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イヤホン・ポータブルオーディオなどの趣味的レビュー。

「NICEHCK M6」 4BA+2DD構成&フィルター交換可能でバランスの良いサウンドが魅力的。アンダー1.5万円のHCK 高音質イヤホン【レビュー】

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NICEHCK M6

こんにちは。今回は「NICEHCK M6」、中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」オリジナルのイヤホンです。アマゾンでも1.5万円以下の価格設定で、4BA+2DDの片側6ドライバー構成の金属製ハウジングで、交換式ノズルフィルターによる調整などスペック面、ギミック面でも特徴的な製品です。音質面もハイブリッドらしい派手めのサウンドながら分離性の高いスッキリしたバランスの良いサウンドを実現しています。

HCKオリジナルブランドのイヤホンやケーブルのシリーズもかなり種類が多くなってきましたが、オリジナルイヤホンについても滅多にハズレがでない、むしろかなり良いチョイスをしているなという印象があります。また特にマニアを中心として日本でのセラーとしての評判の良さも特筆すべき部分で、サポート面も含め、かなり日本のユーザーを意識した対応の良さは「中華イヤホンだけどHCKで買えばとりあえずは安心」という声も良く聞かれるなど、積み上げてきた実績の大きさを感じますね。
NICEHCK M6NICEHCK M6
さて、今回の「NICEHCK M6」は上記のように片側に4BA+2DDの6ドライバーを搭載するハイブリッド構成のイヤホンです。本体はCNC加工されたアルミ合金の金属製ハウジングで、4基のバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーと、一体型シャーシに収納された複合型デュアル・ダイナミック型ドライバーで構成されます。
NICEHCK M6NICEHCK M6
さらに、ステムノズル部分は交換式のフィルターとなっていて、「本体色」(標準)、「ゴールド」(低域強調)、「シルバー」(高域強調)の3種類を選択することが可能です。
このような「NICEHCK M6」のシェル形状およびドライバー構成、仕様、さらに音質傾向などは以前レビューした「BGVP DMG」と非常に酷似しており、もしOEMでないとしても同じ受託生産工場等によるEMSによって製造された製品と考えられます。ただし「NICEHCK M6」については「BGVP DMG」との外見上の相違点としてフェイスプレート側のデザインが異なっていると同時に小さいベント(空気孔)があり、音質的なチューニングも若干の変更が加えられていそうです。
NICEHCK M6」のカラーは「グレー」および「グリーン」で、「BGVP DMG」(黒/青/赤)とは被らないような設定になっていますので、すでにDMGを持っている方でも大丈夫ですね(笑)。

NICEHCK M6」の価格はアマゾンのNICEHCKストアにて 14,450円 にてプライム扱いにて販売しています。アマゾンでは国内在庫出荷となりますのですぐに商品が届きますし、万が一の場合もアマゾン経由の保証が加わるので安心感がありますね。
Amazon.co.jp(NICEHCK): NICEHCK M6

また中国AliExpressのHCKでは 125ドル となっています。購入方法はこちらを参照ください。ただしセール時以外は為替を考慮するとアマゾンで購入する場合とほぼ変わらない価格設定になっています。
AliExpress(NiceHCK Audio Store):NICEHCK M6


■より多くの方に勧められるビルドクオリティの高さ。使い勝手も良好。

NICEHCK M6」は毎度おなじみのHCKのパッケージで届きました。HCKオリジナルのイヤホンケースの中に、今回もびっしりと詰まっています。
NICEHCK M6NICEHCK M6
パッケージ内容は、本体、交換用フィルター、MMCX仕様のケーブル、シリコンイヤーピース(黒とグレーの2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンイヤーピース(1セット)、イヤホンケース、保証書。
NICEHCK M6NICEHCK M6
NICEHCK M6」はアルミ合金製のハウジングはビルドクオリティも高くしっかりとした作りとなっています。
NICEHCK M6NICEHCK M6
ステム部分の3種類の交換式ノズルフィルターは、メッシュ部分の裏面に網状のフィルターが貼り付けられており(「本体色」と「ゴールド」フィルターのみ。「シルバー」フィルターはメッシュパーツのみ)このフィルターにより中高域のサウンドバランスを調整しています。
NICEHCK M6NICEHCK M6
4BA+2DDというドライバー数ながらシェル形状は比較的コンパクトで装着性も良好です。MMCXコネクタ部分は右側/左側で内側が色分けされており、細かいところまでしっかり作り込まれているのがわかります。フィルターのずるを取り外すと4BAを固定している樹脂製の部品が見えます。「BGVP DMG」はこの部品も左右で色分けされていましたが、さすがに「NICEHCK M6」では白色の部品に統一されています。
NICEHCK M6NICEHCK M6
その他、「BGVP DMG」との外見上の違いはフェイスプレート部分のデザイン的な意匠が異なるのと、「NICEHCK M6」には小さなベント(空気孔)が存在する点ですね。ステム側および側面のベント位置などは全く同じです。また3種類のフィルターノズルについても裏面のフィルターの種類も含め全く同じでした。
NICEHCK M6NICEHCK M6
付属ケーブルは銀メッキ高純度銅線の撚り線ケーブルで、「BGVP DMG」や「BGVP DS1」の「マイクなしモデル」に付属するシルバーのケーブルからコネクタ/プラグなどの部品と被膜のカラーを変更したもののようです。


■質の高い低音域と分離感および解像度の高い中高域を実現した高音質サウンド

NICEHCK M6NICEHCK M6」の音質傾向はバランスの良い弱ドンシャリ傾向で、「BGVP DMG」と酷似した非常に完成度の高いサウンドです(周波数特性も非常に酷似しています)。両者のサウンド的な相違点は非常に少ないためどちらの製品を選んでも十分に満足のいくクオリティだと思いますが、「NICEHCK M6」のほうが若干中高域の抜けが良くなっている印象で、ボーカルなどの印象が僅かに異なる感じがします。ハイブリッドらしい派手さもある寒色系の音ですが、情報量が多く存在感のある低域と解像度の高い立体的な音場感があり、全体的に分離性のよいスッキリとしたサウンドが楽しめます。特に低音域の解像度の高さとキレの良さ、重低音の質感の良さはその存在感とともに特筆すべき部分でしょう。

高域の伸びは非常に良く解像度の高い明瞭な印象で、キラキラ感をしっかり感じつつも「LZ-A5」などと比べても刺さりやシャリ付きのない聴きやすいサウンドです。中音域はマルチドライバーのハイブリッドらしく近めに定位し結構強めの感じを受ける音ですが、ボーカルの表現力は非常に高く、1音1音をしっかり表現してくれる印象です。また低域はかなり量感のある音ですが、非常に解像度と締まりがあり、沈み込みもある音で、「NICEHCK M6」のクオリティの高さをもっとも実感できる部分です。

NICEHCK M63種類のノズルフィルターについては、「NICEHCK M6」も「BGVP DMG」同様に、「高域強調タイプ」(シルバー)のノズルが、実はメッシュ部分の裏面にフィルター材が貼られていないタイプとなり、イヤホン本体のサウンドは結構しっかりと出る高域に加え、全体的にハイブリッドらしい人工的でメリハリの強い音のようです。
それを「標準タイプ」(本体色)および「低域強調タイプ」(ゴールド)のノズルフィルターでは全体的な分離感の良さを維持しながら適度にバランスを調整しより自然なサウンドにコントロールしているようです。
ここで「NICEHCK M6」では一体型シャーシの複合ダイナミックドライバー部分にベント(空気孔)を追加することで中低域の抜けを良くし、よりスッキリとした音場感を実現しています。そのため、曲によってはゴールドのフィルターを装着した状態でも低域が少し軽めの印象を受ける場合もあります。

NICEHCK M6ただ、「NICEHCK M6」は本体のポテンシャルが非常に高いイヤホンですので、リケーブルによって特性をより引き出すことで印象に変化を加えることもできます。付属の銀メッキ線ケーブルも十分に品質の高いケーブルですのでそのまま使用しても全く問題ないと思いますが、特にキャラクターのはっきりとしたケーブルでバランス接続を行うと、3種類のフィルターでの変化がより強調されるのも面白いですね。例えばHCKの「NICEHCK TYB1」(8芯ミックス線)のバランス接続などはかなり音が濃くなる印象があります。また「NICEHCK CT1」や少し高価格になりますが「NICEHCK DJT1」といった高純度銅線ケーブルは「NICEHCK M6」の特徴的な低音域や立体的な音場感をより引き立たせてくれると思います。


というわけで、「NICEHCK M6」はベースとなったと考えられる「BGVP DMG」同様、1万円台のハイブリッドとしてはより多くの方にお勧めできるイヤホンに仕上がっていると思います。また3種類のノズルフィルターについては、過去記事「BGVP DMG」のレビューにてより詳しく掘り下げていますので併せてご覧いただければ幸いです。
「BGVP DMG」のレビュー

これらのフィルターによる音の変化は再生環境によっても多少変化しますので、お使いの環境で「NICEHCK M6」を試していただき、ノズルフィルターまたはリケーブルなどで好みのよりサウンドにアレンジいただくのも楽しいのではと思います。


「HiFiHear HD6」 6BA構成で美しいクリアデザインとボーカル映えする中低域が魅力的な「HiFiHearオリジナル」高音質イヤホン【レビュー】

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HiFiHear HD6

こんにちは。中華イヤホンを語る上では外せない年に一度のセール「11.11」も終了し、11月も下旬に差し掛かってきました。今回私はあまりオーダーしないつもりだったのですが(なんせ普段からいろいろ買いすぎてますので^^;)、各セラーが矢継ぎ早に新製品をこのセールにぶつけてきたこともあり、気付けばAliExpressで結構イロイロとポチってしまいました。というわけで今年も年末に向け到着が楽しみな冬の訪れとなりそうです。

さて、今回はAmazonの「HiFiHear Audio」ストアで販売されるオリジナルモデル「HiFiHear HD6」の紹介です。こちらは11.11セール終了後のタイミングでリリースされたばかりの最新モデルで、クリアデザインが美しい6BA構成のイヤホンとなります。
アマゾンでマーケットプレイスを展開する中国のイヤホンセラー「HiFiHear Audio」では同ブランドのオリジナルイヤホンケーブルのほか、イヤホンでも「HiFiHear F30」という同価格帯でも比較的評価の高い2BA+1DDの低価格ハイブリッドモデルをリリースしており、私のブログでも紹介をしています。
ちなみに、今回の「HiFiHear HD6」もサイトの写真だと一瞬「BGVP DM6」のようにも見えますが(名称も少し似てますし)、DM6が実際は5BAなのに対し、「HiFiHear HD6」は「6BA構成」で、シェルデザインも異なっており、あくまで「HiFiHear」ブランド独自のオリジナル製品となっています(念のため)。
HiFiHear HD6HiFiHear HD6
HiFiHear HD6」は、Knowles製 ×4、Bellsing製 ×2 のバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーで構成されているとのことで、美しいクリアハウジングと金属製のステムが印象的なシェルデザインとなっています。カラーは「パープル」「ブルー」「レッド」の3色が選択できます。
HiFiHear HD6HiFiHear HD6

HiFiHear HD6」の購入はAmazonの「HiFiHear Audio」ストアにて。現在は3色ともプライム扱いでアマゾン国内倉庫より発送されます。価格は 26,500円 となっています。6BAイヤホンということで中華イヤホンとしては比較的高価格の製品ですが、万が一の際もアマゾン経由でのサポートが受けられるので安心感がありますね。
Amazon.co.jp(HiFiHear Audio): HiFiHear HD6

※現在HiFiHearでは購入時に2,000円引きとなるクーポンを発行しており、24,500円 での購入が可能です。
またHiFiHearのTwitterアカウント(@Qianqian_HRcase)では頻繁に値引き情報などもツイートされますのでこまめにチェックされることをお勧めします。


