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■ASUSTORはQNAPの夢をみるか。ASUSの似非QNAPかも?

ちょっと前から気になっていた「ASUSTOR」のNASですがファームウェアが現行バージョン(ADM 2.6)で安定してきたぽいという話を聞き、思うところ(後述)もあり購入してみました。
これで東京の部屋で稼働中のNASはなんと5台目(笑)。困ったものです。

 「ASUSTOR」はあのASUSがつくった新鋭NASメーカーです。狙っているところはパワーユーザ向けNAS市場ですが、ぶっちゃけ同じ台湾メーカーでNAS分野で大きく先行する「QNAP」のフォロワーですね。同様にQNAPフォロワー的な位置づけで「台湾NAS戦争」(笑)の一角としてのポジションを急上昇させているSynologyあたりが純然とファイルサーバおよびメディアサーバとしてのNASに特化しているのに対し、ASUSTORはQNAPの「これってもうNASというよりサーバだよね」的な多機能ぷっりをそのまま継承し、「QNAPの上のモデルって機能満載だしHDMIでKODI使えるけどちょっと高いんだよな-」ってニーズをごっそり取ろうとしてるようにも感じます。つまり、似非QNAPですかね(失礼)。

_SL160_実際今回購入した「AS3102T」はNASとしての基本性能も含めて(これ重要)、さらに「メディアサーバ」としての機能はQNAPでいうと「TS-251」や「TS-251+」に匹敵するものです。もちろん単純比較はできませんが、TS-251+の半額~レベルで購入でき、同様のアプリケーションが利用できる、となるとちょっと考えたくもなります。

ちなみに、「AS3102T」は2ドライブデュアルコアCeleron、「AS3202T」はクアッドコアCeleron搭載の最新(激安)モデルで、上位の「AS6102T」「AS6202T」などがQNAPに仕様を寄せて(ちょっと上行って)少し安い、という位置づけです。
いかにもなラインナップですが、正直AS6x買うくらいならQNAP行くだろうと思いますので、やはりメインは「AS3102T」「A3202T」で、動画のトラスコ性能などを求めなければデュアルコアの「AS3102T」でOKかな、という感じです(この2機種の価格差は1万円ほどありますので)。


■ASUTOR AS3102Tのいいところ

①抜群のコストパフォーマンスの「価格」
Amazonで「AS3102T」を29,000円ほどで購入。
おそらく同価格帯のQNAP TS-231/TS-231+と比較すると思いますが、実際にはTS-251クラス。
(ASUSTORには下位にAS1002Tが2万円前後であり、これが「TS-231」や「Synology DS216j」クラスに相当する位置づけ)。

ただし取付けるHDDはQNAPのようにカートリッジ式ではなく、外装もプラスチック筐体。LANも1つのみ。標準2GBメモリで増設不可。あとiSCSIやNFSに対応しつつもVMwareやCitrixの認定は取ってない等、個人向けに「いらない」と思うことはバッサリ切ってコストを下げているところがいかにもASUSらしいですね。
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ちなみに、初期設定は本体にLANケーブルを接続し電源投入後、付属CDでツール(ASUSTOR Control Center)をインストールし、認識させます。あとはブラウザ経由で初期設定をメニューに従って実施します。
初期セットアップ時は、Control Centerで選択しても「開く」で反応しない場合があるようです(気のせいかも)ので、その場合は、Control Centerで表示されたアドレスをブラウザに入れてアクセスします。まあDHCPのある環境でセットアップした方がいいのはこの手のNASは基本ですね。


②QTS並の高性能。潔さすら感じるソックリっぷり(笑)
QNAP搭載のOSである「QTS」のウリであるさまざまなアプリケーションのインストールについても同様に可能にしています。アプリ追加は他社NASでも多く実装を始めていますが、使えるアプリの種類がQNAP並に豊富。
画面デザインは、ほぼQTSをシンプルにしたようです。アプリを管理する機能も「App Central」といって(ちなみにQNAPでは「App Center」という)インストールなどの管理画面もソックリです。まあASUSの一部の製品にもこの手のモノはありますが、ある種の潔さすら感じます(笑)。

※ASUSTOR (ADM)の画面
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※参考:QNAP (QTS)の画面
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③DTCP-IP対応「eMedia DTCP Move」ほか豊富な追加アプリ環境。
さらに「Hi-Res Player」でDSD対応のハイレゾ再生環境を提供。

