TRN H2

こんにちは。今回は中国のイヤホンブランド「TRN」の低価格モデル「TRN H2」の紹介です。3Dプリンター成形された美しいクリアハウジングに8mmサイズのダイナミックドライバーをシングルで搭載したシンプルなモデル。さまざまなハイブリッドイヤホンのイメージが強い同ブランド、実はシングルダイナミックのモデルは今回が初めてだと思います。しかも発売時の価格設定は先日レビューした1BA+1DDハイブリッドの「TRN IM2」より若干高く、決してローエンドモデルというわけでもなさそう、という点がとても興味深いですね。音質的にもなかなかバランスの良いドンシャリ傾向で完成度は結構高いと思います。
→ 過去記事: 「TRN IM2」 大幅に向上したビルドクオリティと聴きやすく使いやすいサウンド。2千円台ながら満足感の高いハイブリッド中華イヤホン【レビュー】
TRN H2TRN H2
「TRN」はKZの社員がスピンオフして作られたイヤホンブランドといわれており、当初はモデルごとに方向性やビルドクオリティのバラつきが極端な「当たり外れの大きい中華イヤホン」という印象が先行しがちでしたが、最近は製品クオリティも安定してきており、音質面もかなり安定してきた印象があります。先日紹介した低価格ハイブリッドの「TRN IM2」は20ドル以下、2千円台の価格設定ながら完成度は非常に高く、YinyooほかいくつかのブランドへOEM供給も行われるなどサプライヤーとしての実力も着実にアップしています。また当初より定評があったケーブルについてもコストパフォーマンスに優れたリケーブル製品をリリースしています。

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今回の「TRN H2」はレジン製のクリアハウジングを3Dプリンタで製造しており、低価格ながら1万円オーバーのイヤホンと比べても遜色ないビルドクオリティを実現しています。またステム部分にはアルミ合金製のノズルを採用しており安定した出力を実現しています。

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TRN H2」では8mmサイズのダイナミックドライバーをシングルで搭載。従来のハイブリッドモデルのドライバーより感度が向上しており、各音域にわたりリッチなサウンドを実現しています。

TRN H2」の購入はいつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」にて。カラーはブラックの1色のみです。本レビュー掲載時点ではAliExpressでのみの取り扱いで、アマゾンでは出品されていませんでした。
AliExpressでの表示価格は 18.02ドル~ です。AliExpressでの購入方法およびフォロワー値引きについてはこちらをご覧ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): TRN H2


■コンパクトで低価格イヤホンとは思えないビルドクオリティの高いクリアシェル

TRN H2」のパッケージはシンプルな白箱タイプでシルエットイラストのタイプ。内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、説明書・保証書など。いつもどおりのシンプルな構成です。
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レジン製のクリアハウジングは非常にコンパクトにまとまっており、装着感も非常に良好です。小さなハウジング形状のため相対的にステムが太く見えますが実際にはKZの最近のハイブリッドなどと比べるとひとまわり以上細いタイプで、耳が小さい方でも装着性で困ることは少なそうです。またビルドクオリティも高く、10ドル台のイヤホンとはとても思えない仕上がりです。
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そして「TRN H2」をハイブリッドモデルの「TRN IM2」と比べるとシェル形状やビルドクオリティにおいての違いはほぼ無く、レジン製のハウジングは同一の形状であることが分ります。外観上の相違点は「TRN H2」がカーボン柄のフェイスプレートに対し、「TRN IM2」が雲母柄という点とですね。また、アルミ合金製のステムは2wayの「TRN IM2」が2穴タイプなのに対し、1穴タイプの「TRN H2」はメッシュが貼られています。
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またシェルから透けて見えるダイナミックドライバーはどちらも8mmタイプで「TRN H2」と「TRN IM2」で同一のもの?にも見えますね。外見だけ見ると「TRN H2」は「TRN IM2」からBAを除いたシングルダイナミック版のように見えます。この仕様上の違いが音質面でどの程度の違いとなるのか気になるところですね。


