KBF MK5

こんにちは。今回紹介するのは「KBF MK5」です。中国のイヤホンセラー「Kinboofi」のオリジナルマルチBAイヤホンの第3弾で5BA構成のモデルとなります。同ブランドのマルチBAイヤホンは多ドラ化が進む低価格路線とは一線を画し、手堅いチューニングによるサウンドでマニアにも定評があります。
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これまでKinboofiのマルチBAモデルは比較的中高域寄りにチューニングされたイヤホンが中心となっており、特に4BAモデルの「KBF MK4」は同価格帯の中華イヤホンのなかでもトップレベルの音質を実現しており、シェルデザインの美しさとあわせて現在でも大人気のモデルとなっています。また「KBF MK6」はより高域のアプローチを強めた製品となりました。
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そして今回の「KBF MK5」はバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーを5基搭載する5BA構成で、搭載するBAユニットは「Bellsing 30095」 ×2、「Knowles DTEC-31116」(2BA) ×1 、「Knowles CI-22955」 ×1 による 3Way仕様となりました。また、従来の4BAモデル「KBF MK4」および6BAモデル「KBF MK6」とは異なるサウンドチューニングとなっています。
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購入はアマゾンの「Kinboofi」マーケットプレイスにて。「KBF MK5」のカラーバリエーションは「クリアーブラック」と「クリアー(透明)」の2色で、表示価格は 32,000円 となっています。
Amazon.co.jp(Kinboofi): KBF MK5


■ビルドクオリティは今回も非常に高く、透明シェルが魅力的なデザイン

KBF MK5」のパッケージは「MK4」「MK6」同様に豪華版の化粧箱に入って届きます。パッケージ内容は本体、ケーブル(8芯 銀メッキ銅線MMCXケーブル)、イヤーピース(白色透明タイプ、グレータイプ、各S/M/Lサイズ)、イヤホンケースなど。
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付属のイヤーピースはプラケースに入っている方は「MK6」で付属していたものが今ひとつだった事を踏まえてえか多少異なるタイプの白い半透明タイプになりました(単に色を併せただけの可能性もありますが)。
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今回もイヤホン本体のビルドクオリティは非常に高く、透明なハウジングにゴールドのエッジラインのの仕上がりはとても綺麗です。
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KBF MK5」のシェルの大きさは「MK6」と同じで非常にコンパクトな「MK4」よりはひとまわり大きいサイズとなります。とはいえ、最近のマルチBAイヤホンと類似した大きさにまとめられていて、耳にフィットしやすい形状もあわせて装着性は良好です。
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それぞれのBAユニットからの音導管が3本あり、それぞれにフィルターによりサウンドが調整され、さらにサイドに埋め込まれたネットワーク基板により出力がコントロールされています。
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イヤーピースは付属の白色半透明タイプのほか、JVCの「スパイラルドット」やAZLA「SednaEarfit」、Acoustune「AET07」など、毎度利用している開口部の大きいタイプのイヤーピースとの組み合わせがよりフィット感を向上させ音質的にもお勧めです。


■従来モデルとは一線を画す、広がりと響きが印象的な中低域メインのサウンド

KBF MK5」の音質傾向は中低域寄りで左右に広がる音場感が特徴的なサウンドで、これまでの「MK4」「MK6」の中高域寄りのスッキリした音とは全く異なるアプローチのサウンドです。そのため「MK4」のサウンドが気に入っている方が聴かれると結構拍子抜けするかもしれません。
KBF MK5アプローチとしては中高域が籠もりやすくなる傾向なのですが「KBF MK5」では各音域のバランスをうまく調整できていて、ハイトーンのボーカルも比較的綺麗に鳴ってくれるなど、相変わらず音作りの上手さを感じます。
全体的には中低域に厚みがある濃密で力強い音で、同時に大きく広がる響きによる臨場感のある音です。ただし、印象としては洋楽および邦楽ポップスなどのボーカル曲を「気持ちよく聴く」ことに照準を合わせて味付け、チューニングされたサウンドですので、スッキリした音を好まれる方は好みが分かれる可能性があります。