アプリの網羅性も高く、ほぼ「パワーユーザ向け高機能NAS」の要件を満たしています。アプリのジャンルによってはQNAPを超えている部分もあります。

特に本体にUSB-DACを接続してハイレゾやDSDを含む音楽メディアを管理・再生できる「Hi-Res Player」などは「0.19.15」とかのバージョンにもかかわらず、現時点で完全にQNAPの「Music Station」を超えたプレーヤーとして使用可能です(いちおう機能的にはQNAPのMusic Stationも同様にUSB-DACを接続してハイレゾ再生が可能。過去記事を参照ください)。今回、この「Hi-Res Player」こそが、私が今回AS3102Tを購入した理由だったりします。
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Hi-Res Player」は、NAS内の音楽データをライブラリ化し、アーティストやアルバムごと、またはフォルダ単位でのアクセスでプレイリストを作成できるハイレゾ対応プレーヤーです。接続したUSB-DACを出力先に選ぶことで、DACの性能に合わせたハイレゾ音源のネイティブ再生に対応し、さらにDoP(DSD over PCM)方式でのDSDネイティブ再生にも対応します。
今回、USB-DACとして、ASUSTORでも推奨しているiFI社の「nano iDSD」を接続しました。最大32bit/384kHzのハイレゾPCMに加え、DSD256(11.2MHz)にも対応できる低コスト高性能DACの代表選手ですが、DSDを含むすべての対応フォーマットで非常にクリアなサウンドでの再生が可能でした。

また「Last.fm」のアカウントを登録しログインしておくことで、再生中のアーティストやアルバムの情報なども(ある程度)リアルタイムで表示されます(この場合、言語を「英語」のままにしておいたほうが情報量が多い)。

ただ、操作環境については、「Hi-Res Player」そのもののオペレーションは現時点ではPCやMac環境でのブラウザのみの対応です。残念ながらiPadのブラウザアプリでPC用の画面を表示した場合正常に操作できませんでした。
hrplayer1しかし「Hi-Res Player」の画面を使ってみて、どこかで見たことがあるな、と思ったら、実はLinux用の音楽再生エンジンである「MPD」用のGUI再生環境「Music Player Minion」をカスタマイズしてサーバ実装したもののようです。実際ASUSTORサイトの「Hi-Res Player」のページで作者のリンクはMPDのサイトでした。
ということで「MPD」用の再生環境はASUSTORにも使えるはず、というわけで、iPhone用のリモコンアプリ「MPoD」をインストールし、使用したところ問題なく利用が可能でした。シンプルな設計ながら安定した動作です。このように、実は他にもMPD再生環境はほぼすべてASUSTORに対し利用可能だったりします。

このように、あくまで「ASUSTORのアプリとしてのHi-Res Player」はまだまだ不完全で仕様的にもクセのある部分が多いですが、この機能自体はかなり遊べそうです。この「Hi-Res Player」環境については今後改めてレビューしようと思っています。
※追記:「Hi-Res Player」と、この環境で利用できる各MPDクライアントについての記事を掲載しました。
ASUSTORを高性能ミュージックサーバ/HDDオーディオプレーヤーとして活用する

emediaその他、nasneなどのDTCP-IP仕様のビデオソースのダウンロードに対応する「eMedia DTCP Move」アプリのライセンスキーも付属しています。

「App Central」で同アプリをインストールし、キーを登録することで使用可能。PC等で「eMedia DTCP Move」のWeb画面からの操作で、nasneなどの機器からコンテンツをASUSTORへダウンロード(ムーブ)することが可能です。またRECBOXなど直接操作が可能な外部DTCP-IP機器を使ってASUSTORへのムーブも可能など、各社のDTCP-IP対応モデルと同様な使い方が可能になります(ただし保存先は「eMedia DTCP Move」アプリで管理される保存先のみが対象)。
 
試しに「eMedia DTCP Move」のWeb画面からASUSTORと同じLAN上のnasneにアクセスしてコンテンツを参照し、ダウンロード(ムーブ)を実施しました。また、同じくLAN上のI.O.DATAのRECBOXに保存されたデータをRECBOXのWeb画面からASUSTORを指定してのムーブも問題なくスムーズに使えることを確認しました。

ただし、「eMedia DTCP Move」のWeb画面を使って「ASUSTOR自身に保存されたコンテンツ」をさらに別のデバイスにムーブさせる機能はありませんでした。そのため、eMediaで管理されたデータをさらに移動させる場合は別途ダウンロード機能を持つソフトまたは装置から行う必要があるようです。
なお、eMedia DTCP Moveで管理されるデータはPS3など外部のDTCP-IP対応機器で再生が可能です。

個人的には、QNAPはアプリの増加に伴い標準アプリとAppCenterでインストールできる外部アプリに同じ機能・用途のものが増えすぎて、どれを選べがいいかわかりづらくなっている部分があると思っています。この点でASUSTORでは標準のアプリも含めてAppCentralでインストールする方式にしているため、標準アプリもサードパーティー製も同じ目線で、お勧めや自分の用途にあったアプリを選ぶ、といった使用法が少しだけしやすくなっている点は好感が持てました。


