メーカ別まとめ TFZ編その②

というわけで 前回に引き続き、中華イヤホンブランド「TFZ」のメーカー別まとめ「その②(中編)」です。結局中編をはさんだ3回構成になっちゃいました。

→ 【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 その① (前編) / いまいちわかりにくいラインナップの「系統」を色々な視点で考察しながら整理してみた。

改めて、2016年から2019年までのTFZラインナップのマトリクス図です。前回掲載時には「BALANCE」系は載せていませんでしたが、今回は追加をしています。また合せて「その①(前編)」のほうの図もこちらに差し替えてあります。
TFZ model lineup
その①(前編)」では「TTPOD」から2016年に「TFZ」にブランド名を変更してリリースした「SERIES 1」「SERIES 3」「SERIES 5」の3モデルを起点に、変遷をたどりながら「系統」を考察してみました。
その②(中編)」では、それ以外のさまざまな「派生モデル」について考察して、前回触れなかった各モデルを補完していきたいと思います。その上で「その③(後編)」で、各世代の同社製ドライバーと現在入手可能な各モデルについてまとめる予定です。

【ほぼ「思いつき」レベル?な派生モデル】
今回は、その「主流」とは別にちょいちょい登場する「派生モデル」および「新シリーズ」をまとめてみます。「TFZ」的には、「新機軸」的な感じだったり、「よりハイグレード路線に」だったりするわけですが、結局長続きせずほとんど「思いつきでやってる」ようにしか見えないのも困ったしかも、「主流」でもちょいちょいありますが、思いついたように名称を復活させたり、再利用したりするからさらにややこしくなります。


■ TFZ的「やらかし」の代表選手「BALANCE」系モデルと「SERIES 7」 

「BALANCE」系モデルこそ製品の良し悪しは別に、特にネーミングにおいて「TFZ」の「悪い癖」が全開の製品でしょう。TFZがユーザーを混乱させるネーミング上の「やらかし」は、

・新シリーズを打ち上げても、後継モデルを出さずにすぐにやめてしまう。
・実際は発売されていない製品をあたかもリリースされてるようにラインナップに載せたままにする。

・これまでの関係性を無視しマーケティング的な理由だけで名称を付けたり、復活させたりする。

といったことがありますが、「BALANCE」はこの3つ全てにあてはまる、まさに「やらかし」の代表選手といっていいでしょう。
まず、2016年に「SERIES 1/3/5」をリリース後、よりハイグレードなモデルとして「SERIES 5」のドライバーをベースに「BALANCE 2」(139ドル)と「BALANCE 2M」(199ドル)がリリースされます。しかし、90ドル程度で購入できる「SERIES 5S」の完成度が高く、「高級感のある金属シェル」や「MMCXコネクタの採用」以外には差別化要素が少なかったことで、そのまま2017年には「BALANCE」ラインは後継モデルを出すこと無く販売終了してしまいます。
ところが、TFZサイトには2016年当時から「BALANCE 4」や「BALANCE 6」といったモデルが記載されており、あたかも「BALANCE」ラインの上位モデルがリリースされたかのような流れになっています。もちろんこれらのモデルは実際には存在を確認されてはいません(おそらく「企画倒れ」になったのだろうと思います)。
TFZ BALANCE 2MTFZ SERIES 7
同様に2016年頃からずっと存在を記載され、「中国で販売されている上位モデル」と思われていたのが「SERIES 7」で、これもその当時は実際には存在しませんでした。その後、2019年に同社初のハイブリッド構成のモデルとして359ドルで登場した4BA+1DD構成の製品に「SERIES 7」という名称が与えられたことで、2016年当時は架空のモデルだったことが確認されたわけです。「SERIES 7」は「KING III」と同じ金属シェルのハウジングを採用し、結構メリハリの強いドンシャリ傾向のサウンドに仕上がっています。
過去記事: 「TFZ SERIES 7」のレビュー