高域はある程度スッキリした印象をもちつつ、従来の「MK4」「MK6」と比べるとかなり控えめな印象になっています。全体的な中低域寄りのバランスにあわせたチューニングなため違和感は無く聴きやすい音ですが高域好きの方には物足りなさを感じる可能性があります。明瞭感のある音で煌めきも感じますが少し遠くで鳴っている印象となります。

中音域は厚みがあり、独特の広がりを感じる音です。「MK4」が味付けのない抜けの良い音だったのと比べると、「KBF MK5」はかなり響きや余韻など臨場感を向上させる味付けがされている印象です。ポップスやバラードなどはとても情感があり、男性ボーカルなどでは重みのある雰囲気の良さを感じます。いっぽうでハイトーンの女性ボーカルなども少し凹みを感じ離れて定位するものの綺麗に鳴ってくれます。

KBF MK5低域は「MK4」「MK6」と比べるとかなり厚みを感じる音で、情報量も多く深みもあります。「KBF MK5」でもっとも特徴的なのがこの低域で、5BAらしい密度のとても高い音であると同時に、マルチBAイヤホンでは珍しい響きの良さと重さを感じる重低音を感じます。ただし「MK4」「MK6」に比べるとキレの良さは多少犠牲にしている感じもあり、スピード感のある曲とはあまり相性が良くないようです。
これまでの「MK4」「MK6」と比べるとウォーム寄りのサウンドのため、ロック、ポップス、ジャズなど広がりのある響きと密度の高い中低域が楽しめる曲とは相性が良いですが、スピード感のある曲や音数の多い曲との相性はいまひとつと感じるかもしれませんね。


付属の8芯銀メッキ線ケーブルは中低域寄りの傾向が強いケーブルのため、かなり明瞭感の強い「MK4」や「MK6」では比較的相性が良かったものの、「KBF MK5」ではもう少し高域のメリハリが欲しい印象となります。そのため比較的派手めの音質傾向のケーブルにリケーブルすることで「KBF MK5」の明瞭感が向上します。
KBF4816KBF MK5
お勧めのケーブルはKinboofiでは最近リリースされた低価格ケーブル「KBF4816 高純度銅銀メッキ 8芯ケーブル」(3,000円)、またはよりハイグレードな「KBF4804 8芯 単結晶銅 銀メッキ線 ケーブル」(7,900円)ですね。「KBF4816」では付属ケーブルでは曲によって中高域に感じた籠りや低域の団子になる印象が改善され、「KBF MK5」の心地良い響きの良さとボーカルの綺麗さを感じることができます。さらに「KBF4804」では中高域がより近くに定位し、全体的に解像度が向上した印象のサウンドなります。個人的には「KBF4804」の組み合わせが良いですね。

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他には定番の「KBF4746 16芯ミックス線ケーブル」(6,000円)では情報量および分離性が大幅に向上するものの、特に中低域の響きがより強くなる傾向で曲によっては少しわざとらしく感じるかもしれません。また先日レビューした「KBF4815 4芯 合金ケーブル」(17,000円)では音質傾向への味付けは一切無いものの全体的に抜けが良くなる印象でよりスッキリ感が向上します。

というわけで、KinboofiのマルチBAイヤホンもこれで3つめのモデルとなりましたが、中音域メインの「MK4」、より高域に振った「MK6」、そして、中低域の厚さを向上した「KBF MK5」という棲み分けによるラインナップとなったようです。そのため「MK4」と比べるとやはり好き嫌いはありそうなモデルとなりましたが、高域の刺激が気になることでこれまで手を出せなかった方や気持ちよくリスニングを愉しみたい方には「KBF MK5」は最適なイヤホンだと思います。また長時間のリスニングにも向いていることから、それぞれのシチュエーションに応じて各モデルを使い分けるというのも楽しいですね。