KBF MX3

こんにちは。今回はKinboofiの「KBF MX3」の紹介です。2BA+1DD構成のハイブリッドイヤホンで先日紹介した「KBF MX2」(1BA+1DD)の上位グレードモデルになります。非常に美しいシェルデザインで音質面もMX2より着実にグレードアップしつつ、価格は1万円台にまとまっており、かなり魅力的な製品となっています。そのため、発売当初は入荷後即売り切れで入手が困難な状況がしばらく続きました。
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中国のイヤホンセラー「Kinboofi」はこれまでもオリジナルのイヤホン製品を販売しており最近では低価格帯の「KB EAR」シリーズも比較的好評ですが、なんといっても「KBF MK」シリーズのマルチBA製品はセラーブランド製品はもちろん、同価格帯の他の中華イヤホンと比較しても頭ひとつ抜けた製品クオリティと音質の高さで多くのマニアから高い評価を得ています。

過去記事(一覧): Kinboofi 「KBF MK」シリーズ/「KBF MX」シリーズのレビュー

このMKシリーズの流れを汲むハイブリッドモデルのMXシリーズも、より購入しやすい低価格で音質面においても非常にコストパフォーマンスの高い仕上がりになっています。
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KBF MX3」のデザインはブルーのクリアシェルでフェイスパネルには最近高価格なイヤホンでちょっと増えている細いワイヤーを折り重ねたデザインで価格以上の高級感があります。ドライバーは「MX2」がKnowles製BA(ED-29689)+1DDの構成だったのに対し、「KBF MX3」ではさらにBellsing製のツィーターユニット(Bellsing 30095)が追加された仕様になっています。
ちなみに、1BA+1DD構成の「KBF MX2」では「KBF MX2」のレビューで記載した通り、ダイナミックドライバーは低域がメインでBAユニットが中高域をカバーする仕様でした。一見すると当然のことのように思われるかもしれませんが、低価格ハイブリッドなどの多くはフルレンジを担当するダイナミックを高域用ツイーターBAが補完する、ほぼダイナミックドライバーが中心のサウンドなっているため、「KBF MX2」のような「まっとうなハイブリッド」は一部の高価格帯の製品を除きかなり少数派だったりします。
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そして今回の「KBF MX3」では比較的安価ながら実績も多い「Bellsing 30095」高域用ツイーターユニットを追加することで中高域を担当するKnowles製「ED-29689」のサウンドを補完し、最小限のコストアップで全体のサウンドをグレードアップすることに成功しているようです。

KBF MX3」の購入はアマゾンの「Kinboofi」マーケットプレイスにて。価格は 15,000円 となっています。KinboofiのTwitterアカウント(@kinboofi)では割引情報や入荷情報も頻繁にツイートされますのでフォローの上こまめにチェックされることをお勧めします。
Amazon.co.jp(Kinboofi): KBF MX3


■MKシリーズ同様の高いビルドクオリティ。クリアシェル&メッシュフェイスプレートが魅力的

KBF MX3」のパッケージは「KBF MK」シリーズや「MX2」同様の化粧箱タイプのボックスにて。付属品を含めコンパクトなイヤホンケースにまとめて収納されています。
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パッケージ内容はイヤホン本体、MMCXコネクタ仕様のケーブル、イヤーピース(黒色・S/M/L)サイズと、オマケのグレーのイヤーピース(同じく3サイズ)、ケースなど。

KBF MX3」のシェルは水色の透明ハウジングで最近ハイグレードなイヤホンでちょっと増えている白いワイヤーメッシュ風の模様が特徴的なフェイスデザインとなっています。
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ハウジングのサイズは「KBF MX2」や「MK5」「MK6」と同サイズでビルドクオリティは相変わらず高く低価格モデルとはいえ手を抜いている印象は全くありません。ハウジングからは高域BAの「Bellsing 30095」と中高域BAの「Knowles ED-29689」、および低域用のダイナミックドライバーが確認できます。
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また今回付属しているケーブルは8芯銀メッキ線ケーブルですが、従来の「MK」シリーズのものとは異なりより弾力のある被膜のケーブルになりました。多少太さはあるもののしっかり編み込まれており使い回しは今回も良好です。イヤーピースは付属のブラックのシリコン製のほか、よりフィット感を高めるために定番のJVCの「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」など開口部が大きいタイプの製品もお勧めです。


