Shanling UP4

※ファームウェアのバージョンアップに伴いバージョンアップ方法および専用アプリについて追記しました。

こんにちは。ちょっとだけお久しぶりです。約2週間ぶりの更新ですね。3月に入り、いわゆる年度末シーズンというやつで例年通り本業が結構忙しくなる時期に突入しました。今年は新型コロナウイルスの影響で個人的には仕事のスケジュール自体には変化は無いものの非常にやりづらくなったり、さらに本業以外にもいろいろ用事が重なったりと、普段レビューを書いているカフェでまったりする暇もないのが残念なところです。
また、「中華イヤホン」関係では、春節以降も実質2月は深圳界隈は機能していなかった模様で、新製品などのリリースもほとんど無く、物流も止まっているような状態でしたね。こちらについては3月以降少しずつ各セラーも復活の兆しですので、今月下旬くらいからはまた平常運転で新しいネタを追いかけられそうな予感も出てきました。

閑話休題、というわけで今回はそんな合間にこっそり購入した「Shanling UP4」です。中国のオーディオメーカー「Shanling」の製品はDAPを中心にこれまでも色々購入していますが、最新の「Shanling M6」に手を出す前にBluetoothのワイヤレスレシーバーに行ってしまいました。
過去記事(一覧): Shanling製品の購入レビュー
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そして、今回の「Shanling UP4」は、いわゆる「高音質DAC/ポータブルアンプ搭載Bluetoothレシーバー」という種類の製品で、要するに有線イヤホンやヘッドフォンをワイヤレスオーディオで楽しむためのオーディオアダプタですね。
DAC/AMPチップにESS「ES9218P」をデュアルで搭載し、2.5mmのバランス出力に対応。さらに3.5mmステレオでも「Dual DAC Mode」で同様に2つのDAC/AMPによるハイパワー出力をサポートします。ワイヤレス性能もQualcomm「CSR8675」を搭載し、Bluetooth 5.0で「HMA / LDAC / aptX HD /aptX LL /aptX /AAC / SBC」と現時点での高音質コーデックを完全に網羅しています。
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同時期に発売された「FiiO BTR5」と非常によく似た仕様で、「FiiO BTR5」がUSB-DACとしての機能も充実しているのに対し、「Shanling UP4」は事実上ワイヤレス特化で、さらに軽量でバッテリ稼働時間が長く、前述の「Dual DAC Mode」による3.5mmでの高出力といった特徴が有りますね。

「ワイヤレスレシーバー」製品は実は結構以前から存在しましたが、元々は据置きオーディオ用が主流で、カーオーディオ用やポータブルオーディオ用は音質面は今ひとつな「ガジェット」的要素の強いものでした。しかし、イヤホンジャックの無いスマートフォンが主流になり、いっぽうで各種音楽ストリーミングサービスの登場により、多種多様な製品の登場とともに大きな進化を遂げます。
なかでも2016年にAstell&Kernがリリースした(日本ではSoftBank SELECTIONとして販売)「XHA-9000」(販売当時19,800円)では、「2.5mmバランス接続対応」「aptX HD対応」というオーディオマニア向け仕様をクリアした製品で、割高な価格設定もあって当時は今ほど注目されることはありませんでしたが、今となっては相当に先駆け的な存在だったのだろうと思います(なお、「XHA-9000」は「Astell&Kern XB10」として、3,980円と大きく価格を下げて再リリースされましたね)。
FiiO BTR5Astell&Kern XHA-9000EarStudio ES100 MK2
その後、「ガジェット」のくくりを超えた「オーディオ製品」が本格的に登場することになります。特に注目されたのは私も購入し紹介した「EarStudio ES100」で(現在は「ES100 Mk2」が販売中)、反応の良いIEMでもホワイトノイズ無く鳴らすS/Nの高さと、高音質DAC/アンプの搭載で安価なポータブルUSB-DACを軽く超える音質をワイヤレスで実現していました。さらに専用アプリによる細やかなチューニングができる点も特徴的です。
いっぽう、中華系ポータブルオーディオメーカーも「FiiO」は「µBTR」「BTR1K」「BTR3」、「Shanling」は「UP2」という製品を販売しており、さらに今年に入って両社とも「デュアルDAC」「デュアルアンプ」「バランス出力対応」を実現した「FiiO BTR5」と「Shanling UP4」をリリースしました。どちらも非常に人気が高く、特に「FiiO BTR5」は発売以降ずっと入手困難な状況が続いており、今回紹介する「Shanling UP4」も掲載時点では次回入荷待ちとなっています。

