TRN V90

今回は中国の低価格イヤホンブランド「TRN」の最新モデル「TRN V90」の紹介です。金属ハウジングに「4BA+1DD」のマルチドライバー構成で、ハイブリッドモデルとしては現時点のフラグシップの位置づけになりますね。最近のTRNは個人的な印象として、かなり完成度の高いイヤホンを毎回リリースしており今回の「TRN V90」もKZ系イヤホンの陰で若干マイナーな扱いを受けているものの、むしろかなり積極的にお勧めしたいイヤホンに仕上がっていると思います。

「TRN」というと昨年くらいまでは「とにかく当たり外れの多いメーカー」というイメージがあり、私自身も最初の「V10」以降多少あおり気味で積極的に指摘していたフシもありました。しかし最近リリースされた低価格モデルの「TRN IM2」あたりから目に見えてビルドクオリティが向上しており、音質面においてもおそらく「V80」や「V30」の頃より高い精度でチューニングができる状態になっているのではと思います(もしかして新しい工場が稼働したのかな?)。
というわけで最新の「TRN V90」もどのような仕上がりになっているかとても気になっていたため、同じタイミングでリリースされた「TRN T1ケーブル」と一緒に購入してみました。
TRN V90TRN V90
TRN V90」はCNC加工された全面アルミニウム製で4BA+1DDのマルチドライバーをコンパクトなハウジングの中に収納しています。搭載される4基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーは例によってTRNカスタムの独自タイプで(Bellsing製のOEMのいうウワサも)を採用。今回は高域用の「30019」と中音域用の「50060」という2種類のBAユニットをそれぞれ2基ずつ、合計4BAを構成します。各ドライバーを調整するネットワークはダイナミックドライバーの背面に貼り付けるタイプで採用し、2種類のBAおよびダイナミックドライバーのクロスオーバーをコントロールしています。
TRN V90TRN V90
そして10mm径のダイナミックドライバーは振動板(ダイヤフラム)の表面にコーティングを施した「ダイヤモンド-グラファイト ダイヤフラム」と非常に磁束密度の高いネオジウム磁石を採用しています。この「ダイヤモンド-グラファイト」というのがグラファイト(黒鉛)から生成した合成ダイヤモンドということなのか、合成ダイヤモンドとグラファイトの両方を付着させたという意味なのかはよくわかりませんが(おそらく後者でしょうね)、グラフェンなどよりさらに硬質な材質でコーティングすることで低域のアタックや解像度を向上させているようです。
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またフェイス部分にはダイナミックドライバーのサウンドコントールのためにデザインされた大き目のベント(空気孔)があり、コンパクトなハウジングながら豊かなサウンドを実現しています。

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TRN V90」のカラーは「ミッドナイトブルー」と「ブラック」の2色が選択できます。購入は中国AliExpressの主要なセラーのほか、アマゾンでは「HiFiHear Audio」「L.Sオーディオ(Linsoul)」「Geek Audio-JP」が販売しています。価格はAliExpressが 42ドル~、アマゾンが 5,899円~ です。AliExpressでの購入方法などについてはこちらをご覧ください。
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Amazonではプライム扱いですぐに届きますし、万が一の場合アマゾン経由のサポートが受けられる点はメリットですね。
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■ 想像以上に高いビルドクオリティ。装着感も良く音漏れはわずか。

TRN V90」のパッケージはコンパクトな白箱タイプ。内容もミニマムでイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(Mサイズ装着済み+S/Lサイズ)、説明書・保証書など。
TRN V90TRN V90
TRN V90TRN V90

アルミ製のシェルは想像以上に高いビルドクオリティで、「TRN V80」のような光沢塗装ではなく、つや消しのマットなカラーリングも高級感を感じさせる仕上がりになっています。サイズ的にも比較的コンパクトで装着感も悪くありません。フェイス部分に大き目のベント(空気孔)があるため、再生時多少の音漏れはありますが、非常に小さく、満員電車など以外ではほぼ問題にならないレベルでしょう。遮音性は一般的で混雑した新幹線で長時間使用しても快適に利用できました。
TRN V90TRN V90
イヤーピースは付属のもののほか、できればよりフィット感の高いものに交換した方が良いでしょう。具体的には「定番のJVCの「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」、さらに、RHAのシリコンイヤーピースなどですね。今回私は「RHA製シリコンイヤーピース」を使用しました。


