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■何だかんだでエレコム製イヤホンはいくつも持ってますが、これはノーマークでした。


エレコムの「Colors」というシリーズのイヤホンをご存知でしょうか。

ポップなカラーリングで選べる、いわゆる「ファッションイヤホン」のアイテムです。カラーも淡いパステル調のものを8色も揃え、おっさんの私にはおおよそ無縁の商品のように思えます。
このシリーズには通常モデルとは別に「Hi-Res in Colors」というハイレゾモデルの設定があり、こちらはピンクゴールドをはじめ、ブラック、レッド、シルバーなどメタリックなメッキ加工を施した渋めの仕上がりになっています。


ただ、なにしろメインがポップなシリーズですから、オマケ的にハイレゾモデルも出してるんでしょ、くらいの認識でおりました。正直全くのノーマークです。購入対象になど行くわけもありません(失礼)。
おそらく低価格のハイレゾイヤホンを探していても、存在すら知らない、という方も多いのかも知れません(あくまで個人的な主観ですが)。実際、店頭でもハイレゾ推し商品の中ではほぼ印象にありませんよね(現時点では)。

こんな私ですが、ちょっと理由があって、ノーマークなこのイヤホン「EHP-R/CC1000A(またはEHP-F/CC1000A)」(モデル名称はEHP-CC1000Aシリーズ)を入手することになりました。私の使用するのはピンクゴールドのモデル。
そういえば、この期待度ゼロのパターン、ああ、エレコムの最初のハイレゾイヤホン「EHP-CH1000」 「EHP-CH2000」 のときと同じですね(笑)。

で、聴いてみて、良い意味で、「あ、これちょっとイメージしてたのと違う」。
発売時価格でも実売1万円以下と、エレコムのハイレゾモデルでは比較的安価な価格設定ですが、全然アリなんです。というかこれまでのエレコムイヤホンのなかで「総合評価」ではかなり上位の製品かも・・・


 ■「見た目」の印象と全然違う、本格的な作りこみ


まず、この手のカラフルなファッションイヤホンは家電量販店で国内メーカーも1000円くらいとかで大量に見かけます。非ハイレゾの「Colors」も少し高めですが近い価格帯の製品ですから、他と同様にいわゆるプラッキーな印象でした。
しかし現物を手に取ってみると、これまでのエレコムのハイレゾ製品同様、しっかりとした真鍮製。左右のイヤホンが触れ合うとカチカチと金属がぶつかう硬い音がします。
カラー部分は本格的な金属メッキ加工を施しており大変美しい仕上がりです。特にピンクゴールドのモデルはそこそこ原価高そう・・・。ただ初期ロットはここにメッキ保護のビニールが張り付いていて非常に剝がれにくいという残念な話がありました(店頭での話では現在出荷されているものでは解消されているそうです)。
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実は私が入手したのも写真の通り「初期ロット」なのですが、ビニールをはがしたあとは、台所にある「お酢」をティッシュに浸み込ませてふき取ると手間なく綺麗に取れますよ。

ケーブルは結構ゴム感が強くなってちょっと巻き付きがきつい気がしますが、以前の「EHP-CH1000」 「EHP-CH2000」 のような細いケーブルではなく、しっかりとした太いケーブル。ステレオミニのコネクタ部分のつくりも上々です。付属のポーチは従来モデルよりちょっと安価そうなものに替わっていますが、この価格帯の商品であまり気にするところではないので問題ありません。こだわるべきポイントを押さえてきているという感じがします。


■エレコムらしからぬ(失礼)「装着性の良さ」と「高い遮音性」

エレコムのハイレゾイヤホンやシングルBAのAQUA「EHP-BS100」「EHP-BA100」はすべてのモデルで真鍮製またはアルミ製のハウジングを採用することでドライバーの音質を高める手法を取っています。たしかに音質面では効果があると思われますが、どうしてもハウジングの重量が増すことで装着性が悪くなってしまうという難点がありました。
※過去記事: エレコムのシングルBAイヤホンAQUA「EHP-BS100」を買いました

imageColorsシリーズでは、キャンディーのようなカラフルな「丸い形」が特徴ですがこの左右に広がる形状にすると同時に奥行きが従来機種よりコンパクトになることで、おなじ真鍮製ながら女性も含め、耳の形状にかかわらず装着性の良さが特徴的です。
また、耳奥までしっかり装着できることで、これまでのエレコム製イヤホンはもちろん、同価格帯(以上)のハイレゾイヤホンと比較しても十分に高い遮音性を実現しています。わたしは毎月新幹線で福井~東京間を往復するのですが、その移動中に使用しても十分に快適な利用ができました。
遮音性が高いということはノイズキャンセルタイプと同様の効果をデジタル的な細工なしに実現できる、ということであり、通勤・通学などの電車利用などで威力を発揮します。また音質面でもS/Nの向上に役立ちます。