Shanling UP4」の日本での価格は 12,980円(代理店の直販価格)となっています。
Amazon.co.jp(Hey Listen): Shanling UP4


■ 軽量コンパクトなデザイン。慣れれば使いやすいシンプルな操作性。

Shanling UP4」のパッケージは、本体写真がデザインされたコンパクトなボックス。パッケージ内容は本体、樹脂製のクリップケース、充電用USBケーブル、説明書、保証書、といったシンプルな構成。
Shanling UP4Shanling UP4
Shanling UP4Shanling UP4

光沢感のあるピアノブラックの本体はとても軽量かつコンパクトで、思ったより持ち歩きでも邪魔になることはなさそうです。またNFCに対応しておりペアリングも容易に行うことが出来ます。
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Shanling UP4」は液晶表示などはなく、唯一、小さなLEDの点灯および点滅によって状態を把握する仕様ですが操作に慣れればこの表示だけで全く不便無く利用できます。
まず通常はペアリング時のコーデックで異なるカラーで定期的に点灯します。また「Mode」ボタンを押すことで現在の出力ゲインが確認でき、また、ダブルクリックすることでゲインを変更することができます。さらに3回クリックでデジタルフィルターの変更が可能です。
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再度のマルチファンクションホイールはShanling製DAPではお馴染みの部分で、「Shanling UP4」でもホイールを回すことで音量調整を柔軟に行うことができ、さらにホイールを押すことで電源のON/OFF、再生/停止、曲送り/曲戻しなどの操作を行うことが出来ます。
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付属の樹脂製のカバーを装着してもこのマルチファンクションホイールも違和感なく操作できます。

また別売りの純正オプションで「Shanling UP4」用のレザーケースが販売されており、本体を傷から守るだけで無く、より高級感のある外観でドレスアップすることができます。
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背面はボタン式のフックがあり、ベルトなどに固定して使う場合も違和感なく利用できます。
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純正レザーケースはAmazonなどの直営ショップで 1,980円で販売されています。
Amazon.co.jp(Hey Listen): Shanling UP4用レザーケース

Shanling UP4」を「HUAWEI Mate 20 Pro」とペアリングしたところ、24bit/96kHzのHWAコーデックでペアリングができました。また最近のAndroid製DAPや高性能スマートフォンではaptX HD、LDACなどのハイレゾ対応の高音質コーデックに対が利用できる製品も多くなっており、これらとの組み合わせで「Shanling UP4」の実力を発揮することが出来ます。Bluetoothの接続性は良好で混雑する都心の駅などでは時々途切れることもありますが、通勤などでも快適に利用できました。