TFZ BALANCE 7TFZ BALANCE 1
そして2019年に入り、TFZは突如として2種類のモデルで「BALANCE」を復活させます。まず最初は大口径の平面ドライバーを搭載した「BALANCE 7」が登場。おそらく自社製ではないドライバーを採用した単発製品で、439ドルという価格設定もあってこの製品名にしたのだろうと想像できます。ただ、その次に「BALANCE 1」という小型ドライバーを搭載した製品を39ドルでリリースしてしまいます。つまり現在は「ほぼ最廉価」モデルと「400ドル超えの高価格」モデルという全く関係性のない2モデルに「BALANCE」という名称が付いているわけです。
まあマーケティング優先だとは思いますが、実際何も考えてないだろうなぁ、というのは伺えますね。


■ スペック寄りで成功した単発モデル「NO.3」と、マーケティング主導で失敗した「TFZLUX」

上位モデルを狙った2016年の「BALANCE」や、2017年に「SERIES」に代わる「主流」を目指した「EXCLUSIVE」ラインが発展できないままラインナップが混乱し始めたTFZは、それでも懲りずに2018年に「KING PRO」のリリースと合せて「TFZLUX」 という「新ブランド」を立ち上げようとします。その最初で、たぶん最後のモデルが「TEQUILA 1」です。いろいろ多角化も考えてたみたいですがその後のモデルが無いことからも同様に盛大な「企画倒れ」となり、「TEQUILA 1」だけがポジションの良くわからないイヤホンとして残った感じですね。
→ 過去記事: 「TFZ(TFZLUX) TEQUILA 1」のレビュー

TFZ TEQUILA 1TFZ NO.3
いっぽう、このように派生モデルを狙ったわけでは無く、後編で触れる「第3世代ドライバー」の「お披露目」的な感じでリリースしたのが「NO.3」です。まあネーミングの「何も考えてない」というか「そのまんま」感が潔いですね。しかし、「その①(前編)」でも記載した通り、好評を得た「SERIES 2」「T2 Galaxy」のサウンドバランスを踏まえつつ、よりドライバーの特性が活きるようにリスニング寄りのチューニングを施したサウンドは非常に評価が高く、チタンシェルと豪華ケーブルでグレードアップした「NO.3 Ti」はTFZでも最も評価の高いイヤホンのひとつになりました。個人的には、やっぱりこの会社、技術力はあるんだから、変にマーケティングに振らずに作ればさらに良い製品を作れるのにな、と思ったりしますね。
→ 過去記事: 「TFZ NO.3」のレビュー「TFZ NO.3 Ti」のレビュー「TFZ NO.3 Ti」追記編


■ 企画倒れから普及モデルに格下げの「QUEEN」と当初はCIEM化を目指した「SECRET GARDEN」

次も同様に「企画倒れ」シリーズですが(汗)、100ドルオーバーの世界でTFZが目指したのは「ユーザーごとの仕様に対応するモデル」と、「カスタムIEM」化への道のようです。まず最初に「KING PRO」の派生モデルとして「QUEEN」が2018年にリリースされます。海外では多少コンパクトな金属シェルで低音重視の暖色系サウンドのイヤホン、という位置づけですが、中国ではインピーダンスの異なる2モデルがリリースされており、さらにフェイスパネルの豊富なバリエーションからユーザーが「イージーオーダー」的にカスタムメイドできる製品でした。
→ 過去記事: 「TFZ QUEEN」のレビュー

TFZ QUEENTFZ QUEEN LTD
ただ「QUEEN」の製品としての評価は今ひとつだったため、やっぱり企画倒れに終わったようで、最新の「QUEEN LTD」では「その①(前編)」でも記載した通り「T2 Galaxy」のクラスを埋める普及モデルに「格下げ」になりました。
→ 過去記事: 「TFZ QUEEN LTD」のレビュー

