
というわけで、久々のキワモノ特集です(笑)。
キワモノ、好きなんです。単なるパクリやニセモノはそれほど楽しくないんですが(とはいえツメの甘いニセモノだったらネタ用に集めるの自体は嫌いじゃないです)、明らかに怪しいのに、あえてみんな知らんぷりしてるみたいな、そういうのは楽しいですね。
とはいえ、中華イヤホン等を例えるまでもなく、最近はある意味「本家」越えしてるような凄いヤツらもちょいちょい見かけるようになると、なかなかキワモノも難しくなってきています。
そんななか、サウンドハウス(http://www.soundhouse.co.jp/)が展開する「CLASSIC PRO」ブランドに、昨年「これこそキワモノ」と呼ぶに相応しいニューカマーがふえました。それがオンイヤーヘッドホン「CPH3000」です。

で、直販価格が3,980円(税別)。
もうネタ用に買ってもいいかなと思える価格設定。と言うわけで、最近、本当に買いました(笑)。だって、これは比較するしかないですよね。
ちなみに、初期ロットのレッドは不良品だったらしいのですが、その辺は現在は解消されているらしいです。もっとも私が購入したのは無難なブラックなので元々問題なさそうです。
■言うまでもありませんが、本家はゼンハイザー「MOMENTUM On-Ear」です。

私は移動中などはイヤホン派ですが、仕事中など外出先でも屋内の場合はヘッドホンのほうがよく使う派です。そのため、コンパクトなオンイヤータイプのヘッドホンはいくつか所有していますが、MOMENTUM On-Earはなかでもお気に入りのひとつ。
まだまだ2万円以上の実売価格ですが、発売から多少経っていて、元々人気モデルで販売数も多いことから最近は中古も数多く出回っており、1万円台でも購入できるようになってきました。
特徴的なデザインに加え、第2世代からは折りたたみが出来るようになり、付属の専用ポーチで持ち運びができます。またケーブルも脱着式なのでリケーブルも可能です。

またサウンドクオリティの高さも折り紙付で、クリアな音質と音場感は、上記の装着感も含めこの価格帯のオンイヤーでは代わりが見つからない感じがします。
■見た目と違い、明らかに異なるCPH3000の装着感
さて、いっぽうの「CPH3000」です。まあ確実に似せて作ってるわけですから、ぱっと見やサイズ感は「そっくりさん」です。

CPH3000:
型式:ダイナミック・密閉型
周波数特性:10~22,000Hz
インピーダンス:18Ω/音圧レベル:112 dB
質量:約165g (ケーブル込み)
MOMENTUM On-Ear i(およびG):
型式:ダイナミック・密閉型
周波数特性:16~22,000Hz
インピーダンス:18Ω/音圧レベル:112 dB
質量:約170g (ケーブル重量を除く)
まあ見事に「ほぼ一緒」ですね(重量も第1世代と比較するとほぼ同じ)。

なお多少素材の違いはあるかもしれませんが、イヤーパッド、ヘッドバンドともCPH3000もMOMENTUM On-Earのアルカンターラ素材と同様の質感に感じます。


