メーカ別まとめ TFZ編その①

こんにちは。今回は中華イヤホンの「メーカー別まとめ」の第2弾として、「TFZ」製イヤホンを取りあげてみたいと思います。ただ先日の「TRN」編とは異なり、「TFZ」は種類も非常に多く、それ以上に「ラインナップがとんでもなく分りにくい」ことでも有名です。とはいえ、おそらく日本では最も多くの種類のTFZ製イヤホンのレビューを「購入して掲載」してるぽい私のブログでしかやれなそうな企画であることも確かですね。というわけで、もしかしたらメーカー自身も良くわかってないんじゃ無いかという(笑)ラインナップの変遷を無謀にも整理してみることにしました。 

とはいえ結構長くなりそうですので3部構成(前・中・後編)に分けての掲載となります。まず前編にあたる「その①」では、この複雑なラインナップを「世代」「グレード」に加えて独自に「音質傾向」を踏まえて整理してみたいと思います。
過去記事(一覧): TFZ製イヤホンのレビュー


■TFZ製イヤホン 年代別ラインナップ

まず、TFZの主要な製品について、「海外版」の発売年を横軸、価格帯(ドル建て)を縦軸にして整理してみました。TFZでは通常、中国国内や香港向けの「中国向け」が先行し、その後越境ECサイトで販売される「海外版」がリリースされます。日本の代理店が間に入る「日本版」はそこから数ヶ月以上遅れて発売され、価格設定も「海外版」とは異なるためあえて考慮していません。まあ私自身がほぼ海外版が出たら買ってる、ってのもありますね(^^;)。またこの表では2016年の「SERIES1/3/5」を起点としてその派生でまとめていますので、それ以前の「TTPOD」などにはもちろん触れていませんし、ワイヤレス製品等は割愛しています。あらかじめご了承ください。

TFZ model lineup

このマトリクスをみるとラインナップがいかに二転三転して変化しているかがわかります。ただ2018年の「KING PRO」(第2.5世代ドライバー)の登場以降、100ドルオーバーのより高価格・高級路線に急速に舵を切っていることははっきりと見て取れますね。例えば日本の自動車メーカーが北米市場に進出後、モデルチェンジごとに車体の大型化が進み、ラインナップの位置づけが変わる、みたいなことがありますが、「TFZ」のイヤホンでも似たような現象が起こっています。また製品のマーケティング上の目的で過去モデルと一貫性のないネーミングをつけてしまう辺りもちょっと似ていますね。

というわけで、このマトリクスの中で何が起こっていたのかを見ながら、「製品名にとらわれずに」ラインナップを整理したいと思います。
ポイントは、
低域モリモリのドンシャリ傾向 SERIES 5S」「KING」「Tx BEAR MONICA」など
・フラット寄りのリスニング傾向 SERIES 4」「KING PRO」「KING II」「MLE」など
・ボーカル帯域中心のドンシャリ SERIES 2」「T2 Galaxy」から「NO.3」への進化
・その他(亜種)

といった4つの方向性でしょう。え?「KING EDITION」は? さてさて。


■ すべては「SERIES 4」「MY LOVE II」から「ややこしく」なった

私が思うに、TFZの「似たようなモデルが多くて良くわからない」と言われるようになる状況の発端は2017年の「SERIES 4」と「MY LOVE II」の2モデルからだと思っています。その原因を多くの方は「同じようなデザイン」(SERIES1/3/5から続く伝統的なデザイン)で「同じような構成」(シングルダイナミック)で様々なモデルが存在するから、だと考えると思います。
TFZ SERIES1S / SERIES 3TFZ EXCLUSIVE 5
そのこと自体は間違ってはいないのですが、それ以上に、現在のTFZ製品は「名称だけではグレードがが想像できない」のと、同じく「名称からモデルの新旧がわからない」という、「名称」つまりネーミングの問題がそれ以上に混乱を招く要因になっています。そしてデザインについても当時のTFZのトラウマに近いものを想像せずにはいられません。

「SERIES1/3/5」の系統マトリクスを見ても2016年~2017年の「SERIES1/3/5」および「1S/3S/5S」から「EXCLUSIVE」ラインへの変化はラインナップ的にも分りやすいと思います。しかし、その後の「SERIES 4」で最初の「?」がユーザーの間で発生しました。当時私も「SERIES 4」のレビューで書きましたが、おそらく当時のTFZは主力を「EXCLUSIVE」ラインに統一し、これとは別によりトラディショナルな位置づけで「SERIES」というネーミングを使おうとしたのではと思われます。
実際「SERIES 4」は「EXCLUSIVE KING」と同額の99ドルで発売され(グレード的には同じ)、音質傾向も「EXCLUSIVE KING」が「SERIES 5S」を踏襲したドンシャリ傾向なのに対し、「SERIES 4」は後の「KING PRO」のベースとなるフラット寄りの傾向でまとめられていました。つまり「SERIES 4」は「音質傾向」的にも「グレード」的にも「3」と「5」の中間のモデルでは全く無かったわけです。