■美しく装着性も良好なクリアシェル。Knowles & Bellsing製BAによる構成

HiFiHear HD6」のパッケージは、HiFiHearのいつものコンパクトなボックスではなく、Yinyoo Audioの箱で届きました。今回の「HiFiHear HD6」は中国AliExpressの「Easy Earphones」でも販売されているのですが、いつもケーブルなどではHiFiHearブランドの製品をAliExpressで購入した際にYinyooロゴの袋に入って届くことはありましたが、今回はこれまで比較的低価格の製品中心だった「HiFiHear」ブランドとしてはかなり高価格なこともあり、とりあえずはアマゾンでも共通になっているようですね。(今後は別のパッケージに入って届く可能性もあると思います)
HiFiHear HD6HiFiHear HD6
パッケージ内容は、Earphone本体、MMCXケーブル、イヤーピースは白色タイプ(S/M/L)と2種類のグレータイプ(どちらもS/M/Lサイズ)、ケースなど。
HiFiHear HD6HiFiHear HD6
HiFiHear HD6」の本体は写真通り非常に美しいクリアシェルでビルドクオリティも高い仕上がりとなっています。6BA構成と言うことでハウジングは多少大きめで、金属製のステムは少し太いタイプとなっていますが、形状が工夫されており、装着性は良好です。
HiFiHear HD6HiFiHear HD6
シェルの大きさおよび形状は「Yinyoo」ブランドの「Yinyoo HQ5」「HQ8」と非常によく似ていますが実際に比較してみるとステムの角度やシェル形状などが微妙に異なっているのが確認できます。いっぽう同じ6BA構成の「Yinyoo HQ6」と比較するとひとまわり以上コンパクトに仕上がっているのがわかります。「Yinyoo HQ6」のシェルは大きすぎて耳の小さい方には入らない、という意見もときどき伺いましたが、「HiFiHear HD6」についてはその心配は無いのではと思います。
HiFiHear HD6HiFiHear HD6

なお、「HiFiHear HD6」の搭載BAドライバーですが、製品を目視した限りでは、Bellsing 30017(2BA)×1+Knowles 31323(2BA)×2 の構成です。ただし2個の Knowles 31323 についてはフィルターにより、それぞれ中音域メインのユニット、低音域メインのユニット、といったチューニングになっているとのこと。そのため、「HiFiHear HD6」の実際の構成は 高域×2、中域×2、低域×2 の 3 Way(したがって音導管も3本)となっています。
なお、実はこの構成は以前レビューした「Yinyoo HQ6」と同じBAドライバーの組み合わせとなります。とはいえ、シェル形状の違いからドライバーの固定位置が異なり音導管の長さも違いますし、音導管に取付けられているフィルターなどにも差異がありそうですのでサウンドアレンジには多少変化が加えられているのでは、と思われます。
HiFiHear HD6HiFiHear HD6

そして、「HiFiHear HD6」に付属するMMCXケーブルはコネクタやプラグ部分は「HiFiHear」ブランドで販売されているケーブルと同様な部品が使用されていますが、線材は先日レビューした「Yinyoo V2」の付属ケーブルと同じタイプの銀メッキ線を採用しているようです。こちらのケーブルは「Yinyoo HQ6」などに付属する8芯銀メッキ線より細くスッキリとまとめられていますが、情報量についてはむしろ高く、リケーブル無しでもある程度は楽しめる品質に向上しています。
HiFiHear HD6HiFiHear HD6
HiFiHear HD6」には3種類のイヤーピースが各サイズ付属していますので、付属品でもまず困ることはないと思いますが、他のイヤーピースを組み合わせる場合は、AZLA「SednaEarfit」やAcoustune「AET07」など開口部が大きいタイプのイヤーピースとの組み合わせが良いのではと思います。


■質の高い低域と明瞭で解像度の高い中高域が魅力的な中低域寄りのサウンド。ボーカル曲に最適。

HiFiHear HD6」の全体的な音質傾向は少しフラット寄りで中低域メインのサウンドバランスです。開封直後は少し中高域に違和感があったのですが50時間程度のエージングで改善されました(一般的にBAドライバーはエージングの効果はないと言われますが、別の理由からか中華系のマルチBAイヤホンでは多少の「慣し」を行うことで結構印象が変化することが比較的多くあります)。
HiFiHear HD6中低域寄りの「HiFiHear HD6」のなかでも特徴的かつ良質な印象を感じたのが低域で、十分に量感を確保しつつ、BA特有の籠りのようなものはほとんど感じない解像度の高い明瞭なサウンドです。また中高域との分離感も良く、低域によって籠もるような印象もありません。
中音域についても解像度はとても高く、情報量の多いサウンドが楽しめます。特にロック、ポップス、アニソンなどのボーカル曲との相性の良さを感じます。曲によっては僅かに凹みを感じますが、音場は一般的で全体的に自然な距離感で定位します。いっぽうで、低域の響きはかなり抑えられているためクラシックなど低域の広がりや音場感を楽しむ曲では物足りなさを感じるかもしれません。
HiFiHear HD6」は構成としては2BAユニット×2のKnowles社製の「HODTEC-31323」が中低域を含むメインドライバーとして機能し、高域~超高域のツイーターとして「Bellsing 30017」の2BAユニットが機能するという組み合わせですが、合計4BAをしめるKnowles製の中低域ユニットが解像度が高く質の良い中低域を実現しているのだと感じます。
HiFiHear HD6高域は多少再生環境に依存するものの、駆動力の確保できるS/Nの高いプレーヤーでは比較的伸びも良くBAらしい硬質でキラキラ感のあるサウンドが楽しめます。スッキリ系というよりは少し派手めの印象もうけますが、これは(Bellsingの)ドライバーの特徴なのかもしれませんね。全体としては高域にも適度な煌びやかさを持ちつつ、ボーカルなどの中低域を楽しめるイヤホンに仕上がっていると思います。
なお、最近では私のブログでもドライバー数の多いイヤホンを紹介する機会が増えてきましたが、6BAの「HiFiHear HD6」もいわゆる「多ドラ」イヤホンのひとつですので、プレーヤー側の駆動力など再生環境には比較的分りやすく影響されます。全体的に少し平坦さを感じるようでしたらより駆動力のあるDAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポータブルアンプに替えてみたり、より情報量の多いケーブルにリケーブルすることで印象が結構大きく変化します。

HiFiHear HD6HiFiHear HD6」付属の銀メッキ線ケーブルも比較的情報量が多く品質の高いケーブルのようですので、リケーブル効果を得たい場合にはある程度グレードの高いケーブルを選択したいところです。例えばHiFiHearブランドのケーブルの場合、「HiF4747 16芯 銀メッキ線ケーブル」や「HiF4780 16芯 高純度無酸素銅線(OFC)ケーブル」へのリケーブルがおすすめです。16芯 銀メッキ線の「HiF4747」は「HiFiHear HD6」の音質傾向を維持しつつ、全体的に分離性および情報量が格段に向上することでより濃度が高いサウンドを実感できます。また16芯 高純度銅線の「HiF4780」では中低域の厚みが増すことでより立体的な音場感を実感できるサウンドになります。他にもNOBNAGA Lab.の「友禅」「更紗」などのメリハリが強くなるタイプの高純度銅線ケーブルも結構おすすめです。


HiFiHear HD6というわけで、「HiFiHear HD6」は2万円台の価格設定ながら聴きやすくバランスの取れたサウンドセッティングのマルチBAイヤホンとして仕上がっていました。ちなみに、同様のドライバー構成をもつ「Yinyoo HQ6」との比較ですが、イヤーピースおよびケーブルを同じものに交換して比較したところ、やはり両者のサウンドの差は非常に少なく低音域の印象に若干の違いを感じた程度でした(装着感などでも変わるレベル)。
そのため両者はほぼ好みで選ぶ、という感じになるかと思いますが、「HiFiHear HD6」のほうがバリエーションの選択肢が多く、ハウジングがコンパクトになり装着感も向上していますし付属のケーブルも使い勝手および音質面でより改善されたものが付属している点はポイントとなりますね。
個人的にはデザインも美しく、聴きやすく使い勝手の良いサウンドであるのに加えて、「HQ6」と比べて装着性が格段に良いこともあり、遮音性の点でも非常に優れているのは有り難いところです。おそらく普段使いはもちろん、出張での移動などの場面でも利用機会は増えそうですね。



「TIN Audio T2 Pro」 あのクリアで心地良い中高域がさらに向上。グレードアップした「個性派」2DD中華イヤホン【購入レビュー】

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TIN Audio T2 Pro

こんにちは。今回は「TIN Audio T2 Pro」という2DDイヤホンの紹介です。「TIN Audio」の人気2DDモデル「TIN Audio T2」のアップグレードモデルになります。まあ、購入したのは結構前なので「いつになったらレビューするんだ」シリーズ、あるいは「書きかけ放置しすぎ」シリーズ(笑)、のネタですね。(←おい

TIN Audio T2 Pro」は、既存モデル「TIN Audio T2」のグレードアップ版ですが、見た目などの相違点は非常に少なく、価格も少し高くなっています。ただ音質的には「良いところを伸ばす」方向のアップグレードで、「個性的なサウンドである」という前提は変わらないものの、特に中高域寄りの音が好みの方には「かなりお勧め」のイヤホンだと思います。
また、「T2」を持っていて気に入られている方には無理して買い換える必要はないかも、というレベルの変化だとは思うのですが、私自身もそうでしたが、他には珍しい音のイヤホンなので、まあ改めて買い足しても損はないかな、という感じはします(^^;)。

TIN Audio T2 Proところで、ちょっと以前の話になりますが、もともとの「TIN Audio T2」というイヤホンは私もけっこう早い時期から購入していて、当時、最初にブログで紹介した時ははほぼ反応無し、という超マイナーなイヤホンでした(確かAliExpressのHCKで出てすぐ、2人目くらいに購入したのですが、レビュー後もしばらくはHCKで私以降ほぼ誰も買ってない状態が続いていたような)。その後Amazonで販売時に改めてレビューを掲載したりしましたが(その当時Kinboofiから「いいイヤホンだと思うけど、どうやったら人気が出るかなぁ」とDMで訊かれたりしたような^^;)、いつのまにか知らないうちに評価がうなぎ登りに上がっていて、すっかりマニアの間では有名なイヤホンの仲間入りをしていました。
中高域寄りでちょっと「2DDらしくない」サウンドバランスや装着性については好き嫌いがはっきり分かれますが、完成度は高く、その個性的な音も含め個人的には当初からかなり好きなイヤホンでしたので、このように多くの方に認知されるようになったのはとても嬉しい限りです。
→ 過去記事: 「TIN Audio T2」のレビュー

閑話休題、今回の「TIN Audio T2 Pro」は既存モデルの「Tin Audio T2」と同様に金属製ハウジングに10mmと6mmの2種類のダイナミックドライバーが直列に配置された2DDレイアウトを踏襲しています。
TIN Audio T2 ProTIN Audio T2 Pro
付属の5N OFCケーブルは従来の「T2」でも前期モデルと後期モデルでMMCXコネクタ部分が白色のバージョンと透明のバージョンがありますが、「TIN Audio T2 Pro」ではさらに線材も多少変更となりグレードアップしているとの情報です。
いっぽう価格は今回のバージョンアップで従来の「T2」が 49.90ドル だったのに対し、「TIN Audio T2 Pro」では 59.90ドル (どちらもAliExpressでの表示価格)にアップしています。またAmazonでも「TIN Audio T2 Pro」は 7,000円 の価格設定で「T2」の実売価格より高めに設定されています。

購入はアマゾンではKinboofiやL.SオーディオがPro版をプライム扱いで販売しています。アマゾンの場合若干割高ですがアマゾン経由での保証が得られる点はメリットですね。
Amazon.co.jp(Kinboofi): TIN Audio T2 Pro
Amazon.co.jp(L.Sオーディオ): TIN Audio T2 Pro

また、AliExpressでは「Easy Earphones」などで販売しています。AliExpressでの購入方法および割引適用方法についてはこちらをご覧ください。Easy Earphones(@hulang9078)では最近のツイートによると購入時の値引きにより 46ドル で購入できるようです。
AliExpress(Easy Earphones): TIN Audio T2 Pro


