TINHIFI T4

こんにちは。今回は「TIN HIFI T4」の紹介です。中国のイヤホンブランド「TIN HIFI」(TIN Audio)の最新モデルで、今回はシングルダイナミック構成になりました。わたしは昨年、米国の共同購入サイト「Drop」で初回の先行販売で注文しましたが、実際に届いたのは1月下旬で普通にアマゾンで販売されていたりしました(まあ、よくあることです^^;)。
ちなみに、2010年頃に設立された「TIN Audio」(現「TIN HIFI」)は、2017年にリリースされた2DDモデルの「TIN Audio T2」がマニアの間で評判となり、その後、高域を強化した「T2 PRO」、そして「TIN HIFI」にブランド名を変更後1BA+1DDハイブリッドの「TIN HIFI T3」とグレードアップしながらリリースしており、ミニマルデザインの金属製ハウジングと音質面の「こだわり」からも中華イヤホンのマニアの間ではすっかりお馴染みになりました。
TIN Audio T2TIN Audio T2 ProTINHIFI T3
最初の「TIN Audio T2」をレビューしたとき、個人的には好感を持ったイヤホンだったものの、あまりに地味すぎて市場では全く売れない、という時期がありました。その後セラーの地道なPRなどもあり、少しずつ購入される方が増えてくると一気に人気も高まり、「T2 PRO」「T3」の登場時にはすっかり人気ブランドに成長していました。
私のブログでは「T2」は改めてレビューを行い、その後の製品についても紹介をしています。
【過去記事】 TIN HIFI(TIN Audio)イヤホンのレビュー(一覧)

TINHIFI T4TINHIFI T4

今回の「TIN HIFI T4」では10mmサイズのカーボンナノチューブ(CNT)振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。「TIN HIFI」は新モデルを作るときに目標とするサウンドに最適なドライバー構成を選択しているようで、上位グレードだからといって単純にドライバー数を増やすといったアプローチを取らないところが玄人好みな感じがします。「TIN HIFI T4」はインピーダンス 32Ω ±15%、感度105 ±3 dB/mW と通常のイヤホンよりはやや駆動力があった方が良さそうな仕様になっています。付属ケーブルはエナメル加工された銅線および銀メッキ線の混合線ケーブル(TPU被膜)を採用。エナメル線は導線上で発生するノイズに強く、よりクリアなサウンドを得るのに効果的です。
TINHIFI T4TINHIFI T4
従来のシンプルな円筒状の形状を継承しつつ、背面部にはジェットエンジンのような意匠が施されており、クローム仕上げの表面処理と併せて、より美しくクールなデザインに仕上がっています。

TIN HIFI T4」はAliExpressではTIN HIFIの直営店のほか複数のセラーで販売されています。表示価格は 99ドル です。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(TINHIFI Global Store): TINHIFI T4

またアマゾンでも「TIN HIFI T4」は 11,800円 程度で購入できます。プライム在庫があればすぐに届きますし、万が一の場合アマゾン経由でサポートが受けられる点は安心ですね。
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): TINHIFI T4 11,800円
Amazon.co.jp(L.S オーディオ): TINHIFI T4 11,880円


■ シングルダイナミック構成で少しコンパクト化。ミニマルながら高級感のあるデザイン

TIN HIFI T4」のパッケージは従来の「T2」「T2 PRO」および「T3」のパッケージよりより高級感のある内容になっています。またイヤホン本体とあわせてレザー製のハードケースが付属している点も大きな違いですね。内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(白、黒のシリコン製がS/M/L各サイズ、白色のウレタン製が1ペア)、説明書など。また従来のTシリーズはウレタン製のイヤーピースを標準で本体に装着していましたが、「TIN HIFI T4」ではシリコン製のほうが標準になっています。
TINHIFI T4TINHIFI T4
これはシングルダイナミック構成となったことで従来のTシリーズよりコンパクトな本体設計となり装着性が向上した点もありそうです。

