Shure AONIC 3

こんにちは。今回は米国「Shure」の新シリーズ「AONIC」(エオニック)のシングルBAイヤホン 「Shure AONIC3」の紹介です。 Shureでは従来の「SEシリーズ」に今後代わるメインラインの製品を「AONIC」で展開する模様で、先日「AONIC3」(1BA)、「AONIC 4」(1BA+1DD)、「AONIC 5」(3BA)モデルが一斉にリリースされました。また「AONIC 215」として販売されているワイヤレスイヤホン(正確にはワイヤレスアダプタ+「SE215SPE」)やワイヤレスヘッドフォン「AONIC 50」もリリースされており、「AONIC」として多彩なラインナップを今後揃えていくのだろうと思われます。

なお、既存の「Shure SE」シリーズの振り返りレビューと「AONIC 1/3/5」の概要については先日「棚からレビュー」企画のひとつとして紹介しています。よろしければ併せてご覧ください。
→ 【棚からレビュー】 Shure 「SE846/SE535LTD/SE425/SE315/SE215SPE」 遂に新シリーズ登場! なので既存モデルをまとめて振り返ってみた。


さて、今回紹介する「Shure AONIC3」ですが、価格帯・グレード的には既に販売終了している「SE315」をリプレースする製品になっています。シングルBAという構成も同じですね。ただShure的にはかつての「E4C」の後継モデルである、と明言しています。
つまり、「SE315」が「SE425」の下位モデルとして「SE215」との間を埋めるために作られた印象が強いのに対し、「Shure AONIC3」は新たな主力製品のひとつとして、「E4C」のコンパクトなデザインを踏襲し、より幅広いユーザーにShureのサウンドを体験できるよう新たに開発されたモデルというわけですね。
Shure AONIC 3Shure E4C / Shure E3C
E4C」は後の「SE535」へつながる「E5(E5C)」やコンシューマーモデルの「E2C」の後に登場したシングルBA構成の製品で、コンパクトな装着性とサウンドは非常に好評だったものの、SEシリーズの登場で後継機種もないまま10年以上にわたって市場から姿を消していました。今回の「Shure AONIC3」では「E4C」のスマートな印象を踏襲して装着性を高めつつ、音質傾向についても「E4C」の密度が高くバランスが取れたサウンドを継承しているとのこと。またSEシリーズおよびAONIC4/5同様にMMCXコネクタによるリケーブルに対応し、「RMCE-BT2」等のワイヤレスケーブルやアダプタへの対応も可能にしています。
Shure AONIC 3Shure AONIC 3 White
Shure AONIC3」の本来カラーはブラックですが、eイヤホン限定でホワイトも販売されています。今回私はこのホワイトのほぼ新品に近い中古品をたまたま購入できました。
Shure AONIC3」の市場価格は 21,780円 です。
Amazon.co.jp: Shure AONIC3 (SE31BABKUNI-A)


■ 往年の名機「E4C」を踏襲したコンパクトデザイン。最適な装着位置を見つけるのがポイント

どうやら「AONIC」ラインのパッケージは「円形」と決まっているらしく(^^;)、「Shure AONIC3」のパッケージも丸い筒状の箱になっています。パッケージを開けて説明書を取り出すと、イヤホン本体とケースが登場し、ケースの中に付属品が入っています。
Shure AONIC 3Shure AONIC 3

Shure AONIC3」のパッケージ内容はイヤホン本体、マイク付き「RMCE-UNI」MMCXケーブル、グレーのシリコンイヤーピース(S/M/L)、ブラックのウレタンイヤーピース(S/M/L)、イエローのスポンジイヤーピース、ホワイトのトリプルフランジイヤーピース、ノズルクリーナー、変換コネクタ、円形ケース、説明書。
Shure AONIC 3Shure AONIC 3
Shure AONIC3」の本体は樹脂製のコンパクトなストレートタイプですが、シュア掛け(耳掛け式)を想定したデザインでMMCXコネクタは上部についています。ノズル部分は少し傾斜しており、奥にフィルターが装着されているのが確認できます。Shure的には「E4C」の後継機種ということですが、樹脂製ハウジングおよび販売価格も含めてひとつ下の「E3C」を踏襲しているようでもありますね。
Shure AONIC 3Shure AONIC 3

