TRN BA5

こんにちは。今回はTRNの最新「5BA」モデル「TRN BA5」の紹介です。「低価格中華イヤホン」ブランドのひとつとして、KZに次ぐ存在感を示し続けている「TRN」ですが、最近は音質面やビルドクオリティにおいても以前とは見違えるような完成度と安定感を製品から感じるようになりました。先日紹介した4BA+1DDモデルの「TRN V90」も非常に評価が高く、現在じわじわと人気が上昇していますね。そして「TRN BA5」も王道の中華イヤホン的傾向ながら非常にバランスの取れた音作りで、今回も「外さない」仕上がりになっています。特に駆動力のある再生環境でしっかり鳴らしたときの印象は「最新のTRNはこの価格でこの音が出るのか」という軽い驚きもあるのではと思う完成度です。

TRN BA5TRN BA5
もっとも、「やはり」というか、「また」というか、ある意味TRNらしい部分もあり、外見、特にフェイスパネルは後日レビュー予定のTFZの某最新モデルを盛大にパ○リに来てるのがミエミエです。ただ手元にある両方の実物を比べると実際は結構異なっており、似て非なるモノとして、むしろ「TRN BA5」のほうがカッコ良く仕上がっているまである、感じもします(^^;)。

さて、そんな「TRN BA5」のドライバー構成は、高域用ツィーターの「30095」が3基(シングルおよびデュアル構成でそれぞれ1セットずつ)、中音域用の「29689」、低域用の「22955」の5BA構成となっています。
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内容的には4BA+1DD構成の「TRN V90」や6BA構成の「TRN X6」とはだいぶ異なる組み合わせですね。単純にBAの型番の比較だけならむしろKZの「AS10」「BA10」あたりの構成に近いかもしれません。もちろん、TRNもKZもいちおう自社ブランドのカスタムドライバーという扱いになっていますが、基本的に型番が同じならほぼ同仕様といってよいほど内容は酷似しています。

TRN BA5」: 低「22955」×1 中「29689」×1 高「30095」×1 +「30095」×2
「TRN V90」: 中低 10mm DD ×1 中「50060」×2 高「30019」×2
「TRN X6」: 低「31602」×2 中「30018」×2 高「30095」×2
「KZ AS10」: 低「22955」×1 中「29689」×1 中高「31005」×1 高「30095」×2
「KZ BA10」: 低「22955」×1 中「29689」×1 中高「31005」×1 高「30095」×2

TRN BA5」の低域用の「22955」ドライバーは「KZ 22955」と同じくベント(空気孔)を持つ仕様のBAユニットと考えられ、「TRN BA5」では「KZ BA10」同様にフェイス部分から音抜けさせる仕様になっています。このように採用ドライバーを見る限りでは「TRN BA5」は同じ5BAの「KZ AS10」および「KZ BA10」のTRN的アプローチによるブラッシュアップ製品、という見方もできそうです。これらのモデルと「TRN BA5」のサウンドの違いが気になるところですね。

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というわけで、「TRN BA5」の購入はAliExpressの「HCK Earphones」またはアマゾンの「HiFiHear Audio」にて。表示価格はAliExpressは49.86ドル~、アマゾンが7,700円(どちらもマイク無しモデル)です。AliExpressでの購入方法などはこちらをご覧ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): TRN BA5

アマゾンではプライム扱いですぐに届きますし、万谷質の場合にアマゾン経由でのサポートが受けられるメリットがありますね。 ※HiFiHearでは現在1,000円OFFのクーポンを配布中です。
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): TRN BA5


■ シェルデザインは思ったよりTRNのオリジナル? むしろこちらの方が格好良い??