さらにハイエンドモデルの位置づけで、さらに3Dプリンタによるシェル成型で耳型からユーザーごとに製作する「カスタムIEM」への対応を目指したのが「SECRET GARDEN」ラインです。現在販売されている「SECRET GARDEN (HD)」と「SECRET GARDEN 3」も、当初はCIEM対応も見据えた「ユニバーサルモデル」という位置づけだったようです(中国国内ではCIEMの受注も販売当初は行っていたようですね)。TFZがCIEMブランドのひとつになろうとしていた、と考えると、それまで自社製のダイナミックドライバーにこだわっていたTFZがいきなりマルチBAモデルを作った理由も想像できますね。しかし、「SECRET GARDEN 3」はKnowles製の3BA構成ですがTFZ的なチューニングが今ひとつの評価で、CIEMへの対応についてもその後フェードアウトしていったようです(現在はCIEM対応についての記述は無くなっています)。

TFZ SECRET GARDEN HDTFZ SECRET GARDEN 3
いっぽうハイエンドとしての取り組みは続いており、間違いなく同社の最上位モデルとなる「SECRET GARDEN 10」が中国国内ではリリースを開始しています。
「SECRET GARDEN 10」は2019年当時は10BA構成イヤホンとして発表されましたが、現在、中国で販売されている仕様を見ると、「8BA+2静電の10ドライバー構成」との記載になっています。静電ドライバーはお馴染みのSonion製を、BAはKnowlesとSonion製を組み合わせて採用し、価格も17,039RMBと、海外版は2,400ドルを超える可能性もあり、文字通り「桁違い」の製品のようです。
→ 過去記事: 「TFZ SECRET GARDEN」のレビュー「TFZ SECRET GARDEN 3」のレビュー 


■ なぜハイエンドでそれをやる?の「TxBEAR」

SECRET GARDEN 3」がまあまあの地雷(笑)で、「SERIES 7」も価格ほどの製品では無かった印象と、海外モデルでも4万円近い価格設定の2製品が不発だったこともあって、個人的にも「ちょっと手を出せない」のがマルチBAモデルの「TxBEAR」ラインです。「SECRET GARDEN 3」の後に、ハイグレードモデルのラインとして1BA構成の「TxBEAR 1」(149ドル)、3BA構成の「TxBEAR 3」(219ドル)、そして10BAモデルの「TxBEAR 10」(729ドル)がリリースされています。
TFZ TxBEAR 1TFZ TxBEAR 3TFZ TxBEAR 10
とはいえどの程度売れているのかは全く未知数で、海外サイトも含めレビュー等も皆無に近い状態です。香港のセラー「Penon Audio」からも何度か特別価格のクーポンなどが送られてきたりもしましたが、やはり「売れない」最大の理由は製品名称どおり「クマさん」のデザインに有るのではないかと思います。どうして主流より高級なモデルがテディベアなのか、かーなーりー理解に苦しみます。現在メーカーとしては「TxBEAR 3」と「TxBEAR 10」が現行モデル扱いのようですが、どなたか、チャレンジしてみますか?

TFZ TxBEAR MONICATFZ S2 Pro
このシリーズとは別に、「企画もの(ショップ限定モデル)」から主流モデルに昇格した「TxBEAR MONICA」がありますがデザイン的にもおそらく「アリ」だった唯一のモデルでしょう。同様のクマさんデザインを採用した低価格モデルの「S2 PRO」はよりチープさに磨きがかかり、フェイスカラーのバリエーションをテコ入れする必要があったぐらいですから、やはりこのデザインをハイエンド製品に採用するのはかなり無謀だったのではと思います。
→ 過去記事: 「TFZ TxBEAR MONICA」のレビュー / 「TFZ S2 PRO」のレビュー 