付属ケーブルはShureの現在販売されている他の通常モデル同様にマイク付きの「RMCE-UNI」タイプ。DAPでの利用を考えると必然的にMMCX対応の他のケーブルへのリケーブルを前提としたくなりますね。ただ、昨今のテレワーク等のビデオ会議では「RMCE-UNI」のマイクは他のマイク付きイヤホンのケーブルよりかなり鮮明な音声を捉えてくれるようです。この辺はさすがプロ向けマイクのトップメーカーであるShureのケーブル、といったところでしょう。
というわけで、私は取り外した「RMCE-UNI」ケーブルを適当なMMCX仕様のイヤホンに組み合わせてビデオ会議用に再利用しています(^^)。
Shure AONIC 3Shure AONIC 3
ちなみに、「Shure AONIC3」はとてもコンパクトなイヤホンのため装着性が良い・・というより逆に装着位置を多少模索する必要があるかもしれません。私も純正ケーブルの場合、耳に合せて最適な位置に曲げるのに最初は多少戸惑いました。個人的にはステム角度から耳に突き刺すような感じより多少耳に沿わせて耳穴の奥まで入れていく装着位置のほうが好印象でした。使用するイヤーピースなどによっても多少位置は変わってきますが、きちんと装着すればShureらしくしっかりとした遮音性は確保できます。


■ シングルBAの枠にとらわれない、ジャンルを問わず楽しめる完成度の高いモニターサウンド。

Shure AONIC 3Shure AONIC3」の音質傾向は想像以上にフラットで、シングルBAらしからぬダイナミックレンジの広さに驚かされます。しっかりと伸びる高域と厚みと深さのある低域、そしてShureらしいのとても密度の高い中音域のバランスは素晴らしく、同じシングルBAの「SE315」とは一聴して全くの別物であることが実感できます。普段「SE215」を使っている方が「Shure AONIC3」のサウンドを体験すると1音1音の細かさや明瞭感の違いをはっきりと実感するでしょう。従来とは明らかに次元が異なるサウンドを実現しつつ、いっぽうでバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーのポジティブな特徴を素直に活かしている「Shureらしさ」もまた健在です。

Shure AONIC3」はインピーダンス 26Ω、感度108dB/mWのため音量自体はスマートフォンでも取りやすいですが、しっかり鳴らすためには十分な駆動力が必要です。十分な出力が確保できるDAPを使用しての利用がお勧めですね。また後述のとおり味付けが無く情報量を向上させるタイプのケーブルへのリケーブルも効果的です。

また、他のShure製品同様、付属イヤーピースでの印象の違いもハッキリしており、より自然で聴き疲れしない音なら「ブラックのウレタン」、スッキリした明瞭な音なら「グレーのシリコン」イヤーピースを選択するのが良いでしょう。またShureでは伝統的なイエローのスポンジはその中間くらいですが、「Shure AONIC3」の場合は装着位置で結構印象が変わるため耳の形状で合う・合わないがあります(私はあまり合いませんでした)。
Shure AONIC 3メーカー画像で使われるブラックのウレタンイヤーピースでは「Shure AONIC3」の濃密さを維持しながら、多少まろやかで聴きやすい印象になります。自然なサウンド、という点ではこのタイプのほうが良く、聴き疲れしにくい組み合わせですね。
いっぽう、グレーのシリコンイヤーピースはウレタンと比べるとかなりスッキリ印象となり、粒立ちのよいキリッとした音になります。ウレタンイヤーピースではあまり感じない細かい音もしっかり聴き取れるのでハッキリした音が好みの方はこちらでしょう。ただ多少ですが高域の刺激が強くなり聴き疲れしやすくなります。トリプルフランジはさらにダイレクト感が強い音になります。
他に市販のイヤーピースでは「コンプライ P-100」がSEシリーズ同様に使用でき、基本的には付属ウレタンと同じ傾向ですがよりフィット感が向上し遮音性が増します。またAcoustune「AET16」は付属グレーのシリコンより僅かに中低域の厚みを感じる印象です。この辺も好みに応じて使い分けてみるのも良いですね。