しかし、「SERIES 4」というネーミングに加えて、「EXCLUSIVE KING」が「SERIES 5S」の明らかな後継モデルとわかるデザインだった様に、「SERIES 4」は「SERIES 3S」の後継を思わせるフラットな金属フェイスのデザインで発売されたこともあり、TFZをよく知るユーザーほど意外性を持たれて、「TFZらしくない」という評価を受けることが多くなりました。
TFZ SERIES 4TFZ MY LOVE II
いっぽう同様にグラフェン振動板を採用した「第2世代」ドライバーを搭載し、わかりやすいドンシャリ傾向でまとめた「MY LOVE II」は逆に「よりTFZらしい」製品として「EXCLUSIVE 1/3/5」より人気モデルになってしまいます。結果「EXCLUSIVE」ラインは唯一非常に人気が高かった「EXCLUSIVE KING」を残して収束してしまいます。この頃からTFZは似たようなモデルしか作れないトラウマが始まったような気がします。実際この傾向は「MY LOVE II」をベースに「EXCLUSIVE」ラインの代わりに投入した普及モデル「SERIES 2」が大人気モデルとなることで決定的になってしまったかもしれません。
→ 過去記事: 「TFZ EXCLUSIVE 5」のレビュー
→ 過去記事: 「TFZ SERIES 4」「TFZ MY LOVE II」のレビュー


■ 「本当の」後継者なき孤高の存在、「KING PRO」

上記のように「SERIES 4」は当時のTFZが従来とは異なる方向性のサウンドとして作った製品です。その方向性は「KING」および「SERIES 4」の「第2世代」から進化した「第2.5世代」ドライバーの最初のモデル「KING PRO」でいきなり「完成形」となります。
TFZ KING PRO「KING PRO」はよりフラット傾向のモニター寄りのサウンドとなり、第2.5世代ドライバーで向上した解像感を活かし、ジャンルを問わず楽しめる非常にバランスの良いリスニングイヤホンに仕上がっています。もともと従来の「EXCLUSIVE KING」の上位モデルでかつフラグシップ的な位置づけであったこともあり、現在に至るまで「KING PRO」より高いグレードで「KING」という名前の付いた製品は出ていません。
→ 過去記事: 「TFZ KING PRO」のレビュー

そして、フラグシップとして登場した「KING PRO」の普及版として本来は「KING」の後継というポジションでリリースされたのが「KING II/LTD」です。しかしここでの「KINGの後継」というのはマーケティング的な意味で、製品としての「系統」では「KING PRO」および「KING II」「KING LTD」は「EXCLUSIVE KING」の上位モデルや後継モデルでは無く、「SERIES 4」の上位モデル、後継モデルと考えるのが妥当でしょう。もうこの時点でややこしいですね。
「KING PRO」の系統
これが「第3世代」ドライバーになるとさらにややこしくなります。当初TFZは「KING III」を「KING II/LTD」の後継と考えていたのは間違いないと思います。しかし先行販売した赤色の「正月版」がかなり評価が低く、そのまま在庫限りの製品になってしまいました。そして、もともとは新たなラインとして展開するはずの「KING EDITION」が後継モデルのような扱いで登場するようになります。つまり「KING III」の失敗で「SERIES 4」からの流れは途絶え、人気モデルだった「KING PRO」は後継モデル無きまま孤高の存在になってしまいました。
TFZ KING LTDTFZ KING III
→ 過去記事: 「TFZ KING II / KING LTD」のレビュー「TFZ KING III」のレビュー


■ 「EXCLUSIVE KING」の本当の後継は「Tx BEAR MONICA」かも?

いっぽう、「KING PRO」以降、リンクの途絶えた人気モデル「EXCLUSIVE KING」は、その後ケーブルを変更し、微妙にチューニングを変更した「KING(リニューアル版)」などを経て、結構最近まで海外では販売が継続されていました。
「EXCLUSIVE KING」の系統
「EXCLUSIVE KING」の販売が終了したのは最新の「KING EDITION」の登場によるものですが、どちらかというと本当の後継モデルは「Tx BEAR MONICA」のほうかもしれません。もともと中国のショップ限定モデルとして企画・販売された「Tx BEAR MONICA」が「SERIES 5S」や「KING」を踏襲した、ユーザにとって最も「TFZらしい」サウンドになったのは自明の理かもしれませんね。
TFZ EXCLUSIVE KINGTFZ TxBEAR MONICA
→ 過去記事:「TFZ EXCLUSIVE KING」のレビュー「TFZ TxBEAR MONICA」のレビュー


