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■Windowsでも音はいいんですよ
謎の32bit/384kHz PCM DSD128(5.4MHz)対応、XMOS搭載USB-DACのレビュー後編です。

Amazon.co.jp:
Nobsound® Douk Audio Hi-Res 384K/32bit XMOS USB DSD1796 DAC

【前編】1万円DSD&32bit/384kHz対応「謎のUSB DAC」を買ってみる

※追記:現在Amazon.co.jpでは販売されていませんが、「AliExpress」のショップにて現在も中国より直接購入することが可能です。
→ AliExpress / Douk Audio Store 商品ページ


Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC(この記事ではこう呼びます)は、XMOS U8(USB Audio Class 2.0リファレンスデザイン)チップ搭載ということで、「前編」では、ドライバの不要なMac環境でAudirvana Plusでのレビューをしました。
「後編」ではいろいろ問題のありそうな、だけど大多数のユーザが利用するであろうWindows環境の接続を行ってみます。

ちなみに、最初に触れておくと、Douk Audio XMOS/DSD1796 DACは事前に注意事項、というか「留意事項」がありますが、Windows環境で接続しセットアップすること自体は非常に簡単です。またMac環境同様、foobar2000でも非常に「いい音」で鳴ってくれるコスパの尋常でなく高いUSB-DACです。1万円そこそこで購入できる商品としてはなかなかないレベルをクリアできているとは思います。


■ドライバCDによるWindowsへのセットアップ

では、何が問題か、というとすべては付属のドライバCD(8cm CD-Rにライティングしてある)にあります。最近では光学ドライブのないPCも増えていますし、最新バージョンを確保するためにもドライバはネットでダウンロードする方がむしろ一般的かもしれません。
しかし、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」のドライバは、あくまで8cm CD-Rです。ネットではダウンロードできません。いちおう「Douck Audio」というブランド名?のオフィシャルサイトのURL記載はありますがサイトが落ちているのか全くアクセスできません。まあGoogleのキャッシュで見てもたいした情報はありませんでしたが。

CDの中身はこんな感じです。
CD-R

ここでの留意事項は、ドライバのインストールにはこのCDが必要で、実際に使うのは「XMOS-Stereo-USB-Audio-Class2-Driver-3004_v3.20.0.zip」だけ、ということです。

このZIPファイルをPCにコピーし、解凍します。あとはインストールを行い、インストール完了時にUSB-DACの接続確認を促すダイアログが出ますので、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」を接続しOKすれば完了です。

ファイル名をみれば明らかなように、このドライバはXMOS社のリファレンスドライバのようです。
付属のv3.20.0でWindows 10へのサポートは行われていますので、最新の環境でも特に問題はありません。
ただ、XMOS社のサイトへアクセスしても同様のリファレンスドライバを一般のユーザがダウンロードすることはできないため、このCDを使う必要があるわけです。

なお、XMOSのドライバは、XMOS社がデベロッパに無償提供するリファレンスドライバと、Thesycon社により有償でOEMライセンスされるベンダドライバーの2種類があるようです。
英iFI Audio社(nano iDSD/micro iDAC2などのDAC製品)や米OPPO社といったXMOSチップを採用したUSB DACを提供しているメーカーは、例外なくこのベンダードライバを自社ドライバとして提供しています。

XMOSを採用した各社USB-DACのドライバは、各ドライバは接続する製品個別の情報を持つため、個々にインストールが必要なものの、共存は可能で、異なるメーカーの製品を同時に接続することも可能です。

ただし、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」が使うリファレンスドライバと各社のベンダードライバで共有している部分が存在するため、必ず提供されているドライバのバージョンの古いものから順にインストールする必要があります。
これを逆に新しいほうを先に入れて、古いバージョンを後から入れると、最悪どちらのUSB-DACも動作しなくなります。

例えばiFI Audioの「nano iDSD」はiFI社サイトで公開されているベンダードライバのバージョンは「2.26.0」(2016年6月現在)で、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」付属のリファレンスドライバは「3.20.0」ですので、共存させる場合は、必ず「iFIのドライバ → Douk Audio XMOS/DSD1796 DACのドライバ」の順でインストールします。またどちらかのドライバをインストールし直す場合は念のため、すべてのXMOS系ドライバをアンインストールしてから再度順番通りインストールする必要があります。

CD付属のXMOSリファレンスドライバをインストールし、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」が正常にオーディオデバイスとして認識できればとりあえずは完了です。


■「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」は、Windowsでも「DSDはDoPのみ対応」と割り切ろう
foobar2000用の設定について、必要なコンポーネントなどが「foobar components.zip」というファイル名でまとめて入っていますが、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」専用というわけではなく、一般的にfoorbar2000を使用するために必要なものしか入っていません。またバージョンが古いものなども混在しているため、適時ダウンロードするなどしてfoorbar2000用の環境を構築することをお勧めします。

