SHUOER TAPE

こんにちは。今回は「SHUOER TAPE」(または「SHUOER09 TAPE」)の紹介です。まずこの製品は従来のドライバーとは全く異なる、「低電圧静電型(コンデンサー型)ダイナミックドライバー」( Low-Voltage Electrostatic Dynamic Driver)という結構「謎なドライバー」(実は複合ドライバーのハイブリッド)を搭載した、非常に珍しい構成のイヤホンです。
SHUOER」は中国のOEM/ODMを中心としてかなり実績のある会社で、最近になって自社ブランドでの製品展開も開始したようですね(ブランド名がSH○REぽいのはこの際気にしない方向で)。私のブログでも紹介している中華イヤホンのなかでも「TRI-i4」をはじめ、結構人気の高い製品がいくつか実はこの会社で作られていたりします。

そして「SHUOER TAPE」は100ドルクラスの製品ながら「カセットテープ型」の奇抜なデザインに、超高級ヘッドフォン&イヤホンでお馴染み(?)「静電型ドライバー」を使ってる、となるとこれは気にしない訳にはいかないアイテムですね。
SHUOER TAPESHUOER TAPE
なお、「SHUOER TAPE」のサイト表記では搭載ドライバーについて「低電圧静電型(コンデンサー型)ドライバー」( Low-Voltage Electrostatic Driver)という表記がされているのですが、時折上記の「ダイナミック」がくっついた「謎」の表記が登場します。最初は単なる誤記かと思ったのですが、じっくり見てみるとどうやら「ダイナミック」付のほうが正解に近く一般的な「静電型ドライバー」ではないらしいことが見えてきました。とはいえ、そもそも「静電型ドライバー」と「ダイナミックドライバー」は全く方式が異なる仕組みだという点から考える必要があります。

まず「静電型ドライバー」(Electrostatic Driver)または「コンデンサー型ドライバー」ですが、その仕組みは薄い振動膜に電気を溜めておき、前後の電極板からの音楽信号で静電気により振動膜が振動することで音を発生させる方式。ちなみに、見た目が似た方式に「平面(磁気)ドライバー」というのがありますが、これは「ダイナミック型」の一種でダイヤフラム(振動板)が一般的なコーン型ではなく平面タイプ(Planar Diaphragm)のものを差します。「静電型ドライバー」は振動膜自体の静電気で振動することから、磁気を使う平面ドライバーとは全く異なる仕組みです。

この「静電型ドライバー」を単独で搭載した製品では何といっても「STAX」のイヤースピーカー(同社製のコンデンサー型ヘッドフォンの呼称)が有名で、さらにHIFIMAN「SHANGRI-LA」の最上位モデルはアンプ付600万、SENNHEISER「HE 1」は700万円以上します。イヤホンの場合少し古い製品ですが約40万円のShure「KSE1500」が思い出されます。
HIFIMAN SHANGRI-LASHOZY×AAW POLAYinyoo ST7
いっぽうマルチドライバー構成のカスタムIEMでツィーターユニットなどに「静電型ドライバー」を使っている例では「FitEar EST」や「SHOZY×AAW POLA」などがあります。中華イヤホンでは「静電型×4+2BA+1D(カーボンナノチューブ)」という「Yinyoo ST7」(799ドル)というフラグシップ製品がリリースされていますが、こちらは「SHOZY×AAW POLA」同様Sonion製の「静電型ドライバー」とBAを採用しているようです。どれも非常にハイエンドでなかなか気軽に手が出せる製品ではないことからも 「静電型ドライバー」のレアさが伺えますね。

閑話休題、これらのことを踏まえて、改めて「SHUOER TAPE」ですが、もちろん100ドル程度の製品で「静電型ドライバー」をがっつり搭載する、というのにはちょっと無理があります。ここで記載されている「低電圧静電型ドライバー」とは、要するに非常にミニサイズにすることで消費電力を抑えた「小型化した停電圧静電型ドライバー」(custom mini low voltage electrostatic driver)ということで、「SHUOER TAPE」ではこれを「10mm ダイナミックドライバー」(10mm high-performance nanotechnology driver)と同じアルミ製シャーシの中に収納する構造の複合ユニットを採用しています。
SHUOER TAPESHUOER TAPE
つまり、この「小型化した低電圧静電型ドライバー」と「10mmダイナミックドライバー」の複合デュアルドライバーユニットを「低電圧静電型ダイナミックドライバー」と呼んでいたわけですね(^^;)。それでも「SHUOER TAPE」がレアな「静電型ドライバー」を採用していることは事実で、同時にインピーダンス18Ω、感度104dB/mWと一般的なイヤホンと同程度の使い勝手を実現している点は特筆に値するものだろうと思います。
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また、この特徴的なドライバーを搭載した「SHUOER TAPE」のハウジングもかなり個性的でその名称通り「カセットテープ」をモチーフとしたデザインとなっています。ハウジングはCNC加工されたアルミ製で、付属ケーブルは6N OCC仕様の高純度単結晶銅線ケーブルが採用されています。

SHUOER TAPE」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「WTSUN Audio」にて。表示価格はAliExpressが 129ドル、アマゾンが 13,900円 となっています。AliExpressでの購入方法はこちらをご覧ください。
AliExpress(Easy Earphones): SHUOER TAPE

