KZ E10

こんにちは。今回は「KZ E10」の紹介です。KZ製の完全ワイヤレス(TWS)イヤホンは以前「テスト製品」として限定販売された「KZ T1」がありましたが、今回の「KZ E10」は全く異なるアプローチで改めてリリースした最初の製品となります。「KZ E10」のドライバー構成には完全ワイヤレス(TWS)に限らずBluetoothイヤホンとしてはかなり異色の「4BA+1DD」ハイブリッド構成。
KZ E10KZ E10
これに加え、ワイヤレス部分ではBluetooth 5.0対応でチップセットにQualcomm製「QCC3020」を採用。「AAC」およびSBCコーデックに加えて「aptX」にも対応する仕様になっています。これでアマゾンでも数千円レベルで購入できる価格設定と、相変わらずKZらしい「非常識さ」(褒め言葉)を感じる製品ですね。

ドライバー構成はバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバー部分に高域用「KZ 30095」が2基、中高域を担当する「KZ 50060」が2基ずつの合計4BAと10mmサイズの二重磁気回路ダイナミックドライバーを搭載。この仕様はKZの「KZ ZS10 Pro」や姉妹ブランドCCAの「CCA C10」がそのまま完全ワイヤレスになったようなスペックです(ドライバーの配置的には「CCA C10」のほうが近いかもですね)。
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ソニーの「WF-1000XM3」など数万円クラスを含め、ほとんどのTWS製品で6mmサイズのダイナミックドライバーのシングル構成(TWSの場合、バッテリやワイヤレス部などさまざまな部品がイヤーハウジング内に集約されているため、通常は大口径のドライバーをスペース的に搭載できない)であることを考えると、有線イヤホンと同じ10mmドライバーを搭載し、さらに4基ものBAを搭載している構成がいかに非常識であるかが伺えます。

その代償としてか、「KZ E10」ではアンテナなど一部回路をハウジング内ではなく、イヤーフック部分に搭載する方式をとっています。また、内蔵するバッテリは30mAhでイヤホン単体での連続稼働時間は3.5時間と最近のTWSとしてはかなり短い仕様になっています。ただケースは1100mAhと比較的大容量のためこまめにケースに戻す運用であれば1日中使用しても支障はないと思います。

Bluetooth5.0
搭載ドライバー4BA+1DD ハイブリッド
搭載チップQualcomm QCC3020
対応コーデックaptX/AAC/SBC
連続駆動時間~3.5時間(待機約100日)
バッテリ容量30mAh、1100mAh(ケース)
充電時間~4時間
Bluetooth範囲約15m
ちなみに「KZ E10」では防水性能(IPX)などの記載はなく、「防水ではない」と考えた方が良いでしょう。OEM/ODMも手がけるmifoのワイヤレス機構をほぼそのまま採用した「KZ T1」と比べると、結構無理して作っているのかも、ということがこの辺からも伺えますね。
KZ E10」のカラーバリエーションは「ブラック」「グレー」「ホワイト」の3種類です。。

KZ E10 BlackKZ E10 GrayKZ E10 White

今回私はAliExpressの「HCK Earphones」にてオーダーしました。表示価格は 60ドルです。AliExpressでの購入方法などはこちらを参照ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): KZ E10 TWS


■ 非常識スペックを無理矢理に押し込んだ? 装着性は良いがビルドクオリティはちょっと課題あり。

KZ E10」のパッケージは、大きめのケースを収納するため、同社の有線イヤホンに比べると少し大きめの黒箱タイプ。表面にはシルエットイラストがプリントされています。
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パッケージ内容は、イヤホン本体&充電ケース、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、充電用USBケーブル、説明書・保証書など。ケースの充電ポートはUSB Type-C仕様です。

