SONY WF-1000XM3

というわけで、前回に引き続きレビューというより買い物ネタです。ソニーの「WF-1000XM3」を遅まきながら購入しました。まあ初回を逃したので届くのに1ヶ月近くかかった感じです。だからというわけでもないのですが、今回はほぼレビューはしてません(笑)。たしかに音はこの手の製品のなかでは抜群に良いのですが、それでも個人的には「とりあえず押さえておけ」的なガジェットぽいので買いました感のほうが強いなぁ、と思っていたりします。
WF-1000XM3」は、ソニーのワイヤレスイヤホンのハイグレードモデルですが、一般的には「ノイズキャンセリング機能付き完全ワイヤレス(TWS)」という位置づけの製品になると思います。既存の「WF-1000X」の後継モデルとしてリリースされ、価格も2.5万円オーバーとTWSとしては結構な高価格設定ですが、どうもオーディオ界隈ではノイキャン性能より、その高音質っぷりで評判が良く、売り切れ続出でワイヤレスイヤホンのなかでも無双っぽい雰囲気を漂わせている製品みたいです。
  
Amazon.co.jp: SONY ワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン WF-1000XM3


■ 一般的なTWSとは全く違う、ソニーしかできない、最もソニーらしいオーディオガジェット。

いうまでもなく、「WF-1000XM3」の製品としての最大の特徴は「高音質ノイズキャンセリングプロセッサー QN1e」によるとにかく強力なノイズキャンセリング機能と、独自のワイヤレスチップの性能、ソニーお得意の「DSEE HX」などのソフトウェア制御などです。オーディオブランドとしてイヤホンのドライバーまで作れる完全メーカーであるだけでなく、デジタルチップなどの半導体分野でも世界屈指の技術力を持つソニーならではの、徹底したデジタル推しの超絶なワイヤレス製品だと思います。そのいっぽうで、「WF-1000XM3」のTWSとしての基本スペックは実は驚くほど平凡だったりします。

SONY WF-1000XM3Bluetooth規格こそ「Class1」出力の「Bluetooth 5.0」対応ですが、対応コーデックはSBCとAACのみ。aptXはもちろん、ソニーのLDACも対応しません。つまり「ソニーなのに」ハイレゾマークがついてないわけです。ソニーがポータブルオーディオの隆盛を牽引する上で掲げた「ハイレゾ」を熱く信奉する方にはどう説明するのでしょう。まあ個人的には「どーでもいい要素」なんですが(^^;)、わりと主力のソニー製品だけに、ちょっと余計な心配をしないでもありません。またドライバーは銅クラッドアルミ線(CCAW)をコイルに使用し、ネオジウム磁石を使ってるとはいえ、一般的なTWS同様、6mmのシングルダイナミックドライバーの構成です。実際、ソニーのサイトで開発者インタビューなどを読んでも、とにかく「高音質ノイズキャンセリングプロセッサー QN1e」がヤバい、という感じですよね(笑)。もちろんドライバーの基本性能は、安価な中華TWSとは比べものにならないのだと思いますが、とにかく既存規格の上でも独自のデジタル制御を効かせまくって高音質を実現している、という印象になります。

それでも実際に「WF-1000XM3」を聴いてみると、「理屈抜きに良い音」と感じられるサウンドで、このようなアプローチの違いとかは「音質的な完成度」のうえでは些末なことと捉えるべきなのだと思います。やはりソニーって凄いんだなぁと感じずにはいられませんね。
SONY WF-1000XM3SONY WF-1000XM3
イヤピはいろいろ付いているものを検討し、最終的にシリコンのSサイズに落ち着きました。というか、私の耳穴の場合、これ以外だと耳から落ちてしまうので・・・(汗
ウレタンタイプが思ったよりフィットしなかったのは私だけかもしれませんが、すこし残念。

ペアリングしたのがいつものMate 20 Proでしたので、NFCで超絶簡単にペアリングできました。最初普通にペアリングしようとして端末側でエラーがでたりして苦戦したのですが、気のせいだったかも知れません。ちなみに、「WF-1000XM3」はiOS/Android用のアプリ「Headphones Connect」で各種設定や制御を行います。アプリの操作性はとても良く、操作に迷うことはほぼ無いと思います。このアプリがなくても利用上支障はありませんが、ノイキャン詳細の設定や「DSEE HX」のON/OFF、接続優先/音質優先など、実際にこのアプリで確認したり設定する機会はとても多かったりします。
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逆にいうと、このアプリを利用しなければ「WF-1000XM3」のこれらの設定はコントロールできないわけで、やはりアプリ制御ができないDAP等とペアリングすることは(使用は出来ますが)想定されていないと考えるべきでしょうね。


■ やはり万能ではないけど、現時点の「異次元のTWS」であることは間違いなさそう。

SONY WF-1000XM3WF-1000XM3」のサウンドは、1万円オーバーや2万円近い製品も含め、他の完全ワイヤレス(TWS)とは「異次元のサウンド」です。有線イヤホンと遜色ない、というより普通に評価できるステージにいるたぶん現時点で唯一の製品と言って良いでしょう。音質傾向的には弱ドンシャリに近く味付けの少ないサウンド。搭載された「高音質ノイズキャンセリングプロセッサー QN1e」が非常に高度な制御を行うことで、多くのノイキャン対応製品で見られるアクティブノイズキャンセリングの位相ずれによる不快感がほとんど感じられず、「WF-1000XM3」の紹介で方々で記載されている「付けた途端、周辺の音が無なくなる」印象を実感することができます。また、この優れたノイズキャンセリングにより、音質傾向としても極端な低域ブーストなど派手なアレンジをすることなく自然なサウンドバランスで仕上げられる点は、やはり相当な強みだと思います。
高域のシンバル音や低域のベースなどの明瞭な輪郭を感じることができる解像感は、ほかのTWS製品ではかなり難しいと感じます。いっぽうで中音域はあえて近くに定位し、ボーカル帯域を生々しく描写しており、多くのジャンルの曲で聴き応えのあるサウンドに仕上がっていますね。
間違いなく一聴して良い音と感じる「綺麗な」サウンドだと思います。まあ、個人的には雄大な音場感のあるサウンドや、逆にキレっキレの派手な音も好きなので(笑)、TWSも「WF-1000XM3」ひとつで満足というわけにはいかないですが、価格に見合う良い製品だとは感じますね。

SONY WF-1000XM3ただし、この音質を実現するために、「WF-1000XM3」は、やはりデジタル処理の負荷は「安定性」に多少の影響を及ぼしていると感じる場面は思ったよりあります。「WF-1000XM3」は独自のBluetoothチップによる左右同時伝送やアンテナ構造の最適化など接続性に関するポイントを挙げてはいますが、aptXなどより圧縮率の低いAACでの伝送負荷は、電波環境より「DSEE HX」などのデジタル処理をONにした場合に顕著にあらわれるようです。特に、「音質優先」モードで「DSEE HX」をONにすると、途切れやすさは大幅に増加します。また、ペアリングしたスマートフォンで通知がONになっていると通知音と再生音の切り替え時に余計な制御がはいるらしく、通知が頻繁にあると目に見えて不安定な感じになるのがわかります。まあ、普段使うときは「接続優先」で「DSEE HX」OFFにすればそれほど問題はないので、この辺は状況にあわせてこまめにモードを変えるのが正解、ということなのでしょう。

とはいいつつ、すでにTWSもいろいろ買っているのですが、結局のところ普段使いアイテムとして「WF-1000XM3」の利用頻度が一番高くなってしまっている今日この頃でした(^^;)。