■見た目もスペックも「T2」そっくり? 相違点は・・・

私が購入した「TIN Audio T2 Pro」は10月下旬頃には手元に届いていました。パッケージなどは「T2」と同様ですが外箱に「T2 PRO」と記載されているため区別が出来ますね。
TIN Audio T2 ProTIN Audio T2 Pro
本体に装着済みのウレタン製イヤーピースはライトブルーのタイプになっています。また付属のケーブルも「T2」の少しクリーム色っぽいものからシルバーの線材にかわっています。
TIN Audio T2 ProTIN Audio T2 Pro
パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは本体装着済みのウレタン以外にシリコンタイプが3種類(それぞれS/M/Lサイズ)、説明書。今回はシリコンイヤーピースのバリエーションが増えましたね。
TIN Audio T2 Pro」の金属製ハウジングの外観は既存の「T2」と全く同じで非常にシンプルなデザインながらビルドクオリティの高さを実感します。「TIN Audio T2 Pro」と「T2」を見分けるための相違点はステムノズル部分のメッシュパーツで、従来の「T2」は本体色とおなじメタリックなメッシュパーツだったのに対し、Proでは白く見える非常に目の細かいパーツに変わっています。
TIN Audio T2 ProTIN Audio T2 Pro
外観が全く同じため、装着性も変わりません。今回も標準で装着されているのはブルーのウレタン製イヤーピースで、耳にフィットさせるようにしっかり固定させることが重要になります。ただ、個人的はあまりこの組み合わせは好みではないため、別途シリコン製のイヤーピースに交換しています。「TIN Audio T2 Pro」ではシリコン製イヤーピースについても多くのバリエーションが付属しているため、その中から選んでも問題は無いと思います。私もそうですが耳穴が小さく、付属のイヤーピースでうまく装着できない場合はAcoustune「AET06」のようなダブルフランジのものを使用するのも良いと思います。またウレタンタイプでも「コンプライ」などより高音質なものに交換することでさらに中低域の印象を向上させることができます。
TIN Audio T2 ProTIN Audio T2 Pro
ただシリコンイヤーピースを使用する場合、とにかく耳にフィットさせるようにしっかりと装着することが必要です。もともと中高域メインのイヤホンですので、きちんと装着できていないと中低域がスカスカの印象になってしまいます。
TIN Audio T2 Pro」はケーブルを下に垂らす通常の装着方法でも耳掛け式(シュア掛け)でも使用できますが、どちらの場合でもいまひとつMMCXコネクタのある突起部分が邪魔に感じることがあります。その場合、本体を左右逆にケーブルに取付けることで通常のイヤホンと同様の装着性に改善されます。特に通常のシリコンイヤーピースで装着する場合には左右逆に繋いで使った方がよいかもしれませんね。


■個性的な中高域寄りのサウンドをしっかり踏襲しつつ、高域をグレードアップ

TIN Audio T2 ProTIN Audio T2 Pro」の音質傾向は上記のようにまずイヤーピースを選びしっかり耳に装着していることが「前提」となりますが、「T2」のアップグレード版というコンセプトに違わず、「T2」の特徴的かつ良い部分をさらに伸ばした、という印象です。新しくなったケーブルによる変化は僅かですが、「TIN Audio T2 Pro」本体側、特に高域についてはかなり顕著に変わっている印象です。全体的に低域控えめでフラットに近い中高域寄りのチューニングですが、いっぽうで「2DD構成らしくない」、まるでマルチBAのイヤホンを聴いているような明瞭で透明感のある中音域と非常に個性的な響きを持つ高音域が特徴的です。
全体的に金属ハウジングらしい硬質なサウンドで高域も明るくキラキラ感も比較的ある音ですが、刺さりは少なく比較的聴きやすいバランスにまとめられています。もともとの「T2」は全般的には精緻さよりリスニング的に高音の響きの良さを感じるような「演出が上手い音」という印象だったのですが、今回の「TIN Audio T2 Pro」では、高域のバランスは大きく変えずに解像度や伸びが大幅に向上した印象があります。そのためよりスッキリした明瞭感と煌めきを感じるサウンドに進化した印象になりました。
そして中音域は、従来の「T2」でも2DD構成らしくない存在感と解像度の高さで、この製品のもっとも特徴的な要素だったのですが、今回の「TIN Audio T2 Pro」においてもその点は変わらず、今回も非常にクリアなサウンドと個性的なサウンドバランスは「らしさ」を存分に発揮しています。多くのダイナミック系、特に2DD構成の場合、どうしてもドンシャリ寄りのセッティングで中音域の凹みを感じる事も多くありますが、「TIN Audio T2 Pro」では比較的自然な位置で定位するものの、まるでマルチBAイヤホンのような存在感と解像度の高さを感じます。
TIN Audio T2 Proまた高域および低域とのバランスもあり全体的にスッキリした透明感のある音を実現しており、「ボーカル映え」「ギター映え」しやすいチューニングのサウンドだと感じます。
低音域は最近のイヤホンのなかではかなり控えめな方で低域の厚みを好まれる方には結構物足りないと思うかもしれません。
中高域メインで聴く上では十分に量感と締まりを感じますが、全体的に軽く沈み込みも浅い印象です。
この辺はイヤーピースをコンプライに替えるなどの工夫により多少印象を変化できそうですし、「NICEHCK 8芯 OFCケーブル」や「Yinyoo YYX4769 8芯 OFCケーブル」といった銅線ケーブルにリケーブルすることで中低域の響きを向上させるのも良いかもしれませんね。


TIN Audio T2 Proというわけで、今回の「TIN Audio T2 Pro」はもともと完成度の高かった「T2」をさらにハイレベルに仕上げたイヤホンだと感じました。同時に「T2」同様にかなり個性的なサウンドのイヤホンでもあると思います。ただ、以前の「TIN Audio T2」のレビューでは「驚きの高音質」だけど「マニア向けで好き嫌いが分かれる」みたいなことを書きましたが、その後、実際には「非常にクリアで解像度の高い中音域」を中心により多くの方々に受け入れられたのかな、と感じます。ただ、「TIN Audio T2 Pro」のサウンドバランスは同価格帯でやはり非常に人気の高い「TFZ SERIES 2」あたりとはかなり対極的な存在かもしれませんし、そういう意味ではやはり「好き嫌いが分かれる」イヤホンであることは間違いなさそうです。まあ個人的にはどちらも「アリ」で「かなり好み」なわけですが(^^;)。

最近のハイスペック化が進む中華ハイブリッドイヤホンやKZのコスパなどを考えると少し割高感は拭いきれませんがもし興味があれば挑戦してみていただければ、と思います。


「Sabaj PHA3」 ウォーム感たっぷりの真空管サウンドを堪能できる、シンプル&高品質な低価格「真空管ヘッドフォンアンプ」【レビュー】

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Sabaj PHA3

こんにちは。今回は結構ひさしぶりの据置きのアイテムです。紹介するのは小型オーディオ製品を中心に展開する中国のメーカー「Sabaj」の真空管ヘッドフォンアンプ「Sabaj PHA3」です。
個人的にはこのようなコンパクトな据置き製品もいろいろ購入しているのですが、ついついレビューは滞りがちです。ただ今回はSabajさんよりサンプル提供をいただきましたので怠けずにレビューしたいと思います(^^;)。
Sabaj PHA3Sabaj PHA3
さてさて、今回の「Sabaj PHA3」ですが、写真の通り2本の真空管によるサウンドが楽しめるアナログ・ヘッドフォンアンプとなります。入力は背面のRCA端子と、前面のステレオミニ端子の2系統、出力は前面のヘッドフォン端子、という非常にシンプルな構成の製品で、Amazonでは 6,199円 で販売されています。
Amazon.co.jp(Sabaj): Sabaj PHA3

中華の「真空管アンプ」というとAmazonなどでも実は結構多くの種類が検索できたりするのですが、昔から出しているメーカーでも「本当に真空管で音を出してるの?」という製品もあって、私も以前実際に「実は真空管は点灯しているだけ」(真空管が無くても音が出る)という類いのアンプを購入したことがあります。しかし、「Sabaj」はデジタルオーディオ製品も含めとても高品質な製品をリリースしている「ちゃんとした」メーカーのようで、今回の「Sabaj PHA3」についても安心して購入できる製品でした。

ちなみに「真空管アンプ」は当然ながら増幅回路(アンプ)に真空管が使用されている機器ですが、デジタルアンプと比べ独特の「味」のあるサウンドが楽しめる反面、出力効率は著しく低くなります。そのため、「真空管だけ」の増幅回路でアンプを作ると出力効率の低さから非常に大きな電力が必要となり、とてもサイズが大きく、また(オーディオ的に)電源など気にすべき要素がとても多くなります。結果的にかなり価格的にも場所的にも構成的にも難易度の高いものとなります。

そこで、コンパクトな真空管アンプ製品では基本的な内部構造はデジタルIC(オペアンプ)等を使用した、いわゆる中華デジタルアンプ等と同様の構成で作られていますが、その前に真空管を経由した増幅を行うことで「真空管らしい音」をつくりつつ、少ない消費電力で効率的に出力を確保するように設計されています。つまりコンパクトな真空管アンプ製品での「真空管」の役割はサウンドにアクセントをつける「調味料」的な位置づけですね。
Sabaj PHA3そのため、このようなタイプの「真空管アンプ」を作る上では、まずベースとなるデジタルアンプについて十分に自社製品の特性を理解していて、そのうえで「真空管」という味付けをバランス良くチューニングすることが重要になってくると思います。
Sabaj PHA3」では入力信号の増幅に2本の6J9タイプの真空管を使用しており、さらにヘッドフォン端子への出力部にオペアンプとしてJRC「NJM4556D」を2個搭載しています。またノイズを低減させるためのチップや回路へでの制御を行っていてホップノイズ等が発生しないような工夫が施されているようです。


■非常にコンパクトでシンプルな作りながら細かく配慮されたビルドクオリティ

手元に届いた「Sabaj PHA3」のパッケージは非常にコンパクトな製品にも関わらずかなりしっかりした梱包となっており好感が持てます。
Sabaj PHA3Sabaj PHA3
この手の製品はACアダプタが別売りだったり、付属品の品質がいまひとつ、というパターンも多いのですが、「Sabaj PHA3」では自社ロゴの入ったACアダプタが付属しており、品質面でも問題ありませんでした。まあ本来は当たり前のことなのですが、改めてしっかりしたメーカーであることが確認できます。なお付属するACアダプタの規格はDC12V・1.67Aで5.5/2.1mmのコネクタが使用可能です。
Sabaj PHA3Sabaj PHA3
製品サイズは据置きタイプのヘッドフォンアンプとしては非常にコンパクトで、特に奥行きはMojoなどのポータブルアンプと比較してもその小ささが実感できます。作りはとてもしっかりしていて安っぽさは全く感じない印象です。

Sabaj PHA3Sabaj PHA3
真空管を外してみると、基板をある程度確認でき、2個のオペアンプ(NJM4556D)なども確認できます。なお、オペアンプは基板に直付けのため交換は出来ない仕様となっています。

電源投入後は数秒間LEDが点滅状態が続き、点灯にかわると使用できるようになります。入力端子は前後2系統ありますが入力切替のスイッチ等はなく、このタイプの小型アンプ(例えばCarrotOneとか)で多い、背面のRCA端子で接続している場合でも前面のステレオミニで接続した場合はステレオミニが優先される仕様となっています。ただ内部的なスイッチングを行っているわけではないので、両方の端子を通電状態にするのは(故障の原因となる可能性もあるので)避けた方がよいでしょう。


