BQEYZ Spring 2

こんにちは。今回は「BQEYZ Spring 2」です。中国のイヤホンブランド「BQEYZ」の最新モデルです。ドライバー構成は、自社開発の「9層ピエゾドライバー」(9 Layers Piezoelectric Driver)+13mm ダイナミックドライバー+1BA構成による個性的な3ドライバー構成のトリプルハイブリッドイヤホンです。今回も完成度は非常に高く、派手さはありませんが質の高いイヤホンを相次いでリリースしてきた「BQEYZ」らしい手堅さとともに、ピエゾらしい明瞭感とパワフルな表現力はよりアグレッシブな印象も感じます。
「BQEYZ」は2018年にオリジナル製品「K1」をリリースし、その後いわゆる「ZS6系イヤホン」のひとつとしてマニアから高い評価を得た「K2」「KC2」で中華イヤホンのマニアに知られるようになった中国のファクトリーブランドのひとつです。オリジナルイヤホンのブランドとしては新しい会社ですが、OEM/ODMの分野では長年にわたり実績を持っているようです。そのため初期の製品から独自性と完成度の高さを両立させており、次の「BQ3」以降も多少マイナーですが安定したクオリティのイヤホンをリリースし続けています。
そして昨年リリースされた「Spring 1」(7層ピエゾ+1DD+1BA)は、同様のトリプルハイブリッド構成で質の高いフラットなサウンドを実現しており、マニアの間で非常に評価の高いイヤホンのひとつとして、個人的な好みでもこの価格帯のトップ10に入る製品と思っています。

→ 過去記事:「BQEYZ Spring 1」 独自7層ピエゾ+1BA+DDのトリプルハイブリッドが奏で得る質の高いサウンド。完成度の高い高音質中華イヤホン【レビュー】

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今回の「BQEYZ Spring 2」では、ピエゾ(圧電)+ダイナミック+BAのトリプルハイブリッド構成を「Spring 1」から継承しつつ、ピエゾドライバーが7層から9層にアップグレードしています。この新しい「9層ピエゾドライバー」と「13mmサイズの大口径ダイナミックドライバー」を一体化したシャーシに収納し、さらに「バランスド・アーマチュア型(BA)ドライバー」を組み合わせることで、明瞭でキレのあるピエゾらしさとパワフルなサウンドを両立したチューニングで仕上げられています。

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また「BQEYZ Spring 2」でも「Spring 1」同様に3種類のドライバーを直列に配置し、独自のクロスオーバー処理によりハイブリッドイヤホンに多く見られる音域ごとのつながりの不自然さを解消するととともに、精度の高い解像感を実現しています。

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そしてハウジングはアルミニウム製で5軸CNC切削加工により人間工学に基づく快適な装着性を実現しているとのことです。カラーバリエーションは「ライトグリーン」と「ブラック」の2色が選択できます。
BQEYZ Spring 2」の価格はアマゾンがプライム扱い(国内倉庫より出荷)で 18,500円、AliExpress(中国から発送)が 169ドルとなっています。
AliExpress(BQEYZ Offical Store): BQEYZ Spring 2
Amazon.co.jp(kukaka / BQEYZ): BQEYZ Spring 2


