

現行モデルの「M-CR611」の一世代前になりますが、基本的にUSB-DACを接続するプリメインアンプとしての利用がメインなので、その点では現行モデルとほぼ差がないうえ、RCA入力がM-CR611ではひとつになっているのに対し、M-CR610では2つ確保できるのでその点でも何かと便利かと。
スピーカーはもともと、オンキヨーのCR-D2につないでいたDALIの「ZENSOR1」を使用。M-CR611ではセット販売もされており、開発段階から組み合わせを想定されているこのシリーズのアンプと最も相性の良いスピーカーのひとつです。

M-CR610およびM-CR611はバイアンプに対応していますが、ZENSOR1は通常の接続になるため、もう1系統のスピーカー出力には、FOSTEXの「FF85WK」8cmスピーカーユニットを同社のかんすぴ「P-800E」エンクロージャに組み合わせた組み立てスピーカーを接続。音色の変化を楽しみます。
■24bit/192kHz対応SPDIF光ケーブルでHP-A4を接続
M-CR610への接続ですが、今回、SPDIF光入力にFOSTEXの「HP-A4」を接続しました。つまりHP-A4はDACではなくDDCとして使用し、DACはM-CR610に任せる方向です。

SPDIFは規格として24bit/192kHzまでのPCMをサポートします。しかし、光端子の場合、市販されている多くのケーブルは16bit/48kHzまでしかサポートできておらず、ハイレゾを流すとうまく送れないケースがほとんどです。
今回、Amazonで販売されていたAmulechの光ケーブルが「24bit/192kHz動作保証」を謳っていたため早速試してみることにしたわけです。

SPDIF出力の場合、DSDは再生できませんが、そちらは従来通りRCA出力で対応します。
なお、M-CR610のアナログ1のRCA入力にはiFI nano iDSDを、そしてアナログ2には従来使用していたオンキヨーCR-D2のRCA出力を接続し、CR-D2をすでに接続されている既存の機器のプレーヤーとして使用します。
■セッティングの変更でZENSOR1の本来の実力を実感

なんだか異様に低音が出すぎていて、曲によっては耳にダメージを与えるレベルの反響音がします。高音の抜けも思ったほど良くありません。試しに、M-CR610のスピーカーのレスポンス設定を変更し、下の周波数にフィルタをかけるとちょっと良くなりました。しかし、店頭でM-CR611とZENSOR1の組み合わせで聴いた音とは明らかに異質です。
よく考えてみると、ZENSOR1はテレビのうしろに設置した棚の上にインシュレータをはさんで設置していましたが、アンプが変わってスピーカーへの出力がCR-D2から劇的に向上したことにより、使用していたインシュレータだけでは振動を吸収しきれず棚から不協和音を出していたようです。またスピーカーケーブルも明らかに情報不足を感じます。
もともと、スピーカーの配置を変更したいと思っていたこともあり、さっそくAmazonでスピーカースタンドを購入。スピーカーケーブルも変更しました。
スピーカースタンドは低価格ながらしっかりとした作りの「NX-B300」。組み立て時に付属の木ネジに加えて木工用ボンドでしっかり固定しました。

ちなみに同じフロアのオーディオコーナーに展示されていたM-CR611とZENSOR1の組み合わせでは同じZONOTONEのひとつ下のグレードにあたる「6NSP-1500M」スピーカーケーブルで接続されていたのも多少選択のポイントにはなりました。
セッティングの変更を行い、改めて聴いてみると、「おお~!」。大化けしました。
というか、これが本来の音だったんですね^^
解像度だけでなく音の広がりや奥行きが大幅にアップし、ZENSOR1の特徴的な中高域に加え、低音もさきほどの不協和音が抜けてしっかり響くようになりました。
東京の部屋は8畳ほどのマンションの一室ですが、このくらいの部屋のサイズおよび反響音(鉄筋コンクリートのマンション)ではM-CR610およびZENSOR1の組み合わせがサイズ的にまさにぴったりだったと思います。おそらくこの部屋ではこれ以上に低音が強いスピーカーを設置すると不自然になりそうです。
いっぽう、福井の自宅のオーディオルーム(木造戸建ての10畳ほどの部屋)で東京と同じ環境を作ってもこの感じは出ないかもしれません(特に低音成分)。こちらはアンプを同じにするならスピーカーはB&Wで組むべきかな・・・などと想像したりします。
アンプの性能でいえば、M-CR610のDAC部分も秀逸で、MacでAudirvana Plusから適度にアップサンプリングしつつ、HP-A4をDDCとして使用し、SPDIF経由での接続では抜群の解像度の高さと抜けの良さを感じました。Amulechの光ケーブルは規格通りSPDIFの上限24bit/192kHzの音源も確実に再生。M-CR610のパネルに「Fs=192kHz」と表示されちゃんと対応できていることが確認できます。

HP-A4もDACオペアンプを交換し、HD598など手持ちのヘッドホンでの利用では結構満足のいくレベルなのですが、RCA経由でのスピーカー出力ではいまいち不満がありました。これがM-CR610のDACを経由することでまさに生まれ変わった感じです。当分はPCMのハイレゾについてはこれでいけそうです。
■AirPlayおよびDLNA再生でもアンプの実力を再認識
また、M-CR610 / M-CR610をはじめ各社の「ネットワークCDレシーバー」の多くはAirPlayに対応しています。AirPlayはネットワーク経由でALAC(Apple lossless Audio Codec)による無劣化でのデジタル転送に対応し、iPhone/iPadやMacなどからダイレクトに音楽再生が可能です。M-CR610も無線LANおよび有線LANに対応していますがここは安定性を考え有線LANで接続をしたいところです。
この辺の詳しくは過去にAirMac ExpressでのAirPlay再生についての記事で詳しく書いています。
→過去記事:Apple MusicのAirPlay再生で「AirMac Express」が最強の理由

SPDIF経由でHP-A4をDDC化して聴いたときと同様、M-CR610の優れたDAC性能による解像度の高いクリアな音質とZENSOR1との組み合わせによる奥行きのあるサウンドが堪能できます。
また、マランツのiPadアプリなどを使用してNASからDLNAで共有しているハイレゾ音源をネットワーク再生することも可能で、こちらはアプリの操作性に多少の難はあるものの、音質面では同様に申し分のないところです。
これらはオンキヨー(CR-N765やCR-N755)、デノン(RCD-N9K)など同価格帯の競合モデルがひしめき合っていて各社実現している機能ですが、音質面や結構メーカーによって違いがあるので、特に組み合わせを試聴して選ぶことをお勧めします。
■コンパクトながらメインでも行ける実力の「FF85WKかんすぴ」スピーカー
いっぽう、もうひとつのスピーカー出力に接続したFOSTEXのFF85WK+P-800E構成のスピーカーですが、M-CR610との相性も良く、8cmのフルレンジながらZENSOR1とはまた別の色合いで、特に非常に「聴きやすい」サウンドを奏でます。
「FF85WK」は同社の8cmフルレンジユニットのなかでも豊かな音色が特徴ですが、いっぽうで比較的低域のボリュームが厚く、例えばバックロードホーン型のエンクロージャと合わせると「低音が出すぎる」傾向があるようです。

充分、メインで行ける実力ですね。
そのため、私の場合、しっかりリスニングを愉しむ場合はZENSOR1、仕事や読書などでBGMとして鳴らす場合はFF85WK+P-800Eといったように使い分けています。
この環境なら、RCA経由の方も、もう1ランクUSB-DACのグレードをアップしてもちゃんと効果を得られそうです。ですので、次は「nano iDSD」を「micro iDAC2」へアップグレードかな、と思っていたりします。