■「真空管アンプ」らしさを手軽に楽しめる素直なサウンド

実際に「Sabaj PHA3」を使用し、いろいろな環境で聴いてみた印象は、「真空管アンプ」らしさを十分に反映させつつ、とても素直なサウンドに仕上がっていると感じました。
Sabaj PHA3Sabaj PHA3
標準では中華アンプでは一般的な北京電子管の6J9真空管を使用していますが、他社の真空管アンプと比較しても、とてもウォームで中低域の膨らみを感じる「真空管らしさ」を感じる仕上がりとなっています。前述の通り小型の真空管アンプではオペアンプなどのデジタルICも出力確保のために併用していることもあり、デジタルアンプとしての性格の方がむしろ強くなっている製品もわりと多いですが、「Sabaj PHA3」については同様のアプローチの製品の中ではかなり真空管のキャラクターを前面に出したセッティングになっていると感じます。
Sabaj PHA3Sabaj PHA3
駆動力に関しても通常のヘッドフォンでは十分な出力を確保でき、AKG「K712 Pro」や「K701」はもちろん、インピーダンス250Ωのbeyerdynamic「DT1770 PRO」でも据置きのDACやアンプからの出力であれば特に問題はありませんでした(音量は半分以下)。これらモニター的なヘッドフォンで聴いてみると解像度や音のキレなどは多少丸められた印象も感じますが、中音域の濃度が増したような厚みを感じ、全体的にも聴きやすいサウンドに変化しているのが分ります。
手持ちのヘッドフォンでは同様にリスニング傾向が強いHIFIMAN×Massdropの「HE4XX」(HE400ベースで同400iに近いサウンドのヘッドホンですね)との組み合わせが結構気に入ってます。
Sabaj PHA3Sabaj PHA3
また、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)など、ライアンアウトの出力音量が小さいポータブルオーディオと接続する場合も「Sabaj PHA3」側の音量を4分の3程度まで上げれば十分に使用できました。
そのため、「真空管らしい音を楽しみたい」という目的以外にも、普段はDAPで反応の良いイヤホンと組み合わせて聴いている方が、屋内で出力の欲しいヘッドフォンで聴きたいときに組み合わせる、という普段使い用の据置きアンプとしても、小型でシンプルな「Sabaj PHA3」はとても使い勝手が良いと思います。ちなみに、これは「Sabaj PHA3」に限ったことではありませんが、ヘッドフォンに最適化されたチューニングのため、反応の良いイヤホンでは一定のホワイトノイズが発生します。イヤホンと組み合わせたいと考えている方は念のため注意が必要ですね。

いっぽう、「Sabaj PHA3」はボリュームを最大まで上げても歪みなどは非常に少ない印象のため、ヘッドフォン出力から外部アンプへラインアウトしスピーカーで出力するプリアンプ(ラインアンプ)的な使い方でも使用可能でした。この場合、デスクサイドなどニアフィールドのコンパクトスピーカーでの利用などで真空管アンプの中低域を少し持ち上げる傾向が活かされるのではと思います。
Sabaj PHA3Sabaj PHA3
さらに、「Sabaj PHA3」は真空管のキャラクターをしっかり反映しているアンプのため、管の交換による音の変化を楽しむ上でも最適です。この手のお手軽なアイテムとしては日本ではNFJが販売する「FX-AUDIO- TUBE01J」や「TUBE03」(どちらのモデルもより小さい「6J1」真空管を使用)といった真空管ラインアンプがとても人気ですが、「Sabaj PHA3」もヘッドフォンアンプ出力部にオペアンプICを搭載しているものの、かなり近いレベルで真空管ごとの特徴が出るようです(手元にあった低価格の旧ソ連製「E180F」でも少し音の厚みが増すなど印象の変化を実感できました)。


というわけで、「Sabaj PHA3」を紹介してきましたが、手軽に真空管のサウンドを楽しむ上では非常に使いやすい製品だと感じました。特に作りの丁寧さやビルドクオリティの高さはちょっと驚いた部分で、とてもしっかりしたメーカーだと改めて実感しました。
これまで中華アンプやDACなどはTOPPINGやS.M.S.Lの製品を多く購入していましたが、今回の品質の良さとコストパフォーマンスの高さを実感したことで、Sabajのデジタルオーディオ製品にも俄然興味がわいてきました(「Sabaj D4」あたりはなかなか面白そうです)。機会があれば同社の他の製品にもいろいろ挑戦してみようと思っています。


「NICEHCK DJT1」 8芯 6N 単結晶銅 GC-OCCケーブル / ナチュラルに高級イヤホンのポテンシャルを引き出す高品質イヤホンケーブル【レビュー】

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NICEHCK DJT1

こんにちは。今回はいつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」の新しいケーブルの紹介です。

今回紹介する「NICEHCK DJT1」は、以前紹介した3千円クラスの製品とは一線を画し、より高品質の線材を採用したハイグレードモデルとなります。質感も抜群に良く価格以上の高級感を感じるケーブルで、音質的にもナチュラルかつ非常にクリアでイヤホンのポテンシャルを発揮し、全体的な解像度と音場感をグレードアップしてくれます。
一般的な中華イヤホンに限らず、数万円以上の高級イヤホンとの組み合わせでも十分に実力を発揮できる品質に仕上がっていると思います。

購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」またはアマゾンの「NICEHCK」マーケットプレイスにて。AliExpressでの購入方法はこちらを参照ください。アマゾンではプライム扱いですぐに製品が届きますしアマゾン経由での保証が得られるので万が一の場合も安心感がありますね。
またHCKのTwitterアカウント(@hckexin)では新製品情報のほか割引情報なども頻繁にツイートされていますのでこまめにチェックされることをお勧めします。


[ NICEHCK DJT1 ] NICEHCK 8芯 6N 高純度単結晶(GC-OCC)線 イヤホンケーブル
NICEHCK MMCX/2Pin Connector 3.5/2.5/4.4mm Balanced 8 Core 6N GC-OCC Single Crystal Copper Cable
【 MMCX 】【 中華 2pin 】【 3.5mm 】【 2.5mm/4極 】【4.4mm/5極 】
Amazon.co.jp(NICEHCK) 9,850円 / AliExpress(NiceHCK Audio Store)  98.89ドル 49.45ドル

※アマゾンでは現在、購入時に表示価格より500円の値引きがされます。

NICEHCK DJT1NICEHCK DJT1NICEHCK DJT1

NICEHCK DJT1」は、線材に8芯の6N(99.9999%)純度の単結晶銅線を使用したケーブル。単結晶銅線は無酸素銅線(OFC)よりさらに高純度で銅線らしい特性を持っているとされます。AliExpressでの英語表記では「GC-OCC」線材を使用しているとのことです。
NICEHCK DJT1NICEHCK DJT1
届いた「NICEHCK DJT1」は濃いめのブラウンの薄い皮膜に覆われており、触ったか感覚もとてもしなやかで同社の3千円クラスのケーブルより明らかに質感の高い印象を受けます。使用しているコネクタやプラグなどの金属部品の表面処理も美しく、取り回しも良好で価格以上の高級感があります。また、8芯ケーブルにありがちがゴツゴツとした太いタイプとは異なり細い線材をしっかり編み込んで作られたケーブルですので中華イヤホン以外にもさまざまなイヤホンと組み合わせやすいのが嬉しいところです。2pinタイプはピン部分に出っ張りのない「中華タイプ」の0.78mm 2pinコネクタで、耳かけ部分の加工はないため、シュア掛けおよび通常タイプどちらのイヤホンでも使用できます。
NICEHCK DJT1NICEHCK DJT1
NICEHCK DJT1」の音質傾向はイヤホンの特性を活かしつつナチュラルに情報量を向上させるタイプ。HCKの8芯 銅線ケーブルでも同様の太さで明るい色の「NICEHCK 8芯 OFCケーブル」(2,950円)や「NICEHCK CT1」(2,550円)のようにすこし派手めの音質傾向ではないため、これらのケーブルと相性の良い1万円台以下の中華ハイブリッドより、ある程度グレードの高い(数万円クラス)のシングルダイナミックやマルチBAタイプのイヤホンとの組み合わせが良いと思います。HCKのマルチBAではフラット傾向とされる「HK8」「NK10」との相性はとても良さそうです。

十分にポテンシャルのあるイヤホンと組み合わせると、情報量が格段に向上することで低音域の厚みや解像度がぐっと増し、深みのあるサウンドを実感できます。また中音域は解像度および分離性の向上により1音1音のリアルさが増し、音場が立体的に広がるような定位感を感じます。とはいえ、あくまでナチュラルに音質を向上させるため、同じ銅線でもNOBNAGA Labs.「友禅」「更紗」や七福神商事「丸七赤龍」のようなキレの良さを感じるタイプのケーブルとはかなり印象が異なります。
個人的には中華イヤホン以外でのフラット傾向のイヤホンで組み合わせてほしい印象をうけました。とりあえず2pinタイプで購入しましたが、かなり気に入ったこともあり、MMCXタイプも追加でオーダーしようかと考えています。

※これまでのイヤホンケーブルのレビューはこちらをご覧ください。
→ 過去記事(一覧): イヤホンケーブルのレビュー


「Yinyoo V2」 同クラスのマイナーブランド中華イヤホンではめずらしい「1DD構成」にあえて挑戦した、中低域メインの個性的サウンド【レビュー】

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Yinyoo V2

こんにちは。今回は「Yinyoo V2」というシングルダイナミックドライバー(1DD)のイヤホンです。実はTFZなどの中華イヤホンというカテゴリーをすでに逸脱しつつあるようなメジャーメーカーを除くと、このグレードの中華イヤホンでシングルのダイナミックドライバー構成というはかなり珍しい存在です。
Yinyoo V2Yinyoo V2
一般的に5000円程度、50ドル程度くらいまでの中華イヤホンは「低価格中華イヤホン」と呼ばれるカテゴリーになるかと思います。しかし、現在はKZを中心に新旧有名無名さまざまなメーカーが大量のモデルを投入し続けていることもあり、
①「アンダー10ドル」、 ②「10ドル~20ドル以下」、③「20ドル~30ドル以下」、④「30~40ドル程度」、⑤「40ドル~50ドル以下」、といった感じで、さらにグレードが細分化されている印象があります。

例えばKZ製のイヤホンで置き換えるなら、①が「KZ ATE」「ZS3」など、②が「KZ ZST」や「ES4」など、③が「KZ ZS5」「ZSR」など、④が「KZ ZS6」など、そして⑤が「KZ ZS10」など、といった分類となり、確かに上と下ではグレードに結構な差があることが分かります。
このKZの例でも1DD構成のモデルは①の最低価格のグレードのみで、②以上のグレードではすべてBAとダイナミックを組み合わせたハイブリッドの仕様となっています。これを他のメーカーに置き換えても、やはり主力はハイブリッドが圧倒的多数を占め、それ以外でも2DDや最近登場してきた3DDなど複数のダイナミックドライバーを組み合わせた構成となります。

ダイナミックドライバーはエージングで音質の変化が大きいことが特に中華イヤホンでは多いですし、歩留まり、という点でもある程度の個体差が発生しやすく、高音質かつ安定した品質のドライバーを低コストで作るのはかなり困難とされます。そのための打開策のひとつが「ハイブリッド化」や「マルチ化」で、特にハイブリッドは「KZ ZST」や「SENFER UEs」(2DD構成の「UE」をハイブリッド化したモデル)以降、一気に中華イヤホンの主流になりました。
このような状況下でシングルダイナミック構成のイヤホンをより上位グレードでリリースできるのは、高音質ドライバーを自社開発している「TFZ」など一部メーカーに限られるようです。

Yinyoo V2いっぽう、今回の「Yinyoo V2」は、実質的に中国のイヤホンセラー「Easy Earphones」などを中心とした小規模なショップブランドの「Yinyoo」のオリジナル製品にもかかわらず、米国から輸入した「デュアルダイアフラム(二重振動板)ダイナミックドライバー」を搭載することで上記の分類でいうと⑤のZS10等のハイスペックのイヤホンがひしめくアラウンド50ドルのグレードで1DD構成に挑戦するという、同社としても「かなりの意欲作」といえるのではと思います。
ではなぜ、そこまでして「シングルダイナミック構成」なのか。それもよりによって「この時期」に「中国製イヤホンでまさかの『アメリカ』からドライバーを輸入」なんとことまでして(^^;)。

Yinyoo V2私のブログレビューでも上記④や⑤のグレードで「ベストバイ」と書いているのはTFZの「SERIES 2」であり、その後継ともいえる「T2 Galaxy」で、どちらも同社製の1DDを搭載したイヤホンです。
帯域ごとの「つながり」にクロスオーバーが発生するハイブリッドやマルチドライバーにはない自然なサウンドバランスを生み出せるのはやはりシングルダイナミックゆえの絶対的な強みでしょう。あくまで個人的な憶測ではありますが、「Yinyoo V2」では多少コスト的に無理をしてでも低価格中華イヤホンの枠内で同様のグレードのイヤホンを作りたかったのではないかと想像します。