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イヤーフック型の形状もありケースは比較的大きめ。「KZ E10」のハウジング部分樹脂製で「KZ ZS10 Pro」など最近のKZよりはやや小ぶり。装着性自体は比較的良好ですが、ステム部分は通常のKZより細く、イヤーピースもTWS用の浅いタイプを使用します。ちなみにケース側に余裕があまりないためMサイズ以上のイヤーピースの場合、付属品以外を使用するとケースにうまく収まりきなない場合があります。

また「KZ E10」の特徴的な仕様として、ペアリングを行う機構はケース側に持っていて、イヤホン本体をケースにセットした状態でケース内のペアリングポタンを長押しすることでペアリングモードに移行します。なお、ケース部分のマグネットが弱く、イヤーフック部分が多少弾力があるため、ケースにうまくマウントされない場合もありそうなると充電やペアリングがうまく行われないので注意が必要です。このようにビルドクオリティの面ではテスト版の「KZ T1」がmifo製イヤホン同様のしっかりした内容だったのと比較して、ちょっと雑さ作りが目立ってしまう印象もあります。

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ハウジングのフェイス部分は多くのTWS同様にタッチセンサーとなっており、再生・停止などの各種制御が可能です。曲送り・曲戻しや音声アシスタントなどは使用できますが、タッチセンサーでの音量操作は未対応のようですね。

再生/停止1回タップ(左右どちらか)
曲送り左側 2回タップ
曲戻し右側 2回タップ
リプレイ再生3回タップ(左右どちらか)
受話・終話着信時に 1回タップ (左右どちらか)
着信拒否着信時に 長押し(左右どちらか)
音声アシスタント長押し (左右どちらか)
電源オン/オフ充電ケースから出す/戻す 


■ TWSとしてはレベルの違うサウンド。ただしワイヤレス性能は・・・

KZ E10KZ E10」の音質傾向はKZらしい寒色系のサウンドで、最近の中華ハイブリッドで増えているボーカル帯域をメインとしたチューニングとなっています。そのため近くで定位し、しっかりとした主張のある中音域に比べて、高音域は比較的スッキリした印象ですが刺激はかなり抑えられており、また低音域も十分な存在感はあるものの量的にはやや控えめな印象です。
ワイヤレス製品に限らず、通常の中華イヤホンと比較しても解像度は高く、硬質な印象ながら非常に明瞭で輪郭のしっかした描写は一般的なTWS製品としては一線を画するものでしょう。十分に「中華イヤホンのひとつ」として比較できるサウンドクオリティを実現しています。

KZ E10ただし、この「KZ E10」の優れたサウンドは自宅内での利用など、「ワイヤレス性能が外的な影響をほとんど受けない場合」に限定されます。残念なが街中での利用ではその印象は一変します。とにかく「途切れまくる」のです。さらにサウンド的にもaptXでの安定した再生状態を維持できず、Androidでコーデックを自動にしている場合、aptXから実質的にSBC、それも音質的に深刻な影響が及ぶレベルのビットレートに落ちるケースも確認できました。つまり「あまりに残念過ぎるワイヤレス性能」故に本来の利用シーンでは「KZ E10」の能力が全く活かせない状態になります。

例えば東京の都心エリアの場合、ひとたび屋外に出ると静かな住宅地でも片側が途切れるなどの現象が出始め、やや混雑した駅、具体的には平日昼間の秋葉原駅ホーム辺りでも連続して途切れる現象が起こり始めます。そしてラッシュ以外の(普通の混雑状態の)新宿駅付近では断続的に音飛びが発生し、とても実用的な状態ではなくなるケースも発生しました。おそらく都市部の通勤や通学ではとても実用レベルとは言えない状態になると考えられます。