■ 「Spring 1」を踏襲したビルドクオリティの高い金属シェル。ケーブルも大幅にグレードアップ。

BQEYZ Spring 2」のパッケージは、「Spring 1」と同サイズのボックスで「2」であることを強調したデザインになっています。背面の記述もシンプルになっていますね。化粧箱を外し、ブラックのボックスを開くと、イヤホン本体とケースに入った付属品が確認できます。
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パッケージ内容は、イヤホン本来、ケーブル、イヤーピース(シリコンタイプ2種類・各S/M/Lサイズ、ウレタンタイプ1ペア)、クリーニングブラシ、レザーケース、説明書・保証書です。
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アルミニウム削り出しのハウジングは今回も非常に高いビルドクオリティで高級感を感じます。シェルのサイズおよび形状は「Spring 1」と同一ですが、「BQEYZ Spring 2」はカラーリングが異なり、ライトグリーンまたはブラックでシャンパンゴールドの赤いラインが描かれたタイプになります。大口径の13mmダイナミックドライバーと一体化した9層ピエゾドライバー、さらにステム部分のBAドライバーが直列に並ぶ構造のためハウジング自体は比較的大きめですが、耳に馴染みやすいデザインとなっていて装着性は比較的良好です。遮音性は一般的ですが、イヤーピースを工夫することである程度高めることもできます。
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コネクタは0.78mm 2pin仕様で、僅かな窪みがあります。ただリケーブルの際は埋め込みタイプ(CIEM 2pin)以外にもいわゆる中華2pin仕様のケーブルでも問題なく使用できます。
付属ケーブルは今回は高純度単結晶銅線ケーブルにグレードアップしました。合計224本の線材を使用した4芯線で、適度な太さがありつつしなやかで取り回しの良さもあります。
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イヤーピースはメタルプレートに開口部の大きいタイプと小さいタイプの2種類のイヤーピースが各サイズはいっており、よりダイレクトなサウンドは開口部の大きい方、多少中低域の厚みを持たせたい場合は小さい方で使い分けます。他にもよりフィット感を向上させるためには、付属イヤーピースの他に定番のJVCの「スパイラルドット」「スパイラルドット++」、AZLA「SednaEarfit Light」「SednaEarfit XELASTEC」、Acoustune「AET07」など開口部が大きいタイプの製品の組み合わせがお勧めです。


■ 各音域のバランスが良く滑らかで、同時に力強さと鮮明さをも両立した高解像度サウンド。

BQEYZ Spring 2」の音質傾向は、「Spring 1」の明瞭さの中に穏やかさも感じたフラット傾向から一転し、非常に力強くキレのあるサウンドに。全体的には弱ドンシャリに感じるバランスですが、多くのハイブリッドイヤホンに見られる人工的なメリハリの強さとは全く異なるものです。「BQEYZ Spring 2」では各音域が非常にスムーズにつながりながらも、それぞれのドライバーの個性をしっかりと感じる、「自然な調和」と「力強い個性」という本来相反するものが両立しているような、絶妙かつ個性的なチューニングだと思います。また「BQEYZ Spring 2」ではインピーダンス 32Ω±15%、感度110±3dB/mW と、43Ω/108dBの「Spring 1」より鳴らしやすい仕様になっています。この辺からもフラット傾向の「Spring 1」と、多少ドンシャリに振った「BQEYZ Spring 2」のアプローチの違いが見えてきますね。

BQEYZ Spring 2もともと「BQEYZ」はハイブリッドにおけるクロスオーバーの処理に非常にこだわりのあるメーカーで、かつての「K2」「KC2」で音域の異なる2種類のダイナミックを専用の音導管でつなぐなど他社ではまず見られない構成に驚かされました。さらに「Spring 1」では普通派手な音になるのが当然と思われがちなピエゾドライバーを使ったハイブリッド構成を採用しつつ、驚くほどスムーズなサウンドで、クラシックやジャズなどの音源も非常に美しく再現できる完成度の高いイヤホンに仕上げました。
そして今回の「BQEYZ Spring 2」では、そのクロスオーバー処理の技術の高さを発揮しながらも、さらにドライバーの個性を引き出し、ロックやポップスなどに合うパワフルなサウンドを実現しています。「Spring 1」「Spring 2」の双方にはそれぞれの特徴と良さががあり、好みや聴く曲のジャンルに合せて使い分けるイメージかも知れませんね。

BQEYZ Spring 2」の高域はキレがあり、明るく鮮やかさを感じるサウンドです。9層ピエゾドライバーの鮮烈な明瞭感と解像度が高く精緻な描写が印象的です。「Spring 1」の高域も非常に鮮明な印象ながらフラットにまとまった印象でしたが、「BQEYZ Spring 2」ではスムーズなつながりの良さは維持しつつ、さらに強い主張があり、曲によっては鋭さもアップしてるのが分ります。非常に透明感が高く歪みの無い見通しの良い高音で、スッキリと伸びますので、刺さる音源は適度な刺激もあります。この辺が少しキツイと感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、個人的には存在感とともに質の良さも実感できる高域だと思います。