さて、多少背景的な話が長くなりましたが、今回の「Yinyoo V2」は、前述の通り米国製の「デュアルダイアフラム(二重振動板)ダイナミックドライバー」をシングルで搭載します。ハウジングはアルミニウム合金(ジュラルミン)をCNC加工したもので、「Yinyoo」のロゴの一部がベント(空気孔)になっているなど、ハウジングデザイン的にもかなりこだわった作りとなっています。価格はAliExpressのEasy Earphonesで 49ドル、アマゾンのWTSUN Audioで 5,800円 となっています。AliExpressの購入方法はこちらを参照ください。
AliExpress(Easy Earphones): Yinyoo V2
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): Yinyoo V2

※アマゾン(WTSUN Audio)では年内(12月31日)の期間限定で、購入時にクーポンコード「WH9UMVTX」を入力することで1,200円の割引が実施され、実質 4,600円 で購入が可能です。


■これまでの「Yinyoo」ブランドとはちょっと違う、気合のはいったパッケージング

さて、今回届いた「Yinyoo V2」のパッケージはデザイン的にはともかく、従来の「Yinyoo」オリジナルイヤホンのような共通のパッケージではなく、このイヤホンのためにデザインされた化粧箱に入っているころにまず驚かされます。
Yinyoo V2Yinyoo V2
パッケージデザイン的には正直なところ「いかにも中華」色全開の印象で、個人的には以前購入したちょっとだけ高級な中華万年筆のパッケージを思い出しました。
また箱の中にはいつもの「Easy Earphones」の保証書ではなく、Yinyooブランドの説明書・保証書が同梱されており、同ロゴがデザインされたイヤホンケースの中に製品が入っています。パッケージ内容は、本体、ケーブル、イヤーピース(白とグレーの2種類、それぞれS/M/L)、イヤホンケース、保証書・説明書。
Yinyoo V2Yinyoo V2

ジュラルミン製のハウジングのビルドクオリティは比較的高く、フェイス部分にYinyooのロゴマークがデザインされ、ロゴの中央部分がベント(空気孔)になるデザイン的意匠が加えられています。従来Yinyooブランドでこのような量産タイプのイヤホンをリリースする場合、EMS(受託生産工場)またはOEMメーカーの製品にカラーリングなどのデザイン的ワンポイントかシルクスクリーンでのロゴプリントくらい、というが通例だったのですが、今回は明らかに「Yinyoo」として製品作りに深く関与しているのがわかります。上記の専用にデザインされた化粧箱のパッケージも含めて、「あ、今回は結構まとまったロット数を作っちゃったのかも」とつい思ってしまいました(^^;)。
Yinyoo V2Yinyoo V2
Yinyoo V2」は通常の装着方法でも、耳掛け式(シュア掛け)でも使える形状となっていますが、フェイス部分の「Yinyoo」ロゴはシュア掛けをすると本来の向きになるようにデザインされています。

ちなみに、「Yinyoo V2」の本体デザインは、2DD構成でマニアの間で根強い人気を誇る同価格帯のイヤホン「TIN Audio T2」を彷彿とさせます。実際に比較してみると「Yinyoo V2」は若干コンパクトなサイズ感で作られているのと同時に、ケーブルコネクタが逆方向に出ており、「TIN Audio T2」の「左右逆だったら装着性がもっと良かったのに」という感想を実際に反映させたかのようです。
Yinyoo V2Yinyoo V2
付属のケーブルは中華2pinコネクタタイプの銀メッキ撚り線ケーブルでとても柔らかく使い勝手の良さを感じる仕上がりとなっています。イヤーピースは標準のものでも問題ないですが、できるだけ耳穴にフィットするタイプを選んだほうが良いかもしれません。ただし「TIN Audio T2」が標準で採用しているウレタンタイプ(「コンプライ」なども含む)は、ちょっと籠りを強く感じる傾向があるのであまりお勧めしません。
私はいくつか試したうえで最終的にAcoustuneのダブルフランジ「AET06」を使用しました。


■低域の厚みが個性的なサウンド。エージング&イヤピース変更でサウンドバランスが向上

Yinyoo V2Yinyoo V2」を聴いた最初の印象はかなり低域を強めに感じる「低音イヤホン」で、開封直後は付属のイヤーピースではちょっと中高域に籠りを感じやすい傾向がありましたが、数十時間程度のエージングにより中高域の抜けが多少向上した印象に変化しました。
全体的な傾向として低域寄りの「Yinyoo V2」は、中高域の印象が強い「TIN Audio T2」のサウンドとは外観は似ていますがサウンドは真逆の印象ですね。また、最近はTFZなどのグラフェンドライバーのような硬質で寒色系のサウンドが増えていますが、「Yinyoo V2」は採用している米国製ドライバーの二重振動板の特性か、全体的にキレを求めるタイプではなく、暖色系で柔らかい印象のサウンドです。中音域は左右に広がるタイプの音で、解像度は一般的です。
ただ低音域については二重の振動板の効果もあってか解像度は比較的高い印象を受けますが、曲によって響きが強くなる傾向があり、標準のイヤーピースでは籠った印象を感じる場合もありそうです。また高域も明るさを感じる音ですが、低域のバランスにくらべてちょっと弱く、天井が低めの印象を受けます。
Yinyoo V2このような場合はイヤーピースの変更によりかなり印象は改善されます。大きめのサイズのイヤーピースにより少し浅めにフィットさせることでより低域の響きが向上し、音場感のあるサウンドを実感しますし、逆にダブルフランジの「AET06」を使用すると低域は少し抑え気味になり中高域の印象が向上します。同時に高域の明瞭感も多少向上し、高域成分の多い曲や女性ボーカルの高音などでのキラキラ感も感じるようになりました。
音数が少なめのボーカル曲やポップス曲、ジャズやライブ音源などと相性がよさそうです。万人受けという感じではないかもしれませんが、アコースティックな音源では独特の存在感がありそうです。

というわけで、「Yinyoo V2」は、柔らかで低域に独特の響きがある音質傾向は最近の解像度が高くキレを重視した硬質なサウンドとは一線を画する単純に比較はできないですが、シングルドライバー構成にこだわった個性的なサウンドとしてとても興味深く感じました。全体的には、結構しっかりエージングが必要な点と、イヤーピースをいろいろ試してみる必要がありますが、ビルドクオリティは高く、通常の方法でもシュア掛けにも使える装着性をもつなど完成度は高いイヤホンだと思います。

Yinyoo V2確かに、ずっと自社ドライバーの進化を続け練度を上げてきたTFZや圧倒的な実績をもつfinalなどの製品とは経験値の違いは明らかですし(逆にそんな簡単に彼らのレベルに追いつけるとしたら、そっちのほうが異常でしょう)、同価格帯でたったひとつのイヤホンを選ぼうとしたときに最初に挙げられる存在ではないと思います。
しかし、あえて低価格中華イヤホンの「定石」を外して「王道」に挑んだ、その姿勢は良いと思いますし、マニア向けのアイテムとしては十分な完成度と結構楽しめるサウンドは実現できていると思います。
個人的には、すでにさまざまな中華イヤホンを持っていらっしゃるマニアの皆様なら、Yinyooブランドの挑戦の軌跡として、コレクションのひとつに加えるのも面白いアイテムだと感じました。


「TRN MHB8」&「KZ MC3」 超低価格8芯ミックスケーブル および KZのLightning/Type-Cケーブルをまとめ買い&比較してみた【レビュー】

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TRN & KZ New Cable

こんにちは。今回はおなじみ低価格イヤホンブランドの「KZ」と「TRN」の新しい交換用ケーブルです。さすが低価格イヤホンメーカーの製品だけあって、コストパフォーマンスに優れる中華イヤホンケーブルと比較しても、どの製品もちょっと目を疑うような価格設定となっています。
はたして「安かろう悪かろう」なのか、それとも?というわけで早速確認してみたいと思います。

KZ TRN Cable購入はすべていつもお世話になっている中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」にて。わたしはAliExpressの「NiceHCK Audio Store」でオーダーしましたが、アマゾンの「NICEHCK」マーケットプレイスで購入できる製品もけっこうあります。価格は少し差がありますが、アマゾンの場合はすぐに商品が届きますし、アマゾン経由の保証が受けられる安心感がありますね。
いっぽうのAliExpress(中国からの発送)での購入方法はこちらをご覧ください。またHCKのTwitterアカウント(@hckexin)では新製品情報のほか割引情報なども頻繁にツイートされていますのでこまめにチェックされることをお勧めします。


[ TRN MHB8 ] TRN 8芯 銀メッキ銅線&高純度銅線ミックス イヤホンケーブル
TRN MMCX/2Pin Connector 3.5/2.5Balanced 8 Core Copper Silver Mixed Cable
【 MMCX 】【 0.78mm 2pin 】【0.75mm 2pin※】【 3.5mm 】【 2.5mm/4極 】
Amazon.co.jp(NICEHCK) 2,290円 / AliExpress(NiceHCK Audio Store)  11.99ドル

※ブラック/シルバー
TRN MHB8TRN MHB8
イヤホン本体では「大アタリ」と「地雷」を交互に投入する(笑)中華イヤホンブランドの「TRN」ですが、最初のモデルの「TRN V10」から実は付属のケーブルは評判が良く、単品売りされているケーブルも結構売れているらしいという話もちらほら。

※イエロー/シルバー

TRN MHB8
TRN MHB8

そんなTRNが突如として投入したのが、今回の2種類のカラーの8芯ミックス線ケーブルです。HCKのアマゾンのストアでは「TRN MHB8」の型番表記となります。その特徴もやはり「価格」で、AliExpressでは12ドルほどの激安価格で購入できてしまいます。初回のオーダー受付時はさらに値引きで1本数百円単位の価格で購入された方も多いのでは思います。
今週末の11.11セールではあらためて同様なセール価格が提示されています。

実際に届いた「TRN MHB8」はTRNのイヤホン同様に白箱のパッケージで、袋入りの簡易なパッケージの中華ケーブルに慣れているとほんとうに10ドルそこそこ価格なのかと改めて驚きを感じます。
TRN CableTRN Cable

TRN MHB8」、TRNの8芯ケーブルは同社イヤホンの付属ケーブルで使用されているものより太めの線材が編み込まれており、また金属製のコネクタ部品なども明らかに質感が向上しています。多少カラーリングが派手ではあるものの、一見しただけでは安物感はまったく感じな印象です。ただよく見ると2pinコネクタについてはCIEM 2pinのような四角い突起があるコネクタ形状ながら、ガイドとなる窪みがなく「詰めの甘さ」を感じる部分もあります(ですので埋め込み式の2pinでは使用できない場合もあります)。またMMCXコネクタも品質の低い個体もあるようです。この点は「価格なり」と割り切る必要がありそうです。
TRN CableTRN Cable

一般的にミックス線ケーブルは中低域の厚みを増す同線と高域の伸びを向上する銀メッキ線の両方の性質を持つことから比較的メリハリが強くなる傾向にあります。「TRN MHB8」は「TRN V80」をはじめとする同社イヤホンをリファレンスとしているためか、同価格帯の中華ハイブリッドなど派手めでドンシャリ傾向、いわゆる「ZS6系イヤホン」との相性が抜群に良い傾向にあります。というかほとんど「ZS6系イヤホン専用ケーブル」と呼んでよい製品かなという気もします。
TRN MHB8TRN MHB8
たとえばMMCXコネクタ仕様のケーブルを「PHB EM023」と組み合わせると標準の銀メッキ線ケーブルと比較し全体的にメリハリが向上します。特に低域の厚みがぐっと増すことで「濃い音」になった印象を受けました。また同じく2BA+2DD構成の「BQEYZ KC2」と組み合わせると全体的に明瞭感がアップし、個人的にはEM023より好みの中音域の印象がさらに良くなります。特にバランス接続にすることでより近くに定位し、高域のキレや低域の締まりが大幅に向上します。これらの製品と組み合わせるのには結構よい選択肢といえるかもしれませんね。
ただ、スッキリ系の傾向のイヤホンや、バランスの良いシングルダイナミックなどのイヤホンと組み合わせると派手というより多少粗さを感じる鳴りを感じる場合もあります。なにより超低価格のケーブルですので過度な期待はせず、用途を絞って利用するのが良いと思いますね。


