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■Lightning接続のMFi取得バスパワーの小型ポタアン/DACがロジテックから!


エレコムのグループになって久しい「ロジテック」ブランドの「例のアレ」です。「Lightningオーディアダプター LHP-AHR192」です。
いわく、Lightning対応の小型ポタアン/DAC製品のなかで、内蔵バッテリなしのバスパワーでAppleのMFi(Made for iPod/iPhone/iPad)を取得しつつ24bit/192KHzのハイレゾに対応した最初の製品らしいです。

ちなみに、ポータブルアンプ(略してポタアン)というのは、ヘッドホンやイヤホン用に持ち運べる小型のオーディオアンプのこと。本来は音を増幅し、小型プレーヤーでは慣らしにくい高インピーダンスのヘッドホンなどに対応させるものですが、最近では逆に反応が非常に敏感なIEM(イヤーモニター)用にノイズを徹底的に排除したり、より好みの音質傾向に「味付け」する製品も増えています。
さらにDAC(Digital / Analog Converter)を内蔵するタイプは、プレーヤー機器から直接デジタル信号を受け取り、アンプ内でアナログ信号に変換するため、より高音質でノイズの少ない再生が可能になります。
また、プレーヤー側とDAC側の両方が対応している場合は「ハイレゾ」(Hi-Res Audio。CDや通常のデジタルオーディオの16bit/44.1kHzより高い周波数やビットレートで収録された音源ですね)の再生も可能になります。

このロジテックの製品は、iPhone/iPadなどのiOSデバイスのLightning端子に直結し、ハイレゾを含む音楽データを高音質で再生できるコンパクトなアダプタ、という位置づけの製品ですね。

私は、今年の前半にエレコムのハイレゾイヤホンのレビューしており、そのなかで紹介している「EHP-CH2000」相当品をバンドルしているモデル「LHP-CHR192」もある、となればこれを買わないわけにはいきません。
ただ、さすがに同じイヤホンを2個もいらないので、単体モデルの「LHP-AHR192」を発売開始約1ヶ月前に某Amazonで予約注文。
しかし発売日の12月10日になっても商品が届かない。出荷もされてない!
Amazonでは新規注文の納期3週間~とか。いっぽうのイヤホン付きモデル「LHP-CHR192」は即納!
悲しみにうちひしがれる中、Amazonからの納期遅延メールとともに、約4日遅れで届いたのでした。
ほんと、大人気商品じゃないすか!
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というわけで、遅まきながらの開梱式を経て、約3週間、仕事の合間や、福井~東京間の移動の御供などでいろいろ環境を変えて聴いてみました。


■付属イヤホンにもなっている「EHP-CH2000」でLHP-AHR192を使ってみる。

外付けのDACやポータブルアンプを使用する音質的な最大のメリットは、「ノイズを減らすこと」ことにあります。
オーディオ関連の記述をみると「S/N(比)」という言葉をよく見かけます。S/Nとは信号(Signal)とノイズ(Noise)の比の事で、ここでいうノイズとは例えば古いラジカセなどでボリュームを上げると聞こえてくる「シャー」っといった感じの雑音というとわかりやすいかもしれません。コンピュータやスマートホンなどの電子機器は構造上「電気ノイズの固まり」といえなくもないため、機器本体のイヤホンジャックからの音には微弱ながら同種の電気ノイズがどうしても乗ってしまうようです。

ここでポタアンなどを機器本体の外部に接続することにより、アンプ内の処理でノイズを軽減し、音声部分を増幅することでS/Nを高め、高音から低音まで、小さな微音から大きな音までをクリアに表現させることができます。またDAC機能も外部のポタアンに搭載することで機器本体からはデジタル信号のままDACに送られ、より高音質にアナログ(音声)に変換できるため、スマホ直挿しでは乗ってしまうノイズをなくし、さらにDAC性能次第でより高音質での再生が可能になるわけです。

つまり、Lightningで直接デジタル接続する高音質のDAC搭載ヘッドホンアンプである「LHP-AHR192」を使うことで、ハイレゾに限らず、Muscアプリに入れた曲やApple Musicなど「普通のiPhoneの音楽データ」もいい音になるはず、なわけです。

imageそういった視点で、まずは、あえて普段使いのイヤホンやヘッドホンではなく、同じエレコムのEHP-CH2000を使ってみます。イヤホン付属のLHP-CHR192相当の構成です。とりあえずハイレゾで、というところですが、ここも日常使いのシチュエーションを考えてふつうにMusicアプリを起動し、Apple Musicでいろいろ流してみます。

もともとEHP-CH2000はイヤホン直刺しでも低音を強調しながらしっかり鳴ってくれるわけですが、LHP-AHR192を通すことでS/Nが大幅に向上し、全体的にクッキリする印象を受けました。
Apple Musicの場合で、アコースティックな楽曲ではよりシャープになることで聞きやすさが多少向上する程度ですが、いっぽうで、ポップスやロックなどの曲を選曲すると、臨場感が一気に広がるのがわかります。

