TFZ SERIES 7

こんにちは。今回紹介するのは「TFZ SERIES 7」です。個人的な好みもあって私のブログでもすっかりお馴染みになっている中国のイヤホンブランド「TFZ」ですが、「TFZ SERIES 7」はTFZとしては初めて手がけたハイブリッド仕様のモデルになります。第3世代ドライバーをシングルで搭載した「KING III」と同じデザインの金属製ハウジングに4BA+1DDの5ドライバーを搭載し、価格的にもこれまで紹介したTFZ製品のなかでも最も高額な設定になっています。

音質傾向としてはいかにもTFZらしい寒色系のドンシャリでキレのある硬質なサウンドにBAドライバーならではの解像感がプラスされた濃いめのサウンドが特徴的です。以前紹介した3BAモデルの「SECRET GARDEN 3」は個人的にはあまり好みの音ではなかったのですが、今回のBAユニットの使い方は比較的良好で、バランスの良い仕上がりになっていると感じます。
TFZ SERIES 7  TFZ SERIES 7

「TFZ」では初期の製品である「SERIES 1 / 3 / 5」をはじめ、もともとは「SERIES」と名前が付いた製品ラインを中核に置いていました。そのため上位モデルとなる「SERIES 7」という名称はかなり早い段階(EXCLUSIVE KINGの発売より以前)から製品化が予告されていました。そして、紆余曲折を経て、おそらく初期の計画とは全く内容の異なる製品として「本当に発売された」のが今回の「TFZ SERIES 7」なわけです。
TFZは「EXCLUSIVE」ラインや「TEQUILA」「QUEEN」「SECRET GARDEN」「NO.3」と新たな名称を与えるたびに音作りの方向性を微妙に、場合によっては大幅な変化を加えてきまして。そんななかで、TFZとしては初めてのアプローチとなるハイブリッド構成モデルで伝統的な「SERIES」ラインの、しかもフラグシップ用として長年温めていた「SERIES 7」を当てたことからも、「TFZ SERIES 7」はあえて同社にとってスタンダードな「TFZらしい」音作りを目指した製品であることが伺えます。

TFZ SERIES 7TFZ SERIES 7
TFZ SERIES 7」で採用されているドライバーは、ダイナミック部分にTFZではお馴染みの「二重磁気回路/デュアルコイル」ドライバーで、仕様的には「KING PRO」や「SECRET GARDEN」と同じ「第2.5世代」のユニットが使用されていると考えられます。また組み合わされるBA(バランスド・アーマチュア型)ドライバーはすべてKnowles社製で「TWFK-30017-P183」と「SWFK-31736-000」をそれぞれ2基ずつ、合計4BAが搭載されます。「TFZ SERIES 7」はこれらのハイブリッド構成によりインピーダンス17Ω、感度109dB/mWという仕様になっています。

TFZ SERIES 7TFZ SERIES 7
本体カラーはシルバーの1色のみ。ステム部分は新たにアルミ合金製となっているものの、銀色の金属製シェルは「KING III」色違いのデザインで、ハウジング形状も「SERIES」および「KING」各ラインナップの伝統的なサイズ感を維持しています。「TFZ SERIES 7」はAliExpressや香港Penon Audioの直営ストアでは 359ドル で販売されています。
AliExpress: TFZ SERIES 7 TFZ Official Store / Penon Audio
Penon Audio(直営店): TFZ SERIES 7

また、米国の共同購入サイト「Drop」(旧名称Massdrop)では最近の募集価格は 250ドル(+送料4.19ドル)となっており、私はこれより少し高かったですが以前の募集時に購入しました。Dropの場合、募集を終了すると次回の有無も含め未定ですし、次回募集時も同額とは限らないうえ、オーダー後届くまでに2ヶ月以上かかる場合もありますのであらかじめ考慮しておく必要があります。
もし「Drop」で購入を検討される場合、募集中なら「○ days left」と終了までの日数が表示されていますのでその期間中にオーダーをおこなってください。また多くの場合、募集を終了しているとおもいますので、その場合も「Request」をしておくと良いでしょう。 ※リクエストしておくと募集開始時に通知のメールが届きます。
Drop(旧Massdrop): TFZ SERIES 7