TIN HIFI T4」の本体は従来モデル同様CNC加工されたアルミニウム製で、さらにクローム処理により高級感のある仕上がりとなっています。背面部分は飛行機のジェットエンジンを連想させるような彫り込みがされており、従来通りのミニマルなデザインながらより洗練された印象もありますね。
TINHIFI T4TINHIFI T4
MMCXコネクターの装着部分は「TIN Audio T2」「T2 PRO」では装着性を著しく損ねるため評判が良くなかった部分で、「TIN HIFI T3」で反対側に付けられ改善されました。今回の「TIN HIFI T4」でも「T3」の形状を踏襲しており、さらにハウジングがひとまわり小さくなることで比較的耳に収まりやすく、装着性は改善されています。
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ただ私は今回も耳掛け(シュア掛け)した際にいまひとつしっくり装着できなかったため、最終的に手持ちのダブルフランジタイプのイヤーピースに交換しています。市販されているダブルフランジタイプでは「RHAダブルフランジイヤーピース」やAcoustune「AET06」などがあります。
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付属するケーブルはTPU樹脂被膜のケーブルでコネクタおよびプラグ部分などは本体同様にクローム処理されたデザイン的にもマッチするものになっています。線材は高純度銅線と銀メッキ線のエナメル混合線との記載があります。ケーブル自体は非常に質の高いもののようです。開封直後は樹脂被膜が少し粘着質な印象でしたが使用しているうちに馴染んであまり気にならなくなりました。


■ CNTドライバーらしいシャープで力強いサウンド。よりニュートラルに、全方位で質が向上。

TIN HIFI T4」の音質傾向はTINHIFIらしい明瞭感とキレのあるサウンドで、カーボンナノチューブ(CNT)振動板のシングルダイナミック構成の特長を活かして、非常に解像度の高いシャープさと各帯域がしっかり主張する力強さを感じつつも、これまでのモデルの中で最も自然なサウンドを実現しています。リスニング向きの弱ドンシャリ傾向で僅かに中音域が凹むため、モニター的なサウンドとは少し異なりますが、印象としては非常にニュートラルで、ありのままの音を味付け無く、しかし非常に聴きやすいバランスで鳴らします。高域は非常にスッキリしているものの従来モデルより刺激は抑えられており、低域は明瞭かつ適度な量感で全体的に見通しの良い定位のしっかりしたサウンドです。

TINHIFI T4TIN HIFI T4」のサウンドは、これまでの同社のTシリーズの製品と比較しても群を抜いて洗練されており、聴きやすくバランスの取れたサウンドが印象的です。とても完成度が高いイヤホンであるいっぽう、従来の「TIN Audio T2」あたりのクセの強い印象と比較すると「ちょっと綺麗にまとめすぎじゃない?」と逆に思ってしまう可能性もあります(^^;)。
このシリーズの各製品「T2」「T2 PRO」「T3」、そして今回の「TIN HIFI T4」がリリースされる過程で、ドライバー構成などの変化はあるものの、確実に「音質」という点では進化しており、新しいモデルほど完成度は高いと思います。ただし、それぞれの製品で傾向は少しずつ異なっており、「好み」という点では一概に新しいモデルがお勧め、とはならないのが興味深いですね。

TIN HIFI T4」の高域は100ドル程度のイヤホンのなかでは解像度は非常に高く、明瞭で鮮やかさを感じる音を鳴らします。カーボンナノチューブ(CNT)振動板を採用した同価格帯以下のイヤホンは私のブログでも何種類か紹介しており、現在ではそれほど珍しい存在では無くなっていますが、それでも「TIN HIFI T4」はかなり優れた表現力を持った製品といえるでしょう。歯擦音などの刺激はかなり抑えられており、Tシリーズの製品ではもっとも聴きやすい印象の高音になっていますが、スッキリした見通しの良さがあり、「TINHIFIらしさ」は少なくなっているもの伸びは良く、透明感は顕在です。