KZ E10というわけで、「屋内での安定した通信状態での利用」という条件下ではありますが、「KZ E10」の高域はKZのハイブリッドらしい硬質で煌めきのある音ですが、主張は控えめで刺激を感じないバランスになっています。一般的なTWSと比べても解像度はかなり高くシャープな鳴り方をします。
ただネットワークで調整されているというより、内蔵アンプ部分の出力があまり大きくないのでは、という印象を持ちました。そのため曲によっては今ひとつ抜けきらない籠もりがあり、また音量を上げるとキツめの歪みを感じるようになります。「KZ ZS10 Pro」や「CCA C10」を同社のaptX HDコーデックに対応した「KZ HD Bluetoothケーブル」でのサウンドなどと比べると音抜けや明瞭感で「KZ E10」は少し見劣りする印象になります。

KZ E10中音域は「KZ E10」が最も注力していると思われる部分で、ボーカル帯域を中心に非常に明瞭かつキレのあるサウンドが楽しめます。寒色系で多少金属質な印象はありますが、味付けはなく明瞭かつ伸びやかなサウンドが楽しめます。また最近のKZのハイブリッドらしく、ボーカル帯域は男性ボーカル、女性ボーカルどちらも適度に広がりのある音で聴きやすい印象の音作りになっています。ただ、かなり主張は強く、耳に張り付くように近くで定位します。そのため音場はやや狭い印象で、とにかくボーカルを楽しむためのイヤホン、というサウンドです。
洋楽・邦楽ポップスやアニソンなどのボーカル曲との相性はよいですが、ハードロックやメタルや逆にジャズなどのアコースティックな音源では物足りなさがありそうです。ただし、これは同レベルの構成の有線イヤホンとの比較で、同価格帯のワイヤレスイヤホン、特にTWSとの比較では頭ひとつ抜けたレベルのサウンドにはなっていると思います。

低音域も比較的シャープで輪郭のはっきりした解像感のある鳴り方します。ただ十分な存在感がありますが、量的にはやや少なめな印象。低域好きな方にはちょっと物足りなく感じるかもしれませんね。重低音も響きのある鳴り方をしますが沈み込みはやや浅く、低域の下の方はカットされている印象もあります。この辺は低価格ハイブリッドでは比較的多い傾向で、中高域の分離性を優先した音作りといえるでしょう。
全体のサウンドバランス自体はよくまとまっており、中音域メインのチューニングも、ワイヤレスでの利用を想定すると十分に納得の行くチューニングといえるでしょう。いっぽうで、内蔵アンプ部分のやや駆動力不足を感じる場合もあり、(イヤホン自体としては)本来ならもっと高音質化できたのでは?という印象も同時に持ちました。もしかするとこの辺はKZにとって「今後の製品に向けた努力目標」なのかもしれませんね。

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というわけで、「KZ E10」はTWSで4BA+1DDのハイスペックを実現し、aptXにも対応しつつ低価格を実現したかなりの「意欲作」でしたが、実感としては音質以外の部分、ビルドクオリティや肝心のワイヤレス部分の作り込みに「勇み足」感がぬぐいきれない印象でした。
同じタイミングで前回レビューした「TRN T200」(QCC3020搭載、1BA+1DD構成)をレビューしましたが、こちらは同じハイブリッド構成でもスペースや消費電力などを考慮し1BA+1DDに抑えることで、TWSメインのメーカーと比較してもおおむね遜色ないレベルのサイズ感や性能を確保しています。
それでもTRNの中華ハイブリッドイヤホンらしいサウンドを実現していたことを考えると、ワイヤレス分野でのKZのTWSでの「経験値の差」がそのまま製品にでてしまった印象ですね。「TRN T200」と「KZ E10」のどちらを勧めるかといわれれば間違いなく「TRN T200」のほうに軍配があがります。しかし、屋内利用に限定して考えれば大人気中華イヤホン「CCA C10」に近いサウンドを完全ワイヤレスで実現している点は特筆に値します。
現時点での「KZ E10」は万人向けにおすすめという製品ではありませんが、通常のTWSとは1ランク上のサウンドを比較的低価格で手に入れたいマニア向けとしては押さえておきたい製品だと思いますよ。