image

■待ちに待った、アイツがやってきた。

というわけで、ようやく届きました。先日EN700 BASS」のレビュー でも予告した「Shanling M2s」です。当初5月11日に出荷予定ということで、4月27日の予約開始と同時に注文をしたのですが、ファームウェアのバージョンアップの関係かメーカー出荷が遅れ、約1か月待ってようやく手にすることができました。

imageShanling M2s」は、現在海外版のみの販売で中国AliExpressの複数のショップで取り扱いがされています。私はTwitterで最初にアナウンスを行ったEasy Earphoneで予約開始後すぐに購入しました(どうやら同ショップで最初の購入者だったようです^^)。
購入サイトはこちら:
AliExpress(Easy Earphone):Shanling M2s

価格は199ドル。この価格で本体とオプションのレザーケースも1種類付けてくれます。

従来機種のShanling「M1同様、今後間違いなく日本国内版も発売され、その際は2万円台の価格設定になると思われますので、同価格帯の中華DAPで先行する「Cayin N3」はもちろん、ソニーのウォークマン「NW-A30」シリーズも射程に置いた意欲的な価格設定といえるでしょう。
そして音質などの性能面は、より上位の価格帯の製品とも十分に渡り合える仕上がりになっています。

※国内正規品も発売になりました。
Amazon.co.jp: Shanling M2s(国内正規品)


■人気モデルShanling「M1」を踏襲しつつ、大幅にグレードアップ
あらためて、「Shanling M2s」は、中国のオーディオメーカーShanlingの期待の新機種。
もともとShanlingは据置オーディオ機器の自社ブランド及びOEMで以前から実績のあるメーカーだそうですが、なんといっても、最近はそのコンパクトさと抜群のコストパフォーマンスで一躍人気機種になった小型DAP(デジタルオーディオプレーヤー)の「M1」ですっかりオーディオファンの間ではおなじみになったメーカーです。
今回登場した「M2s」はM1の上位モデルM2の後継機種にあたる位置づけです。

imageimage
外観はM1のデザインを踏襲しつつ、多少のサイズアップをしたうえでDACに「AK4490EQ」、オペアンプに「MUSES8920」「TPA6120」を搭載するなど音質面を大幅に強化。大きくなった、とってももともと「M1」が非常に小型だったため「M2s」も十分にコンパクト。最近ほぼ一昔前のスマホ並みかそれ以上のサイズのDAPを使っていると、ワイシャツの胸ポケットに入れても全く差し支えないM2sのサイズ感は逆に新鮮です。
image
また手にした感覚は、質感の良いアルミ製ボディの存在感をしっかり感じる「重さ」でありながら無駄に「重く」はないちょうど良いバランスです。

バッテリ稼働はメーカー記載で9時間。実際に稼働テストはしておりませんが、東京からの出張で4時間以上使いっぱなしでも画面上部のバッテリのメモリがほとんど減っていなかったのは驚き。実際には9時間以上余裕で使えるんじゃないか、という気もします。
この辺は独自OSを使っている強みですね。


■シンプルなパッケージング。付属の保護フィルムはかなり難易度高し。
Shanling M2s」の本体パッケージの内容はいたってシンプル。
また本体とは別パッケージで専用のレザーケースが同梱されてきました。
imageimage
本体の付属品は本体およびType-C仕様のUSBケーブル、保護フィルムを表面・裏面用が2枚づつ、micro SD用のUSBカードリーダーとリセットボタン用のピン。最後の2つはなくても支障はありませんが、こういう細かい気遣いはうれしいですね。
imageimage
レザーケースは「黒」「青(紺)」「ブラウン」「レッド」が選べ、単独でも12ドルほどで販売されています。現在手元にあるのは紺色のケースですが、現在ブラウンが発送中で、追加でレッドも注文しました。
ところで、表面用の保護フィルムですが、そもそも本体の凸型のガラス面に加え、ちょうど位置合わせの場所になる右上のカーブ部分がガイドテープで隠れている関係で壮絶に張りにくい!
私は・・・失敗したので表面のフィルムは断念しました( ゚Д゚)。
たぶん本体の下から上に張ったほうがきれいに張れると思いますよ。

本体サイズは53mm×85.6mm×14.5mm、100gのコンパクトなボディに3インチ800x480ピクセルのディスプレイを搭載。「Retina」とメーカーサイトに表現されているディスプレイは非常にきれいで、日本語フォントもアンチエイリアシング処理により美しく視認性の高いものになっています。
imageimage

画面は「M1」と同様にタッチパネルではなく、右側のダイヤルと左右のボタンによる操作です。ただし、レスポンスは非常に軽快で操作性に迷うことはありません。
右側のダイヤルを回すことでスクロール(再生画面はボリューム調整)し、ダイヤルを押すことで選択されます。ダイヤルの下のボタンが「戻る」、左側はイヤホンのマイクリモコンと同様の再生・停止と曲送り・戻し(長押しで早送り・巻き戻し)。画面スリープからの復帰は本体上部の電源ボタンで行います。
imageimage
データはmicro SDXC対応のスロットがひとつ。
インターフェースはType-C型仕様のUSBコネクタなのは「M1」と同様です。
レザーケースはしっかりしたつくりで本体をしっかりホールドしてくれます。
imageimage