必要なコンポーネントが入っている状態で、「File」「Preference」「Playback」「Output」「ASIO」とドリルダウンし、「XMOS USB Audio 2.0 ST 3004」という項目があれば利用可能です。
とりあえず「Output」のDeviceで「XMOS USB Audio 2.0 ST 3004」を選択してハイレゾFLACなどのPCMを再生してみます。これでちゃんと鳴ってくれればとりあえず正しく認識しています。
foobar1-1foobar1-2foobar1-3

とりあえずこれらの設定は「nano iDSD」をfoorbar2000で使用する方法を参考にしてもうのがもっとも手っ取り早いでしょう。
ここで他のXMOS搭載製品と異なる、もうひとつの留意事項は、DSDの設定が「DoPのみに対応」という点です。CDに付属の「FOOBAR DSD settings.pdf」を参照すると、いちおう必要な設定方法が記載されていますが、その中では「DoP」で設定する場合と「ASIO Native」で設定する場合の両方が記載されています。しかしXMOSのリファレンスドライバで対応しているのは「DoP」モードのみになります。そのためこのドキュメントの「ASIO Native」での記載は一切無視してください(重要)。

この理由は後述します。

設定としては、まず「Tools」の「SACD」のASIO Driver Modeを「DSD」に変更しておきます。
foo1-3

そのうえで、上記と同様に「Playback」「Output」「ASIO」を参照し、「foo_dsd_asio」をダブルクリックし、
DoPの設定を行います。その上で「Output」を「foo_dsd_asio」にすることでDSD出力が可能になります。

foobar2-1foorbar2-2foobar2-3



■「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」ドライバのアウト問題
実はDouk Audio XMOS/DSD1796 DACに付属するXMOSのリファレンスドライバと各メーカー製品に使用されるベンダードライバの最大の違いは、「DSDでASIO Native」に対応しているかどうか、という点にあります。

XMOS社のサイトに両方のドライバの比較表がありましたのでリンクします。
 → USB Audio Class 2.0 Windows Driver Overview (XMOS社サイト)

この比較表の「XMOS Stereo Driver」がリファレンスドライバで、「Thesycon Driver」がベンダードライバになります。なお、左側にある「Evaluation Driver」(=体験版)は、同サイトでダウンロードが可能ですが、再生1時間が経つと5分おきにビープ音が鳴る、という制限付きであくまでデベロッパーの動作確認用、というもののようです。

Douk Audio XMOS/DSD1796 DACでは、この制限をどうにか解消しようとしたらしく、その結果CDの中に、「OPPO_USB_Audio_Dac_Driver_release_ver2.24_build16(修改版).rar」なる、ファイル名からして、どう考えてもアウトなドライバが同梱されていると思われます。アウトなので多くは触れませんが、少なくとも私の環境ではインストールそのものができませんでした。もしかすると、テストモードなど特定の環境下であればこの改造ドライバがインストールできてしまう可能性もありますが、完全にライセンス違反ですので、ここは「何かの間違いで入っていたんだろう」と思って見なかったことにするのが適切な対応だと思いますね。

なお、ほかにもXMOS関係だ別のメーカーのを使う手もあるようですが同様にライセンス問題はあります。
解析目的なら話は違うと思いますが、オーディオとして楽しむ上で安定したリファレンスドライバであくまで「DoP」でのDSD対応のデバイスだと考えるのが正解だと思います。


■オマケ。「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」の分解写真
imageドライバ問題でちょっと萎えたので、ハードのほうは大丈夫か確認すべく、とりあえずバラしてみました。基盤は白色のものでした。
XMOS U8チップ、バーブラウンDSD1796を確認。ネットで入手できる基盤と内容的に違いはないようです。
また、オペアンプはOPA1652が3基搭載されていました(パッケージの印字はOP1652)。思ったよりちゃんとしています。このあたりが、「Douk Audio XMOS/DSD1796 DAC」の音の良さに貢献しているのは間違いなさそうです。
またヘッドホンアンプにはMAX4410を使用していました。

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ヘッドホン出力にヘッドホンをつないでもR/LのRCA出力と同時に音が出ます。
また本体にボリュームがないため、必然的にプレーヤー側での音量調節が必要ですが、結構大きい音がでますのでイヤホンなどの場合注意が必要です。
ヘッドホン出力はまた音の感じが変わりますので、ステレオミニのLINE OUTとして使って、RCA出力との音の違いを楽しんでみるのも良いかもしれませんね。


せっかくハードの機能としてはDSD256(11.2MHz)まで対応する性能をもちながら、それが使えるドライバがない、というのはなんとも残念ではありますが、「わかっている人」には1万円でけっこう楽しめる商品だとは思いますよ。