BQEYZ Spring 2中音域は「BQEYZ Spring 2」と「Spring 1」の違いを最も感じる音域で、ドンシャリ寄りのバランスから僅かに凹むものの前方でしっかりとした主張があります。やや中高域に寄せたチューニングで、高域同様に解像度が高く明瞭に鳴ります。「Spring 1」ではミッドレンジのBAドライバーを中心にピエゾとダイナミックのクロスオーバーをつながり重視でコントロールしていた印象でしたが、「BQEYZ Spring 2」では中高域部分を中心に非常にスピード感があり、高い分離性で鮮烈に描写します。ボーカルは前方で定位し、鮮やかで質感の良さも感じます。音場は一般的からやや広めの印象で、見通しの良さから演奏の1音1音の捉えやすさがあります。
非常に明瞭な音でクリアな音ですが、ハイブリッドにありがちな人工的な印象は無く非常にスムーズなつながりの良さと自然さも同時に維持されています。ただし、やや腰高さのある音のため、男性ボーカルの低域の響きは少なくやや細く感じるかも知れません。

低域は余裕のある13mmダイナミックドライバーが奏でる滑らかさと、他の音域同様のスピード感を両立した音です。ミッドベースは締まりがあり膨らむこと無く鳴り、中高域との分離も良好です。そのためパワフルな低域ながら過度に前に出ることは無く、バランス良く全体を下支えしている印象です。また重低音は深く沈み込みます。よりスピード感があり、低域の音数の多いハードロックやEDMなどでは「Spring 1」より表現力が高く感じるのではと思います。

BQEYZ Spring 2前述の通り、「BQEYZ Spring 2」は32Ω/110dBと仕様だけ見るとそれほど鳴らしにくくはなく、実際音量も「Spring 1」より取りやすい印象ですが、9層のピエゾドライバー、13mmのダイナミックドライバーという仕様からも再生環境には十分な駆動力が求められます。スマートフォンや出力の小さいDAPでは単に派手なだけの低価格ハイブリッドのような印象になってしまう場合があります。もし「BQEYZ Spring 2」のサウンドが物足りない場合はポータブルアンプの併用や据置きの環境で鳴らしてみると大きく印象が変化するかもしれませんね。
また「BQEYZ Spring 2」は0.78mm 2pinコネクタを採用しておりリケーブルが可能ですが、多くの場合付属ケーブルで十分に満足の行くサウンドが実感できると思います。ただ駆動力を稼ぐという意味ではバランス接続は有効な手段のひとつで、AliExpressで購入する場合のみケーブルの種類を2.5mm/4極または4.4mm/5極のバランスケーブルを選択することが可能です。またそれ以外で同様の効果を得たい場合は「HiF4881」 6N 8芯単結晶銅線ケーブルなども良い選択肢でしょう。さらに音場が広い見通しの良いサウンドに変化させる場合は「NICEHCK C4-2」や「NICEHCK C4-3」も興味深い選択肢です。


BQEYZ Spring 2BQEYZ Spring 2」はロック、ポップス、アニソンなどのボーカル曲で相性の良さがあり、さらにやや腰高なサウンドではあるもののEDMなども楽しく聴ける印象です。いっぽうでクラシックやジャズなどは「Spring 1」のフラットで音場感のあるサウンドのほうが向いていると感じました。
2つのイヤホンはグレードの違いと言うより異なるキャラクターのサウンドチューニングが行われた製品、という見方のほうが適切でしょう。オールラウンダーの「Spring 1」と、よりアグレッシブで力強いサウンドを楽しめる「BQEYZ Spring 2」。ただし、どちらも多層ピエゾドライバーによる高解像度と「BQEYZ」にしかできないスムーズなつながりをもつハイブリッドサウンドは他のイヤホンでは得られないものです。それぞれ150ドル以下、200ドル以下のイヤホンのなかでも確実にトップクラスに位置する製品だと思います。まだまだマイナーなブランドではありますが、マニアであればぜひとも挑戦して欲しいお勧めのイヤホンですよ(^^)。