■片手で迷いなく使えるダイヤル&ボタン操作
購入後最初に電源を投入すると、表示言語の選択が表示され、「日本語」を選ぶと以降は問題なく日本語表示で使用できます。
imageimageimage

基本操作は「M1」や同系列のOSを搭載していると思われる「Hidiz AP-60」や「Cayin N3」等ともよく似ていますが、「M1」同様にダイヤル操作での使い勝手を良く意識されており、違和感はありません。また「M1」と異なりダイヤルが背面ではサイド装着されたためより片手での操作がしやすくなった印象です。

曲データをコピーしたmicroSDを挿入したり、USB経由でコピーを行うとライブラリの更新を行います。スキャンは1000曲以上入っていても30秒~1分程度とさほどストレスを感じるレベルではありません。
imageimageimage
データは普段使用している「AK300」や「X5 3rd」で使っているmicroSDカードを差し替えてプレイリストも含めそのまま使用できました(プレイリストは「ファイル」アクセスから.m3uファイルを選択)。また再生画面でもダイヤルを長押しすることでメニューを表示させ、設定画面などへの移動が可能です。

タッチパネルではないのはコスト上やむを得ないとも思えますが、ダイヤルおよびボタンの使い勝手は非常に良く、片手で迷わず使える操作性はこのサイズではむしろ合理的に感じました。


■この価格帯では驚異的な音質。「高出力」「低ノイズ」でちょっと「押しの強い」サウンド。

さて、前評判もかなり良好だった「Shanling M2s」ですが、実際に聴いてみると、確かにそのクオリティの高さに驚きました。あくまで個人的な印象ではあるものの、現在販売されている同価格帯の他のDAPの音質を凌駕しているだけではなく、より高価格帯に位置する普段使いの「Astell&Kern AK300」や「FiiO X5 3rd gen」ともなんら遜色ないレベルに感じました。まさに「驚異的なサウンドクオリティ」です。

Shanling M2s」は、スペック的には384kHz/32bit PCMおよびDSD256(5.6MHz)のネイティブ再生に対応し、DACには多くの高音質DAPで採用されているAK4490(正確にはAK4490EQチップ)を搭載しています。
3e3962ceAK4490というと、私が使っている「AK300」および上位モデルの「AK380」「AK320」の第3世代および最新機種の「KANN」などのAstell&Kernを筆頭に、各メーカーの高性能DAPなどで相次いで採用されている高音質なDACチップ。音質傾向はAstell&Kernの第2世代で採用されたCS4398に近く、高スペックで解像度が高く、またメーカー側で音質面のコントロールがしやすいことが第3世代AKで採用された理由と言われます。同じく所有している「FiiO X3 3rd gen」に搭載されるAK4490EN(小型DAP向け)、そしてM2sに採用されたAK4490EQ(スマートデバイス向け)と派生してもその高音質は変わらず、当面は第一線の人気DACチップとして多くのデバイスに搭載されそうです。

いっぽう、「Shanling M2s」を最初に聴いた感想は、非常に解像度が高く、音場感もあるサウンドですが、それ以上に印象的なのは全域で非常に「濃度の高い」サウンドであるということ。普段使いの「AK300」は良くも悪くもフラットかつダイレクトな音が特徴ですが、同系列のDACでも対象的なサウンドです。
imageimage
また、コンパクトなボディにもかかわらず、非常に出力は大きく、ゲイン設定を「ロー」にしてもマルチBAのイヤホンで最大音量100のうち25〜30くらいのボリューム値で十分な音量が取れます。
さらに、ヘッドホンのなかでも反応が低く鳴りにくいと言われる「AKG K712 Pro」が同じくローゲインで60〜程度のボリューム値で十分な音量になりました。

そして、全体的な印象としては「Shanling M2s」の音色傾向はかなり硬質な部類だと思います。

imageただ、硬質で高出力だからといって「元気な音」とは多少異なる感じです。一般的に「元気な音」と例えられるDAPと比較すると、各音域に濁りはなく、非常に分離感の高いサウンドで、音源の「聴かせたい部分」を明確に伝えようという意味で、どちらかというと原音を着実に鳴らそうとという「職人」気質な硬さ、言い換えれば「押しの強さ」を感じるイメージです。
この音がAK300などのフラットでなDAPと比較すると逆に「濃い音」に感じるのでは、と思います。
いっぽうでアナログ的なウォームさを特徴とするDAPも同様に「音の濃い」演出がされますが、これらの「丸みのあるサウンド」と比較すると、「Shanling M2s」は上記のような特徴ゆえに、曲によっては高音もかなり刺さり、「エッジの効いたサウンド」に感じるかもしれません。