■シングルダイナミックらしい自然なつながりと、鮮やかさを感じるバランスの良いサウンド

TRN H2TRN H2」の音質傾向は中低域寄りのドンシャリで聴きやすいタイプのイヤホンです。「TRN IM2」よりさらに低域が厚めのバランスになっています。ハイブリッドの「TRN IM2」より高域の派手さは抑えられていますが、比較的スッキリした中高域で伸びは良くボーカル帯域が気持ちよく感じます。また奥行きを感じる広めの音場感も好印象です。「TRN H2」は、解像度などで突出した印象はありませんが、「TRN IM2」のハイブリッドらしい音とは異なり、シングルダイナミックならではの各音域の自然なつながりと心地よさを実現しており、低価格ながら非常にバランスの良いサウンドに仕上がっていると思います。

TRN H2」の高域は鮮やかさのある音で、シングルダイナミックの低価格イヤホンとしては想像以上に明瞭感を感じます。ある程度の主張がありますが刺激はほとんど無く聴きやすいバランスの範囲でまとめられています。「TRN IM2」に比べると硬質なスッキリ感は控えめですが、伸びは比較的良く煌めきも感じることができます。
TRN H2中音域は僅かに凹みますがボーカルなどは自然な距離感で鳴ってくれます。高域同様に鮮やかさのある明るめの音ですが、音場は奥行きがある広めの印象で味付けは無く自然な印象です。そのため解像感やキレの良さより音の濃淡を楽しむタイプのイヤホンで、若干のウォームさも感じます。ただ中高域は比較的綺麗に伸びており女性ボーカルのハイトーンの籠りもほぼ感じません。音数の多い曲では多少ボーカルが下がり気味で緩めの描写に感じる事がありますが、全体的に聴きやすく低価格イヤホンとしてはまとまりの良いサウンドだと思います。
低域は「TRN IM2」より力強く、量感と厚みのある音です。中高域との分離は良く、籠もることなく鳴ってくれます。解像感は価格なりの印象で重低音の締まりは多少の割り切りが見られるものの、沈み込みも比較的良く感じ響きのある印象です。普段聴くうえでは心地良く存在感のある鳴り方だと思います。付属ケーブルではスピード感のある曲では少し響きが強く描写しきれない印象もありますが、リケーブルで分離性が向上することでかなり印象が良くなると思います。

ジャンルにとらわれず使いやすいバランスのサウンドで、特にロック、ポップス、アニソンなどとのボーカル曲をはじめ、ジャズなどのアコースティックなサウンドを気軽に楽しむ上でも良いイヤホンだと思います。また情報量の多いケーブルにリケーブルすることで全体的に明瞭感とキレが向上し、音場がより立体的になると思います(中華2pinタイプが使えます)。
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2千円前後の中華イヤホンケーブルとの組み合わせでも十分にリケーブル効果は実感でき、たとえば8芯銀メッキ線の「NICEHCK TDY4」(1,899円)や「NICEHCK TDY6」(1,950円)、16芯高純度銅線の「NICEHCK CT4」(2,250円)、16芯銀メッキ線の「TRN T2」(2,490円)などは、「TRN H2」の特徴を活かしつつ、より明瞭感とメリハリのあるサウンドになります(この3種類では価格が上のケーブルほどリケーブル効果が大きくなる印象です)。
→  過去記事:「TRN T2」 低価格 16芯 銀メッキ線ケーブルのレビュー
→  過去記事(一覧): NICEHCKブランドのイヤホンケーブルのレビュー

というわけで、「TRN H2」は「TRN IM2」の廉価版かもとも思いましたが、実際にはシングルダイナミック仕様でチューニングを加えることで「TRN IM2」のハイブリッドらしい音とはまた異なる、自然なつながりとより中低域にフォーカスしたサウンドに仕上がっていました。10ドル台の製品としては同様に非常にコストパフォーマンスは高く、お勧めできる使いやすいイヤホンだと思いますよ(^^)。