Shure AONIC3」の高域は明瞭かつ非常に綺麗にまっすぐ伸びる印象。十分に駆動力のある再生環境では、BAらしい繊細を保ちつつ明るく煌めきのある高音を楽しめます。「SE315」が分りやすく中音域寄りで多少カマボコ感があるのに対し、ありのままの音を明瞭に鳴らしてくれる感じはとても好感が持てます。刺さりやシャリ付きは適度にコントロールされています。ただしグレーのシリコンイヤーピースではより解像感のある印象となりますが、曲によっては僅かに刺激が強くなる場合があります。
中音域は凹むこと無く、より近く密度感のある「いかにもShureのサウンドモニター」という感じの音を鳴らします。「Shure AONIC3」は癖のないニュートラルな印象ですが、シングルBAイヤホンとしてはかなり粒立ちの良い音で、1音1音を明瞭に聴くことができます。モニター的な濃密さがあり、ボーカルは近いところで定位しますが、適度な広がりで再現しており、違和感のない音場感があります。
Shure AONIC 3低域はシングルBAとしてはかなりしっかり出ている、という印象。ダイナミックドライバーのような重厚感のある響きや厚みはありませんが、ミッドバスもある程度量感があり、BAらしい解像感のある音で鳴ります。また重低音についても比較的締まりは良く、BA特有の籠もりを感じることなくシングルBAとしては沈み込みもしっかりしている印象です。「SE315」と比較すると量的にも質感的にも格段に向上しているのがわかります。
Shure AONIC3」は2万円クラスのシングルBAイヤホンとしてはかなりレベルは高く、ドライバー構成を気にせず「普通に良い音のイヤホン」としてこの価格帯のシングルダイナミックやハイブリッド製品とも十分に渡り合えるクオリティを実現できていると思います。特にモニター的なサウンドを希望される方には有力な候補になることは間違いないでしょう。同じシングルBAで比べた場合、さすがに「ER4SR」の自然かつ精緻な描写と比べると、中低域、特に低域の表現力や音場感には大きな差がありますが、「Shure AONIC3」ではより近く凝縮された印象の「Shureらしさ」を多くのジャンルの曲で楽しめる点は大きな特徴でしょう。

なお、ウレタンやスポンジのイヤーピースでは音のエッジが多少自然な印象となり聴きやすいサウンドとなり、シリコンイヤピースではよりキレのよい印象で細かい音もよりハッキリと感じられます。シングルドライバーのメリットで音のつながりは非常によく、女性ボーカルやピアノの高音なども綺麗に伸び、男性ボーカルの低音もしっかり分離しつつしっかり沈みます。ただ、良くも悪くもフラットでモニター的なサウンドですので、響きや音の厚み、という部分では「まっすぐ過ぎる」と感じる部分はあるかもしれません。

Shure AONIC 3そして、付属のマイク付き「RMCE-UNI」ケーブルからリケーブルを行う場合は味付けの無い情報量をアップさせるタイプのケーブルがお勧めです。国内で販売されているある程度グレードの高い銀メッキ線ケーブルの場合、多少派手めに(ドンシャリ方向に)変化し、「Shure AONIC3」バランスが崩れてしまう場合があります。また低域の厚みが出るケーブルでも再生環境によっては多少低域が歪みやすくなるかもしれませんね。
個人的には中華16芯ケーブルの「NICEHCK C16-1/C16-4」や「Yinyoo YYX4865」あたりが価格も手ごろでちょうど良い感じでした。よりハイグレードなものでは「NICEHCK Oalloy」などもお勧めです。


というわけで、「Shure AONIC3」は新型コロナウイルスの影響もあり、発売後無試聴での購入でしたが、十分に満足のいくサウンドに仕上がっていました。私のブログでは中華イヤホンを多く紹介しているため、どうしてもドライバー構成などのスペック押しの製品が多くなりがちな側面はあります。
Shure AONIC 3しかし、実際の音作りはハイエンド製品のほとんどがシングルのダイナミックドライバー構成であるように、足し算だけでは成立しないことは間違いありません。特に「シングルBA」構成のイヤホンは他にはないメリットとともにドライバーの構造的な制約から音作りの難しさもあります。今回の「Shure AONIC3」はShureならではの音作りをしながらも格段のレベルアップを行った、従来モデル同様におそらく今後長期間にわたって販売される製品となる完成度を持っていました。
個人的にShureは大好きなブランドではありますし、今後「AONIC4」「AONIC5」についても、おそらく購入することになりそうです(^^;)。