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今回は「レビュー」ではなくあくまで「雑記」という扱いの内容となります。

先日、縁がありまして海外の知人より「KINERA H3」というイヤホンを送っていただきました。このモデル、現在日本では未発売で、AliExpressなど海外のサイトでも日本向けの発送は受け付けていません。そのため入手方法(あるいは購入方法)などについてのお問い合わせおよびご相談には回答できませんのであらかじめご了承ください。

ただ、「KINERA H3」自体は、7月のポタフェスでも代理店さんより出展されていましたので、おそらく年内〜来年早々には日本向けモデルの発売もあるかと思います。ただし日本向けモデルが私が入手した海外モデルと同一ではない可能性もあるかと思います。特に音質面については日本モデルでは全く異なるチューニングが行われる可能性もあります。


■KINERAの最新ハイブリッド「ユニバーサルIEM」

KINERA」は中国の新進気鋭のイヤホンブランドで、日本では「Bd005E」(中国向けモデル「Bd005」の日本版)がアンダー4,000円の価格設定ながらMMCXコネクタに対応したハイブリッド仕様のイヤホンとして以前より販売されています。

このKINERAから7月下旬頃に海外向けの発売を開始した「KINERA H3」は、2BA+1DDのハイブリッドタイプのイヤホン(同社はユニバーサル仕様の「IEM」と呼んでいます)。CIEMのような美しい樹脂製シェル(レッドとブルーは透明)のハウジングを採用したシュア掛けタイプになります。さらにCIEM同様の2 Pinコネクタを採用しリケーブルが可能な仕様で、現在の米国などの海外向け価格は99ドル。海外のレビューではライバルとして「SIMGOT EN700BASS」「TFZ Exclusive King」「MaGaosi K3 ProおよびHD」を挙げていました。なるほど、見事に強敵揃いの激戦区です。

カラーは私が入手したレッド以外にブラックとブルーのモデルがあり、一部の情報ではカラーによってチューニングが異なる、という話もあるようです。
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非常にしっかりとしたパッケージで付属のケースもかなりちゃんとしたものです。

内容物は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースはS/M/Lが色違いで2セット、変換コネクタ、保証書など。イヤホン本体のビルドクオリティは非常に高く、また付属の0.78mm 2pin仕様の6N銀メッキ銅ケーブルもなかなか品質の良さそうなもので、100ドル前後のイヤホンとしては相当に充実した内容だと思います。
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装着性は比較的高く、KZ ZSTやTFZの「SERIES」ラインなどと比較すると、ハウジング部分のフィット感はより高く、最適なイヤーピースが決まればそこそこ装着しやすいイヤホンだと思います。ただステム部分が若干短く、イヤーピースをフックするような形状でもないので、イヤーピースの種類によっては取れやすいのが少し難点です。
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■入手したモデルは高域に大きく振ったアグレッシブなサウンド

レッドモデルの「KENERA H3」を聴いた最初の印象は、とにかくシャリシャリ音が強く、高域過多なサウンドでした。特に開封直後は低域〜中域があまり出ていない感じでした。とりあえず数十時間のエージングを実施したところ、中域の描写も向上し全体的なまとまりはよくなりましたが、シャリシャリ感のあるサウンドは同様で、音場は比較的狭く、低域は締まっていますが結構少なめ。完全な高域寄りのイヤホンです。

image印象としてかなりアグレッシブなサウンドですので、メタルなどは結構楽しいのではと思います。いっぽう高域成分の多いアニソンなどは結構耳に負担がかかりそうです。
ちなみに、DAP(プレーヤー)を出力の高くないAstell&Kern AK300からより出力の高いFiiO X7 Mark II(+AM3モジュール)に変えると、傾向自体は同じですが、ボーカルが少し近づき、よりアグレッシブさが向上しました。ある程度のパワーのあるDAPやポタアンとの相性がよさそうです。

また同じ「KINERA H3」でもブルーモデルは比較的フラット傾向に近い、という話ももあります。単なる個体差か、それともカラーによって音質のセッティングが異なっているのか、いかんせん日本では通常ではまだ購入できないモデルですので現時点で真偽のほどは不明ですが、ちょっと気になりますね。


■「KINERA Bd005E」も実は購入していますが・・・

ところで、「KINERA」ブランドですでに日本販売されている「Bd005E」も以前購入して所有しています。「Bd005E」のほうは、結構過激な今回入手した「KINERA H3」とは対照的に、高域は全く刺さらず比較的抜けが良く、中低域のバランスもよい優等生的なドンシャリ系のサウンドで、実際、世間の音質評価もなかなか良好だったと思います。

KINERAただ、イヤホン本体のシェル部分はオリジナルではなく中国国内で流通するパーツを使用していたため、別メーカーから全く同じ外観でより安価なハイブリッドイヤホンがアマゾンで以前から販売されていたこともあり、多少混同されてしまうケースもあったようです。
また付属ケーブルもつい最近まで比較的安価な中華イヤホンを買うとついてきたケーブルと同じもので、お世辞にも品質の高いケーブルとは言いがたいものでした。そのため「しばらくしたらケーブルの接触不良で片方から音が聞こえなくなった」などのネガティブな評価もネット上で見ることがありました。
(アマゾンで1000円~2000円程度で販売されているMMCXケーブルに交換するだけでもかなり音質が向上します)

以前、「Auglamour R8-J」のレビューでも記載しましたが、AliExpressなどで中華イヤホンを頻繁に購入しているようなマニア層ならば上記のような話は「中華イヤホンならこのくらいは当然」で許容範囲な出来事だと思います。
imageところが、日本の代理店を経由し、大手ショップでそれほどイヤホンに詳しくない層に「低価格・高音質イヤホン」として販売する以上、日本向けのクオリティ基準を満たしていないと、本来の評価を得られないのでは、という危惧があります。実際、「Auglamour R8-J」も昨年の「R8」のような勢いはなく、「KINERA Bd005E」は音質のわりにそれほど認知されず、その後現れた超大物のfinalE3000」「E2000」や長い時間をかけてじっくり作り込んだ渾身のイヤホンといわれるEARNiNEEN120」の登場により、わずか数ヶ月ですっかり過去の存在のような感じになってしまいました。最近のこの価格帯のイヤホンの隆盛の速さには改めて驚かされます。

今回「KINERA H3」はイレギュラーな入手でしたので詳細なレビューは割愛しましたが、音質面は多少意見が分かれる可能性はあるものの、このまま日本市場に投入しても品質面ではおそらく申し分のないイヤホンだと思います。
もし本当に今回入手したものとは違うサウンドチューニングのモデルも日本に投入されるのならば、改めて日本版も購入したいなと思っています。