たとえば野宮真貴の新しいアルバム「世界は愛を求めている。」から「ドリーミング・デイ」をプレイすると冒頭のピアノからS/Nの向上を実感し、低音が広がることで独特のボーカルが強調されちょっと豪華な(?)渋谷系に。

EDM系だと、たとえばYears & Yearsの「Communion」から2曲目の「Real」を再生すると、より雑味が消えてEDM独特のキレの良いサウンドが気持ちよく広がります。

イヤホンとの組み合わせも含めて、たぶんこの製品を利用する多くの層にとって「わかりやすい」ところにチューニングされているなと感じます。
いっぽうハイレゾ音源ですが、エレコムから無償アプリでリリースされているプレーヤーを使用すると、シャープさと同時に解像度や情報量がぐっと増えて、なかなかわかりやすいハイレゾ感をだしてくれます。
ちなみに、「Elecom Hi-Res Music Player」という名前のアプリですがインストールすると「ハイレゾ」というなんともそのまんまのアイコン名になります。まあ、無償ですし、わかりやすさが大事ということでしょう。
Onkyoの「HF Player」もイコライザなどでチューニングを変えることができますが、このプレーヤーはあらかじめポップスやロック向けの(緩やかな)チューニングにあわせている印象です。

ただし、このエレコムのプレーヤーといい、付属されるEHP-CH2000というイヤホンといい、「わかりやすい」ということは、そのように感じるようにチューニングしている、とも言えるわけで、「脚色」するうえで当然ターゲットとしている音があると思われます。エレコムのプレーヤーアプリとEHP-CH2000イヤホンに共通しているのは、中低域を強調するロック・ポップス向けのチューニングで、ジャズやクラッシックなどの曲ではところどころで荒さがでてきます。

さらに、EHP-CH2000については、以前イヤホンのレビューをした際も書いたとおり、アニソンやボカロなど、女性ボーカルや打ち込みによる高域成分が大量に含まれる曲は結構うるさく感じるという傾向もあります。
個人的にはこの組み合わせではfripSideあたりはかなりキツかったです。男性ボーカルでもヤング・ブラックジャックのOP主題歌「I am Just Feeling Alive」でなかなかの耳疲れ感がありました。

imageこれを同価格帯のイヤホンでShureの「SE215SPE-A」をLHP-AHR192につなぎ変えてみると、同様に中低音の広がりを感じつつ、これらの曲も心地よく再生してくれます。
LHP-AHR192はこのように、イヤホンの特徴をとらえながらS/Nを向上し、中低域を強調してくれることで、ポタアン導入効果を実感させているのがわかります。特に上記の「SE215SPE-A」のような、1万円~2万円クラスの特徴的なイヤホンを好みで使い分けてみるとちょうど良い感じがします。

なお「LHP-CHR192」で付属するEHP-CH2000(相当品)もわかりやすいアプローチでハイレゾを実感できるイヤホンですが、例えばLHP-AHR192を使用し、プレーヤーをOnkyoのHF Playerで、特に96KHz/24bitのハイレゾFLACを192KHz/24bitにアップサンプリングして聴くと、曲によっては「ああ、このイヤホン(EHP-CH2000)では無理だな」と思ってしまう場面もあります。


■Shure SE535LTDを使ってLHP-AHR192を「Astell&Kern AK10」と比較してみる!

image純正のEHP-CH2000の限界を感じたところで、普段使いの「Shure SE535LTD」にスイッチしLHP-AHR192につなぎます。まず、SE535LTDは非常に感度がいいので、EHP-CH2000で真ん中辺りにしていたボリュームを1/3程度まで下げる必要がありました。それでもホワイトノイズは発生します。
まずは、LHP-AHR192を経由することで同様にシャープさが増すと同時に、HF Playerではハイレゾのサウンドをきちんと実感させます。
フラットな特性のSE535LTDを使用した場合は、今度はアコースティックな曲のほうがむしろ中高域の伸びが気持ちよく感じるようです。
これもある意味イヤホンの特性を出していると言えるかもしれません。

imageここで、LHP-AHR192と比較するために、最近ではMacBook Proでの利用の方が多くなっている手持ちの「Astell&Kern AK10」をあらためてiPhoneに接続し、SE535LTDで聴き比べてみます。
まずは、LHP-AHR192と比較してハイレゾを聴いた場合、AK10が非常に素性のよいポタアンなのだと改めて実感しました。AK10はLightning直結型小型ポタアン/DACといってもバッテリ稼働ですので充電が必要ですし、96KHz/24bitまでの対応と今となってはだいぶ古さを感じる製品といえるでしょう。しかし、SE535LTD同様にフラット傾向の強いAK10との組み合わせでハイレゾを再生した場合、とても素直で気持ちよく、しかししっかりと聴かせてくれます。