TRN BA5」のパッケージはいつものシンプルな白箱タイプ。内容も例によってイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/L、Mサイズ装着済み)、説明書・保証書など、の最小限の構成です。
TRN BA5TRN BA5
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本体は精密なCNC加工されたアルミニウム&マグネシウム合金製で耳にフィットするデザインに加工されています。全体的なビルドクオリティは高く、フェイスパネルの意匠はTFZの「KING EDITION」よりむしろ一般受けしやすいデザインになっています。
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TRN BA5」のハウジングを「TRN V90」および「TFZ KING EDITION」とくらべると「TRN V90」よりはひとまわり大きいサイズのハウジングですが、TFZの第3世代ハウジングよりはフェイスプレートこそやや大きいものの、随分コンパクトにまとめられていることが分ります。とくに「TRN BA5」のほうが耳にフィットしやすい形状になっているため、比較すると装着性はかなり良好です。
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TRN BA5」は5BAモデルのイヤホンですが、インピーダンス22Ω、感度110dB/mWと、極端に反応が高すぎたり、逆に鳴らすためにより高い駆動力が必要ということはなく、音量自体は比較的取りやすいイヤホンです。ただし、再生環境、とくに駆動力の違いによる印象の変化はかなり大きく、「TRN BA5」の特徴といえる伸びの良い明瞭感や音場感、艶のあるボーカルなどはある程度の駆動力のあるDAPやアンプの利用や情報量の多いケーブルへのリケーブルが必要となってくると思います。
また、耳にフィットしやすい形状のため遮音性は比較的高いものの、フェイス部分のベント(空気孔)から多少の音漏れは発生します。音漏れの程度としてはKZ ZS6くらい、でしょうか。街中など日常的な使用であれば支障はありませんが、静かな図書館などの場所や混雑した通勤電車内などの密着した状況では若干気になる可能性があります。
またイヤーピースについてはよりフィット感の高いものへの交換がお勧めです。具体的には定番のJVCの「スパイラルドット」、Acoustune「AET07」、AZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit Light Short」などがお勧めです。


■ 明瞭かつスッキリして聴きやすい、完成度の高いサウンド

TRN BA5」の音質傾向はドンシャリ寄りで、「TRN V90」などとも共通する傾向の寒色系サウンド。中高域を中心に全体の解像感が非常に高く、スッキリとした明瞭で見通しの良い音を鳴らします。小型DAPなど比較的出力の少ない再生環境ではやや平坦な印象に聴こえますが、より駆動力のあるDAPやポータブルアンプで鳴らすと、すこし派手めの印象ながら、マルチBAらしい、非常に情報量の多い深みのあるサウンドが実感できます。サウンドバランスはやや中高域寄りですが、低域もキレのある印象です。

TRN BA5TRN BA5」の高域はやや硬質で解像感のある音でスッキリした印象。伸びやかな見通しのよい音を鳴らします。3基の高音域用のツイーター(30095)をデュアル構成とシングルに分けてそれぞれネットワークで異なる制御をすることでスッキリした明瞭感とともに低価格中華イヤホンにありがちな歪みや曇りを極力抑えているのが特徴的です。「TRN BA5」ではとてもスッキリと鮮やさのある高音になっています。またKZのマルチBA製品とくらべても伸びが良く出力の強いプレーヤーで鳴らしても刺さりなどの刺激はほとんど感じません。

中音域はしっかりとした主張があり凹むことなく鳴ります。ボーカルはクリアで艶のある印象で、比較的近くに定位します。音場は自然な印象で、広がりのある鳴り方をするため狭く感じることはありません。ボーカル帯域も明瞭感のあるスッキリした印象ながら伸びやかな音を鳴らしていて、この価格帯の製品としては質感は非常に高いと思います。味付けは特にないものの、表現力は高く、広がりのあるロングトーンや煌めきのあるハイトーンもしっかり描写してくれます。

