TENHZ T5

こんにちは。今回紹介するのは「TENHZ T5」という 5BA仕様 の新モデルで、臨場感を強調したような独特のサウンドバランスが特徴的なイヤホンです。ちょっと演出過剰ぎみにも感じるアレンジのイヤホンですが、バラエティに富んだ中華イヤホンのひとつとしては非常に興味深い製品だと思います。
ちなみに、このイヤホン、初期のロットで多少音が異なる個体が存在し、手元の個体と実際に音が違うことを確認させていただきました。以下のレビューにつきましては「私の手元に届いている個体」での紹介となります。おそらく今後届くと思われる「TENHZ T5」については私の手元にあるものと同じ音の製品だと考えられますが、もし個体差などが今後も存在するような情報が今後得られましたら改めて追記したいと思います。

TENHZ T5TENHZ T5

TENHZ」(「テンス」と読むようです)は昨年頃から登場したイヤホンブランドで、中華イヤホンブランドのひとつ「MaGaosi」からスピンオフしてできたらしいメーカー。当初はMaGaosiのサブブランド名だった「audbos」を使っていましたがその後「TENHZ」に改名した経緯があります。私のブログでも「TENHZ K5」(2BA+2DD)、「TENHZ P4 Pro」(4BA)を紹介していますが、どちらの製品もマニア層の評価も高く、現在も人気モデルのひとつとなっています。
過去記事(一覧): TENHZ(および関係イヤホン)のレビュー


TENHZ T5」の5BAの構成は、メーカーの説明によると「低域にKnowles製ドライバー、さらに自社開発の29689(中域)、31735(高域)、30095(超高域)を搭載」とのこと。

TENHZ T5TENHZ T5

具体的には、低域ドライバーは最近の中華マルチBAイヤホンではおなじみの Knowles「CI-22955」で、残りのBAは実際のところはBellsing製の同型番ユニットのOEMと思われます。「29689」と「30095」はKnowlesの同型番のユニットを模したものですが、特に「31735」についてはBellsing製のデュアルドライバーが使用している(Knowlesには存在しない)型番であることからも同社製OEMである可能性が濃厚ですね。

TENHZ T5TENHZ T5

TENHZ T5」の使用はインピーダンス26Ω±10%、感度110±1dB/mW、カラーは「レッド」と「ブルー」の2種類が選択できます。購入はいつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「Kinboofi」で、アマゾンでの販売価格は 18,000円 となっています。
Amazon.co.jp(Kinboofi): TENHZ T5

またKinboofi(@kinboofi)のTwitterアカウントでは頻繁に割引情報等もツイートされますのでこまめにチェックされることをお勧めします。

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パッケージはこれまでのTENHZ製イヤホンよりひとまわり小さいボックスに収納されています。今回はケースの付属はなく布製のポーチになっていることが理由でしょう。
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パッケージ構成は、本体、ケーブル、布製ポーチ、イヤーピース(シリコン製、ウレタン製、それぞれS/M/Lサイズ)、説明書。
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TENHZ T5」の本体のサイズは6BAイヤホンとしては比較的コンパクトで装着性にも優れています。またケーブルはいつものシルバーの細いケーブルではなくMMCX仕様の8芯のミックス線ケーブルが付属。今回はケースを付属しない代わりにこの辺にコストを振っているのかもしれませんね。


■最近のデジタルチューンの曲にあわせた? 強すぎるアレンジながら臨場感のある楽しいサウンド

TENHZ T5」の音質傾向は全体的にはフラット寄りですが、特に中低域に「強すぎるアレンジ」を感じるかなり個性的なサウンドとなっています。5BA/4Wayを制御するネットワーク回路による抵抗等とフィルターにより、あえて中音域の臨場感を持たせた独特のチューニングを行っている印象です。
TENHZ T5高域は2BA+1BAを割り当てられていることもあり非常に明瞭感のある綺麗なサウンドを鳴らします。刺さりなどの刺激は抑えられており、シャリ付きなども感じませんが、適度なキラキラも感じる良質なサウンドを実感できます。
中音域は、手元の個体は極端な違和感こそなかったものの、曲によってはかなり特徴的に感じる鳴り方をします。おそらく臨場感のある音場を演出するようなチューニングとなっており、意図的に少し距離感のあるボーカル等の定位と、独特の強めの残響感を感じるサウンドにアレンジされているようです。とはいえボーカルなどが凹むことはなく、しっかりとした存在感はあるため埋もれることなく聴くことが出来ます。しかし、低域も含めアレンジが強すぎると感じる部分があり、普段聴く曲の傾向や好みにかなり左右されるかもしれません。
低音域は沈み込みが浅く重低音はかなり軽めの印象を受けます。ただ量的に少ないわけではなく、電子ドラム等ではそれほど違和感を感じませんが、ちょっと派手に感じる鳴り方をします。またジャズなどを聴くとウッドベースの低音が左右に大きく響くような残響感があります。