imageさらに、この丸形の形状の場合、ケーブルを上下どちらからまわしても装着性は同じなので、いわゆる「シュア掛け」をする場合も最適です。
以前のモデルのAQUA「EHP-BS100」でもシュア掛けをするユーザーが多くいたそうです。ただこのモデルはイヤホンケーブルの左右に分岐している部分の長さが足りず私のように顔が大きい場合(涙)ケーブルがちょっと足りない感じになりました。しかしColorsイヤホンでは左右のケーブルも十分な長さで問題ありません。逆に長すぎると感じる方には調節をできるようにもなっています。

このようにColorsの形状は材質や重量を考えた場合、きわめて合理的かつ優れた使い勝手を実現するもので、私にはエレコムのイヤホンの「正統進化」の姿に見えます。カラフルなファッション性のほうがむしろ「オマケ」のような気すらしてきました。


■超多層フィルム採用、8.8mmドライバーは「廉価版」じゃない


Colors「EHP-CC1000A」ではエレコムのダイナミックドライバーを搭載するハイレゾイヤホンでは最小の8.8mm径のドライバーを搭載しています。
このドライバーの構造は超多層フィルムを使用した高剛性振動板で、同社の「EHP-CH3000」と同じ構造のものです。なお、EHP-CH3000のドライバーは12.5mm径であることから、発売時価格の差も踏まえ、Colors「EHP-CC1000A」のドライバは3000の廉価版、というイメージがありますが、3000の方のドライバーは典型的な「低音志向」なチューニングになっています。
Colors「EHP-CC1000A」の8.8mmドライバーのサイズはフラットな音質を実現するうえではむしろベストな選択ではないかと思われます。


■イヤーピース交換は必須かも。個人的には「SpinFit」がおすすめ。

すべてのエレコムのイヤホンに共通していえるのですが、付属のイヤーピースを使わず、低反発のウレタン製などのイヤーピースでフィット感を向上させることで低域の厚みが増し、音の印象が激変します。

イヤーピースがぴったり合えば、全体の音質を維持したまま、フラット系としては充分な低音が確保できます。

imageできればコンプライなどを装着できれば別物のイヤホンに大化けするのを実感できると思います。シリコン製なら茶楽音人「SpinFit」でも同様の変化が得られます。
ほかにも多摩電子工業のウレタン製が柔らかい素材で非常に安価なので気に入りました。ただサイズが思ったより小さいので1サイズ大きいものを選ぶ方がよいかも(Sサイズで他のメーカーのXSサイズ並でした)。
私の場合、現在は「SpinFit」を装着しています。装着性の向上と音質アップが確実に実感できますのでおすすめです。


見た目ほど派手じゃない。素直な「フラット志向」の高解像度イヤホン。

というわけでさっそく聴いてみます。
image今回は特徴を把握するため、普段使いの「Astell&Kern AK300」でハイレゾ曲の試聴用に作成してあるプレイリストで流して聞いてみます。そのえでiPhone 7でのイヤホン端子廃止により俄然存在感を増したLightning対応オーディオアダプタ(DAC)「LHP-AHR192」を手持ちのiPhoneに経由しハイレゾ音源やApple Musicなどを試聴しました。

まずAK300で聴いてみて最初に感じるのは、まるで音の粒をひとつひとつ感じるような非常に解像度と分解能が高いサウンド。以前「EHP-CH1000」 「EHP-CH2000」 のレビューをした際に、これらのイヤホンが「わかりやすい音」を狙っていると感じたことを記載しました。
※過去記事:エレコム EHP-CH1000/EHP-CH2000 を辛口レビューしてみた。

Colors「EHP-CC1000A」もまたその「わかりやすさ」を感じるわけですが、これら従来のモデルとはレベルが1段、2段上がった感じがします。おそらく初めてハイレゾの音を聴く方は、解像度の高さ、というか「音の情報量の多さ」にちょっと驚きを感じるかもしれません。ハイレゾとはこういう音だよ、ということをハッキリ伝えたいという意図をちゃんと感じます。

imageパッケージにも記載の通り、フラットで中高域重視の音ですが、特にポップス系のボーカル、EDMなどの打ち込み系の音源、そしてアニソンなどとの相性はかなりよさそうです。

