯ケーブルと相性の良かったKZをはじめとする「低価格ハイブリッドイヤホン」で、これらのイヤホンと組み合わせた場合、全体的に緩く平坦な印象の音になってしまいます。このケーブルを組み合わせるにはイヤホンもある程度のグレードの高さを要求しますし、再生環境も十分なS/Nの高さと駆動力が必要になります。また基本的にイヤホンの特性を持ち上げるタイプのケーブルのため、もともの派手めのサウンドの「LZ A5」や「BGVP DMG」などのハイブリッドだとすこし「やりすぎ感」が出そうです。同様に極端に感度が高いイヤホンやハッキリした明瞭感の強い傾向のイヤホンの場合も多少バランスが崩れる場合があります。

情報量 ■■■■□
明瞭感 ■■■■□
奥行き ■■■□□
高域強調 ■■■□□
低域強調 ■■□□□


■ おすすめ 16芯 銀メッキ高純度銅線ケーブル
・①「Yinyoo YYX4745 16芯 銀メッキ OFC線ケーブル6,020円実質5,020円) (レビュー
・②「HiFiHear HiF4747 16芯 銀メッキ高純度銅線ケーブル」 6,000円実質5,000円) (レビュー
・③「NICEHCK TDY35,250円実質4,950円) (レビュー) / 「Yinyoo YYX47786,320円 (レビュー

YYX4745NICEHCK TDY3
Yinyooの「YYX4745」16芯 銀メッキ OFC(高純度無酸素銅)線ケーブルは、ブランドは異なりますが前述の「KBF4746」と同時期に発売されたケーブルで、線材違いの兄弟ケーブルの関係になります。そのため柔らかさや情報量の多さ、組み合わせるイヤホンのポテンシャルを引き上げる傾向などは「KBF4746」と共通しています。音質傾向的な違いは、「YYX4745」の場合、「KBF4746」にみられたミックス線らしいハッキリした印象の味付けがなく、よりナチュラルに解像度をアップする印象となる点が特徴的です。組み合わせるイヤホンをより明瞭感のある印象にしたい場合、高域の伸びを向上させたい場合は「KBF4746」で、ボーカルなど中低域を中心に解像度をアップさせたい場合は「YYX4745」という組み合わせが良いと思います。なお、HCKの「NICEHCK TDY3」は同じくYinyooの「YYX4778」と同一の線材で音質傾向的には「YYX4745」とよく似ており「KBF4746」より大人しめですが、僅かに明瞭感があり、イヤホンによって高域がハッキリとする傾向となります。

[ YYX4745 / HiF4747 ]
情報量 ■■■■□
明瞭感 ■■■□□
奥行き ■■■□□
高域強調 ■■□□□
低域強調 ■■□□□

[YYX4778 / NICEHCK TDY3]
情報量 ■■■■□
明瞭感 ■■■■□
奥行き ■■■□□
高域強調 ■■□□□
低域強調 ■■□□□


■ おすすめ 16芯 高純度銅(OFC)線ケーブル
・①「Kinboofi KBF4779 16芯 OFC 高純度銅線 ケーブル6,000円実質 5,000円) (レビュー
・②「HiFiHear HiF4780 16芯 OFC 高純度銅線ケーブル」 6,000円実質5,000円) (レビュー
・③「NICEHCK CT2」 5,150円実質4,850円

KBF4779KBF4779
こちらは16芯の高純度銅線ケーブルです。「KBF4779」は上記の銀メッキ線およびミックス線の16芯ケーブルと比較してもさらにナチュラルに情報量をアップさせ、特にボーカルを含めた中低域の厚みが向上するのを実感します。そのため、例えば「KBF4746」との組み合わせでは多少派手になりすぎる傾向があったKinboofiの「KBF MK4」や「KBF MK6」といったイヤホンでも「KBF4779」との組み合わせでは高域の印象を変えず低域の印象を向上させることができます。このタイプには他に「NICEHCK CT2」および同じ線材を使用していると思われる「HiFiHear HiF4780」があります。

情報量 ■■■■□
明瞭感 ■■■□□
奥行き ■■■■□
高域強調 ■■□□□
低域強調 ■■■□□


【「個性的」中華ケーブルの代表選手、「キンバー風ケーブル」】

昨年登場した中華ケーブルのなかで、発売以降特に印象に残ったのが、いわゆる「キンバー風ケーブル」と呼ばれる8芯OFCケーブルです。KIMBER KABLE(キンバーケーブル)は米国の高級ケーブルブランドでマニアの間ではよく知られた存在ですが、同時に、ソニーのイヤホンおよびヘッドフォン用のオプションケーブルに同社の技術協力による製品があることも知られています。「キンバー風ケーブル」と呼ばれる中華イヤホンケーブルは、このソニーのケーブルの「同等品」という触れ込みで登場したことでネット上で話題になりました。音質傾向はソニーのオリジナルのケーブルとはやはり異なるようですが、イヤホンの音質傾向を大きく変化させるかなり「味付けの濃い」ケーブルだったため、「個性的」なリケーブル製品としてひととき非常に人気が集中しました。

■ おすすめ 8芯 OFC 高純度銅線(キンバー風)ケーブル
・「Yinyoo YYX4744 8芯 OFC(高純度無酸素銅)線ケーブル」 4,999円 (レビュー
・「NICEHCK 8芯 エナメル銅線&高純度OFC線ケーブル」 5,550円実質 4,999円) (レビュー