TINHIFI T4中音域は非常に分離の良い明瞭な音を鳴らします。曲によって僅かに凹みますが、主張は強めでボーカル帯域もやや前方で定位します。ただ従来のTシリーズより人工的な印象は少なく高い解像感やクリアさを維持しつつ非常に自然なサウンドにまとめられている点が特徴的です。音場は広く奥行きもあり、適度な響きの良さを楽しめます。男性ボーカル、女性ボーカルともに綺麗に鳴らしますが、女性ボーカルやピアノの高音などについては、中高域に特徴のある「T2」「T2 PRO」などと比べるとちょっと大人しめな印象。いっぽう男性ボーカルの低音やギターなどはディテールに優れた描写で心地よさがあります。

低域はTシリーズのなかで「TIN HIFI T4」が最も自然な量感とバランスを実現した領域です。シングルダイナミック構成の特徴を活かし、各音域のつながりは非常に自然ですが、いっぽうで締まりの良い高い明瞭感から分離にも優れており、低域が中高域をマスクすることは全くありません。またハイブリッド構成の「T3」より深く沈み込みのある重低音があります。いっぽうミッドベースは輪郭のはっきりした明瞭で見通しの良い音で、響きは控えめですが適度な力強さがあります。「TIN HIFI T4」は他のTシリーズ同様に、どちらかというと中高域メインで低音を強調したバランスでは無いため、低域についても適度な距離感で中高域を下支えする印象ですが、非常に質の高い音を鳴らす点は非常に好感できる点です。

TINHIFI T4TIN HIFI T4」は、ポップス、ロック、アニソンなどのボーカル曲から、ジャズなどのアコースティックな音源まで、曲のジャンルに関係なくそつなく鳴らす実力を持っており、この価格帯の製品としては非常に質の高い製品だと感じます。
ただ、あえてウイークポイントを挙げるとするならば「T2」「T2 PRO」ほどエモーショナルではない、というところでしょうか。最初のモデルほど「変態イヤホン」(笑)で、新しいモデルになるほど「普通に良いイヤホン」に変化している、という印象があります。
多少好き嫌いが分かれるものの独特の中高域の厚みが印象的な「T2」と、「T2」をベースに突き抜ける高域を加えることで高音好きの方を中心に高い支持を得た「T2 PRO」、「T2」ほどの個性はないもののハイブリッド化することでスッキリした印象を維持したまま、より分かりやすく聴きやすいサウンドに「変化」した「T3」、そして、シングルダイナミック構成で全方位に質を向上し、上質なリスニングサウンドを得た「TIN HIFI T4」、という感じでしょうか。
そのため「TIN HIFI T4」がオールラウンドで楽しめるサウンドを実現しているいっぽうで既存の各モデルに対して上位互換とはならず、特に中高域のボーカル帯域や、実はバイノーラルサウンドとも相性の良い「T2」や、キレキレの高域が楽しい「T2 PRO」などは「TIN HIFI T4」とは使い分けをしたいイヤホンになりますね。


TINHIFI T4ちなみに「TIN HIFI T4」もTシリーズの他のモデル同様、MMCXコネクタを採用しておりリケーブルが可能です。付属のケーブルは十分に質の高いものですが、多少変化が出やすいケーブルにリケーブルすることで、「TIN HIFI T4」の「綺麗なサウンドだけどちょっと無個性に感じる」点にアクセントを加えることができます。見た目にも最も合うのはYinyooの「YYX4810 高純度単結晶銅線ケーブル」で、見た目にもほとんど純正ケーブルのようにピッタリ合います。音質的にも中高域のメリハリが向上することでより「濃いめのサウンド」に変化します。音場感も向上しますので結構お勧めです。
他にも単結晶銅線ケーブルのHiFiHear 「HiF4881」や、「爆安」純銀線ケーブルとして話題になった「TRN-T3」などもお勧めです。


というわけで、「TIN HIFI T4」は、非常に完成度は高く、多くの方にお勧めできるイヤホンだと思います。ただマニア受けの点では「普通に良くなったせいで逆にまた地味になっちゃった」感もあるので、引き続き従来モデルも楽しみつつ、「TIN HIFI T4」についてはあえてリケーブルでバランスを変えてみる、という楽しみ方も良いかもしれませんね(^^;)。