TRN BA5低域は硬質で解像感があり、レスポンスの良いキレのある音を鳴らします。中低域は力強く存在感がありますが分離の良さから中高域が籠もること無く輪郭も明瞭です。沈み込みも良く、重低音は量は多くありませんが解像度の高い描写を実感します。「TRN BA5」も「KZ BA10」のようにハウジングにベントのある開放型の構造ですが(どちらも低域BAにはベントのあるユニットを使用)、「KZ BA10」がハウジング内で低域を反響させ量感と響きを増すアレンジを行っているのに対し、「TRN BA5」では純粋に音抜けを良くするためにベントが使われている印象です。そのため「TRN BA5」の低域は、「KZ BA10」のやや好みの分かれる低音や、同じドライバー構成で密閉構造になっている「KZ AS10」の厚みのある(同時に少し籠りもある)低音とも全く異なる、非常にキレのあるスッキリした印象になっています。いっぽうで低域好きの方からすると中高域寄りのサウンドでもう少し低域が欲しいと感じるかもしれませんね。より低域も含めたメリハリが欲しい場合は「TRN V90」のバランスの方が向いているかもしれません。

ただ個人的な印象としては「TRN BA5」はこれらのKZの2モデルのユーザーからのフィードバックを参考により高いクオリティにまとめたようにも感じるサウンドで、(後出しじゃんけんの成果もあり)完成度としては頭ひとつ抜けている印象ですね。


■ 新たに採用したコネクタは、「(KZ)Type-C」

TRN BA5TRN BA5」では従来の0.78mm 2pinコネクタから「KZ タイプC」コネクタ(TRN自身はメーカーめを外し「Type-Cコネクタ」と表記しています)を採用しました。個人的にはKZに合せなくても普通に「qdcコネクタ」にすれば良いのに、という気もするのですが、その辺はKZフォロワーメーカーとしてあえて外せないところなのかも知れませんね。
というわけで、リケーブルではTRN純正の2pinコネクタのケーブルも使用できますが、KZ/CCA用や最近増えている「qdcコネクタ」仕様のケーブルが利用できます(コネクタの詳細については「中華ケーブル【解説編】」を参照ください)。

TRN BA5」はもともと非常に優れたサウンドバランスを持つイヤホンですので、リケーブルでは味付けのない情報量をアップするタイプのケーブルがお勧め。具体的には銀メッキ線タイプの16芯ケーブルなどでしょう。
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例えば低価格タイプの「HiF4848」「HiF4850」やミドルグレードの「KBX4869」では情報量の向上により全体的にメリハリが向上しより解像感のあるサウンドと立体的な音場感が楽しめます。特にミドルグレードの「KBX4869」では高域の伸びや低域の力強さがより鮮明となり、より「濃い音」で楽しむことができると思います。


■ あえて奇をてらわず、手堅くまとめるという、TRNのアプローチ

というわけで、TRN初の5BAモデルとなった「TRN BA5」は高い完成度を実現し、最近の同社の手堅さを実感できるモデルでした。TRNのマルチBAイヤホンとしては少し前に「TRN X6」というレジンシェルのモデルがありましたが、「TRN BA5」は見た目の違い以上に音作りのアプローチが全く異なる製品だと感じました。「TRN X6」はKZ/CCAもマルチBAモデルを積極的に投入していたタイミングの製品で、評価の良し悪しはともかくとして、TRNなりに独自の音作りを模索した、ある意味非常に意欲的なモデルだったと思います。
TRN BA5しかし、今回の「TRN BA5」は「KZ AS10」「KZ BA10」といったすでにKZが製品化して評価が出ている構成を「参考」にブラッシュアップしたモデル、という見方もできます。まあ、それを言うと「TRN V90」も「KZ ZS10」のブラッシュアップのような・・・(^^;)。今後のTRNのお家芸になるかもしれないアルミ合金削り出しのハウジングにKZの過去モデルのドライバー構成を踏襲しつつ、それらのモデルの評価なども参考に独自のサウンドアレンジを加えていく。もしかしたらこれが最近のTRNの内部構成のアプローチなのかもしれませんね。もろ「後追い型」ではありますが、独自構成で狙いすぎてしまった「TRN X6」のパターンを考えれば、確実に「外さない」製品を手堅く作る手法でしょうし、まあいかにも「中華イヤホン」的アプローチだとも思いますので、これはこれで十分に「有り」ですね。TRNが今後も魅力的な製品を投入し続けてくれることを期待したいと思います。