またアマゾンでは国内在庫のためすぐに届きますし、アマゾン経由でのサポートが得られるため安心感があります。価格面ではAliExpressと実質的にほぼ同じですのでアマゾンでの購入のほうが良いかもしれませんね。
※現在アマゾンでは3,000円OFFのクーポンが発行されていますので実質10,900円で購入可能です。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): SHUOER TAPE


■カセットテープ型デザインだけじゃない、いろいろ個性的すぎるパッケージング

届いた「SHUOER TAPE」は無地段ボールの箱で梱包されており、開封すると、個性的なオレンジの円筒形パッケージが登場します。また保証書・説明書のカードはこのパッケージとは別に入っていました。どうやらこのデザインが同社の共通パッケージらしいですね。
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SHUOER TAPE」のパッケージ構成は、本体、MMCXケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、金属製イヤホンケース、説明書・保証書など。
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インパクトのある「カセットテープ」型デザインの本体は、実際に手に取ってみると個性的なシルエットはフェイスプレート部分のみで、全体の形状は比較的オーソドックスな印象。思ったよりちゃんとしたイヤホンの形状をしており(笑)、実は装着感もなかなか良好です。
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アルミ合金製のハウジングはビルドクオリティの高さを感じる仕上がりで、ちょっとふざけた印象のデザインながらとても真面目に作っている感じが好感が持てます。表面塗装の質感やステムの形状などから同社が(ODMなどで)手がけた他の製品の片鱗も少し感じられますね(^^;)。ちなみにフェイス部分の中央部分はベント(空気孔)になっています。

ケーブルは100ドル程度の中華イヤホンとしては破格に質の良いものが付属します。線材には6N OCC(高純度単結晶銅)線が使用されており、見た目の質感も良く、取り回しも良好です。このケーブルだけでも同製品の気合いを感じなくもないですね。
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そして、ケースは無地の金属製で、上下を回して開閉する方式。こちらもかなり個性的で、謎の存在感を放っています。同社製の他の製品でもこのケースが付属してるとしたら、なかなかですね(何が)。とりあえずパッケージや外観だけでも十分に個性的な製品であることを実感させますね。


■ 静電型ドライバーの旨みは高域にあり。個性的構成を実用的なバランスにまとめたチューニング

SHUOER TAPE」の音質傾向は弱ドンシャリのバランスで耳馴染みのある中華ハイブリッド感と、これまでのダイナミックやBA(バランスド・アーマチュア)型ドライバーとは明らかに異質の、非常に歪みの少ないクリアな中高域が印象的です。また今回約150時間程度のエージングを行いましたが思ったより極端な音質変化は発生せず「中低域のつながりがやや向上したかな?」くらいの印象でした。

SHUOER TAPE高域は1音1音を明瞭に描写するようなクリアなサウンド。おそらく「SHUOER TAPE」において「静電型ドライバー」らしさを最も感じるのが高域で、シンバル音をはじめ非常にエッジの効いたシャープな音でありながら、耳に付くような刺さりを感じさせない印象。「静電型ドライバー」らしい歪みの極めて少ない高音で、その質の高さ改めて実感できます。このような高音は一部の高級イヤホンで感じるレベルにも近く、少なくとも「高音だけなら」同価格以上の平面ドライバー製品より質の高い音だと感じます。「SHUOER TAPE」のキャラクターを色濃く反映している要素と言えるでしょう。

SHUOER TAPE中音域はかなりハッキリした主張のあるサウンドで、「楽しさ」を感じるやや派手めの元気な鳴り方をします。中高域も伸びやかでクリアな印象があり、ピアノの高音や女性ボーカルのハイトーンも気持ちよく余韻を感じられます。煌びやかさを感じる音ですが硬質感は少なく、癖のない印象で膨らむこと無くしっかりとした輪郭を描写する印象。ボーカルが近くに感じるため音場はそれほど広くありませんが分離の良さから定位感は良好です。ただ低域とのつながりはハイブリッド感が強く、やや人工的な印象があります。この辺が「派手さ」を感じる要素となりますが、いっぽうで男性ボーカルの低音はやや物足りなく感じます。

低域は力強く、結構存在感のある鳴り方をしますが、締まりのあるタイトな音で中高域とはしっかり分離します。沈み込みも良く重量感のある重低音がとても心地良く感じます。解像度が高く分離性も良いことから輪郭の明瞭さを感じるハッキリした印象の低音です。


SHUOER TAPESHUOER TAPE」はMMCXコネクタを採用しているためリケーブルも可能ですが、付属の6N OCCケーブルは非常に品質が良く、ほとんどの場合はリケーブルは不要でしょう。太さや取り回しの印象も良いケーブルですのでむしろ単品で売ってくれないかしら、と感じるほどの良さがありますね。
というわけで、「SHUOER TAPE」は音質面においても「個性的」な要素を比較的使いやすいハイブリッドサウンドにまとめた、という印象で思ったより「実用的」なイヤホンでした。開封直後はやや中高域と低域がちぐはぐな印象も感じたため「曲を選ぶかな」と思いましたが、エージングにより安定したのか、改めてじっくり聴いてみるとボーカル曲だけでなくインストゥルメンタルでも楽しさを感じるサウンドだと感じました。

手軽に使える「静電型ドライバー」搭載イヤホン、というだけでも十分レアな存在ですし、デザインも非常に個性的な製品ですので、すでにいくつかのイヤホンを使い分けているマニア向けの製品ではあるとおもいますが、そのうえで興味を持たれた方は購入してみるのも良いと思いますよ。