確かに低域は弱いのですが、むしろ中高域の情報量の多さを実感するうえではこれくらいのバランスの方がいいように感じます。低域が弱いイヤホンは特に屋外で使用した場合に周辺の環境ノイズで奥行きが失われ薄っぺらい音になってしまうのですが、Colors「EHP-CC1000A」は遮音性の高さである程度この問題はクリアしています。


imageいっぽうウィークポイントとしてはやはりジャズやクラシックなどで、同価格帯〜1万円台のイヤホンでいえば、例えば私が所有する「Shure SE215 Special Edition」(SE215SPE-Aと新機種のSE215m+SPE-A)や高い低音性能を持つ「AKG N20」と比較して、解像度ではColors「EHP-CC1000A」が優れているものの、特にアコースティックな音については「味」というか「生っぽさ」の部分がちょっと失われているように感じました。もっとも聴き比べてわかる、というレベルですが。まあShureやAKGはやはり音作りというか、まとめるバランス感覚に一日の長があるというところでしょうか(あと、どちらも実売でEHP-CC1000Aの倍くらいの値段ですからね)。


■「わかりやすいハイレゾ」は誉め言葉
以前、エレコムが本格的なオーディオメーカーとして認知されるためには、オーディオ用のブランドを別途に持つべきではないか、ということをレビューに書き添えました。
「ハイレゾ対応製品」といっても、協会で指定した水準をクリアしていることが必ずしも高音質であることにはならず、「ピンからキリまである」のが実情でしょう。しかもこれが一概に「価格相応」とも言い切れないところが難しいところです。
特に海外の有名オーディオブランドであれば「ローエンド」の製品が数万円しても十分に購入する人はいるでしょう。しかしその音質が数千円の製品より劣ることは珍しくはないのが昨今。「ガジェットとしての所有欲を満たせること」やもしかしたらプラシーボ効果的なことも含めての価値が有名ブランドにはあるわけですから仕方がありません。

ところが、少なくとも数百円台のサプライが日本全国どこでも買える手軽で身近な「エレコム」という名称でより高価格帯の商品を出す場合、そこには「実際の性能面」での価値しかありません。本気で取り組むなら、ユーザーのニーズには他のオーディオメーカーよりさらにシビアに応える必要があるはずだろうと想像します。にもかかわらず、エレコムはエレコムのまま、ラインナップを驚異的な速度で強化し続けてきました。

どこでも手に入るエレコムの製品ですから、初めてハイレゾに触れる「入り口のユーザー」も多くいるでしょう。以前も書きましたが海外ブランドの製品を店頭で気軽に試聴し購入できる都市部と異なり、地方では国内メーカーの製品以外は店頭でまず見かけない地域もまだまだ多数あります。そんな地方の、たとえば私の自宅のある福井の量販店でも必ず目にすることができるハイレゾイヤホンのひとつがエレコムの製品です。
ハイレゾイヤホンはエレコムが初めて、という購入者に対し、「ハイレゾとはこういう音だ」ということを明確なメッセージとして伝える。
エレコムのイヤホンが「わかりやすい音」であることは必要であり、必然といってもよいと個人的には思います。
このような視点で、Colors「EHP-R/CC1000A」を改めて見てみると、最初のハイレゾイヤホンとして手軽に購入できる価格帯で、キャッチなパッケージングを与えつつ、使い勝手や音質面でも正統進化を遂げているという意味で非常に優れた製品ではないかと思います。

imageエレコムがハイレゾイヤホンの最初のモデルを発売してから、わずか2年程度の期間での「進化」は、おそらくエレコムという元来のサプライメーカーとしての強みとして、各販売店に営業担当者などがくまなく展開していることで、お客様の声や店頭での反応といったフィードバックを他のオーディオメーカーとは比較にならないレベルで直接収集できているからではないかと想像します。フットワークという非常にアナログかつ昔ながらの手法がハイレゾという新しい分野のデジタル商品に個性を与えているとすれば、それは大変興味深いことです。
今後も新しい驚きを与えてもらえることを期待しています。

とりあえず、「アップルシード」各巻を1980年代の初版本持ち(笑)の私としては、今後、「士郎正宗コラボ」モデルのハイレゾタイプ「EHP-SH1000」を購入するかどうかが悩みどころです(結構高いので)。

あと、これまで全モデルでイヤーピースの形状は共通で、今後もそうであろうと思いますので、ぜひアップグレードパーツで各サイズの低反発ウレタン製のイヤーピースを商品化していただきたいものです。ぶっちゃけ、コンプライみたいなのを、お手頃価格で(笑)。