■ ハイブリッドの利点を活かしつつ自然な印象でまとめた質の高いサウンド

TRN V90TRN V90」のサウンドは中華ハイブリッドらしいドンシャリで「TRN V80」などの最近の同社イヤホンの傾向は踏襲していますが格段に完成度が向上している印象です。
開封後、数時間~1日程度のエージングにより高域および低域の各ドライバーが「覚醒」し、本来のサウンドが楽しめます。また、ある程度駆動力のある再生環境で鳴らすことで特徴的な音場感をより実感できると思います。同様に、後述の通りTRNの「T1ケーブル」および「T2ケーブル」など情報量の多いケーブルへのリケーブルでよりメリハリの効いたサウンドを実感できると思います。
TRN V90」のサウンドバランスは非常に良く、解像度が高くキレのあるスッキリめのサウンドが印象的です。綺麗に伸びる高域、明瞭ながら自然な印象のボーカルなどの中音域と、立体的な奥行きと広さのある音場感は素晴らしく(特に「T1ケーブル」との組み合わせの場合)、軽く驚きを感じるほどの完成度の高さです。

ほぼ同じ時期に中華イヤホンメーカーの「KZ」および姉妹ブランド「CCA」ではさらにドライバー数の多い5BA+1DD構成の「KZ ZSX」「CCA C12」を4BA+1DD構成の「TRN V90」とほぼ同じ価格帯でリリースしています。その影響もあり多少マイナーな扱いを受けている「TRN V90」ですが、完成度についてはスペック的には上回るKZ/CCAと比べても全く遜色なく、音場表現など「TRN V90」のほうが優れていると感じる部分もありました。

TRN V90TRN V90」の高音域は伸びのある明瞭ながら適度にコントロールされたサウンド。シンバルなどは非常に自然な抜けの良さで、解像感より綺麗さを意識したようなチューニングを感じます。KZのツィーターBAをはじめTRNでも同型番のユニットが頻繁に使用される「30095」と比較すると、今回デュアルで搭載された「30019」は硬質な煌めきはむしろ多く感じるものの、いっぽうで刺激を感じやすい帯域はより自然に抑制されている印象があります。KZ系の派手な、言い方を変えると多少下品にも感じる鳴り方より多少Knowlesぽい「上品さ」に近づいているのかもしれません(ちょっとKnowlesとBellsingの関係を考えると音質の印象とは別のところで微妙ではありますが・・・)。この価格帯のハイブリッドとしては質の高い音で、初期のTRN V10のようなキンキン・シャリシャリの音とはちょっと隔世の感があります(^^;)。

TRN V90中音域はハッキリとしたドンシャリ傾向のため曲によっては僅かに凹みます。しかし全体的なサウンドバランスが非常に上手く調整されていることもあり、ボーカル帯域を中心にしっかりとした主張と自然な定位感を生み出し、広く、奥行きのある音場感を演出してくれる印象です。中高域の抜けも良く、女性ボーカルのハイトーンやピアノの高音なども綺麗に伸びてくれるのが実感できます。以前の製品にあったような人工的なハイブリッド感や膨らみによる中高域の曇りなどはなく、つながりの良い自然なサウンドという印象です。そのため、KZ ZSXやZS10 Proのような派手めの鮮やかさや解像感は感じませんが、この価格帯のイヤホンとして解像度は十分に高く、高域同様に味付けのないなめらかで綺麗なサウンドを鳴らしてくれる印象です。

低音域は、抜けの良さを感じつつ、比較的パワフルな音を鳴らします。TRNにとって新しいダイナミックドライバーの解像度は高く、情報量の多さを感じるサウンド。また中高域との分離の良くベースラインもしっかり捉えることができます。また沈み込みも良く、重低音も力強く良好な印象です。非常に整った印象の低音でパンチの効いた濃密さを感じつつ、1音1音を感じる分離の良さがあります。同時に各音域とのバランスはしっかりとれており、全体的には自然な低音を鳴らしてくれる印象になります。

