■iPhone7以降のAppleの提案とユーザニーズの「ギャップ」

iPhone7が発売され、予想通り本体からイヤホンジャックが廃止されました。 

しかしそれ以上に問題だったのは本体に付属する「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」を通して既存のイヤホンやヘッドホンを使ったときの「音質劣化」ではないかと思います。

これまで「ハイレゾ」などのオーディオファン向けの用語やアイテムには特に関心はなくても、多くの方のiPhoneには普通にMusicアプリへ音楽データを入れているでしょうし、「Apple Musc」や「Amazon Prime Music」「LINE Music」「AWA」などの定額サービスを利用している方も少なくはないはずです。そしてApple純正以外のイヤホン、ヘッドホンを使われている方も確実に増えているのではないでしょうか。

Appleとしては純正の「AirPods」や子会社Beatsの新しいワイヤレス製品のようにAppleの「W1」チップを搭載したワイヤレス製品を推していく流れだとおもいます。今後W1チップがどの程度他社のオーディオメーカーに浸透し、製品が登場してくるかにもよりますが、当分の間は各オーディオメーカーのステレオケーブルの製品か、あるいは通常のBluetoothによるワイヤレス製品を選ぶことになると思います。
つまり、当分はAppleの提案を多くのユーザはギャップとして捉えることになるわけです。


■「AirPods」が示した、Bluetooth方式で感じる「使いにくさ」
すでに、店頭にはハイエンドなメーカーから、なじみ深い国内メーカーまで、各社・各価格帯でBluetooth方式のワイヤレスヘッドホンが販売され、ワイヤレス方式のイヤホンも数が増えてきています。

すでにこれらの製品を通勤・通学の御供に、普段使いにと愛用されている方も多くなっているいっぽう、音質にうるさいオーディオマニア以外にも特にイヤホン派の方を中心に「有線の方が良い」と思う方も相当数いるでしょう。かくいう自分も結局はワイヤレスをメインにはいまだ考えていません。

多くの媒体などでは、Bluetoothはワイヤレスで圧縮して音声を送るためワイヤード(有線)より多少音質が劣化するなどの記述を見かけることが多く、各メーカーも、ワイヤレスでもさまざまな技術により、いかに音質が優れているかをアピールする傾向にあるように思います。

たしかに私もワイヤレスにしないのは音質面での理由が最大ですが、たとえば屋内はともかく屋外利用などを考えると、実際には音質より「使い勝手」に問題があり、試しに使ってみても従来の有線のものに戻してしまう、というケースも多いのではないでしょうか。具体的には
  1. イヤホンでいいワイヤレスがない(ヘッドホンを屋外では使いたくない)
  2. 充電が面倒くさい。ある程度サイズあるヘッドホンはともかく、イヤホンはカバンやポケットに入れっぱなしが多く、わざわざ充電する習慣づけがつかない。またバッテリ稼働時間が短い。
  3. スイッチ類が使いにくい。ペアリングしてあっても、使うときにイヤホン側の電源をONにする必要があり、誤操作防止のためだいたいスイッチが非常に小さく、ボリュームなど他のボタンとあわせて使いにくい。
そして、まさに「AirPods」がリリース時に訴えたアピールポイントがこの3つに対する答えだったわけです。

Bluetooth方式のイヤホン・ヘッドホンを使っていた多くの人が感じたであろう事について、「AirPods」おそらくメーカーとして初めて正面から回答した製品だったのではないかと思います。
正直、「いままで他のメーカーは何してたの?」というくらい、誰もが感じていた問題点だったと思います。確かにそう考えると非常に価値のある提案ではあると思います。
「AirPodこそがAppleの考えるワイヤレスイヤホンの姿であり、AirPodsであればワイヤードである必要はない」。「AirPods」を一緒に発表できたからこそ、Appleは「ようやく」iPhone7でイヤホンジャックをなくせたのだとも考えられます。

そんなAppleの考える理想であり提案は確かに良いものだとは思います。しかし、現実はAirPodと同じW1チップを搭載したBeatsの新製品は「バッテリ稼働の長い新製品」としてでしかW1チップ搭載の特徴を挙げていません。当然W1搭載製品はペアリングの容易さなどはあると思いますが、形状はじめ操作感などは従来製品と基本的に同じであり、AirPodほどの大胆な提案ではありません。
今後、どの程度AirPod的なアプローチが浸透するのか。これは他の製品がそうであったように、競合他社、案外Android陣営向けの製品がいかに追随するかによるのかもしれません。

すでにAirPodの発表以降、「EARIN」や「オンキヨー W800BTB」といったフルワイヤレスのイヤホンは高価にもかかわらず非常に注目されていますし、今後もこのような製品は各社から発売されるでしょう。


使いやすくて、かつ高音質なワイヤレスイヤホンが増えてくると楽しいですね。