④HDMI接続でKODIメディアプレーヤーとして使える
imageIntel製プロセッサを搭載したTS-251以上のQNAP製品同様に、HDMI出力を搭載し、TVやAVアンプなどに接続することで、USBに接続したキーボード・マウスや、iOS/Androidに対応したリモコンアプリ「AiRemote」で直接操作できる「ASUSTOR Potal」機能が使えます。さらに「KODI」メディアプレーヤーをインストールすることで、NAS自体を多機能メディアプレーヤーとして利用できます。
KODI」メディアプレーヤーは、Windows版やMac版もあるフリーのメディアプレーヤー環境ですが、なんといっても多機能さが特徴。
対応フォーマットは一般的なMP4、MOV、AVI、WMV、MPGなどのファイルはもちろん、TS抜きしたデータ(M2TS、TS)やMKVコンテナ、さらにはDVD ISOやBD ISOといったディスクイメージまで、あらゆるフォーマットを再生できます。
また自身のHDD以外にも、他NAS等のファイル共有(SMB)、DLNA(UPnP)などによりネットワーク上のライブラリも登録、利用が可能です。(ただし、もともとKODIはDTCP-IPには対応していないのでeMedia DTCP Moveで管理される自身のデータも含め外部の著作権保護付きのデータは再生できません)

「ASUSTOR Portal」ではHDMI 1.4bにより4K画質にも対応し、AVアンプなどのデコーダを経由して5.1ch以上のマルチチャンネル出力も可能。ホームシアター用としてもほぼ無敵のメディアプレーヤー環境です。
特にTS抜き録画を行った.tsや.m2ts形式のファイルは転送レートが高く、NASやネットワークの性能によっては、ネットワーク越しでのDLNAプレーヤーを使用するケースでコマ落ちなどが発生する可能性がありますが、ASUSTOR自身の共有フォルダにこれらのデータをコピーしKODIで直接再生すればこれらの心配は必要なくなります。

従来はこのKODI環境のためだけにQNAP TS-251以上のモデルを買おうと思っていた方々にとっては、より安価で十分な代替品となるでしょう。私も福井の自宅でホームシアター用にもう1台、とかちょっと考えています。

※HDMI出力にAVアンプとTVを接続、5.1chで「KODI」メディアプレーヤーとして利用。
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※スマートフォン用のリモコンアプリ「AiRemote」
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ちなみに、下位モデル(非Intel製CPU)を含めて、すべてのASUSTORでApple「AirPlay」やGoogle「Chromecast」経由でのビデオ(LooksGood)や音楽(SoundsGood)の再生はもちろんサポートしています。これら用のiOS/Androidアプリ(AiVideoアプリとAiMusicアプリ)もあり、リアルタイムでのトランスコーディング再生が可能です。
この辺はQNAPフォロワーとしてはSynologyも含め必須の機能なのでしょう。各社ほぼ同じ、と思っていいです。外出先からのアクセス用の設定(DDNSやUPnPによるルータへのポート開放)もADMの「設定」の「簡単アクセス」から可能ですが、設定難易度はQNAP並でしょうか(初心者にはちょっと難しい)。この辺はSynologyが得意なところと言われていますが、ある程度NASやネットワークに慣れている方ならASUSTORでもさほど迷うことはないと思います。


■低価格で実用的。マイナーだけど最初の1台に選んでもOKの多機能NAS

今回、QNAPとの比較と言うことで、NASの機能と言うよりメディアサーバに重点を置いて紹介しましたが、ファイルサーバとしての機能も大変充実しています(QNAP同様)。

細かいアクセス権設定やSMB/AFP/NFS/FTP/WebDAV、そしてiSCSIなど多彩なプロトコルへの対応、Active Directroyとの連携など、高機能型NASに求められる機能はすべて網羅していますし、無償でアンチウイルス機能も使えます。個人向けとして使い切れないほどの性能を持っており、紹介した強力なメディアサーバ機能を可能にするIntel製64bit CPU性能はファイルサーバとしてのパフォーマンスにも十分に発揮されます。
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耐久性などの側面はこれから使ってみないと、ですが、PCのマザーボードメーカーとしての高い実績でファンも多く、多くのPCメーカーへOEM供給もしているASUS社の系統らしく、シンプルでこなれた基板レイアウトからは、安かろう悪かろう的な「怪しさ」は感じませんでした。

ソフトウェア面では、QNAPがひたすら多機能路線を突き進み、結果ちょっと玄人向けというか、初心者にはわかりにくくなっている中で、ASUSTORでは機能を整理し、初期設定のウイザードを整備するなど少しでも敷居を下げようとしている感じがします。それでも例えばSynology製品などと比べれば、ところどころ「こなれていない部分」も多く、現状では「QNAPの代わりに購入した」というプレゼンスがないと、結構マイナスに感じてしまうかも。
今後のバージョンアップで「Hi-Res Player」に代表されるようなASUSTORの個性を伸ばしつつ、NAS本来の利用についてもソフトウェアの練度を上げていって欲しいものです。

購入金額は限られているけど、できるだけ色々な機能が使いたい。そんなちょっとマニアックな用途には「今後の伸びしろ」も含めて、最初の1台目でも最適なNASではないかと思います。