逆に、SE535LTDでApple Musicなど、MusicアプリでのAAC音源を聴いた場合は、AK10と比較し、LHP-AHR192は音の変化をわかりやすくアピールしてくれます。もちろん静かなリスニング環境では多少の大味感は否定できないですが、電車の中など周辺ノイズの多い環境では使い回しのよさも加えこのわかりやすさがプラスに作用します。
この構成で新幹線などの長距離移動でApple Musicの楽曲をオフラインで聴いていましたが、バッテリの消耗を気にすることなく、Shureの高い遮音性を活かしてさまざまなジャンルの楽曲をたっぷり堪能できました。
iPhone + LHP-AHR192 +Shure SEシリーズ。新幹線でApple Musicを聞くときにはこの構成は悪くないですね。


■iPadと組み合わせてヘッドフォンで聴き比べ

今度は、手持ちのヘッドホンでも聴き比べをしてみました。どうせなのでデバイスもiPadに変更します。

まずゼンハイザーの「HD598」とAKGの「K550」。手持ちのヘッドホンとしては比較的反応の良い方かもしれませんがやはりヘッドホンアンプは欠かせない存在。ここでLHP-AHR192を使うと、とりあえずはポタアンとしての役割を果たしてくれます。この辺まではまあ当然ですが、ヘッドホンと組み合わせるとサイズ的にリモコンをはさんでるイメージでちゃんとポタアンとして機能しているというのが少しうれしくなります。
サウンド的には、S/Nの向上からか、HD598では中低域の広がりを感じ、K550ではボーカルがよりクリアになるイメージ。ヘッドホンの個性がより強調されている感じになります。なお、さらにLHP-AHR192とヘッドホンの間にFiio E12などのポータブルアンプをはさむことで余裕を持ったドライブが可能になり、DACの特性をより明確に感じることができました。
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このLHP-AHR192のDACとしての傾向はHD598やK550など、比較的高性能なヘッドホンより、ポータブルの「AKG Y40」などのポータブルモデルほうが顕著にあらわれ、Y40で直差しだとちょっと曇ったように感じた音がくっきり明瞭になり密閉型オンイヤーながら1ランク上がったようなサウンドが実感できます。
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また手持ちでもっとも「鳴らない」ヘッドホンの「AKG K240 Monitor」という古いヘッドホン(インピーダンス600Ω)でも、ボリュームを最大近くに上げる必要はあったものの、なんとか鳴らすことができました。


■ポイントを押さえた普段使いアイテム

image「LHP-AHR192」は、採用チップや開発時の記事、そして商品の価格帯などをみても、やはり「このサイズで」「MFi準拠で」の水準として見るべき商品ではあるものの、「普段使いのオーディオ製品」としてのポイントはちゃんと押さえられていると思います。
さすがに10万円オーバーの高級なヘッドフォンやイヤホンと組み合わせるのは無理としても、私も含め、マニアじゃない層でも手が届く範囲のオーディオはある程度網羅できているのではないかと思います。特に普及価格帯の製品での効果は絶大で、お手軽に高音質化する、という目的にかなり特化した商品と言えますね。

手持ちのヘッドホン・イヤホンのなかではヘッドホンでは「AKG Y40」との組み合わせが、イヤホンでは「Shure SE215SPE-A」との組み合わせが大変気に入りました。特に「AKG Y40」はiPhone直挿しでは隠れていた実力が「LHP-AHR192」によって一気に開花したような劇的な変化が楽しめます。


■もしかして、iPhone 7 時代のマストアイテムを先取り?

これを書いている2015年12月現在ではほぼ憶測レベルですが、ウワサだとiPhone 7 ではとうとうイヤホンジャック(ミニピンステレオ端子)が廃止され、付属イヤホンもLightning端子接続になるとか。

またiPhnoe7のタイミングで、Appleからもハイレゾの音楽配信がスタートするのでは、などといわれております。

AACの256kbpsでもWiFiでの帯域が理想的とされるApple Musicで、ハイレゾをストリーミングでの定額配信しようと思うと、いろいろ技術的にもやることがありそうですが、iTunes Music Store(iTMS)でのハイレゾ曲のダウンロード販売ならAppleがその気になればいますぐでも開始できるはずです。
実際、Appleロスレス・コーデック(ALAC)フォーマットはiTunesで普通に音楽データとして扱うことができ、最大192KHz/24bitまで対応しているわけで、さすがにe-onkyoやmoraのようにFLAC配信ではなくても、Apple Musicの配信曲がさらに増えれば、iTMSの販売もALAC(ハイレゾ含む)にシフトするのは時間の問題のように思います。
そんななか「MFi準拠でLightning対応192KHz/24bit対応ポタアン」のLHP-AHR192は、おそらくiPhone 7 時代のAppleのハイレゾ音楽配信に誰でも手軽に対応できる、ちょっとだけ時代先取りな商品かもしれませんね(笑)。

気がつけば、エレコムもすっかりオーディオメーカーとして認知されてきました。
東京から福井の自宅に戻った際、近所の家電量販店へ足を運ぶと、イヤホン・ヘッドホンのコーナーは相変わらず海外オーディオメーカーの製品はほぼ皆無(BoseとBeatsがギリくらい)ですが、エレコムはすでに国内オーディオメーカーと同列に並んでいたりします。そんな「オーディオメーカー」のエレコムから、これからもどんな製品が出てくるのか楽しみに見守っていきたいと思います。