■ 「SERIES 2」「T2 Galaxy」から「NO.3」への進化

日本でも国内版が販売されなかったにもかかわらずマニアの間でかなり人気となった「SERIES 2」ですが、この当時のTFZの考え方からすると、主流を「EXCLUSIVE」ラインに移動した後ですので、「SERIES 2」も「MY LOVE II」と同様の「第2世代」ユニットを採用しつつ、従来とは異なる方向性のサウンドを目指した普及モデルだったと思います。その方向性は「ボーカル帯域」と「音場感」といった中音域へのアプローチで、ある意味最近の中華イヤホンの流行りを先取りしたような製品だったのでは、と思います。
「SERIES2」「T2 Galaxy」からの系統
「SERIES 2」は価格帯的には59ドルとかつての「SERIES 3」および「SERIES 1S My Love」と同様の設定ですが、位置づけ的には限定品だった「SERIES 1S My Love」の後継モデルのような感じかもしれませんね。

TFZ SERIES 2TFZ T2 Galaxy
これに対し、「SERIES 4」をベースに「SERIES 2」と同様のサウンドバランスに仕上げた「T2 Galaxy」は、位置づけ的にはむしろ「SERIES 3S」に近く感じますね。そして、アレンジは変化しますが、より音場感を重視し既存のモデルにとらわれずに設計した「NO.3」のサウンドへもつながっていると感じます。
→ 過去記事:「TFZ SERIES 2」のレビュー「TFZ T2 Galaxy (T2G)」のレビュー

なお、「T2 Galaxy」と同じタイミングで低価格モデルの「T1 Galaxy」もリリースされており、これは第1世代のドライバーを採用し、リケーブル機能を廃止したモデルでした。その後、ドライバーが第2世代にグレードアップし、マイク付きケーブルに変更された「T1S Galaxy」にマイナーチェンジしています。
ちなみに、「T2 Galaxy」などの59ドルの価格帯はいわゆる「売れ筋ライン」で、現在も「MY LOVE EDITION」(通称「MLE」)がこの価格で販売されていますが、今後この価格帯の新モデルの可能性もありますね。
→ 過去記事: 「TFZ MY LOVE EDITION」のレビュー / 「TFZ T1 Galaxy」のレビュー

TFZ MY LOVE EDITIONTFZ T1 Galaxy

なお、ラインナップ的にはTFZは最新の「QUEEN LTD」を「T2 Galaxy」も実質的な後継に据えようとしていると考えられます。実際「QUEEN LTD」のカラーバリエーションは「T2 Galaxy」と同じで、価格帯も少しアップグレードした位置になっています。これはもともと「KING PRO」の亜種のひとつだった「QUEEN」とは価格帯も含めかなり位置づけが異なります。しかし多少ウォーム傾向の「QUEEN LTD」の人気はいまひとつで(日本でも販売されていませんね)TFZの目論見は外れてしまったようですね。
TFZ QUEEN LTDTFZ S2 Pro
いっぽう「S2 PRO」は「SERIES 2」の後継、という位置づけですが、実際は「T1S Galaxy」と同じ、1ランクしたの「SERIES 1」からの「低コスト帯」のモデルであることがわかります。本当は格下の製品に「PRO」とか付けちゃうあたりの「場当たり」加減がやはり「ややこしく」している要因ですね。
→ 過去記事:「TFZ QUEEN LTD」のレビュー「TFZ S2 PRO」のレビュー


■ ところで、「KING EDITION」は??

ラインナップの中で、「KING EDITION」は最も特異なモデルです。まあ確かに「KING」っぽい製品であることは間違いないのですが、「系統」的には良く言えば「集大成」といった感じの製品です。
実際にはかなり印象に違いはあるものの、ざっくり言って「KING EDITION」に搭載される「NO.3」同様の「第3世代ダイナミックドライバー」を、フェイス部分のスイッチにより「EXCLUSIVE KING寄り」と「KING II 寄り」を切り替えるようなチューニングになっています。ハウジングは「QUEEN」と同じ形状の少しコンパクトなサイズで、「KING PRO」以降のビルドクオリティの金属ハウジングで仕上げられています。
TFZ KING EDITION数々の分家ができたものの、改めて一堂に会し、それでも折り合いの付かなかった部分はスイッチ切替式でユーザーに委ねる、という「落としどころ」を作ったのが「KING EDITION」、という感じですね。
この「KING EDITION」のアプローチを見る限りでは、もしかすると、今後旧モデルが順次販売終了となることでラインナップが改めて整理され、「わかりやすいTFZ」になる可能性も高いかもしれません。ただし、また思いついたようにユーザーを混乱させるような製品を出す可能性も十分にあるので、全く油断はできないのですが。。。
→ 過去記事:「TFZ KIG EDITION」のレビュー


というわけで「その①」は長々とした能書きだけで終わってしまいました。
次回は亜種(高いヤツも含めて)の系統を踏まえつつ、個々のモデルを振り返りたいと思います。
「その②(中編)」および「その③(後編)」はこちらです。
 ・【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 その② (中編) / 各世代で登場したさまざまな「派生モデル」をまとめて考察してみました。
 ・【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 その③ (後編) / TFZの「世代」ごとの変遷と代表モデル、最新ラインナップを整理してみました。