■「SERIES」ラインを踏襲したデザインで手堅くまとめられた金属製ハウジング

TFZ SERIES 7」のパッケージは上位モデルらしく、「SECRET GARDEN」同様のキューブ型のボックスで届きました。このボックスの場合、いつもの布製のポーチではなく樹脂製のハードケースが同梱されている点もSECRET GARDENと同様です。
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パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース(2種類、各S/M/Lサイズ+本体装着済みMサイズ)、ハードケース、説明書。
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本体はサイトの写真通り「KING III」の色違いという内容でシェルのサイズ、材質、フェイスプレートのデザインなどは同一です。興味深いのはベント(空気孔)の位置も同じであることから、内部のダイナミックドライバーの配置も全く同じだろうということが想像できますね。ただメッキ仕上げのアルミ合金製のステム部分については「KING III」よりひとまわり太くなっています。ステム直下に4BAを搭載している仕様に基づく相違点だと思われます。
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ケーブルは「NO.3」と同じ白い樹脂被膜の銀メッキ線ケーブルが付属します。価格を考えると「NO.3 Ti」のようにアップグレードされた専用のケーブルが付いていても良さそうなものですが、「TFZ SERIES 7」ではドライバーまわりでコストがかさんでいる、ということなのでしょう。リケーブルについては想定しておいた方が良さそうです。
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シェル形状は「KING PRO」などこれまでのTFZ製イヤホンと基本的には同一ですので、他のモデルで装着性に問題が無ければ「TFZ SERIES 7」も大丈夫だと思います。ただ、ハイブリッド化によりステムが太くなっている点と、もともと大きめのハウジングのため耳の小さい方はAcoustuneの「AET06」などのダブルフランジのイヤーピースを合わせるのが良いと思います。その他よりフィット感を向上させるために、定番のJVCの「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」など開口部が大きいタイプの製品を利用することをお勧めします(今回私は「SednaEarfit Light」を使用しました)。


■パワフルな低音とハイブリッドらしい解像度の高い中高域を「TFZらしい」サウンドバランスで。

TFZ SERIES 7TFZ SERIES 7」の音質傾向は「SERIES」という伝統的な名称からも分るように寒色系のドンシャリで、厚みのある低域が「いかにもTFZ」と感じるサウンドです。いっぽう、中高域については第2世代(「KING」や「T2 Galaxy」など)、第2.5世代(「KING PRO」や「SECRET GARDEN」など)、第3世代(「NO.3」など)の各シングルダイナミック搭載モデルとは異なる、1音1音を精緻に捉えるような解像感はマルチBA化による恩恵といえるでしょう。以前レビューした3BAモデルの「SECRET GARDEN 3」は側面のスイッチによる特定の音のモニターに特化したような、リスニングイヤホンとしてはかなり偏った仕様のイヤホンでしたが、今回の「TFZ SERIES 7」では、ハイブリッド化により各音域の特徴を活かしつつ、よりドンシャリ傾向を強くしたTFZらしいリスニングイヤホンとしてのバランスに仕上げられています。

高域は「TFZ SERIES 7」ではデュアルBAの「SWFK-31736」が採用されていますが、良くコントロールされている印象で、BAらしい粒立ちのよい解像感と伸びの良さをもちつつ、「SECRET GARDEN 3」と比べても刺激は抑制された聴きやすいチューニングとなっています。「NO.3」や「NO.3 Ti」の鮮やかさとは異なるものの、明るく明瞭感のあるスッキリ目の印象です。「NO.3」や「KING III」等とくらべ低域がより分厚く前に出るバランスのため、曲によっては少し下がって定位しますが、しっかりとした存在感があり、埋もれるような印象はありません。