[ KZ MC3 ] KZ 8芯 銀メッキ銅線&高純度銅線ミックス イヤホンケーブル
KZ 3.5mm 2Pin/MMCX Connector 8 Core Copper Silver Mixed Cable Use For MMCX & KZ Earphones
【 KZ Aタイプ(ZS6/ZS5/ZSA等) 】【KZ Bタイプ(AS10/ZS10/ES4等)】【 MMCX 】【 3.5mm 】
※KZ Aタイプ/BタイプはKZの該当モデル専用ですので、KZ製以外の2pinコネクタのイヤホンには対応しません。
KZ MC3KZ MC3
いっぽう、KZブランドの最新ケーブルも、8芯銀メッキ線&高純度銅線ミックスケーブルが登場しました。こちらもTRNのケーブルに負けず劣らずのかなりの低価格設定となっています。ただ価格なりの粗さも感じたTRNに比べ、KZのケーブルは定番の通称「きしめんケーブル」など低価格ながら結構ちゃんとした製品を作っている印象があるため期待が膨らみます。
KZ MC3KZ MC3
今回の8芯ミックス線ケーブル(アマゾンのHCKのストアでは「KZ MC3」型番)はKZ製イヤホンのAタイプ(ZS6/ZS5/ZS4/ZSAなど)とBタイプ(AS10/BA10/ZS10/ES4など)の2種類に加えて汎用のMMCXコネクタ使用も販売しています。
KZ CableKZ MC3
KZ MC3」はTRNの「TRN MHB8」より明らかに細い線材を使用しており丁寧に編み込まれた印象があります。こちらも取り回しは良好です。
私はKZのBタイプのケーブルでオーダーしたため、数種類のKZ製イヤホンにリケーブルして確認をしてみました。最近のKZのブラウンの標準ケーブルと比較してどのイヤホンでもミックス線らしくかなり派手な音になるのが実感できます。たとえば「KZ ZS10」と組み合わせると標準ケーブルより明らかに情報量とともにキレが向上するのが実感できます。
KZ MC3KZ MC3
また5BAモデルの「KZ AS10」との組み合わせでも低域の締まりとともに高域の伸びが大幅に伸びるなど特に相性が良いようです。これらの同社の中でも比較的上位のモデルとの組み合わせには最適でしょう。またMMCXコネクタ仕様のケーブルについても、最近はでは3,000円クラスの中華ケーブルでも劇的にクオリティが向上しているため、それらの製品には及ばない部分はありますが、十分に価格以上の音質を期待できる仕上がりにはなっていると思います。


[ KZ Lightning Cable ] KZ Lightning MFI コネクタ イヤホンケーブル
KZ Lightning Dock MFI Cable 2Pin/MMCX Connector Silver Plated Use For MMCX & KZ Earphones
【 KZ Aタイプ(ZS6/ZS5/ZSA等) 】【KZ Bタイプ(AS10/ZS10/ES4等)】【 MMCX 】【 Lightning 】
※KZ Aタイプ/BタイプはKZの該当モデル専用ですので、KZ製以外の2pinコネクタのイヤホンには対応しません。
Amazon.co.jp(NICEHCK) なし / AliExpress(NiceHCK Audio Store)  16ドル

KZ Lightning CableKZ Lightning Cable
こちらは現時点ではAliExpressでのみの取り扱いですが、iPhoneなどiOSデバイス用のLightningコネクタ仕様のケーブルです。AppleのMFI準拠のチップを使用しており、互換性も問題ないようです。こちらもKZ製イヤホンのAタイプ、Bタイプ、そしてMMCX用の3種類がリリースされています。線材はシルバーの銀メッキ線を採用しています。
KZ CableKZ Lightning Cable
この製品もパッケージは上記の8芯ケーブル同様のコンパクトな白箱に入っています。線材自体は以前からあるKZのアップグレードケーブルと同様のシルバーの撚り線で、Lightningコネクタ部分に44.1kHz仕様のDACチップを搭載するタイプになります。オンキヨーの「HF Player」と組み合わせてみるとハイレゾ音源も44.1kHzにダウンサンプリングされ再生されます。また、Lightningイヤホンケーブルで多いイヤホンマイクの機能はついておらず、あくまでリスニングに特化したケーブルですね。
KZ Lightning CableKZイヤホンに最適化されたDACを搭載するケーブルですので音質面についてはいわば「KZおすすめのチューニング」ともいえるわけですが、以前レビューしたおよび以前レビューした同社製のApt-X対応Bluetoothケーブルでも感じたバランスの良さを実感します。もちろん低価格なケーブルですので解像度や分離性が極端に高いわけではないですが、非常に聴きやすく自然なバランスでチューニングされており使い勝手の良さを実感します。またノイズの少なさ(S/Nの高さ)はより数千円~1万円程度のLightningイヤホンケーブル比較しても特筆すべき部分で、同社製イヤホンのなかでも比較的反応の良い「KZ AS10」を組み合わせても非常にスッキリとしたサウンドを実感できます。これはMMCXバージョンも追加で購入してみようかな、と思っています。


[ KZ Lightning Cable ] KZ Lightning MFI コネクタ イヤホンケーブル
KZ Type-C Cable HD Digital Decoder Dedicated Cable 2Pin Silver Plated Upgraded Cable Use For KZ
 【 KZ Aタイプ(ZS6/ZS5/ZSA等) 】【KZ Bタイプ(AS10/ZS10/ES4等)】【 USB Type-C 】
※KZ Aタイプ/BタイプはKZの該当モデル専用ですので、KZ製以外の2pinコネクタのイヤホンには対応しません。
Amazon.co.jp(NICEHCK) なし / AliExpress(NiceHCK Audio Store)  8.24ドル
KZ USB Type-C CableKZ USB Type-C Cable
購入したのは結構前になりますが、ついでなので一緒に紹介します。上記のケーブルがiOS用のLightning仕様だったのに対しこちらはUSB Type-Cコネクタ仕様のケーブルとなります。こちらは現時点ではMMCX仕様は販売されておらず、従来型のKZ AタイプおよびBタイプのみのリリースとなります。
KZ USB Type-C CableKZ USB Type-C Cable
「KZ USB Type-Cケーブル」もUSBコネクタ部分にDACチップを内蔵しており、USB Audio Class 2.0対応の接続した端末からはUSB-DACとして認識される仕様となっています。そのため、OTG(On The Go)接続に対応したAndroidデバイスに加え、USB-C(Thunderbolt 3)端子を搭載したMacBook製品や最新のiPad Proなどでも使用することができます。

KZ USB Type-C Cableいっぽう、上記のLightningケーブル同様、マイクリモコン機能を持たない、オーディオリスニング専用の仕様とすることで類似するUSB-Cケーブル(たとえばShureの「RMCE-USB」など)と比べ、KZ製イヤホン専用ではあるものの、10分の1以下の低価格を実現しています。
実際に「KZ USB Type-Cケーブル」を何種類かのKZ製イヤホンに接続して聴いてみたところ、上記のLightningケーブル同様に、非常にノイズの少ない明瞭感と自然なバランスのサウンドを実感できました。
比較的反応の良い「KZ AS10」との組み合わせでも非常に自然なバランスを実感します。これくらいS/Nが高い自然なサウンドを実現できているのであれば、AndroidスマートフォンでKZ製イヤホンを利用するならもうこのケーブルでいいんじゃないかな、と感じるほどです。こちらもぜひともMMCX版も出して欲しいと思います。


というわけで、KZおよびTRNの低価格なケーブルをまとめて比較してみました。
TRNのとりかく派手で豪華に見えるケーブルながら価格なりに大雑把でアバウトさも感じるのに対して、KZの価格なりにみえる外観ながら音作りは結構しっかりしている、という両者の対比が非常に面白かったですね。個人的には圧倒的にKZの各製品のほうがオススメ度は高くなりますが、TRNのケーブルも「安く買えれば」割り切って使うのにはいいかな、という印象でした。中華ケーブルの世界も各セラーのオリジナルブランドに加え、中華イヤホンメーカーもより本腰を入れている感じもありますし、今後もますます目が離せないですね。



Kinboofi「KBF MK3」 ZS5風のメリハリの効いたサウンドがよりコンパクトに。2BA+1DDハイブリッド中華イヤホン【レビュー】

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KBF MK3


前回のケーブルに引き続き今回も中国のイヤホンセラー「Kinboofi」オリジナル製品です。というかほぼ同時のオーダーです(^^)。今回紹介するのは、Kinboofiオリジナルイヤホンの最新モデル「KBF MK3」です。2BA+1DD構成のハイブリッドイヤホンで、コンパクトな樹脂製ハウジングと存在感のある太めのMMCXケーブルのコンビネーションが特徴的ですね。

KBF MK3KBF MK3」の形状的には、某CAのア○ド○メダ・・・というか、それをパクった「KZ ZS5」や「ZS6」のさらにオマージュてきな・・・うーん、なんかよくわかんないですね!(笑
とはいえ、以前まとめて紹介したいわゆる「ZS6系イヤホン」はひとつの基準として「ZS5」や「ZS6」と同様に10mmと6mmの2個のダイナミックドライバーを搭載する構造を踏襲しているというのがひとつのポイントですが、「KBF MK3」については正面と背面の形状こそ似てはいるものの、内部的には全く異なっていると考えられ、とりあえず形状だけはそれっぽい全く別モノのイヤホンと考える方が自然ですね。まあ、中華イヤホン界隈では良くあるハナシです(笑)。

KBF MK3」はハウジング自体は樹脂製ですがフェイス部分に金属製のプレートが貼り付けられており、デザイン的なアクセントになっています。「KINBOOFI」ロゴも自然な感じで良いと思います。
また、「KBF MK3」は「KZ ZS6」や同じくKinboofiが取り扱う「ZS6系イヤホン」の「PHB EM023」とは異なり、「ZS5」同様の密閉型イヤホンですので、図書館などの静かな場所で音漏れを気にせず使うという用途には向いていそうです。
KBF MK3KBF MK3

KBF MK3」の購入はアマゾンの「Kinboofi」ストアにて。価格は 4,900円 となっています。
Amazon.co.jp(Kinboofi): KBF MK3

またKinboofiのTwitterアカウント(@kinboofi)では割引情報なども頻繁にツイートされますので、フォローのうえこまめにチェックされることをお勧めします。


■想像以上にコンパクトなハウジング。装着性は比較的良好。

KBF MK3」のパッケージはいつものコンパクトなボックスタイプ。小さめのイヤホンケースの中にびっしりと製品が入っています。
KBF MK3KBF MK3
パッケージ構成はイヤホン本体、MMCXケーブル、イヤーピース(S/M/L)、ケース、保証書。イヤーピースはKZの付属イヤピースに形状が似ていますがこちらのほうがしっかりした印象です。
KBF MK3KBF MK3

KBF MK3」の実物を見てみると本体の厚みが「ZS5」「ZS6」よりかなり抑えられており、予想以上にコンパクトなハウジングだと感じました。写真で見てもMMCXコネクタとの対比でその薄さが実感できるのではと思います。
KBF MK3KBF MK3

いっぽうで付属のケーブルはかなり太く、存在感のある印象です。前回レビューした「KBF4792」8芯ケーブルと良く似た質感のケーブルですが被膜はこちらのケーブルの方が分厚く、4芯ケーブルながらむしろこちらの付属ケーブルの方が太く感じるくらいです。
KBF MK3KBF MK3

実際の大きさを比較してみると、「ZS6」と「そっくりさん」の「PHB EM023」と正面からの形状はよく似ていますが、「KBF MK3」は圧倒的に本体の厚みが異なることが分ります。またKZの2BA+1DD構成のイヤホンである「KZ ZSR」とは「KBF MK3」はひとまわり以上コンパクトなのが確認できます。
KBF MK3KBF MK3
このように非常にコンパクトなハウジングのため、実際の装着性は「ZS6」「EM023」より良好で軽量で厚みも薄いことから耳穴にすっぽりと収まる感じとなります。屋外で気軽に使用するのにはなかなかよさそうです。


■かつての「KZ ZS5」を彷彿させる、使い勝手のよい低音寄りのドンシャリ傾向サウンド

KBF MK3」の音質傾向は低域寄りのドンシャリでかなりハッキリした印象の寒色系のサウンドが特徴的です。最初の印象として、外見通り「KZ ZS5」にも結構近いサウンドかな、と感じました。

