ikko Zerda ITM03

こんにちは。今回はスマートフォンに対応する高音質オーディオアダプター「ikko Zerda ITM03」の紹介です。非常にコンパクトなアダプタながら、Cirrus Logic社の高音質DAC「CS43198」を搭載し、最大600Ωのインピーダンスにも対応する高出力アンプと搭載しています。iPhone用のLightningコネクタ仕様とAndroidをはじめとする幅広い端末で利用できるUSB Type-C(OTG)コネクタ仕様がリリースされており、スマートデバイスを手軽に高音質DAP(デジタルオーディオプレーヤー)として活用できるのはもちろん、有線デバイスのため、ワイヤレスのようにゲームや動画などで遅延を気にすること無く楽しめる点もメリットですね。
ikko Zerda ITM03 (Lightning)ikko Zerda ITM03 (USB Type-C)
中国のオーディオブランド「Ikko Audio」(アイコー・オーディオ)は「OH10」「OH1」などの高音質イヤホンをリリースしている新しいメーカーですが、オーディオデバイスにも力を入れているのが興味深いですね。
ikko Zerda ITM03」は重量12グラムの超軽量なオーディオアダプターで、3.5mmのステレオ出力に対応しています。DACで搭載されているCirrus Logic 「CS43198」は同社の代表的チップ「CS4398」の後継的な位置づけで、最近では「Astell&Kern SR15」や「iBasso DX160」、「HiBy R5」など有名ブランドのDAP製品で相次いで採用され、注目度が爆上がり中のチップですね。最大PCM 32bit/384kHz、DSD256(DoP)まで対応し、出力1000mV@32Ω、ヘッドフォンへの対応もインピーダンス16~600Ωの高出力と同時に、THD+N 0.0015%未満という優れたノイズ特性で反応の良いイヤホンでもクリアなサウンドを楽しめます。既に低価格DAPを超えるくらいのスペックを実現していますね。

ikko Zerda ITM03ikko Zerda ITM03ikko Zerda ITM03

また細かい部分ですが、コネクタ部分とアダプター本体をつなぐケーブル部分は「MonsterCable」社監修の銀メッキOCC線を採用するなどの「こだわり」も特徴的。さらにコネクタは3.5mmタイプのSPDIFの光出力にも対応し最大で32bit/192kHzのPCM出力が可能で、DDCとして外部DACやアンプへのデジタル接続も可能など他社製品とは異なる仕様も興味深いところです。

ikko Zerda ITM03」は「Ikko Audio」の日本での販売元である「IC-CONNECT」さんの直営ショップや各専門店で購入可能で、価格は 11,000円(直営ショップ価格)です。
Amazon.co.jp(IC-CONNECT直営ショップ): Ikko Audio USB DAC Zerda ITM03


■ 使いやすい軽量・コンパクト設計。ケーブル等の耐久性もあり安心感があるつくり

ikko Zerda ITM03」は同社のイヤホン製品同様に童話の絵本を思わせるカラフルなパッケージ。本体と保証書のみの非常にシンプルな内容となっています。
ikko Zerda ITM03ikko Zerda ITM03
さすがにステレオ変換ケーブルと比べると大きさはありますが、十分にコンパクトかつ軽量で、実際に屋外の持ち歩きで使っても支障は無い感じです。特にUSB-C(またはLightning)コネクタと本体部分をつなぐケーブル部分もしっかりとした弾力のある被膜で覆われており強度がある点は使っていて安心感があります。
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サイズ的には同様の製品の「iBasso DC02」より少し大きくなりますが、ケーブル部分の質感や比較的抑えられている使用中の発熱量(「iBasso DC02」は使用中かなり熱くなります)は「ikko Zerda ITM03」のほうが優れており、作りとしてはよりコストがかかっている印象もありますね。
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ikko Zerda ITM03」はスマートフォンにつなぐと通電はされますが(SPDIF接続に対応するためコネクタ奥が赤く光っているのが確認できる)、この状態ではオーディオアダプタとしては認識されず、イヤホン/ヘッドフォンやデジタルケーブルを接続した時点で有効になる仕様です。そのため、「ikko Zerda ITM03」をつないだままでも、イヤホンを抜き挿しすると都度再接続されます。