TRN V90TRN V90」は、あくまで自然なサウンドながら、ドライバーの特性を活かしたバランスのイヤホンだと思います。同様にハイブリッドらしい特徴をうまく生かしたイヤホンとしては、最近レビューした製品では「OH10 Obsidian」などがありますが、「TRN V90」はより多いドライバーと遥かに低価格ながら優れたサウンドを実現できている点は驚きを感じます。ロックやポップスなどのボーカル曲との相性が良く、EDMやアニソンなど音数の多い曲でも実力を発揮してくれると思います。
同価格帯のハイブリッドのなかではマイナー感もありますが、個人的には同時期にリリースされた「KZ ZSX」や「CCA C12」より利用頻度も多く好みのサウンドで、かなりお勧めできるイヤホンだと思います。


■「TRN T1」8芯 金銀メッキケーブル。「TRN V90」との組み合わせで抜群の音場感が堪能できる。

また、「TRN V90」と同じタイミングで、「TRN T1ケーブル」もTRNよりリリースされています。これは8芯タイプのケーブルで金銀メッキの高純度OFC(無酸素銅線)ケーブルになります。
なんというか日本では思わず「タイガース」カラーかしらん?と思ってしまう配色ですが(笑)、ゴールドの被膜の線材は金銀メッキ銅線、黒色被膜のほうは銀メッキ銅線の線材が使われているようです。
TRN T1 ケーブルTRN T1 ケーブルTRN T1 ケーブル
「TRN T1」は中華2pin仕様とMMCX仕様が販売されており、プラグは現在のところ3.5mmステレオのみとなっています。価格はAliExpressが8.96ドル~、アマゾンでは1,800円で販売されています。

TRN T1ケーブル」のパッケージはコンパクトな化粧箱入り。ケーブルはある程度の太さはあるものの非常にしなやかで取り回しの良い8芯ケーブルです。金属製のコネクタや分岐部分などのパーツの質感も良く低価格ケーブルとは思えない品質なのは既に販売されている16芯タイプの「TRN T2」同様です。
TRN T1 ケーブルTRN T1 ケーブル
この「TRN T1ケーブル」ケーブルと「TRN V90」の相性は抜群に良く、付属ケーブルより情報量が大幅に増すことで、高域の伸びの良さが向上し、中音域は自然なボーカルなどの印象を維持したまま明瞭感がアップします。「TRN T1ケーブル」の場合、他のリケーブル製品より傾向の変化が極端になりすぎず、適度なバランスになる点に好感が持てます。さらに「TRN T1ケーブル」にリケーブルした「TRN V90」では特徴のある音場感がさらに強調され、奥行きと広さのある立体的なある音場感は素晴らしく軽く驚きを感じるほどの完成度の高さになります。今回ミッドナイトブルーの「TRN V90」を購入しましたが「TRN T1ケーブル」のカラーに合わせてブラックも買い増ししようかなと、真剣に思っていたりしています(^^;)。
TRN V90 / TRN T1 ケーブルTRN V90 / TRN T2 ケーブル
ちなみに、TRNからは16芯タイプの「TRN T2」ケーブルもリリースされています。情報量が非常に多いケーブルのため、「TRN T2」にリケーブルした場合は「T1ケーブル」より解像度が向上し高域が伸びる印象になります。「ブラック」や「グレー」のカラーリングの「TRN T2」は、見た目的にはむしろ「TRN T1」より「合う」のですが、傾向的には多少メリハリが強くなり、高域の主張も増すため、曲の種類や再生環境によって結構刺激も強めに感じる可能性もあります。どちらのケーブルが「合う」と感じるかは再生環境や好みによって変わりそうです。
TRN V90 / TRIPOWIN-C8TRN V90 / NICEHCK TYB3
また、TRN純正外では「TRIPOWIN-C8」や「NICEHCK TYB3」、「HiF4760」といった8芯ミックス線タイプのケーブルがやはり相性が良いようです。また「NICEHCK TDY5」および「KBF4816」といった銀メッキ線ケーブルはミックス線より若干高域が派手めに出ますがダークグレーのカラーリングで「見た目」にはよりしっくり来ますね。

というわけで、「TRN V90」(特に「TRN T1ケーブル」とのコンビネーション)は想像以上に良いイヤホンでレビューも少し長文になってしまいました。KZやCCAも良いですが、興味があればぜひともトライしていただきたい、相当にアタリな製品だと思いました。