実際に曲の相性についてですが、全般的にデジタルアレンジされた曲とは相性の良さがあります。ストリーミングで洋楽ヒットチャートを聴いてみると最近の傾向でこのようなアレンジをされた曲が多いともあり「演出過剰」気味に感じる場合もありますが、おおむね好感を持ちました。また女性ボーカルのピアノ曲や、ボーカルを前面に出すアレンジの邦楽、平面的にボーカルをマスタリングしているアニソンなどの曲では、低域が軽い印象は受けるものの、質の良い高域とあわせて、狙い通りボーカルを引き立たせ臨場感のあるサウンドへのアレンジが行われていると思います。

TENHZ T5いっぽう、特にハイレゾ音源化が積極的に行われているアナログベースのロックやポップスなどの音源は極端に相性が悪く、曲によってボーカルが下がりすぎて聴こえたり、ボーカルだけ風呂の中にいるような不自然なリバーブが発生したりする場合があります。またジャズなどでも低域の印象や響き方に違和感を感じる場合が多いのではと思います。
ただ装着性および遮音性は高く、高域の刺激も少ないことから長時間のリスニングにも向いている点もメリットでしょう。個人的には出張中の新幹線のなかで洋楽の最新曲のプレイリスト(奥さん作成)を聴き流していたり、相性の良かった「fripSide」の曲をボーカル中心に聴くといった使い方をしています。また最初から8芯のミックス線ケーブルが付属し、基本的にリケーブルを考慮する必要がない点も魅力的ですね。もちろん、リケーブルやイヤーピースを替えて、さらに追い込んでいくのも楽しいと思います。


■かなり「攻めた」サウンドアレンジは吉と出るか。

TENHZ T5」を検討する場合は4BAモデルの「TENHZ P4 Pro」とは全く異なるアプローチのサウンドだという点については特に注意が必要です。「TENHZ P4 Pro」のサウンドを気に入った方がステップアップに「TENHZ T5」を選ぶとかなり拍子抜けします。「TENHZ T5」ではBAドライバーの構成が「低1中1高2+1」と、「TENHZ P4 Pro」と比べても大きく異なっており、一般的に5BAのイヤホンのなかでもかなり変則的といえると思います。また「TENHZ P4 Pro」では一部分で独自型番のBAユニットが使用されていましたが、「TENHZ T5」では中高域にはすべてBellsing型番のBAを使っていると考えられる点もサウンドチューニングに影響しているかもしれません。そしてやはり「TENHZ T5」の個性的なサウンドは「狙いすぎ」な感は否めません。

TENHZ T5個人的に思った印象としてはマルチBAでハイブリッドのような音場感を狙おうとしてみたのかも、という感じがします。確かに2BA+2DD構成の「TENHZ K5」は非常に評価の高いイヤホンですが、このイヤホンの独特の音場の広がり方は、メリハリの強い派手なドンシャリ傾向の音があるから効果的なのだと思います。しかし、「TENHZ T5」のように、もともとフラットベースのチューニングが行われているマルチBAモデルでネットワークやフィルタを駆使し似たようなアプローチを狙ったことで、聴く人や曲によっては非常に違和感のある定位になったり、不自然な残響感がやたら耳に付いたりといった極端なアレンジに感じる可能性があるのかもしれません。「TENHZ T5」のサウンドは最初に買う5BAイヤホンとしてはトリッキー過ぎますし、マニアな方ほど苦手に感じるだろうと思える、ちょっとターゲット層が難しい製品にも思えます。あとはこのアプローチを「メーカーの個性」として有りかどうかの好みの問題になりそうです。


というわけで、手元にある「TENHZ T5」について、私の個人的な感想としては「強すぎるアレンジ」にやり過ぎ感は否めないものの、「まあこういう音もまあアリかな」という印象も持っています。ただ非常に個性的なサウンドであることは間違いないため、ポジティブ/ネガティブな要素を併記しました。既に同クラスのイヤホンを持っている方で、このように個性的な特徴のイヤホンにも興味を持たれた場合は、ぜひ挑戦してみるのも面白いのではと思います(^^;)。