YYX4744YYX4744
EasyとHCKの両社より同価格で販売されており、プリントされたロゴ以外は全く同一のケーブルです。Yinyooブランドの「YYX4744」では各種プラグに加えてさらにiOS用のLightningコネクタ用も選択することが可能になっています。音質傾向はとにかく「味付け」が強く、低域はより深く、高域はより明るめのより「濃い音」になります。フラット傾向のイヤホンとの相性が抜群に良く、中華イヤホンでは「TENHZ P4 Pro」などのマルチBAイヤホン、「TFZ KING PRO」や「MeeAudio Pinnacle P1」などのダイナミック系イヤホンとの組み合わせはかなり良い変化を実感できます。いっぽう「LZ A5」のようにもともと派手な傾向のイヤホンの組み合わせは派手になりすぎるかもしれません。非常にわかりやすくリケーブルを実感できるケーブルですので1本持っていても損はなさそうです。
YYX4744 キンバー風ケーブルNICEHCK 8芯キンバー風ケーブル
特に「MaGaosi K5」および同じイヤホンの別ブランドモデルである「Yinyoo H5/H5 Pro」「NICEHCK HC5」との組み合わせによる相性の良さはTwitterやブログなどでも繰り返し紹介しており、これらのイヤホンでは個人的には一推しの組み合わせです。実際に某ブランドで同じイヤホンの同等品(価格は2倍くらいします)でこのキンバー風ケーブルが付属していたり、6BAモデルの「MaGasoi K6」では標準の付属ケーブルになっていたりといつの間にか純正扱いになっているのも面白いですね。

情報量 ■■■□□
明瞭感 ■■■■□
自然さ ■■□□□
高域強調 ■■■■■
低域強調 ■■■■■


【8,000円クラス・ハイグレードケーブル】
■ ハイグレード仕様の高純度単結晶銅線(銀メッキ線)ケーブルのおすすめ
・「Kinboofi KBF4804 8芯 単結晶銅 銀メッキ線ケーブル7,900円 (レビュー

低価格の8芯ケーブルや上記の16芯ケーブルがOFC(無酸素銅)線を使用しているのに対し、「KBF4804」はさらに純度の高い単結晶銅線を使用したハイグレードタイプのケーブルとなります。8芯ケーブルでも16芯の「KBF4746」と比較し同等以上の情報量があり、ハッキリとしたリケーブル効果を実感できます。この「KBF4804」は銀メッキ線らしいかなりアグレッシブな傾向のケーブルで、中低域はより明瞭かつしっかりとした締まりのあるサウンドに、高域はキレを感じる明瞭さと伸びの良さを実感します。「高音がクリアになる高音質な銀メッキ線」というニーズに対しては決定版といえるサウンドクオリティのケーブルですね。
KBF4804KBF4804
全体的に味付けによって音を強調するというより、高い情報量により明瞭感やキレの良さを実感できるケーブルですので、よりハイグレード、より高音質なイヤホンと組み合わせることで違いを実感できると思います。「TFZ SECRET GARDEN」「KING II」「T2 Galaxy」をはじめとするダイナミック型イヤホン、Yinyoo HQシリーズをはじめとするマルチBAイヤホンとの相性は抜群です。

情報量 ■■■■□
明瞭感 ■■■■□
奥行き ■■■□□
高域強調 ■■■□□
低域強調 ■■□□□


■ ハイグレード仕様の高純度単結晶銅(OCC)線ケーブルのおすすめ
・「Yinyoo YYX4810 4芯 7N-OCC 単結晶銅線ケーブル」 8,500円 (レビュー
・「NICEHCK DJY3 4芯 銀メッキ単結晶銅 OCC 7N ケーブル7,950円 (レビュー

YYX4810YYX4810
こちらは台湾から直輸入したより高い精度で作られた高純度の単結晶銅線を使用したケーブルです。少し太めの線材をしようしている4芯ケーブルですが、硬すぎることはなく取り回しも良好です。このケーブルは雑味の少ない非常にスッキリしたサウンドが特徴的で、非常に高い解像度で抜けの良い明瞭感を実感できます。音質だけでなく見た目の質感の良さも含め、国内の専門店で2倍以上の価格で販売していても全くおかしくないようなクオリティのケーブルですね。中華イヤホンのハイグレードモデル、数万円オーバーの高級イヤホンと組み合わせたいケーブルです。

情報量 ■■■■□
明瞭感 ■■■□□
奥行き ■■■■□
高域強調 ■■□□□
低域強調 ■■□□□


というわけで、中編ではミドルグレードのケーブルを紹介しました。リケーブルでより本格的なステップアップを検討されている方にはこの価格帯のケーブルはとても魅力的な製品だと思います。中華イヤホンに限らず、数万円クラスのリケーブル可能なイヤホンをお使いの場合でしたらぜひとも検討いただくと、そのコストパフォーマンスの高さを実感できると思います。ただ、特にマルチBAのイヤホンなどでは感度が高くなることで再生環境によってはホワイトノイズなどが発生する可能性もあります。ある程度DAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポータブルアンプのグレードアップも必要になってくる可能性も出てきます。そういった意味ではこのクラスのリケーブルあたりからオーディオ沼がいよいよ深くなってくるのかもしれませんね(^^;)。

後編、1万円クラスのハイグレードケーブル編に続きます。