このように見た目の違いはわずかなものですが、実際に装着してみると「あれ?」とその装着感の違いをハッキリと感じます。CPH3000も側圧はオンイヤータイプとしてはソフトなほうで、装着感そのものは決して悪くはありません。しかし、なんというか、MOMENTUM On-Earの装着感のほうが数段「高級」なのです。
側圧はむしろMOMENTUM On-Earの方が強めですが、耳にピタッと張り付くようにフィットするのに対して、CPH3000は優しく乗っている、という感じです。そのため人によってはCPH3000では最適な装着位置を探すのに少し苦労するかもしれません。また長時間の使用だとMOMENTUM On-Earと比べCPH3000は少しだけ耳が痛くなってきます。
これは、MOMENTUM On-Earがハウジング部分を支えるマウント部分がなめらかに、しかし一定のホールド感を持って動くのに対し、CPH3000は少しだけゴツゴツ感があります。また上記のハウジング部の微妙な厚さの差とスポンジの薄さが長時間での差につながっているのだと思います。側圧がCPH3000のほうが弱いのも、このハウジング部分の差を補うためと思われますが、結果としてホールド感を下げてしまい、MOMENTUM On-Earが持つ独特の「高級」な装着感とはかけ離れたものになっているようです。
「さすが本家は金をかけるところが違うね!」とCPH3000を比較することでMOMENTUM On-Earの良さを再認識するのでした。
■「CPH3000」の音質、これはもしかして第1世代のMOMENTUM On-Ear?
いっぽう、音質傾向はこの2つのヘッドホンは外観以上に酷似しています。多少チューニングの差くらいはあるだろうと思ったのですが、実際に聴き比べると非常に近いところで再現されています。
AK300でハイレゾおよびDSDを中心にいつも使っている試聴用のプレイリストを聴いてみます。
→個人的ヘッドホン・イヤホン「リスニングテスト」用プレイリスト一覧

ただ、わりとCPH3000のほうが低音の広がりがあるのに対し、MOMENTUM On-Ear(第2世代)の低音はよりタイトで全般的に音の粒を細かく感じることができるように感じます。
イメージとしてCPH3000は打ち込み系の相性はよさそうで、アニソン系は向いているかもしれません。ただ、マクロスFの主題歌「ライオン」は菅野よう子の怒濤のサウンドをCPH3000はちょっと描き切れていない感じはありました。
もっとも、CPH3000の音は以前聴いたMOMENTUM On-Earの第1世代モデルの音に非常に近く、装着感の違いを除けば同じドライバを使っていると言われても私程度の耳では気付かないかもしれません。
CPH3000は、ハイレゾを聴き込むとさすがに本家MOMENTUM On-Earとの差が出てきますが、それでも第1世代並のサウンドはクリアできているようで、CD音源やストリーミングを中心に気軽に聴く分には「3千円台でMOMENTUM On-Earのサウンド」と言えなくもない、というのは確認できました。
念のため、これ、いちおう褒め言葉ですよ(笑)。
■ところで、「CLASSIC PRO」ってどうよ?
ところで、発売元・販売元のサウンドハウスはもともと楽器やオーディオ機材等を直販価格で安く販売するショップサイトで、オーディオファン的には例えばAKG K701やK240 Studioなど、すでに日本国内では販売終了している製品や、国内販売していてもより安価な直輸入モデルなどを安定して入手できるショップとしても知られています。
特に自社ブランドで展開する「CLASSIC PRO」は激安の宝庫です。私の地元のドラッグストアやディスカウントストアなんかも日用品や一部薬品も含めてプライベートブランドで激安の商品を売ってたりしますが、個人的にはサウンドハウスや「CLASSIC PRO」はその感覚に近いな、と思っています。
ただ、業務用でよく使う商品を中心に「似たようなモノだし安ければ良い」というニーズに合致しているとは思いますが、いっぽうで品質や性能もそれなり、という評価もあります。この辺はちょっとネガティブな印象を感じるかもしれません。
かくいう私も積極的に使うショップではありませんが、理解して買う分には選択肢のひとつとしてアリと思っています。
とりあえず、「CPH3000」は元々の低い評価から入ったこともあり思ったほど悪くはなかったのですが(むしろコスパ抜群の良ヘッドホンと言って問題ないです)、それでも「個性的デザインのヘッドホン」としてあまりに有名なMOMENTUM On-Earの「そっくりさん」は、さすがに街中で使用するのにはちょっと抵抗があります。
もう少しデザイン的にそっくりさんではない「個性」を出してくれれば、価格も安く音質も悪くないので日常で使いつぶす用途にもいけるのですが。
そういう人は、このヘッドホン、普通は買わないんでしょうね。やっぱり。