水月雨「Moondrop SpaceShip」

こんにちは。相変わらずお仕事のほうが年度末進行でレビューも滞りがちですが、今回は「棚からレビュー」の2回目です。先日から勝手に始めた「棚からレビュー」ですが、要するに以前から書きかけのまま「お蔵入り」していたレビューを何とか仕上げて復活させよう、というものです。実は「書きかけネタ」はまだ大量に残っているため、更新頻度が下がり気味のこのタイミングにできるだけ消化していこうかと企てております(滝汗)。
ちなみにタイトルの元ネタは某FMの日曜の・・・(笑)。

というわけで、今回は昨年からお蔵入りしていた「Moondrop SpaceShip」です。これまで「KXXS」と「Starfield」を紹介した中華イヤホンブランド「水月雨(Moondrop)」の低価格モデルですね。購入したのは日本版がリリースされてすぐ、昨年の秋頃ですが、同じタイミングで購入した「final E500」ともどもレビューは掲載していませんでした。今回の「Moondrop SpaceShip」は、水月雨のカナル型イヤホンとしては初の低価格モデルになります。

水月雨「Moondrop SpaceShip」水月雨「Moondrop SpaceShip」水月雨「Moondrop SpaceShip」

Moondrop SpaceShip」の耳の中にすっぽりと収まるくらいのコンパクトなメタルハウジングはクロームメッキ仕上げの真鍮製で見た目にも高級感があります。低価格モデルながら同社の上位モデルで採用されている外磁型磁気回路を使用し、PU&PEEK素材のダイヤフラム(振動板)によるクリアな高音とタイトな低音を実現しています。ケーブル部分でも4N OFC線材が使用され妥協のない仕様となっていますね。実際、海外版での評価も内外で非常に高く、ちょっとした話題のモデルになっています。
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また「Moondrop SpaceShip」では同社の他の製品同様に十分なエージングが推奨されており、装着位置についても小さめのイヤーピースを使用し外耳道の少し奥まで押し込むように装着することをイラストで説明しています。このように細かなところまで配慮している点も好感できますね。

日本仕様の「Moondrop SpaceShip」はオープンプライスで3千円前後の価格で販売されています。なお、日本仕様で販売される最新ロットではパッケージアートが一新され、「KXXS」同様のイラストが描かれたボックスに変更。さらに海外版で布製ポーチだったケースもフェルト素材のものに変更となり、より高級感がアップした内容になっています。
Amazon.co.jp(国内正規品): Moondrop SpaceShip


■ 非常にコンパクトなシェル。イヤーピースはダブル、トリプルフランジへの交換も良いかも。

Moondrop SpaceShip」は日本国内版のリリースからパッケージデザインが変更となり、「KXXS」のようなキャラクターが描かれた白箱タイプになりました。パッケージ内容はイヤホン本体、イヤーピース(4種類)、フェルト生地のポーチ、説明書、保証書など。
水月雨「Moondrop SpaceShip」水月雨「Moondrop SpaceShip」
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Moondrop SpaceShip」という名称通り往年のSF映画の宇宙船を彷彿とさせる金属製シェルは非常にコンパクトで耳にすっぽり収まるサイズです。この本体を耳穴の奥まで装着することを推奨しているためイヤーピースもやや小振りのものが各サイズ付属します。ただしこれでもしっかり奥まで装着する場合には今ひとつ合わない場合もあります。その場合は、ダブルフランジまたはトリプルフランジタイプのイヤーピースに交換することをお勧めします。

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ケーブルは樹脂被膜に覆われていますが比較的柔らかい質感で取り回しは悪くありません。耳から垂らす装着方法でも、耳掛け式(シュア掛け)でもどちらでも可能なシンプルなデザインですが、垂らす場合は多少ケーブルにタッチノイズがありますが、使用中は気にならないレベルだと思います。


■ 低価格ながら「KXXS」のらしさも感じつつリスニング的に聴き応えのあるサウンド。

Moondrop SpaceShip」のサウンドは、低価格ながら発売以降多くのマニアを唸らせた実力で、個人的にも3千円程度の製品とは思えない絶妙なバランスの良さを感じ、ボーカル帯域の明瞭さを持ちつつ伸びの良い高域と締まりが良く奥行きを感じる低域は確かに驚きを感じました。開封直後は中高域にやや硬さがありますが、20~30時間程度のエージングあたりから水月雨らしい柔らかさを感じるサウンドになり、50時間程度からその魅力的な本領を発揮する印象です。また低域は装着位置によって量感にかなり違いを感じます。