KBF MK3まず特徴的なのは低音域でけっこう分厚い印象のサウンド。沈み込みもしっかり表現していて、重低音の表現もしっかりしています。解像度は価格相応という部分もありますが、横に広がるような響き方ではなく、締まりのある重量感のあるサウンドです。
いっぽうの高域はハイブリッドらしい硬質でキレのある音で分離性はも良好です。高域成分が強い曲では「ZS6」程ではないものの、適度な刺激を感じるかもしれませんね。全体的に明瞭感のあるサウンドで、低域が強い曲では少し上が細くなる場合もありますが、高域の伸び自体は比較的良好な印象です(この点は「ZS5」より少しだけ優秀かも)。
中音域は、かなりハッキリしたドンシャリ傾向ということもあり、ボーカルなどは1歩下がった印象で少し凹んで定位します。ただ低域で籠もるような印象はなく、少し広めの音場感を実感できるようなバランスになっていると思います。

改めて、「KBF MK3」を「KZ ZS5」「KZ ZS6」「PHB EM023」と比較すると、やはりサウンドバランス的には「ZS5」が最も近い印象を受けます。高域は「KZ ZS6」より多少控えめですが、低域は「KBF MK3」のほうが特に重低音の表現がしっかりしている印象で、「PHB EM023」と比較すると解像度などでは少し落ちるものの、よりドンシャリ傾向の強い派手めのサウンドに感じます。個人的な印象としては同じ「KZ ZS5」でも現在の「ZS6」と同じドライバー構成になっている「後期型」ではなく、もともとの「初期型ZS5」のサウンドをよりコンパクトなハウジングで実現しているような感じもありますね。
KBF MK3KBF MK3
KBF MK3」はロックやアニソンなどの派手めの曲や音数の多い曲との相性が良好で、メリハリのあるサウンドがいっそう楽しめると思います。また女性ボーカルのポップス曲も中域の凹みをほとんど感じずバランスの良い印象でした。
「KZ ZS5」よりコンパクトで装着性に優れ、最初から高品質なMMCXケーブルが付属する点を考慮すると、「ZS6」に対する「EM023」のように、「KBF MK3」も「ZS5」のアップグレード的製品として地味ですが普段使いのアイテムとしては「ちょっと良いイヤホン」かな、と思いました(^^)。



Kinboofi 「KBF4792 8芯 銀メッキ線ケーブル(黒色)」 太めの線材でお手軽グレードアップのイヤホンケーブル【レビュー】

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KBF4792

こんにちは。今回は低価格な中華イヤホンケーブルを次々とリリースしている「Kinboofi」ブランドの最新低価格ケーブルです。
存在感のある太めの8芯タイプ銀メッキ銅線ケーブルで、どのイヤホンにも合わせやすいブラックの被膜タイプ。いっぽうで価格も通常の3.5mmステレオはもちろん、2.5mm/4極および4.4mm/5極バランスコネクタ仕様もすべて購入しやすい3,000円の価格設定になっています。低価格中華イヤホンの手軽なアップデートや、MMCXまたは2pin仕様のシュア掛けタイプのイヤホンのバランス接続を低価格で行いたい場合に最適なケーブルだと思います。

購入はアマゾンの「Kinboofi」ストアにて。またKinboofiのTwitterアカウント(@kinboofi)では割引情報なども頻繁にツイートされますので、フォローのうえこまめにチェックされることをお勧めします。


[ KBF4792 ] Kinboofi 8芯 銀メッキ銅線 ケーブル(黒色)
Kinboofi 8 Core Silver Plated Cable 2.5/3.5/4.4mm With MMCX/2pin Connector (Black)
【 MMCX 】【 中華 2pin/CIEM極性 】【 3.5mm 】【 2.5mm/4極 】【 4.4mm/5極 】
KBF4792KBF4792KBF4792

先日レビューした同じくKinboofiのブロンズカラーの8芯ケーブル「KBF4773」は銀メッキ線と銅線のミックスタイプでしたが、今回の「KBF4792」は銀メッキ銅線タイプのケーブルとなります。
KBF4792KBF4792
届いたケーブルは芯となる線材の太さは「KBF4773」とほぼ同じですが、こちらのほうがよりしっかりと編み込まれています。そのため太めの8芯線ケーブルですが思ったよりゴツゴツとはせず、屋外での普段使いでも取り回しに問題は無いと思います。

音質傾向は非常にナチュラルでサイトにも「初心者向け」と書いてある通り極端な味付けなどは行わないタイプです。ただし情報量は十分にアップしますので、KZや5,000円前後の低価格中華イヤホンの付属ケーブルから交換すると、リケーブル効果を実感できると思います(イヤホンによっては音量がアップします)。またMMCXコネクタを採用する多くのメーカー製イヤホンの標準ケーブルと比較しても音質面で見劣りすることはないと思いますので、これらのイヤホンを低コストでバランス接続化するのに最適です。
KBF4792KBF4792
同じKinboofiの「KBF4773」と比較すると、情報量は今回の「KBF4792」のほうが若干上回り、音場感をより実感できると思います。いっぽう、中華ハイブリッド等でメリハリの向上などの味付けを好む場合は「KBF4773」のほうが好印象に感じるかもしれません。

ちなみに、今回の「KBF4792」から2pinタイプのコネクタが「KBF4746」(16芯ミックス線ケーブル)頃のモデルまで採用されていた「中華タイプの2pinコネクタ」に戻りました。これは最近の中華イヤホンケーブルの流れで、YinyooなどKinboofiと同系列のブランドはもちろん、HCK等のケーブルでも同様の傾向があります。
「KBF4746」以降の最近のモデルまで(「KBF4773」なども含む)の2pinコネクタはコネクタ部分に四角い突起のある「CIEMタイプ」を採用していましたが、おそらくKZの最新イヤホン「KZ ZSN」でqdcタイプのコネクタを採用したり、「TFZ KING LTD」等のTFZの純正ケーブルでも中華タイプの2pinコネクタが使用されているなど、こちらのタイプのほうが利用範囲が広い、と考えたのだろうと思います。
KBF4792KBF4792
なお、「KBF4792」はコネクタに青色のマーキングがついている方(-)が装着時「下」になるこれまでの「CIEM 2pinタイプ」と同じ極性配置になっています。しかし「中華2pinタイプ」のケーブルの多くはマーキング(-)が上になっている、いわゆる「qdc極性」になっていることが多いですが、これも決して間違いではなく、左右で+と-が逆になる「逆層」にしなければ利用上は特に問題ありません(これまでのケーブルレビューでも何度か触れていますが、念のため)。


Kinboofiのケーブルは比較的メリハリがでやすいケーブルが多かったのですが、今回の「KBF4792」のように幅広く使えるタイプの製品が加わったことで、より用途に合わせて選びやすくなりましたね。

※これまでのイヤホンケーブルのレビューはこちらをご覧ください。
→ 過去記事(一覧): イヤホンケーブルのレビュー


「Yinyoo HQ10」 片側10BAの「多ドラ」構成。美しいクリアデザインと中低域メインのフラットサウンドが気持ちよい高音質中華イヤホン【レビュー】

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Yinyoo HQ10

こんにちは。あっというまに11月に突入してしまいました。今年も残すところ・・・おっとやり残した事がまだまだたくさんあります。今回のレビューもそのひとつですね(^^;)。届いてから結構時間が経ちますが、10月は予定外に仕事が立て込んでしまったためずっと保留したままになっていました。もしも待っておられる方がいましたらごめんなさいです。そして、興味を持っている方は「11.11」の中国最大のセールに向けて参考になれば幸いです。

というわけで、今回紹介するのは「Yinyoo HQ10」、私のブログでずっと紹介している「Yinyoo HQ」シリーズでとうとう片側10個のBA(バランスド・アーマチュア)型ドライバーを搭載したモデルとなりました。
過去記事(一覧): 「Yinyoo HQ」シリーズ/「Yinyoo H」シリーズ・マルチBAイヤホン

今回の「Yinyoo HQ10」も10BAの「多ドラ」構成で通常価格でも3万円台と相変わらず攻めた価格設定となっています。とはいえ中華イヤホンとしては決して安価な製品ではありませんし、このクラスのイヤホンともなると後述の通り再生環境にも相応のグレードが必要とかなりマニア向けの製品であることは間違いないと思います。
Yinyoo HQ10Yinyoo HQ10
しかし、こだわったフェイスパネルやクリアなハウジングなどの見た目の美しさに加え、音質面も非常に高い解像度と中音域を中心とした聴きやすいサウンドで、派手さはないものの手堅くまとめられた秀作イヤホンだと思います。また、コストパフォーマンス的にもかなりお買得な製品だと感じました。


■中華イヤホンならではの抜群のコスパで「多ドラ」モデルを強化する「Yinyoo HQ」シリーズ

「Yinyoo」(音佑)は中国のイヤホンセラー「Easy Earphones」などを中心に販売されているイヤホンブランドで、「HQ」シリーズは同社オリジナルでフラグシップに位置するマルチBAイヤホンのラインとなります。
Yinyoo-HQ6Yinyoo-HQ5Yinyoo-HQ8
これまでに「Yinyoo HQ6」(6BA)、「Yinyoo HQ5」(5BA)、「Yinyoo HQ8」(8BA)といったモデルを販売しており、現時点での最上位モデルとして今回の「Yinyoo HQ10」で片側10BAモデルとなりました。片側10BA(つまり両側だと20BAですね)の構成で3万円台のプライス設定はなかなか強力ですね。しかもAliExpressの11.11セールでは初回の予約購入時の割引同様に300ドルを大きく下回る金額となりそうです。
※ちなみに「KZ AS10」などの最近の超低価格5BAイヤホンで両側を合わせて「10BA」という表記があることから混同される方を見受けましたのであえて「片側10BA」と記載しています。
HQ10-Blue-GreenHQ10-Red
Yinyoo HQ10」のシェルの形状は装着性の良さに定評のある「HQ5」「HQ8」のデザインを踏襲しつつ、クリアなハウジングと美しいフェイスパネルデザインを採用しています。カラーリングは「ブルー&グリーン」と「レッド」の2種類が選択でき、「ブルー&グリーン」ではフェイスプレートに模様が加えられています。レッドのほうもグラデーションが美しい仕上がりとなっています。

Yinyoo HQ10」のAliExpress(Easy Earphones)での表示価格は369ドル〜379ドル、アマゾン(WTSUN Audio)では39,800円となっています。現在国内在庫は売切れているようでどちらの場合も中国からの発送となりますが、アマゾン経由の場合は万が一の場合にアマゾン経由で保証を受けられるメリットがありますね。

※アマゾン(WTSUN Audio)では現在購入時に20%割引となるクーポンが発行されています。

※AliExpressでは、毎年恒例の中国の11.11セール価格が244.46ドル〜と発表されています。11月11日のセール開始までに事前クーポンなどを獲得することでさらに値引きを得ることも可能だと思います。また同じタイミングでアマゾン(WTSUN Audio)もセールを実施する可能性があります。

AliExpress(Easy Earphones): Yinyoo HQ10
Amazon.co.jp(WTSUN Audio): Yinyoo HQ10

AliExpressでの購入方法およびフォロワー値引き等についてはこちらを参照ください。ただし11.11セールの際は通常のフォロワー値引き以上の値引き額となるため併用は出来ませんのであらかじめご了承ください。
また、今後のセール情報や割引情報等は「Easy Earphones」(@hulang9078)および「WTSUN Audio」(@Zhuo520X)のTwitterアカウントで頻繁にツイートされると思いますのでこまめにチェックされることをお勧めします。


■Yinyoo HQシリーズの高い装着性と美しいデザインを踏襲。こだわったフェイスパネルも魅力的。

Yinyoo HQ10」のパッケージは1万円オーバーのYinyooブランドイヤホンではおなじみの黒パッケージ。私のところに届いたケースは無地でしたが、現在はYinyooロゴが入ったものになっていると思います。
Yinyoo HQ10Yinyoo HQ10