■ 高い駆動力と優れたノイズ特性。特徴をつかみやいニュートラルなサウンド

ikko Zerda ITM03ikko Zerda ITM03」の音質傾向は非常にフラットで癖のないサウンド。想像以上に駆動力があり、比較的鳴りにくいイヤホンやヘッドフォンでも十分に音量を取ることが可能で、しかもボリュームそあげても歪みを感じることなくニュートラルに出力を確保できます。
自然な印象のサウンドのため若干ウォームに感じる部分もありますが、解像感もこの手のオーディオアダプターとしては十分なレベルだと思いいます。少なくとも1万円台~程度の低価格DAPの各モデルよりは確実に高音質が得られている印象です。低価格DAPにありがちな多少メリハリをつよくした「元気な音」とは異なり、味付けの無いニュートラルな印象と言うこともあって、イヤホンの特徴を掴みやすい点は好印象です。

いっぽう反応の良いマルチBAのイヤホンでもホワイトノイズ等を感じることなくクリアなサウンドを楽しめます。これらのイヤホンでは「Apple Music」や「Amazon Music」などスマートフォンのボリュームコントロールをそのまま使うアプリでは、ゼロに近い音量でも十分な音量が取れてしまうので、必要に応じて音量の微調整ができるアプリなどを併用する方が良い場合もあります(アプリによっては音が変わる可能性もあるので必要に応じて)。
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逆に比較的鳴りにくいヘッドフォンでも結構普通に使えます。「AKG K275」や「beyerdynamic DT1990 PRO」といったヘッドフォンでも3分の2程度のボリュームで十分な音量が確保でき、かなりしっかり鳴っている印象でした。もちろん相応のグレードのDAPやアンプには及びませんが実用レベルのサウンドだと思います。

ikko Zerda ITM03ちなみに、「iBasso DC02」(約6,200円)もニュートラルなサウンドですが、「ikko Zerda ITM03」と比較すると多少メリハリがありより派手めに鳴っているのがわかります。そのため一聴した印象だと「iBasso DC02」のほうが楽しさがありますが、粒状感は多少犠牲になっており、「ikko Zerda ITM03」のほうが細かい音を取りやすいのがわかります。出力も「iBasso DC02」が930mV@32Ωなのに対し、「ikko Zerda ITM03」は1000mV@32Ωとスペック上は少し高い程度ですが聞いてみるとよりスムーズに音圧が伸びている印象で、アンプ部分がより余裕のある仕様になっているのが分ります。
ひと言でいうと、「ikko Zerda ITM03」は「オーディオ的な部分」で「iBasso DC02」と比べ価格差に見合った、あるいはそれ以上の違いがある、と実感できました。

また、「iBasso DC01」「DC02」ではHUAWEIやGalaxyなど一部のスマートフォンとの接続での相性問題がメーカーサイトにも既知の仕様として記載されており、私が使っているMate 20 ProでもUSB-Cの接続の向きによって多少不具合が起きることがあります。しかし「ikko Zerda ITM03」ではこのような現象は一切無く、Mate 20 Proでも快適に使用できました。