■ アーティストコラボから毎年限定モデルへ変化。「MY LOVE」ライン

そして「その②(中編)」で最後に取り上げる派生モデルが今回挙げた中でおそらく最も馴染みのある「MY LOVE」ラインです。最初のモデルのは2016年に「SERIES 1S」の限定スペシャルバージョンとして500個限定でリリースされた「SERIES 1S My Love」で、これは台湾のアーティストとのコラボモデルだったようです。音質傾向自体は「SERIES 1S」と同様で、カラーバリエーションと専用パッケージ、プラスチック製ケース、さらに購入時にTシャツが付属していたようです。この「SERIES 1S My Love」がHCKなどを通じてAliExpressで海外にも販売され幅広く広まったことで話題となります。その後デザインとカラーリングをマネした「KZ ZST」が出てきたり・・・
TFZ SERIES 1S My LoveTFZ MY LOVE II
「SERIES 1S My Love」の評判を受けて、2017年に「SERIES 4」をリリースする際に、このドライバーを元にフェイス部分を樹脂製にした「MY LOVE II」をリリースします。このあたりかた毎年新しい「My LOVE」を出す、という流れができてきます。また「SERIES 4」がフラット寄りの傾向だったのに対し、「MY LOVE II」はドンシャリ傾向でまとめる、といった「ベースモデルと逆方向でチューニングして価格も下げる」というアプローチも見受けられますね。「MY LOVE II」は同時期の「EXCLUSIVE 1/3/5」より好評だったようで長く販売が続けられ、現在も同社サイトのラインナップに掲載されています(どちらかというと調子に乗って作りすぎたようで、Taobaoではオマケに付けるなど在庫処分に苦慮してるだけかもしれませんが・・・)。
→ 過去記事: 「TFZ SERIES 4」「TFZ MY LOVE II」のレビュー

同様に2018年には3Dプリンタ成型のハイグレードモデル「SECRET GARDEN (HD)」より若干コンパクトサイズで成型した3Dプリンティングのシェルに9mmサイズの「第2.5世代」ドライバーを搭載した「MY LOVE III」をリリースします。
TFZ MY LOVE III「SECRET GARDEN」(199ドル)と同様の製造方法ということもあり、「MY LOVE III」は「KING PRO」と同じ169ドルの価格設定となってしまいましたが「デザインだけなら」売れそうかな、という印象をもちました。しかし、「SECRET GARDEN (HD)」が中高域メインのイヤホンだったため、「MY LOVE III」ではその逆の「ゴリゴリの低音重視」の仕様になっていて、やはり結構な不評に・・・。いや何で普通にTFZらしいドンシャリで作らないかな、とツッコまずにいられない製品でした(うーーん)。
→ 過去記事: 「TFZ MY LOVE III」のレビュー

そして「MY LOVE III」で少し懲りた?のかもしれないTFZは、次の製品でより手堅いアプローチを選択します。「2019年限定」モデルの「MY LOVE EDITION」(通称「MLE」)は、分りやすく言うと、「KING PRO」のドライバーを「MY LOVE II」のシェルに入れて「T2 Galaxy」と同じ価格にしたイヤホンです。
TFZ MY LOVE EDITIONあ、これ「売れるヤツだ」と買う前からわかる製品です。たぶん「MY LOVE」で攻めるのはもう止めたのかもしれませんね。初回の生産分は結構な勢いで売れたようで、追加生産分からはより「SERIES 2 ぽい」クリア仕様や「NO.3 Ti ぽい」クロームメッキ鏡面仕上げのタイプなども登場しました。個人的には「2019年限定」にせずに普通に通常モデルとして売れば良いのに、と思っていたりします。ちょうど日本では「QUEEN LTD」は出ないようなので、その辺のポジションが空いてますね。
→ 過去記事: 「TFZ MY LOVE EDITION」(MLE)のレビュー


というわけで、「その②(中編)」ではTFZの「派生モデル」をまとめて振り返ってみました。
次回はTFZの最大の特徴である「ダブルマグネティックサーキット(デュアル磁気回路)」ダイナミックドライバーの「各世代」をまとめながら、現行モデルを中心にまとめる予定です。
「その③(後編)」へつづきます。
【メーカー別まとめ】 「TFZ」イヤホン編 その③ (後編) / TFZの「世代」ごとの変遷と代表モデル、最新ラインナップを整理してみました。