TFZ SERIES 7中音域は僅かに凹みますが比較的近くで定位し、非常に解像度の高い音を鳴らします。音場は普通からやや狭い印象。高域同様に明るく明瞭感のある音で、ボーカルもスッキリで伸びの良い音を鳴らします。分厚い低域に被ること無く存在感があり、ハイトーンも綺麗に伸びてくれる印象はとても気持ちよいですね。やたら籠りがちだった「QUEEN」やちょっと中高域が下がる傾向にある「MY LOVE 3」など、最近のTFZの低域重視のモデルはボーカルなど中音域の印象が今ひとつなモデルが多いのですが、「TFZ SERIES 7」ではハイブリッド化により明瞭感とともにしっかりとしたした主張を感じる印象となりました。結果的にちょっと派手めの印象に感じる部分はありますが、極端に人工的な印象ではなく、聴きやすく下品にならない程度の質の良さにまとめられています。

低域は量的にはかなり分厚く、硬質な塊のような力強い音を鳴らします。「TFZ SERIES 7」では第1世代の「SERIES 5」や第2世代の「EXCLUSIVE KING」を彷彿とさせる、非常にパワフルな音です。量的にはややフラット寄りの「KING PRO」「KING III」などの第2.5世代、第3世代のKINGラインより大幅に多く、中低域の印象で「TFZ SERIES 7」のサウンドを気に入る方もかなり多いのではと思います。
TFZ SERIES 7ちなみに、「SERIES5」や「EXCLUSIVE KING」など、比較的初期モデルの低音の場合、量感と力強さと立ち上がりが早くキレの良い印象を両立しているいっぽうで重低音の沈み込みがすこし浅かったり、ベースラインに粗さがあったりと多少の限界も感じました。しかし、「TFZ SERIES 7」の低域ではこの辺の質が確実に向上しており、重低音の沈み込みや解像度の高さも含め、従来モデルのTFZ製品と比較しても完成度の高い低音だと思います。いっぽうで、これまでの「TFZらしさ」とは異なるアプローチで自然な音場感をもった広さを感じる低音を実現した「NO.3」やより印象が強化された「NO.3 Ti」とは全くキャラクターが異なる音のため、どちらが良いと言うより「好みによって意見が分かれる」要素になるのではと思います。


そして、「TFZ SERIES 7」では「NO.3」(標準モデル)と同じ、樹脂被膜の銀メッキ線ケーブルが付属しますが、350ドル以上の価格設定を考えても、本体に見合ったリケーブルを考えたいところです。「TFZ SERIES 7」では私のブログでは最近定番化している16芯線ケーブルをはじめ、できればよりハイグレードなOCC線を組み合わせたいところです。お勧めのケーブルは、16芯線では「HiFiHear HiF4827/HiF4828」、OCC線では定番の「Yinyoo YYX4810」または「NICEHCK DJY3」、さらに8芯OCC銀メッキ線の「Kinboofi KBF4804」などです。
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できればよりハイグレードなOCCミックス線「KBF4805」「NICEHCK DJY1」や、金銀合金OFC(シルバーカラー)の「KBF4815」なども費用が見合えば是非とも挑戦してほしいケーブルですね。リケーブルにより、明瞭感が向上した印象に変化しますが、特に「KBF4804」では中高域の主張が向上し全体的により濃い印象のバランスに変化します。さらに「KBF4805」では解像感が向上し、「KBF4815」では全体的によりスッキリした印象に変化します。

というわけで、「TFZ SERIES 7」は価格的には少し割高な印象は否めないものの、全体的な完成度は高く、TFZが作った最初のハイブリッドとしても、同社のハイグレードモデルとしても価格に見合った音質のイヤホンだと感じました。価格的に300ドルの「NO.3 Ti」とすこし被る部分があり、さらに同様な構成のハイブリッド製品も増えてきていることもあり、いまいひとつ地味な存在になっていますが、例えば「LZ A5」「LZ A6」と同等グレードの価格帯で、パワフルな低音域とより聴きやすい高域の製品をイメージされる場合などは挑戦してみるのも面白いかも知れませんね。