■ シンプルながら様々なアプリで実力を発揮

ikko Zerda ITM03」はスマートフォンに接続すると外部オーディオアダプタとして認識するため、全てのアプリでより高音質のサウンドを楽しめます。これは「Apple Music」や「Spotify」、「Amazon Music」などの音楽ストリーミングサービスはもちろん、「YouTube」「Netflix」などの動画サービスやゲームアプリなども含まれます。ゲームなどワイヤレスでの遅延が気になるアプリでは有線での利用は非常に有効で、臨場感のある高音質を楽しむ上でも「ikko Zerda ITM03」は最適でしょう。
ikko Zerda ITM03ikko Zerda ITM03
また「ikko Zerda ITM03」ではiPhone用のLightning仕様が選択できます。iPhoneユーザーにとって「ikko Zerda ITM03」が非常に有効な選択肢であることは間違いありません。iPhoneやiPadは「Amazon Music HD」などのハイレゾ対応のサービスでハイレゾDACを組み合わせることで「24bit/192kHz」のアプリ上の最大ビットレートに対応した再生が可能で、もちろん「ikko Zerda ITM03」もこれに対応します(手元の「ikko Zerda ITM03」はUSB Type-C仕様ですが、Lightning-カメラアダプタ経由で試したところiPhone/iPadで問題なく「24bit/192kHz」再生ができました)。これは24bit/48kHz、または24bit/96kHz再生となるAndroidスマートフォンより有利な点で、Lightning仕様が選べる「ikko Zerda ITM03」は最適な組み合わせのひとつといえるでしょう。
※(参考)Androidスマートフォンの場合、スマートフォン側の仕様により、HUAWEIなどの24bit/96kHzで再生可能な一部機種を除き、多くの機種で24bit/48kHzまでの再生となります(アプリ側での再生ビットレート。XPERIAなどDACへの出力は24bit/192kHzで固定出力に変換される機種もあります)。

さらに「ikko Zerda ITM03」の最大32bit/384kHz、DSD256対応のスペックを活用する上ではハイレゾ用の再生アプリは欠かせない存在です。定番の有償アプリ「HF Player」(Onkyo)や「NePlayer」(Radius)、「Neutron Music Player」などはiPhone用、Android用の両方がリリースされており、ハイレゾ音源、DSD音源を「ikko Zerda ITM03」から高音質で再生できます。

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最近では「HiBy Music」アプリが無償(広告無し)で利用でき(Android用、iOS用があります)、HiBy製のDAPと同様の機能を使用できます。これらのアプリを組み合わせることで「ikko Zerda ITM03」を接続したスマートフォンが文字通り高音質DAPになるわけですね。

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より詳細なチューニングを行いたい場合はAndroid用の「UAPP(USB Audio Player Pro)」が最適です。「HF Player」や「NePlayer」が搭載するアップサンプリング機能をより詳細に指定したり、音量調整の細分化、よりダイレクトなサウンドを実現するビットパーフェクトモードなど、かなり「玄人向け」ではあるものの、非常に細かい設定により「ikko Zerda ITM03」を利用できます。


■ USB-DACとしての利用も可能。光デジタル接続でDDCとしての活用も。

ikko Zerda ITM03」はスマートフォンだけでなく、当然PCやMacと接続してUSB-DAC/アンプとして使用することも可能です。Macについては「USB Audio Class 2.0」によりドライバー無しで利用でき、オーディオアダプタとして「Amazon Music HD」などで24bit/192kHzのハイレゾ再生が可能で、「Audirvana」などのハイレゾ再生ソフトにより最大32bit/384kHz、DSD256対応のフルスペックを活用できます。また国内販売元のIC-CONNECTさんの製品ページではWindows用のASIOドライバーも提供されており、Windows 10環境下でも「foobar 2000」「JRMC」「Audirvana」等のアプリケーションでASIOによる高音質での再生が可能です。
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また「ikko Zerda ITM03」は光デジタル出力(SPDIF)に対応しているため、スマートフォンおよびPC/MacでDAC/アンプとしてだけでなくDDC(デジタル/デジタル・コンバータ-)として、より高音質なDACやアンプにSPDIF接続で利用することも可能です。ただし、仕様上は最大32bit/192kHzまでの対応となっていますが、TosLink形式の光ケーブルの場合、ケーブルの品質や長さによって安定して転送できるレートには差があります。「ikko Zerda ITM03」は高ビットレートでの影響を受けやすいようで、据置きDACで192kHzまで使えるケーブルでも安定して使えたのは24bit/96kHzまででした。それでも非常にコンパクトなDDCとしてとても面白い機能だと思いました。


というわけで、「ikko Zerda ITM03」は少し地味な製品ではあるものの、非常に手堅く、安定した品質とサウンドを実現した製品だと感じました。とりあえず持っていれば利用範囲は幅広く、個人的にもお勧めできるとても便利なアイテムだと思いますよ(^^)。