■聴きやすい寒色系サウンド。「MX2」より硬質で締まった低域と高域の明瞭感が特徴的

KBF MX3」の音質傾向は「MX2」同様、ボーカルなどの中低域寄りの弱ドンシャリで、比較的聴きやすいバランスのにまとめられています。「MX2」も「ハイブリッドらしい」派手さを少し感じる寒色系の音ですがより高域の伸びが向上し、低域が多少硬質な締まりを感じる印象に変化しています。そのため「MX2」と比べて中高域の明瞭さをより感じやすいバランスになっているようですね。

KBF MX3KBF MX3」の高域はハイブリッドらしい多少主張の強さはあるものの、明瞭感の伸びの良さを感じる音です。「MX2」より追加された「Bellsing 30095」は低価格ハイブリッドから中華イヤホンのマルチBAまで幅広く使われているツィーターユニットですが、「KBF MX3」ではより中高域のスッキリ感と鮮やかさを演出する役割に特化しているようで「あまり無理をしていない」印象ですね。しかしこのBAユニットは単独ではある程度出力を加えると多少歪みやすい傾向があり(そのため2個以上で使うことも多い)、出力環境によっては多少粗さが出やすくなる場合もあります。S/Nが高く低いゲインでもある程度駆動力を確保できるDAPであれば、煌めきを感じつつも比較的刺激が抑えられた聴きやすい印象になると思います。

KBF MX3中音域は癖のない聴きやすい音で、「MX2」より中高域の抜けの良さが向上し、解像感が増したような印象になっています。「KBF MX3」も「MX2」同様にKnowles製「ED-29689」がメインとなって担当している部分ですが、低域のダイナミックドライバーと新たに追加された高域用BAにより中高域の明瞭感がよりアップした楽しいサウンドに仕上がっている印象があります。
ボーカルは比較的近く定位し多少艶を感じる聴き応えのある音を鳴らします。音場は広くありませんが、ボーカルやギターなどはとても楽しく聴くことができるサウンドですね。

低音域は量的には「MX2」よりはやや控えめな印象を受けるものの十分な量感があり、よりタイトな印象になりました。「MX2」では多少広がりのある低音でしたが、「KBF MX3」ではより硬質な音でアタックにキレの良さを感じます。重低音の沈み込みもしっかり確保できているので低域に物足りなさを感じることは少ないでしょう。また中高域との分離も良好です。

ロック、ポップス、アニソンなどさまざまなジャンルのボーカル曲と相性が良く使いやすいサウンドのイヤホンです。1万円台のイヤホンとしての完成度は高く、見た目同様に満足感を感じるサウンドに仕上がっていると思います。
KBF MX3ただし、ちょっとインピーダンスが低く、過剰に電流が流れやすい傾向があるため、S/Nが高く、同時にある程度駆動力に余裕のあるDAPを使いたいところです。ノイズが多くホワイトノイズを発生しやすいスマートフォン等はもちろん避けたいところですが、同様に少ない電力でゲインを確保出来るデジタルアンプを使用している小型DAP等でも過剰電流により歪みが発生しやすくなる可能性があります。「KBF MX3」はシリーズの中でも1万円と低価格のため、比較的購入しやすいイヤホンではありますが、この辺は「KBF MK4」などのマルチBAイヤホンと同様に再生環境によって印象が変わる可能性があることは留意する必要がありますね。

KBF MX3」ではこれまでの「KBF MK」シリーズとは多少異なるタイプの8芯ケーブルが付属します。このケーブルは例えば「MK4」などにこれまで付属していたケーブルより情報量が多めで中高域もしっかり表現してくれる印象があります。「KBF MX3」との相性も良いため特にリケーブルの必要はないかもしれませんが、同様のケーブルでバランス化を行いたい場合は、最近「KB EAR」ブランドで発売された銀メッキ線ケーブルが比較的近い傾向でお勧めです。2千円以下で購入できる点も良いですね。よりグレードアップを考える場合は定番の16芯ケーブル「KBF4746」(16芯ミックス線)や「KBF4779」(16芯高純度銅線)や、8芯OCC単結晶銅線ケーブルの「KBF4804」などの組み合わせも良いと思います。
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というわけで、「KBF MX3」は美しいブルーのクリアシェルと使いやすいサウンドが魅力的なイヤホンで今回もコストパフォーマンスの高さを実感しました。「MX2」より音質的なアップグレードはもちろんですが、多少再生環境に依存する点は価格差以上の違いがあるかも知れません。DAPなどのプレーヤーもあわせてステップアップするのには最適ですし、個人的には聴きやすいサウンドはもちろん、価格的にも見た目的にも屋外で気軽に使い回すのにも使いやすいイヤホンだと感じました。