■ 想像以上にしっかり鳴らせるアンプ性能。高出力バランス接続&3.5mm用「Dual DAC Mode」。

Shanling UP4Shanling UP4」の音質傾向ですが、ShanlingのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)製品とも共通する、味付けの無いとてもニュートラルなサウンド。DACチップにESS製の「ES9218P」を採用している点は同社の超小型DAP「Shanling M0」と同様に、AKM製チップを搭載する「Shanling M2s」以降のモデルと比較すると多少音場は狭く感じるものの、メリハリのあるハッキリとした印象がり、さらに「ES9218P」チップがデュアルで稼働する「Dual DAC Mode」(アンバランス接続)と2.5mmバランス接続では、より低域の沈み込みが増した厚みのあるサウンドが楽しめます。
また、反応の良いイヤホンでもホワイトノイズなどは無く、スッキリとしたS/Nの高い傾向も同様ですね。組み合わせるイヤホンやヘッドフォンの特性を楽しむという点では非常に使いやすいサウンドだといえるでしょう。印象としては「デュアルDAC/AMPでパワフルさと深みが増したになったShanling M0」という感じで、もちろん数万円以上のDAPと比較すると価格相応の差はありますが、スマートフォンからワイヤレスで利用という視点では十分に実用的だと思います。特に「Dual DAC Mode」およびバランス接続のハイゲインは非常にパワフルかつ厚みのある音を鳴らし、かつ反応の良いイヤホンでも非常に明瞭なサウンドを楽しめる点は良いですね。数万円クラスのマルチBAや高音質ハイブリッドイヤホンをワイヤレスで使用できるのはとても有り難いところです。

Shanling UP4「EarStudio ES100」と比較すると、「AK4375a」をデュアルで搭載するES100のほうがよりナチュラルでウォームな印象があり、ESS製チップの「Shanling UP4」のほうがハッキリめのサウンドに感じます。また、現時点で「Shanling UP4」ではアプリが提供されておらず、細やかなチューニングが出来ない点はウィークポイントですが、特にある程度出力の必要なイヤホンや、ヘッドフォンでの利用では「Shanling UP4」のほうがより明瞭感があり、厚みのある低域が感じられます。傾向の違いは僅かにありますが解像感やS/Nなどはほぼ同様で音質面では好みのレベルかもしれませんね。ただ、こまかや使用感や、駆動力の違うさまざまなモード設定により、多くのイヤホンおよびヘッドフォンを組み合わせられる利用範囲の広さは「Shanling UP4」の強みといえるでしょう。
また、「Amazon Music HD」や「mora qualitas‎」のように日本でも本格的にサービスを開始している高音質対応(またはハイレゾ対応)の音楽配信サービスの利用を考慮すると「Shanling UP4」の24bit/96kHz対応のLDACやHWAコーデックが使用できる仕様は魅力的です。

Shanling UP4」の各出力モードについては、3.5mmのステレオ接続では多くの場合、やはり「Dual DAC Mode」が好印象でした。ただし、非常に反応の良いマルチBAイヤホンではシングルのローゲイン/ハイゲインのモードのほうがより明瞭感を感じられる場合もありました。
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ちなみに、「Shanling UP4」の仕様では3.5mmステレオの場合、シングルDACのハイゲインで71mW、「Dual DAC Mode」で91mW(ともに32Ω)の出力ですが、これが2.5mm/4極のバランス接続にすると160mW(@32Ω)の高い駆動力を得ることが出来ます。その違いは非常に明確で、より駆動力の必要なイヤホンでバランス接続にリケーブルできる場合はこの組み合わせは非常に効果的です。
例えばMeeAudio「Pinnacle P1」は結構しっかり駆動力のある再生環境で鳴らしたいイヤホンですが、比較的情報量の多い純銀線のバランスケーブルにリケーブルした組み合わせにすることで「Shanling UP4」でも想像以上に気持ちよくならすことができました。このクラスのイヤホンをしっかり鳴らせると、個人的にもかなり実用性が高くなりますね(^^)。

またバランス接続および3.5mmステレオでの「Dual DAC Mode」は、ヘッドフォンのワイヤレス化でも実力を発揮します。32Ωから65Ωくらいの多くのHiFiヘッドフォン製品では「Dual DAC Mode」で十分に鳴らすことができます。先日購入した「AKG K275」ではこの組み合わせで想像以上に深みのある音を堪能できました。これならワイヤレスでの屋外利用でも十分にいけそうです。
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いっぽう、ゼンハイザー「HD650」と同等品のMassdropコラボ「HD6XX」(300Ω)あたりのヘッドフォンになると、さすがにバランスケーブルにリケーブルしても薄い音になってしまい「これはしんどいな」という感じになります。密閉型の場合でも250Ωの「DT1770 PRO」などでも同様に鳴らし切れていない印象を感じました。この辺は「スペック通り」ともいえますし、仕方のないところですね。