これまでのHQシリーズ同様に、今回も大量のイヤーピースが同梱されています。アマゾンで購入の場合は付属ケーブルは3.5mmステレオのみですが、AliExpressでは2.5mm/4極または4.4mm/5極バランスコネクタを選択することも可能です。
Yinyoo HQ10Yinyoo HQ10
改めて「Yinyoo HQ10」のパッケージ構成は、イヤホン本体、MMCXケーブル(8芯 銀メッキ線)、イヤーピース(白色タイプのほか、シリコンタイプ2種類がそれぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンタイプ(黒・グレー・赤・青の4色)、替えフィルターメッシュ、ケース、保証書、となっています。

Yinyoo HQ10Yinyoo HQ10
実際に手元に届いた「Yinyoo HQ10」は写真以上に美しく、所有欲を満たしてくれるデザインとなっています。フェイスパネルの仕上がりは非常に良く、メーカーでもこのデザインになるまでに製造工場と何度もテストショットを重ねたこともあって、高級感を十分に感じる造形となっています。
Yinyoo HQ10Yinyoo HQ10
クリアなハウジングには片側10BAのドライバーの存在感が抜群にあります。ただ「HQ5」「HQ8」同様の少し大きめのサイズと、すべてデュアルBAタイプのドライバーユニットを採用していることもありハウジングにぎゅうぎゅうに詰まっているという感じではないようです。これなら今後12BAモデルとかも・・・(おっと)。
Yinyoo HQ10Yinyoo HQ10
Yinyoo HQ10」を8BAの「HQ8」と比べるとシェル形状は全く同じなのですが、フェイスプレート部分に占める割合がHQ8のほうが少しだけ大きいため、見た目だけだと「HQ8」のほうが大きく見えるかもしれませんね。
Yinyoo HQ10Yinyoo HQ10
「HQ5」「HQ8」同様に金属製のステムは少し太いですが装着性は非常に良好です。付属のイヤーピースのほか、AZLAの「SednaEarfit」やAcoustuneの「AET07」、JVCの「スパイラルドット」等の組み合わせがお勧めです。特に耳穴の小さい方は「スパイラルドット」のSサイズなどを組み合わせると良いのではと思います。
私も耳穴が結構小さい方なのですが、最近発売された「SednaEarfit」のSSサイズを組み合わせることで大きめのハウジングながら快適に装着することが出来ました。全体的な音の締まりも良くなるためお勧めの組み合わせですね。
Yinyoo HQ10 Yinyoo HQ10
Yinyoo HQ10」の片側10BAは高×4中低×4+低×2 の3Wayクロスオーバーのデザインとなっていて、実際に使用されているバランスド・アーマチュア型ドライバーは高域ツイーターの「Bellsing 30017」(2BA)×2基、中低域ユニットの「Knowles GR-31587」(2BA)×2基、低域ウーファーの「Knowles HODTEC-31323」(2BA)×1基の組み合わせとなっています。

サウンドコントロールはネットワーク回路による抵抗などはとくに見当たらず、かわりに中高域の「Knowles 31587」をまとめる音導管と、低域の「Knowles 31323」からの音導管にフィルターが入っています。これまでの「HQ6」「HQ8」と比較し、「Yinyoo HQ10」は高域は「HQ8」同様に「Bellsing 30017」による4BAが割り当てられていますが、同時に「Knowles 31323」が2基から1基(2BA)になっていて、「HQ6」「HQ8」での音作りでの中心的な立ち位置から低域のサポートに回ったような構成となりました。その代わりに中低域の「Knowles GR-31587」を4BA追加しているのが特徴的です。この中低域の構成がサウンドバランスに大きく影響していると思われます。


■片側10BAらしい情報量の多いサウンドながらスッキリした印象のフラットサウンド

Yinyoo HQ10」の音質傾向は中低域メインのフラット寄りのサウンドで、中高域の解像度の高さと10BAらしい余裕のある鳴り方が印象的です。ドンシャリ傾向の「HQ8」に比べると高域および低域はやや控えめで中音域を心地良くならすタイプのチューニングになっています。HQシリーズの他のモデル同様に開封直後はドライバーが本気を出していないように感じる個体もあるかと思いますが、このよ場合も1日程度鳴らしてやると抜けが良くなるようです。

Yinyoo HQ10ただ、片側10BA(両側20BA)という多ドラ仕様のためこれだけの数のドライバーを安定して稼働させるだけの出力を持ったプレーヤーやアンプ等の再生環境が必須となります。もちろん「Yinyoo HQ10」に限ったことではありませんが、出力環境の駆動力不足の場合、極端に籠もった感じの音になったり、プレーヤー側の歪みによりハイ上がり等の原因になる場合があります。
また非常に反応が良く、カスタムIEM等に対応できるS/Nの高いプレーヤーを使用しないとホワイトノイズが盛大に乗ります。さらにS/Nが高く十分に鳴らせる駆動力があるDAP(デジタルオーディオプレーヤー)でも後述の通り、これらのBAを稼働させる高い消費電力のため他のイヤホンよりかなり早くバッテリー切れになることもあるようです。
つまり、「Yinyoo HQ10」は価格こそ3万円台で購入できる製品ですが、仕様的にはより価格帯の「多ドラ」イヤホンと同様で、再生には相応に見合った環境を用意する必要がある「そこそこハードルの高いイヤホン」だといえますね。

Yinyoo HQ10加えて、付属の8芯ケーブルは、これまでの「Yinyoo HQ」シリーズでもその傾向はありましたが、「Yinyoo HQ10」では明らかにスペック不足でこの組み合わせでの利用はお勧めできません。付属ケーブルはMMCX仕様の8芯ケーブルでより低価格なイヤホンでは問題ないと思いますので他のイヤホンに転用するなどして、「Yinyoo HQ10」では仕様に見合ったより情報量の多いケーブルへリケーブルすることをお勧めします(個人的にはこのくらいのモデルになればリケーブル前提の「ケーブルなし」モデルを用意して良いのでは、と思います)。
最近は私のレビューでも多く紹介しているとおり、3千円前後でも質の高い中華イヤホンケーブルが販売されていますが、「Yinyoo HQ10」のグレードを考慮すると、最初から6千円~8千円クラス以上のケーブルを選択したいところです。個人的なお勧めとして「Yinyoo HQ10」と組み合わせる最も「スタンダード」なケーブルは、Yinyooブランドの16芯タイプ銀メッキ銅線ケーブル「YYX4745 16芯 銀メッキ OFC ケーブル(シルバー)」および「 YYX4778 16芯 銀メッキ OFC ケーブル (ブラック)」、または16芯ミックスのKinboofi「KBF4746 16芯 銀メッキ線+高純度銅線ミックス ケーブル」、16芯高純度銅線の「KBF4779 16芯 高純度銅ケーブル」といった16芯ケーブルのシリーズだと思います。

Yinyoo HQ10これらの16芯ケーブルを組み合わせることで付属ケーブルで感じた少し平坦な印象が一気に解消され「多ドラ」イヤホンならではの分離性および解像度の高さと同時にスッキリとした抜けの良さを感じる明瞭感のあるサウンドになりました。少し控えな印象だった高域の伸びも良くなり曲によっては硬質なキラキラ感も実感するようになります。マルチBA特有の籠もっているという印象は無く十分な表現力がある印象です。低域はこれまでの「HQシリーズ」の量感のある低域をイメージとは全く異なる軽めの印象ですが、解像度は高くしっかり沈み込む響き方をする存在感のある音です。リケーブルのうえ、十分に駆動力のある再生環境であれば籠もることはなく、締まりの良さも感じると思います。
そして「Yinyoo HQ10」のもっとも特徴的な中音域は、片側10BAというドライバー数をふんだんに活かした歪みの少ないフラットさと情報量の多さがとにかく気持ちよく感じます。高音質なシングルダイナミックドライバーのような響きの良さより、音の細かさを感じるいかにもマルチBA的、あるいはモニター的な印象もある音ですので派手めのサウンドを好まれる方からは「好み」が分かれる可能性もありますが、ボーカル曲を中心とした利用では曲のジャンルを問わず楽しめそうです。
音場は一般的かすこし狭めですが、違和感のない近めの距離感で立体的に定位しますので張り付くような印象や逆に遠くで鳴っている感じにはならない自然な印象でまとまっていると思います。

Yinyoo HQ10なお、上記の16芯ケーブルごとの違いですが、「Yinyoo HQ10」に味付けをせず、実力を引き出している印象なのが銀メッキ線の「YYX4745」と「YYX4778」との組み合わせで、線材の違いからブラックの「YYX4778」のほうが少しだけ高域の伸びが良くなります。
いっぽう全体的に少しメリハリがつくのがミックス線の「KBF4746」で、低域の厚みが増すのが銅線の「KBF4779」となります。好みに応じて組み合わせを検討いただくのが良いと思います。
ほかにもYinyooブランドでは比較的高価格帯の高純度銅線のひとつ「YYX4765 金銀合金&OFCケーブル」ではさらにメリハリが強化され、高域強めで刺さりを少し感じる中高域寄りの「派手めの音」になります。同様に中華ケーブル以外でも高純度銅線の傾向がハッキリしている七福神商事の「丸七赤龍」やNOBUNAGA Labs.「更紗」(および「友禅」など)にリケーブルした場合も似た印象となりました。

Yinyoo HQ10また、リケーブルによりさらに「Yinyoo HQ10」のサウンドをアップグレードしたい場合、個人的には七福神商事が販売する8芯純銀線の「丸七銀龍」との組み合わせがとても好印象でした。純銀線は高域の伸びが向上する効果があるとされているため、少し派手になると思われがちですが質の良い純銀線では全体的な分離性を向上させつつ、緩やかに高域の伸びをよくしてくれるため「Yinyoo HQ10」のようなイヤホンとは最適な組み合わせです。他にも私はまだ持っていないのですがAliExpressでEasy Earphoneが販売する「Yinyoo 4 Core Pure Silver Upgrade Cable」やほぼ同様のケーブルと思われるKinboofiの「KBF4782 純銀リケーブル」もかなり良い相性だろうと思っています。個人的にはこの辺のケーブルも11.11セールで狙ってみようかな、と思っています(^^)。

Yinyoo HQ10ただ、どのケーブルも一気に情報量がアップするためDAPやポタアンによっては付属ケーブルでは発生しなかったホワイトノイズがこれらのケーブルにリケーブルした途端聞こえるようになった、というケースも起こる可能性があります。
また情報量が増えると言うことは消費電力も相応に増えるため、たとえばコンパクトながら駆動力に優れたDAPである「Shanling M3s」と組み合わせて新幹線移動で使ってみたところ、本来では往復でも半分も減らないバッテリーが片道数時間の移動で切れてしまう、という状況に遭遇しました。以降、新幹線で使うときは「iBasso DX150」などパワーにも余裕のあるプレーヤーを使用するようにしていますが、いかにも10BAイヤホンらしいですね。


Yinyoo HQ10というわけで、「Yinyoo HQ10」は価格的にも要求する再生環境の面でも気軽に多くの方にお勧めするタイプのイヤホンではありませんが、このクラスの製品に興味があるマニアの方々には思った以上に満足度の高い製品だと思います。既存モデル、特に「Yinyoo HQ8」との比較では、よりドンシャリ傾向で派手めのサウンドが好みの方には「HQ8」のほうが向いていると思いますが、よりフラット傾向でスッキリした明瞭感のあるサウンドが好みの場合には「Yinyoo HQ10」は良い選択肢になると思います。
個人的には「Yinyoo HQ10+純銀線ケーブル」の組み合わせは現時点では「HQ6+金銀合金線ケーブル」の組み合わせと並んでかなり好みのサウンドでした(「現時点では」というのがミソです。このシリーズ、さらに続くかも?なので。例えば「12BA」とか^^;)。また結構聴きやすく使いやすい傾向のイヤホンであるため今後の利用機会も多そうです。とりあえずはさらにリケーブルによる音質強化を狙って・・・相変わらず沼の深さを実感するこの頃です(笑)。



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読み:ばいそにか。無駄に中華イヤホン等いろいろ買い続けるアラフィフ限界オタクの酔っ払い。ダイエット中ですが食べるのも好き。普段は東京と福井(鯖江)の自宅の二拠点生活で小さなIT系企業を細々とやってます(出張多め)。仕事の合間に趣味で書いてるレビューブログも2022年末に1千万PVを突破(あざす!)。相変わらずのマイペースですが今後もよろしくです(^^)
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