また、手持ちのイヤホンのなかでホワイトノイズがもっとも乗りやすいShure「SE535LTD」を標準ケーブルで接続してみた場合も、目立ったノイズは感じられず、非常にクリアなサウンドであることが確認できました。この点は、先日FiiO「X5 3rd gen」のレビューをした際に、SE535LTDではバランスでもアンバランスでもホワイノイズがあったことを記載しましたが、ノイズ面ではShanling M2sの方が優れている、ということになってしまいました。

imageimage

このような驚くほどの高出力とノイズの少なさから、どのイヤホン・ヘッドホンとの組み合わせでもそのサウンドクオリティを体感できますが、より解像度を求めるならばノイズの少なさを生かしてマルチBAの「多ドライバ」のイヤホンやカスタムIEMとの相性が良いと思いますし、逆にリスニング性を上げるためにはシングルのダイナミック型でレンジの広いイヤホンが気持ち良いと思います。
M2sに合わせて購入したSIMGOT「EN700BASSとの組み合わせも良好でした。

このように「高出力」「低ノイズ」で、同時に「押しが強い音質傾向の「Shanling M2s」ですが、この特徴的なサウンドの理由を考えると、このDAPがめざすアプローチが見えてくる気がします。


■「Mojo」を彷彿とさせる、デジタルで構築した音作り。「中華DAP」のひとつの回答かも。
個人的な話ですが、「Shanling M2s」が届いた翌日から主張が入っており、移動の新幹線のなかで、宿泊先で、移動先で仕事の合間にと、いろいろなシチュエーションで集中してリスニングを行うことができました。そして音質傾向そのものは全く異なるものの、「Shanling M2s」の音作りのアプローチに「Mojo」的なものを感じました。image

「Shanling M2s」は既存モデルで下位機種に位置付けられる「M1」と同様に、USBポートからUSB-DACとして使用できるだけでなく、OTGケーブルで接続することで別のUSB-DACを接続して再生する「トランスポート機能」に対応します。

Shanling M2sのサイズ感は、トランスポート先のUSB-DACとして最も定評のある「Mojo」ともベストマッチで、私自身もM2sとMojoの組み合わせを購入前から想定していました。
しかし今はこの組み合わせは「意味あるかな」とちょっと思い始めています。

Chord社の高性能DAC「Mojo」は音質傾向そのものはもちろん「Shanling M2s」とはまったく異なりますが、M2sの設計アプローチにある意味Mojoと通じるものを感じました。
mojo一般的なUSB-DACがチップでのD/A変換後の「アナログ的な音作り」に注力しているのに対し、MojoをはじめとするChord社の製品では徹底的にデジタルにこだわり、可能な限りアナログ的な部分を排除することで高出力と高S/N、そして唯一無二の音質傾向をつくっています。
そして「Shanling M2s」のコンパクトながらとてつもなく大きな出力が取れつつ、ローゲインでIEMのようなイヤホンでもホワイトノイズが全く乗らない、という特徴はまさに「Mojo」そのものです。

あくまで個人的な印象というか推測ですが、コンパクトなボディで、かつコストのかかるアナログ的なアプローチを取りにくい価格的な制約の中で、ShanlingはM2sでMojoと同様のアプローチを目指しているのではないかと思います。もっとも、Mojoはオペアンプを使わず出力を確保した上でD/Aを行っている認識ですが、M2sで似たアプローチができているのは結構不思議ではあるんですけどね。

imageちなみに、先日レビューした「FiiO X5 3rd gen」では、アンプ部の処理で高出力を維持しつつ、バランスアウトに対応させた結果、コスト的に反応の良いイヤホンではホワイトノイズを駆逐できませんでした。ただ、その分アナログ的な音作りは同価格帯のDAPのレベルを軽く超えていて、相性の良いイヤホン・ヘッドホンでは抜群のサウンドを実現します。
これに対してShanling M2sは高いラウドネスとS/Nを両立できたいっぽうで、アナログ的な「音の丸み」はなく、必然的によりデジタルで印象として「硬質なサウンド」傾向になったという見方です。

もちろん、これは良し悪しではなく、各メーカーの考えるアプローチやマーケット的に「置かれている状況」による「個性」であると考えています。

imageアコースティックな領域を極めるためにはソニーの「NW-WM1Z」あたりに代表されるように、技術的な難易度も高く、相応にコストがかかります。ましてやコンパクトなDAPでの実現には無理があるでしょう。
Shanling M2s」のアプローチは、デジタル的な組み合わせでどこまでローコストで高性能なものを生み出すかという、「王道」的な考え方そのものかもしれません。そのような意味で、「Shanling M2s」はこのクラスの中華DAPにおける現時点での「回答」になりうる機種ではないかと思います。


まあ個人的には所有する同じAK4490系列のDACチップを搭載した3種類のDAP(AK300、X5 3rd、Shanling M2s)がどれも全く異なる音質傾向で「被らない」ことを大変うれしく思っておりますが(笑)。

というわけで、まずは「Shanling M2s」の使用レビューを紹介しましたが、次回も引き続き、Bluetoothなどの各種機能や操作性、そして上記のもあげたMojoなど外部連携などを掘り下げてみたいと思います。(後編に続きます)

※後編を掲載しました。
「Shanling M2s」にイロイロつないで遊んでみた。【接続&活用編】