(追記)ファームウェア新バージョンの登場で専用Androidアプリに対応

先日Shanlingより「Shanling UP4」の新しいバージョンのファームウェアがリリースされました。現在はShanlingのグローバルサイトでのみのダウンロードですので、サポート的には国内販売元からのアップデート情報を待ったほうが安心だと思います。といわけで以下はあくまで自己責任で、ということで(お約束)。
→ 新バージョンのニュースリリース(英語): http://en.shanling.com/article-CompanionApp.html
→ 「Shanling UP4」のファームウェアダウンロード: http://en.shanling.com/download/67

Shanling UP4」のファームウェアアップデートにはWindowsマシンが必要になります。ここで「Shanling UP4」をアップデートが可能な「DFUモード」で接続し、専用プログラムでアップデートを行います。大まかな手順は以下の通りです。

①まず、ダウンロードファイルを解凍し、「Firmware Upgrade」フォルダの「ShanlingUpgradeTool.exe」を右クリックし「管理者として実行」を行います。
ShanlingUpgradeToolデバイスマネージャー
②次に、USBケーブルでWindows PCと電源の入った状態の「Shanling UP4」を接続し、ダイヤルとModeボタンを同時に数秒間押し続けます。そうすると「デバイスマネージャー」の「ユニバーサルシリアルコントローラー」に「CSR BlueCore in DFU mode」というデバイスが表示されます。

ShanlingUpgradeToolShanlingUpgradeTool
③この状態で、起動してあった「ShanlingUpgradeTool.exe」の「Start Update」を押すとファームウェアのアップデートが開始されます。アップデートが完了したら「完了」を押し、アプリケーションを終了します。そのあと「Shanling UP4」をPCから取り外せばアップデート完了です。

また解凍したアップデートの「Shanling Controller app」フォルダにはAndroid用のアプリ(ipkファイル)があります。このファイルをスマートフォンなどに転送し、ファイルマネージャーなどでインストールすることで専用アプリが利用できるようになります(この辺の手順は割愛します。詳しくは「ipkファイルのイントール」などで検索してみてくださいね)。
Shanling ControllerShanling ControllerShanling Controller

Shanling Controller」アプリはあらかじめ「Shanling UP4」をペアリングした状態で起動し、接続を行います。注意点は「Shanling UP4」のペアリング時にすべてのプロファイルを「許可」しておくこと、また「Shanling Controller」アプリもすべての権限を「許可」にしておく必要があります。

Shanling ControllerShanling ControllerShanling ControllerShanling Controller

アプリ上では接続コーデックやモード、フィルターの変更のほか、イコライザによるサウンドチューニング(LDACは利用不可)、HUAWEIなどのHWAコーデック対応端末でHWAコーデックの自動接続の有効化/無効化(通常は有効のため、LDACやaptX HDなどのコーデックで最初から繋ぎたい場合は無効にしておくと便利)が可能です。アプリはまだ最初のバージョンですので、今後さらなる発展に期待したいところですね。


というわけで、「Shanling UP4」は音質面ではさすがに多くのDAPよりは下がるものの、ハッキリめの傾向はワイヤレスオーディオと相性が良く、コンパクトならが想像以上にしっかりと鳴ってくれる駆動力の高さと、シンプルで分りやすい操作性でとても使いやすい製品でした。個人的にはこれまではスマートフォンからのストリーミング再生では「EarStudio ES100」を使うことが多かったものの、今後は「Shanling UP4」がより活躍しそうな感じですね(^^)。