Moondrop SpaceShip「Moondrop KXXS」が柔らかさと透明感を持ち、同社のフラグシップであるインナーイヤー型製品にも多少通じるニュートラルさを感じるサウンドに対し、「Moondrop SpaceShip」は解像感は価格相応に差はあると思いますが、心地良く耳辺りの良い柔らかさは共通し、さらに低域の力強さと高域のキラキラした光沢感はリスニングイヤホンとして完成度の高さを感じます。先日レビューした「Moondrop Starfield」はより解像度は高く万人受けしやすいサウンドバランスですが同社の特徴的な柔らかさは控えめで、「水月雨らしさ」という点では確実に「Moondrop SpaceShip」のほうが実感できるでしょう。
レビュー掲載時点で既に購入してから半年程度経っていますが、コンパクトな低価格モデルと言うこともあり(特に出先での)利用頻度は高く、気軽に高音質を楽しめるイヤホンとして活躍しています。

Moondrop SpaceShip」の高域は、金属ハウジングらしく明るく伸びの良い音を鳴らします。光沢のある煌びやかな音ですが、十分なエージングにより「KXXS」の透明感にも通じる柔らかい透明感のある音になります。そのため刺さり等の刺激は思ったほど感じないと思います。もちろん解像度の点では「KXXS」などの上位モデルには及びませんがハイハット等のシンバル音もしっかりした主張があり綺麗に鳴ってくれます。気持ちよく聴ける高音という印象です。

Moondrop SpaceShip中音域も十分なエージングにより「KXXS」のようなニュートラルな印象の出音になります。音場は一般的ですが分離の良い低域が奥行きがあるため広がりを持って感じます。ボーカルはやや近くで鳴り明瞭感があります。全体的に柔らかく自然な描写で、最近の中華ハイブリッド等のシャープさやキレの良さとは一線を画すサウンドですが、聴かせどころをしっかり捉えている印象。写真で言うなら高解像度や中華ハイブリッドがデジタルフォーカスのクッキリ画像だとすれば、「Moondrop SpaceShip」は空気感やボケ味を楽しみつつフォーカスはしっかり合っている、という感じでしょうか。女性ボーカルの高域などの伸びは良く、アコースティックなサウンドも味わいがあります。いっぽうで音数が多くスピード感のあるデジタルサウンドでは捉え切れていない印象もあります。この辺は向き不向きがはっきりしている、とも言えるでしょう。

低域は非常にフラットで存在感のある音を鳴らします。もし十分にエージングを行った「Moondrop SpaceShip」で低域が軽く少なめに感じたら、イヤーピースの変更を「強くお勧め」します。通常のカナル型イヤホンは耳穴をイヤーピースで塞ぐように装着しますが、前述の通り、「Moondrop SpaceShip」では「より小さいイヤーピースを使って」外耳道の少し奥までしっかり押し込むことを推奨しています。しかし、製品に付属のイヤーピースではこのように奥まで装着できていないケースが多いのではと考えられます。
Moondrop SpaceShip私も付属のイヤーピースでは奥まで入れることができなかったため、手持ちのトリプルフランジタイプのイヤーピースに交換しています。アマゾンで大量に入って安価に売っている物を使いましたが十分に効果がありました。この状態だと昔のSFの「宇宙船」というより「光線銃」ですね(^^)。
このようにイヤーピースをしっかり工夫して装着すると驚くほど低域の量感が増し、厚みのある音を実感できます。スピード感のあるアタックで締まりのある音ですが、しっかり装着することで十分な量感と力強さを感じます。中高域とはしっかり分離し、やや奥行きを感じる鳴り方をします。重低音もきちんと装着しないと少し抜けたような音になりますが、しっかり装着すればこのクラスとしてはかなり深さを感じる印象になります。


KZなどに代表される中華ハイブリッドのサウンドとは全く別方向で「水月雨」らしさをしっかり感じつつ、(そういった意味では多少の向き不向きや好みの違いは考えられるものの)オールラウンドで使える製品として「Moondrop SpaceShip」は優れたサウンドバランスと完成度を持った製品だと思います。
Moondrop SpaceShip低価格イヤホンの場合、ターゲットはマニアだけに限らないため、より高価格な製品より実際はさまざまなユーザーが多様なシーンで利用することが考えられます。「Moondrop SpaceShip」もイヤーピースを工夫したり、しっかりエージングのうえ駆動力のある再生環境で鳴らした方が実力を発揮できるイヤホンという側面もありますが、マニア以外の人が普通に使ってもそのサウンドクオリティの高さを十分に実感できる製品ではあると思います。
そういった意味では「final E2000」「E3000」などと並んで今後も多くの人にお勧めできる「定番イヤホン」になる製品だと感じました。